第1次デスペラン攻防戦は大敗北に終わった
デスペランの位置を軍事衛星にマーキングさせるというその戦略的目的は達成したものの、
戦術的には大敗北を喫した。
リーヴェサーカス・フィーアを先に完成されてしまい、ビスマルクの艦隊運用の先をいかれた、艦隊運動で全滅もあり得た。
すんでのところを深海提督”ハーフェン”たちの救援によって救われたが、
何より、その彼女の側近中の側近だった戦艦水鬼を喪う結果となってしまった……。
笹野愛はリーヴェサーカス団に、『自由裁量』で正式にル級を組み込んだ。
ビスマルクを旗艦に伊勢と大井・ル級FS3隻 第1艦隊
アイオワとを旗艦に鳳翔・北上・ル級FS3隻 第2艦隊
そして改ル級FS・ル級FS・暁の補助艦隊である 第3艦隊
――――――――
クラーリンの攻撃は依然続いている。
だが、軍事衛星からの監視で出撃を先に察知できるため、どこへ向けての攻撃か分る点こちらが有利である。
やはり善通寺駐屯地を狙っているようだ。
クラーリンの攻撃は再三土佐鎮守府艦隊とリーヴェ・サーカス団の出撃で阻んでいる。
陸に上がったクラーリンは海援隊・薔薇の騎士団によって阻む二段階方式だ。
こちらの移動砲台連装砲ちゃんも、機動的に海岸防衛を行っている。
激発した提督たちはデスペランへの攻撃を行うが、
クラーリンは『提督』のコントロール下にあるときには恐ろしく有機的な艦隊運用を行い
激発して突っ込んできた艦隊を縦深陣に引き込んでから、丁寧にすりつぶすように海の藻屑にしていった。
第ニ・三次デスペラン攻防戦だけで20隻以上の艦娘が犠牲になってしまった。
そのため、坂本陸準将補の名前で「デスペランへの先制攻撃厳禁」命令が通達された。
「防ぐだけでいいんですか!?」
と抗議する提督もいたが、
「あほかい!難攻不落の要塞をまともにやって落とせるわけがないぜよ!」
と抗議しに来る提督を都度追い払っていた。
――――――――
その頃、リーヴェ・サーカス団では作戦会議が開かれていた。
全国の艦隊を陽動にして南方を進撃してジレーネ深海棲艦の数を減らしながら、
サーカス団でミッドウェーへタッチダウンする作戦である。
その作戦案を提示した時、大塚一尉が反対した
「小官は反対であります」
「どうしてですか?」
「この作戦では四国防衛がおぼつかなくなります。我々には敵としてデスペランがいることを忘れないでいただきたい」
岩崎二尉も
「小官も反対ですなぁ。これだと、提督一人悪者になってしまう。ミッドウェーへのタッチダウンはもうちょっと違う方法を考えましょう。急げば回れと云う格言もありましょうしなぁ」
と温かい言葉で大塚二尉に賛同する。
その二人の言葉に、愛は腕を組んで考えながら会議室の対面に座っている顔を見る。
「
対面居座っていた深海棲艦・ハーフェンが立ち上がって口を開く。
「幕僚の皆さんが揃って反対されているのであればお止めになたほうがよろしいかと思います」
そう言ってから幕僚達に頭を下げて腰を下ろす。
「分かりました。この案は却下にしましょう」
愛はそう言ってから大きなため息を吐いた。
結局はこの会議ではなんの決定を見られぬまま登校時間になっていった。
「燿子、今日は学校を休んでちょうだい」
「えっ?」
「ちょっとお話があるんだけど」
資料の片付けをしている燿子を呼び止めると司令官私室に先に入る。
燿子は首を傾げながら愛のあとをついていった。
司令官私室に入ると、鍵を締めてもらって奥のベッドルームに向かっていく。
燿子は訝しげにその後をついていく。
燿子がベッドルームに入ると、ダブルのベッドに横たわってる愛の姿があった。
「燿子、隣座りなよ」
「う、うん………」
それだけ答えると愛の隣に座った
「ねそべってもいいよ」
「うん……」
燿子には愛の意図が分からなかったが愛は天井を見たまま
「健太と燿子に何があったの?」
一番聞かれたくない質問だった。
「話さないと、だめ?」
「話せないことなのは十分理解している、だから」
愛は燿子の目をじーっと見つめた
「……愛………健太と………私………」
燿子は話し始めた。
健太は刑務官に暴行を受けてなにか知っているか問い質されたのだ。
事前に調べた愛のプライベートを暴露して精神的に揺さぶりをかけていた
それでも健太は何も知らなかったから何も答えなかった。
次に燿子が調べられた、
父親からなにか聞いているんだろうと、
まず、衣類を脱がされた。脱がされた衣類は下着までに及び、何か隠していないか身体検査を受けた。
そう犯罪者かのように膣や肛門まで丹念に調べられた……健太の前で。
そして、燿子は初めてを奪われた。
「………無理やり……健太君とさせられたの………」
「っっっ!」
愛は絶句した、それと同時に怒りが沸き起こっていた。
「ゴメンね……愛……ごめんね……」
そんな燿子を抱き寄せて頭を撫でる。
「その後は、私が大人たちに犯される様を見せつけられてたら……突然深海棲艦化して……牢屋をこじ開けて……」
「……………」
「お前ら
愛は優しく燿子を抱きしめたまま何も言わない。
「大石くんはね……お引越ししてきたの」
ポツリと呟くように語り始めた。
大石健太は別の学校に通っていた。そこでは母親の年齢が発端でひどいいじめを受けていた。
物を隠されるなんて当たり前、服を脱がされたりするのも、しょっちゅうだった。
もう一人いじめられてた女の子がいた、その事無理やり行為に及ばされたのだ。
そして、健太がその子をレイプしたとまことしやかに喧伝した。
健太はその街にはいられなくなった。
そこで泰子の実家である宮戸島にやってきた。
そこでも健太はいじめられていたが、今ではその子と仲良くなっている。
「健太君と初めてした日ね、初めてじゃなくてごめんと涙ながらに語ってくれたんだ………押し倒したら異常に怯えだしたから、おかしいなって思って」
「そっか…………」
「健太君はずっと心に闇を抱えてたんだね…………私じゃ不足だったのかなぁ」
寂しそうに言う愛に燿子は首を振る
「足らなかったら私も居るし、みんなも居るわよ」
「……………ありがとう」
今度は燿子が頭を撫でる番だ。
優しく撫でて……… 優しく抱きしめて…………
「それでトラウマが再燃して更に……何もかも絶望しちゃったんだ、健太は………」
「…………」
「でも健太は優しいからいつかわかってくれるよ……ねえ、燿子……」
「なぁに?」
「今寂しいよ……埋めてくれる……?」
「うん………」
お互い抱きしめあって………
――――――――
その頃デスペラン内部……
謎の旧日本軍の元帥階級の制服を身にまとった女性がだだっ広いデスペラン司令室にやってきていた。
「お初にお目にかかります、大石健太様」
恭しく礼をするその女性に指揮座についたままの健太は何も言わずに見下ろす。
「
「………デスペランのデータベースに載っていた。ジレーネの首魁が何の用だ」
その言葉にうふふっと笑いを浮かべて楽しそうにする玉将
「昔々あるところに、艦娘と深海棲艦がいました、両者は表裏一体、沈んだ海の思いから生まれました。人間たちはその艦娘を研究し、兵器として使うようになりました。人間たちは艦娘も、深海棲艦も居なくなるように戦争を仕向けました。やがて、深海棲艦と艦娘はその世界から消えてしまいました、めでたしめでたし」
そういうと、すっと表情を消す。
「そんなある日、人々はそんな事も忘れて過ちを繰り返そうとしていました。火を騙り、空を穢し、地を屠り、水を腐す、そんな人類はちょっと居なくなって地球はお休みしたいと考えるようになりました。それが我々ジレーネです」
「人類殲滅装置…………」
「はい、人類以外の生物にはなるだけ迷惑をかけずに殺していきます」
「傲慢だな、神になった気分で居るのか?」
「そっくりそのままお返ししますが、
「神そのものか………」
健太は少し考えるように腕を組む。
「僕は、四国の丸亀ってところに生まれたんだ。母が僕を生んだ時15……それが原因でよくいじめられたよ。今でも鮮明に思い出される。あの悪夢がね……もう一人いじめられてた子がいたんだ。『亜衣《アイ》』ちゃんって子。二人して服を脱がされたり、物を隠されたり、ある日彼奴等は僕たちに無理やりセックスを強要したんだ」
「………」
「その子はその後、死んじゃったよ。首を吊ってね。僕はその犯人として学校に居られなくなった。だから母さんの実家である宮戸島に逃げてきたんだ。そこでもいじめられた……高菜先生が居なかったら僕は死んでたかもしれない」
「……お辛かったのですね」
玉将は哀れみを向ける笑みを浮かべながら指揮座に座っている健太を見上げる。
「それで、今度は燿子とだ。こんな連中なら自衛隊なんて要らない、みんな居なくなればいいんだ、愛ちゃんや燿子まで裏切って……」
「いいえ、愛ちゃんに背を向けたのは貴方様ですよ、うふふ」
「何っ」
不愉快な顔を貼り付けた健太に笑いながら話題を変える玉将
「ところで、デスペランに私達が『教化』した深海棲艦の駐留を許可いただけますでしょうか」
「デスペランには無限にも居るクラーリンや各種砲台がある。お前たちの力を借りるなんて必要はない」
「ですが、貴方の愛さんと燿子さんを手中にしたいなら万全を期しませんと、ただでさえ軍事衛星で監視されていますのに……」
「だろうな、貴女がこの要塞の深海出入り口からやってきた理由がよくわかったよ。ジレーネは恐れているんだろう艦娘を、人間を」
「うふふ、あはははは。そのとおりですわ。正確には『諦めない人間と艦娘』に」
「…………それで、僕に要求しているのは深海棲艦の駐留だけかい?玉将」
「はい、そして指揮権もお譲りします。 王たる私がここにいることに気づいてもらうと困る子たちが居るんです」
「………」
「まずは、四国を焼け野原にしましょう。み~んな人間を殺して、そしたら深海棲艦の恨みで徹底抗戦論が巻き起こるでしょう。そうなれば、この茶番を仕組んだ人間の作戦は水泡に帰します。その上で愛さんと燿子さんを頂いてくればいいでしょう。ペットにするもよし、死体として愛でるのもよし、生殺与奪は想いのまま」
「黙れ!!」
立ち上がり健太は玉将を睨みつけた。
「っ!」
「愛ちゃんと燿子ちゃんを愚弄するな。なんならデスペランでジレーネと直接戦争をしてもいいんだぞ」
「申し訳ございません。口が過ぎました。お許しください」
恭しく頭を下げる玉将に、健太も座り直し大きなため息を吐いた
「わかった、ジレーネ派深海棲艦を預かる」
「有難うございます。健太様」
こうして、デスペランはジレーネ派の深海棲艦の拠点となった
その動きは当然ながら人間側にもキャッチされていた。
――――――――
「どうも、深海棲艦がデスペランに出入りしているようぜよ」
坂本准将補が郷里二佐、葵と花梨を伴いその情報を持ってきたのはそれから数日後だった。
「どうやら健太さんはジレーネと手をお組みになったようですね」
皮肉めいて言うハーフェンに愛は腕を組んで考え込んでいた。
左手小指の指輪はまだ輝いて居るが少しづつ色が鈍くなってきている。
「坂本准将補、貴方の権限で四国の艦娘を全て四国南岸に結集できますか?」
「大貫総監から貰った『臨時司令長官』の権限を使えば不可能じゃないが」
「健太の次の一手は総攻撃です。四国を焼き払って人間と深海棲艦を不倶戴天の敵にしてしまうんです。そうしてから、艦娘は深海棲艦と表裏一体と公表すれば民衆の憎悪は全て艦娘と提督に向かいます。そうなったら………」
そう言うと愛は坂本を見る。
「おしまいぜよ」
坂本は大きなため息を吐いて見る。
「私はその間に艦隊を率いて、敵陣を突破。各地で燃料を調達しながらアイアンボトムサウンドへ向かいます。明石のブースターを使うことも計算に入れて、2週間、現有戦力で耐えきってください」
「わかったぜよ。最悪近畿や九州の艦娘を増援に呼んででも現状を死守するぜよ」
その言葉に、郷里や花梨、葵もこくりと頷いて
大塚一尉、小杉一尉、岩崎二尉、それに翼、笠原三尉、燿子も頷く。
「そこで、うちの幕僚についてですが、ハーフェン、燿子は連れて行きます。笠原三尉には指揮艦の操縦を」
そう言って三人を見ると、三人共敬礼する。
「小杉一尉には薔薇の騎士機動隊の指揮のために残留を」
「かしこまりました」
小杉一尉は敢えて心臓を捧げるポーズを取る。
「司令部からもう一人連れていきたいんですが」
その言葉に大塚一尉がヒゲを弄りながら
「常識豊かな小官が」
「残ってお目付け役をしていただくということで、司令部からは小官が同行いたします」
言い終わるのを遮って岩崎二尉が同行を申し出ると愛は頷くという形で従うと
一同はどっと笑う。
「艦娘・深海棲艦は全員連れて行きます。それと私は生きて帰るつもりですが、相手にも都合もありますから、次のサーカス団長を妖精の見える大垣翼一尉に指名します」
「あちゃあ、バレてたか……」
「というわけで、大垣一尉も残留してもらいます。そのチョーカーは自分の意志で使えるようになっているはずです、基地航空隊をお願いします」
「で、私達は?」
何故かこの場にいる恵奈カルテットである。
「連れて行くわけないじゃないですか。1組のみんなと最悪避難してください」
『はーい!』
元気よく手を挙げる恵奈カルテット。
そんな様子を見ながら坂本が笑みを浮かべる。
「剛、お前さんは花梨を連れて岩沼に行け」
「なんですと!?」
驚愕した顔で坂本を見返した郷里三佐だが、坂本は笑みを浮かべたままである、
「海援隊はワシが直々に指揮をするきに。おんしは花梨を連れて岩沼に行け、命令ぜよ」
「しかし、小官がいれば戦力としてはうなぎ上り、安全な場所より戦場となるこちらで……」
その言葉を愛が遮った。
「ところが、安全な場所にはならないんです。花梨には重要な任務を与えます。今の段階で、人材を東北に動かした場合、反艦娘派によって消されるでしょう。郷里三佐にはその護衛役をお願いします」
「むう…………」
「私達の敵はGHQ体制から脈々と受け継がれてきた日本の国体そのものとアイアンボトムサウンドのジレーネです。もう、終わりにしましょう、戦後を」
顔を上げてみんなを見回す愛。
「高菜二佐にお伝え下さい。「すべての準備ができた時、電と薄雲にこう語ってください『
「………了解しました、その後は父に保護していただけば良いのですね」
「はい、皆さんによろしくお伝え下さい。あと、母に『ありがとう』と伝えてください」
その言葉だけ花梨は強い瞳で見返すと首を振った
「それはご自身でお伝え下さい。では早速移動を開始します」
「うむ、善は早ければ良い」
そう寄り添いながら去っていく二人を見ると、再び全員に向かい直す。
「さて、具体的な戦術ですが大貫さんに依頼した明石と建造に必要な資材が届き次第、建造し続けます。それで、捨て艦戦法で一挙に特攻させて穴を穿ちます。装備は、ブースター自爆装置」
その言葉に絶句したのは燿子だった
「あんた、艦娘をなんだと思ってるのよ!」
「よしなさい」
「STOP!燿子」
食ってかかろうとする燿子を止めたのは艦娘代表で出席していたビスマルク・アイオワである。
「提督は、ハリボテ艦娘を作るというわけね」
「はい、艦娘の素体に魂を入れる前の状態。 これなら道義的には大問題でも、深海棲艦化は避けられるでしょう。それを自爆させて次々と敵艦と相打ちの形で沈めていきます。底にできた穴で、私達は、基地航空隊の援護の元一点突破を図って太平洋に脱出します。 四国の艦娘の皆さんは文字通り、命をかけて四国の地を守っていただきます」
その言葉にハーフェンが説明を引き継ぐ
「引き継ぎますわね。アイアンボトムサウンド殴り込み艦隊は同地でアイオワの隠し装備『核弾頭』を使ってアイアンボトムサウンドに核攻撃を行います。 これで、ジレーネの封印が解かれます、この時点で殴り込み艦隊は用済みです。ここで戦死してもよし。再び撤退戦をしてもよし」
その言葉に複雑な顔をする同行幕僚達。アイオワがバレちゃったかという顔をしている。
「うふふっ、では撤退戦をなさいましょうか。敵の性質は深海棲艦と言うより艦娘に似ています。保護機能はあまりあてに出来るとは思わないほうがよろしいでしょう。そしてジレーネそのものが出てきた瞬間、
ハーフェンがそう語ると扉が開かれる。入ってきたのは明石である。
「明石です!大貫総監からのご指示で資材と大量のブースターをお持ちしました!大貫総監からの借金2500万円をチャラにしてくれると言うので死ぬ気でやってきました」
「では、明石、魂を入れる前の素体艦娘に自爆ブースターを取り付けてください」
「了解です!」
その直後だった、艦娘通信が入った
『こちら暁よ、デスペランが動き出し出したわ!今までに見たことのないほどの大量の深海棲艦よ!ブースターで逃げるわ!』
全員が顔を見合わせた。
「さあ、作戦開始です」
――――――――
そのころ東京で
「では、閣下はジレーネの開封と同時に、真実を国民にお話になるのですか?」
「うむ、その際、私は暗殺されるだろう。大本営の幕僚総監代行を貴官に委ねる」
話し合っていたのは黒幕たる二人の自衛官だった。
「そうすれば、深海棲艦と手を取り合うものも出るかもしれんなあ。下級の深海棲艦は仕方があるまい。トドや害獣の扱いをしてしまうのは忍びないが……」
「そうですな………」
大貫がヒゲを弄りながら続ける。
「私には愛する人が居てな、その人間と共に逃げてきたのだよ。その愛する人はハーフェンと名をつけた。それぞれ相対する側の指導者となって永遠に続く茶番を続けて、ジレーネの出現をなんとしても阻止し続けて、じわりじわりと艦娘を社会に融合させて、何れは深海棲艦とも手を取り合える社会を夢想していた。だが、ジレーネのほうが上手だった。そこで、私は日本を東と西に分けた。関東以東を平穏なエリアにして、ハーフェンがそこで勢力を固めるのを待った。硫黄島要塞や硫黄島の悲劇は茶番を悟られないためのものだった。こうして膠着状態になった深海棲艦を見かねたジレーネは深海棲艦の一部をその勢力に取り込んで仕舞っていた。」
その言葉に足立将補は
「では何故、閣下は『必殺仕事人』なる毒を用いたのですかな?」
「!!」
大貫の目はまん丸く見開いていた。足立将補はしてやったりのような顔をしている。
「伊達に捜査一筋数十年やっておりません。こうやって全体から見渡せるようになって統計上の不祥事を洗いざらい調べていたらその存在に気づいていたんです。原隊に何度戻そうが、何度逮捕しようが不起訴で、大貫閣下以外のルートで提督や警務隊員として舞い戻る事案が何度もあり、こうなったら確かに殺すほかはないでしょうなあ」
「………」
「そして、笹野愛を提督に迎える口実として提督を意図的に不足状態に置いた。そして、笹野愛とハーフェンを会見させた。それを意図的に警務隊にリークしたのは貴方ですな? それに、神谷をそそのかし、無謀な作戦案を政治ルートへ出したのは、防衛大臣の首をはねるためだったのですな?」
「………」
「閣下、小官をあまり舐めないでもらいたい。小官が何も知らずに閣下の招聘に応じて警務隊にやってきたわけではありません。実のところ、私は閣下の監視役として招かれたのです。ですが、私も色々な事象を調べていくうちに、なにか違和感を感じていました。戦力バランスや、不祥事率、その他色々。疑惑が確信に変わったのは笹野愛を提督に迎えたことでした。 貴方はなにか隠している。そして私は監視役として知っておきながら側においておられると。要するに私はダブルスパイだったわけですな」
ニヤリと足立が笑うと、大貫が大きなため息を吐いた。
「政府はやはり、艦娘の社会進出を恐れています。艦娘基本法が遅々として成立しないのは艦娘を滅ぼすため、ジレーネと云う存在は知っているのでしょう。ですから、今室戸で行われているであろう作戦は邪魔はしないでしょうな。そうそう、大石健太について、一度自殺未遂をしていますが、救われています。今回の深海棲艦化となにか関係があるのでしょうかねえ?」
「ふふふ。敢えてニーコメントと言っておこう」
お互い腹の探り合いである。
「それより私は腹の探り合いに飽きたよ。君の正直な気持ちを聞かせてもらいたい」
「私は人類が存続すればそれで良し、と考えておりますが。ジレーネに管理される社会は御免こうむりたいですな」
足立の正直な心情だろう。
「では、あともう少し短い間、君の力を借りることになる。よろしく頼む」
「かしこまりました。閣下」
二人はニヤッと笑って握手した。
――――――――
ウウウウウウウウウウウ!!!!
四国全土にJアラートが鳴らされる中、四国の全鎮守府の艦娘達が四国南岸に集結していた。
そこには急遽ブースターでやってきた大和・大淀を擁する第13艦隊の姿もあった。
遠くからやってくる深海棲艦の群れ……。
「いい!海2深海棲艦8よ!」
ブースターで逃げながら敵の多さを物語る暁の言葉が全員に響き渡る。
ブースターを切り離して振り切った暁は待機中のリーヴェ・サーカス団に合流していた、
その様相は巨大な陣形だった四国そのものを包囲しようとしている鶴翼陣だった。
それが却って愛の作戦を容易にしようとしていった、
「特攻隊発信!」
物言わぬ自爆兵器たちが戦端を開いた。
同じ場所に過剰に特攻してくる爆弾を積んだ量産型艦娘とも言える存在にクラー林たちは対応できなかった。
そして、最後に出撃した特攻隊が発進した直後だった
「密集隊形維持、火力を集中!敵陣突破後追加ブースターで戦場離脱!」
密集で第二警戒航行序列で前方に火力を集中していく。笠原三尉の操縦する指揮艦も第3艦隊の護衛の元突進していく。
自爆特攻で木っ端微塵になった素体が浮かんでいく中、ビスマルクたちは砲雷撃を密集して打ち込み、薄くなった鶴翼陣に穴を開けていく。深海棲艦たちも打ち返していくが外側に配置しているル級FSがその攻撃を阻んでいく。
そして、陣形を突破した直後ビスマルクが手を上げてさっと前へおろした。
各艦娘のと指揮艦のブースターが点火すると一気にサーカス団は戦場を離脱した。
「さあ、戦闘開始ぜよ」
『オー!!!』
ここに、艦娘史上最大の戦役と呼ばれる『艦娘大戦』が始まった。
総司令官は坂本准将補、そして前線には『不敗の女神』大和が居る。
「さあ、抜錨します!」
「おー!」
艦娘達は次々とクラーリンやジレーネに教化された深海棲艦へと向かっていった。
――――――――
「さあ、愛ちゃん……迎えに来たよ」
その戦場に愛はすでに居ないことを知らない健太は歪んだ顔をして戦況を見ている。
その側には悲しそうな顔の駆逐艦型深海棲艦・アイが傍らに居た……。