担任がやたらくっついてくるんだが……   作:ローリング・ビートル

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お化けがくっついてきたんだが……

 

「ねえねえ、ここ入ろうよ!」

「お化け屋敷か……」

 

 若葉は、E組のお化け屋敷をキラキラした瞳で見つめていた。

 まあ、定番といえば定番かもしれない。とはいえ、そこまで怖がれそうな気はあまりしないけど……。

 すると、隣にいる奥野さんがはっきりわかるくらいにガタガタ震えていた。

 

「あはは……た、たしかに面白そうだよね……うん、いいんじゃないかな……」

「奥野さん。もしかして……」

「ち、違うもん!べ、別に怖くなんてないんだからね!」

「…………」

「お兄ちゃん、察してあげて。お兄ちゃんはそういうところがダメなんだよ」

「……は、はい」

 

 怒られてしまった。

 どうやら、こういうところがダメらしい。

 

 *******

 

 とりあえず中に入ってみると、井戸のセットや破れた提灯など、想像していたよりは凝ったつくりになっていた。だが、それより……。

 

「浅野君、浅野君、ぜ、絶対にいきなりどっか行ったりしないでね?約束だからね?若葉ちゃんも離れないでね?」

「あ、うん……」

 

 奥野さんが想像以上にびくついている。これはこれで可愛い……いや、何を考えてるんだ、僕は。

 

「お兄ちゃん、こわ~い♪」

「…………」

 

 若葉はわざとやっているだけだろう。こいつは幽霊なんかを怖がるタイプじゃない。昔から遊園地のお化け屋敷で大笑いして、お化け役の係員が寂しそうにしていたのを、今でも覚えている。

 二人にしがみつかれながら、何とか暗い教室の中を歩いていると、何やらボソボソと聞こえてきた

 

「奥野さん……あとで誘おうと思ってたのに」

「ちくしょう……奈良原の奴。許せねえ」

「若葉ちゃん……可愛い」

 

 あっ、これ僕に向けられてるやつだ。ていうか、名前……かすりもしていないんだけど。あと、そこのロリコンはそろそろ通報しておこう。

 

「よし、めっちゃ驚かしてやろうぜ!」

「「おう!」」

 

 聞こえております。

 とりあえず、奥野さんも怖がってるからはやく進もう。

 すると、さっきの三人組が白い布を被って飛び出してきた。

 ……意外とそこは手抜きなんだ。 

 

「ひぃやあああああ!!」

「きゃああああああ!!」

「あはははっ!!」

「…………」

 

 ……うわあ、三人組の叫び声と奥野さんの悲鳴と、若葉の笑い声が重なって、とりあえずやかましいという感想しか沸いてこないや……。

 ここは無視してさっさと……

 

「きゃー」

「っ!?」

 

 えっ、何!?

 無機質な叫び声と共に、何か柔らかなものが腰にしがみついてきた。こ、これも演出!?ここまでする!?

 しかし、その感触はすぐに離れていった。

 

「ひぃやあああああ!」

「きゃあああああ!」

「あはははははっ!」

 

 こっちはこっちでまだやってる!何でさっきと変わらないテンションを保てるんだろうか。

 

「きゃー」

「み、皆!逃げよう!」

 

 また腰にまとわりつかれないように、僕は二人を引っ張って駆け出した。い、今こそトレーニングの成果を見せねば!(約1ヶ月)

 その後、お化け屋敷でメイド服の女の幽霊が現れたという噂が飛び交ったらしい……。

 

 *******

 

「はぁ……こわかった……」

「愛美お姉ちゃん、もう一回行く?」

「行かない!」

「と、とりあえず……た、楽しかったね。あはは……」

 

 途中、本当の怪奇現象に遭遇した気がするけど、あまり気にしないほうがいいのかな?

 そんな事に頭を悩ませていると、近くをメイドが通りすぎていった……って、あれ?

 

「先生?」

「……あら、浅野君。偶然ね」

 

 やはり、間違いなく森原先生だ。喋り方がいつもより少し硬い気がするけど、どうしたんだろう?

 

「先生も休憩に入ったんですか」

「……ええ。それで、この辺りの出し物のチェックをしていたのよ」

 

 先生は長い黒髪をふぁさっとかき分けながら、真っ直ぐに僕の方を見た。

 すると、隣にいる奥野さんはジト目で先生を見つめた。

 

「あれ?先生の休憩はまだ先ですよね?まさか……」

「お姉さん……」

「……何の事かしら」

 

 あれ?先生が、ほんの僅かだけど……たじろいでる?

 もしかしたら、この些細な変化は、クラスでも自分にしかわからないんじゃないかと、少し調子に乗っていると、廊下の向こう側からメイドが2人、こちらに駆け寄ってきた。

 

「あっ、先生いた!」

「いきなりいなくならないでくださいよ~!今大変なんですから!」

「……はい」

「やっぱり……あれ、浅野君は?」

「あれ?いない?」

 

 *******

 

「あ、新井先生、いきなりどうしたんですか?」

「ごめんね~、ちょっと付き合って~」

 

 そう、僕は先生達が会話している間に、新井先生に捕まってしまった。

 腕をがっちりと拘束され、引きずられながら歩いているのだが、肘の辺りに柔らかな感触が押しつけられていて、非常に落ち着かない。僕が悪いんじゃない。

 ちなみに、新井先生もメイド服のままだけど、いいのかな?色々と……

 

「えっと」

「実は……いえ、理由は保健室で話します~」

「はあ……えっ、保健室!?何でですか?」

「ふっふっふ~、それは保健室に着いてからの、お・た・の・し・み♪」

「…………」

 

 ふ・あ・ん・で・す。

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