担任がやたらくっついてくるんだが……   作:ローリング・ビートル

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第41話

「愛美お姉ちゃん、起きてる?」

「……うん」

「眠れないんでしょ?」

「あ、当たり前じゃない!わ、私ったら、勢いで男の子の家にお泊まりなんて……!」

「大丈夫だよ。ほら、お姉さんを見て」

「?」

「すぅ……すぅ……」

「……よくここまで穏やかに眠れるよね。好きな人とひとつ屋根の下で……」

「ん?あれ、お姉さんの布団の位置ここだったっけ?もうちょっと私達にくっついていたような……」

「…………先生、本当は起きてませんか?」

「眠ってるわ」

「起きてるじゃないですか!さり気なく布団ごと移動しないでくださいよ!」

「すぅ……すぅ……」

「眠ったふりしても無駄ですよ!あと何で浴衣きてるのかも謎ですし、寝る直前まで浅野君の前で胸元や太股の辺りをはだけさせていたのもずるいです!」

「奥野さん。もう遅いから寝なさい」

「むむむ……」

 

 *******

 

『君、本当に可愛いわね』

『私?別に大丈夫よ。一人は慣れてるから』

『……また、会えたわね』

 

「……ん?……今の、夢……だよね?」

 

 あまりに生々しくて温かな夢。

 夏に見るには熱すぎる夢。

 あっという間に意識が覚醒してしまった。辺りをきょろきょろ見回し、なんとなく体をぺたぺた触ってみたけど、汗ばんだTシャツが肌に貼りついているだけで、特にこれといった変化はない。当たり前といえば当たり前なんだけど。

 そこで、今日は夕方まで一人なのを思い出す。

 先生は学校に、奥野さんはクラスメートの家に、若葉はこっちに住んでいる友達の家に行ってしまった。二度寝するまで賑やかだったせいか、普段の静けさに耳が疼く。い、いや、別に寂しくなんかないよ?

 身支度を整え、朝食をとり、一息つくと、今日やるべきことがすぐに思い浮かぶ。

 ……若葉が来てから、結構あそびまくっていたので、その間に先生から言いつけられた課題図書を少しでも読み進めておこう。確か、この前先生から本があったはずだ。倉庫から出てきたオススメの本とか……

 

「え~と、タイトルは……『近所に住む憧れのお姉さん』か……」

 

 そういえば、先生も近所に住んでるんだよな……って、何考えてんだよ!僕は!いくら先生が勧めてくれた本だからって、こんな形で自分と重ねるなんて……。

 そこで、先生の言葉が脳内で再生される。

 

『真っ直ぐに見て』

 

 ……いやいやいやいや。さすがにこれは都合よく解釈しすぎだろう、それは……いや、でも……思春期男子の一員として、たまにはこういう妄想をしたってバチは当たらないはず。

 ……じゃあ、この1冊だけ……1冊だけ、がっつり妄想してみよう。

 

 *******

 

 僕には幼い頃から憧れの人がいる。

 真向かいの家に住んでいる唯さんだ

 

『おはよう、祐一君』

『お、おはようございます。唯姉さん』

 

 小さい頃から姉弟同然に育てられてきたせいか、僕は唯さんのことを唯姉さんと呼んでしまう。しかし、今日こそは……姉さんとは呼ばない。

 

『唯……さん』

『ん?どうかしたの?、祐一く……ん!?』

 

 僕は、強引に唯さんの唇に、自分の唇を押しつけた。

 ずっと触れたかった柔らかな温もりが、自分と絡み合っていく快楽が、頭の中を支配した。

 そのまま本能に身を任せ、唇を重ねたまま、玄関のドアを開け、家の中へとゆっくり足を踏み入れた。

 

 *******

 

 何だ、これ……展開早くない?いきなりキスしてるんだけど……それに、最初の方とか端折りすぎてるし……。

 さらに、登場人物の名前が自分達と一緒とか……何て偶然なんだろう。色々とあれだが、これは妄想しやすい。

 僕は一人で頷きながら、次のページをめくった。

 

 *******

 

『ゆ、祐一君、落ち着いて!君のことは好きだけど、それは弟みたいなもので……』

『違う』

『え?』

『僕は唯さんの弟じゃない……唯さんは僕の姉でもない……』

『祐一君……』

『お願いします!僕を男として見てください!』

『…………もう、見てるわ』

『え?』

『ごめんなさい。私、ずっと嘘ついてた。君の事、弟みたいって思ってたんだけど、いつからか……一人の、大切な男の子として見るようになったの』

『唯さん……』

『来て……祐一君』

『はい…………』

 

 自然と二人の唇が重なる。さっきより甘く、深く。

 

『ん……んん……』

『…………』

 

 そのまま二人は……

 

 *******

 

「……もうくっついちゃった。」

 

 この後、遊園地やら水族館やら動物園やら海外やら異世界やら、300ページ以上イチャイチャが続いた。

 

 *******

 

 夕方になり、帰り道で出くわしたのだろうか、先生と若葉が同時に帰ってきた。

 

「ただいま」

「ただいま~!」

「お、おかえりなさい……」

 

 さっきの小説のせいだろうか、先生の顔があまり見れない。

 滅茶苦茶な展開の割に、イチャイチャの場面がやけに生々しく脳に刻まれている。

 

「ん?お兄ちゃん、どうしたの?なんか顔赤いけど」

「え?そ、そうかな……あっ、そうだ!用事思い出したから、部屋に戻るよ!」

「…………」

 

 背中に感じる視線には見て見ぬふりをして、一旦部屋へと退散した。

 

 *******

 

 ……意識、してる?

 もしかして、あの本が効いたのかしら?

 露骨過ぎるとは思ったのだけれど……ど、どうしよう……嬉しい。これまでと反応が違う……今日はいつもより、さらに美味しいものを作ってあげなくちゃ。

 

「お姉さん?なんかニヤニヤしてない?」

「気のせいよ」

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