中学生提督日記   作:SAMICO

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■警告

戦死・轟沈・暗殺多数

オールジャパンvsデスペラン


死闘~それぞれの戦い~

「戦闘開始ぜよ!」

土佐鎮守府改め四国連合艦隊総本部の司令室で窓から港を見ながら無線機で告げた。

 

数的にはかなり不利な四国艦娘連合艦隊だったが、士気はすこぶる高かった、

あの伝説の『不敗の女神』超弩級戦艦大和が前線指揮官としてやってきたのだ。

 

第13艦隊と土佐鎮守府艦隊はそれぞれの艦隊に別れて坂本提督の指揮命令を伝える役目を担っている。

 

「さあさ、大海戦だよ!!オカワリはいっぱいあるからね!」

『はいっ!!』

 

川内が駆逐艦達水雷戦隊を率いていく

 

那珂ちゃんは中央でクロスファイアポイントを分析して

「そこだめ!」

「左翼はもっと前!」

「右翼下がって!囲まれちゃう!」

などと、大和の横で指揮命令を無線で中継する役である。

艦隊のセンターの役である。

 

この戦闘に参加しているのは水雷部隊だけはない。

航空隊のドッグファイトも行われていた。

 

今度はこちらが受けてである、基地航空隊は細かく出撃できる。

『ひゃっほう!どけどけコノヤロウバカヤロウ!』

無線からは第一航空中隊長の翼妖精さんの軽快な声が聞こえてくる。

そして第二中隊の中隊長は静かに対艦機関砲で戦艦を叩き落としながら、

後部座席の機銃手妖精さんがパラタタタタと軽快に敵機を落としている。

 

空の魔王の活躍に艦娘達も負けてなるものか!と積極的に前に出始める。

葛城・天城は低空で艦娘の援護爆撃を担当した、

制空権はじわりじわりとこちらが取りつつある今、艦娘の轟沈者を出さないようにするのが土佐鎮守府の役目なのだ。

 

サラトガはもう少し前に出てF6F-5部隊を発進して要塞の頭を抑え始める。

要塞航空隊は爆撃機なども出撃しているため、

遅い爆撃機に襲いかかるのだ。

デスペラン艦載機軍団はクラーリン級よりは地味だが、艦載数が膨大のため叩けるものは叩いておけという作戦なのだ。

 

リーヴェ・サーカス団の特攻作戦から始まった防衛戦は、艦娘達も順番で一旦下がり仮眠や休憩をしながらの戦闘である。

クラーリン級はともかく、ジレーネ教化深海棲艦は燃料切れになった瞬間艦娘の集中砲火を受けて沈んでいく。

 

明石は各鎮守府を飛び回り、沈んだ艦娘の再建造や高速修復材の配布を行いながら無限にも等しい敵との戦いで、有限に近い過娘たちの損耗に対応するために必死になっている。

突破されてしまった敵は2個連隊になった陸援隊・海援隊の出番である。

こちらは、坂本の盟友先輩の善通寺駐屯地で第19旅団長になっていた中岡慎之助准将が、残りの部隊を引き連れて指揮をしている。

 

「地上の敵は任せろ!明石開発の霊子弾頭をお見舞いしてくれる」

 

明石も工廠部で試作していた5.66ミリ霊子弾を全放出したのだ。

そのために一旦ケッコンカッコカリリングの制作と配布を中止してまでリングまで融かして霊子結晶弾を持ってきたのだ。

 

そして地上で特筆すべきは連装砲ちゃんである。

武器のデパートと化した連装砲ちゃんは海岸線を右往左往して上陸した敵を軽快なガトリング砲撃で木っ端微塵にしていく、

それでも残った敵は、周囲の巻き添えを承知で51センチクラスター弾の出番である。

 

ズドーン!ズドーン!

 

クラスター団は空中で子弾になりバラバラと降り注ぐ。

もはや海岸の家屋は破壊するものと云う状態になっている。

「どうせ、保証は国がする!」

中岡准将はそう言い放って躊躇なく部下には爆発物の使用も許可している。

爆発物それ自体ではダメージを与えられないが姿勢を悪化したり、動きを止めたり出来る。

そんな中、バイクの音が聞こえてくる。

鉄パイプを持った四国連合の皆さんである。

「おらおらぁ!お国のために暴れっぞオラァ!!」

『オラァ!!』

 

鉄パイプを持ってクラーリンをボコボコに袋たたきにし始める。

これというのも、抗争相手のチームがクラーリンの進路上に居て全滅してしまったため、

四国全部の暴走族、そして暴力団が立ち上がってしまったのだ。

 

特に、神戸に本拠地のある日本一の暴力団組織は警察の監視承知で兵隊を四国に送り込み始めた。

これも。四国の二次団体がクラーリンによって全滅した報復なのだ。

チャカは警察に摘発されるので、全員ドスを持っての参戦である。

「オラァ!叔父貴の敵じゃあ!」

「コイツラみんなぶち殺したれ!!」

「ヤーさんなんかに負けるな!!!俺達四国大連合の力見せてやれ!!」

「なんだと!極道が日本一ってところを見せてやる!!」

 

ヤクザの皆さんはどすをクラーリンの頭に刺したり、どこから持ち出したかわからない日本刀などで大暴れである。

それを監視しに来た公安や暴力団対策課の機動隊員もこうなったら戦闘に参加する他ない。

「警察がヤクザなんかに負けてたまるか!」

「お前らあとで銃刀法違反で逮捕だからな!」

「桜の代紋なめんじゃねえ!!!」

 

彼らの武器は警棒である。盾で囲んで警棒で乱打しまくるのだ。

水陸両用艦とはいえ、アドレナリンがドバドバ出て、死ぬのを恐れない連中に一体、また一体倒されていく。

 

暴走族は新しい戦術を編み出した。

バイクでダッシュしての鉄パイプラリアットである。

クラーリンの首が吹っ飛んだが、当然バイクに乗ってたやつもタダでは済まない。

 

それに対抗して暴力団は防弾仕様の高級車でクラーリンを次々轢いていく。

理論上は、翼と同様人間の意志の籠もった近接攻撃扱いなのである。

 

それを見た小杉一尉は装甲車で特攻作戦を真似てみた。

装機装甲車の履帯にぐしゃぐしゃと押しつぶされていくのを見ると、車両攻撃が有効だと感じていた。

 

ともかく、正規兵だけではなく、暴走族の集団から。ヤクザの集まり。そして、警察官や消防隊などが戦場にやってきた。

医師などが自主的に駆けつけ、近くの病院が野戦病院と化していた。

 

医療者が集まる一方、戦闘員はどんどん四国に集結してきた。

九州からは日本一危険なヤクザと言われる集団が駆けつけ、次々と上陸した深海棲艦に襲いかかっていった。

 

「お前ら不正規兵ばかりに良いところを見せさせるな!!」

中岡准将の激が飛ぶ。

 

戦闘としては最早メチャクチャである。

指揮統率が全く取れなくなった状態で、陸上の暴れ者たちは上陸してくるクラーリンを殺しに立ち向かっていく。

地面には死んだ仲間たちが転がっており、それを片付けるのもおぼつかない状態である。

道路や地面はクラーリンの地や人間の血が混ざって塗装されており、

 

それをドーザー装備の連装砲ちゃんが機関砲をうちながらどけていく。

 

 

海上の艦娘達も、一隻、また一隻と沈みながらも襲来するクラーリンへ立ち向かう。

明石は各地に飛んでは足りないところに新造艦娘を投入しては装甲車に飛び乗って次の場所に向かう。

完全に捨て艦戦法である。

 

戦闘が始まってまる1日が経過した。

相手も一旦兵を引いてにらみ合いが始まる。

 

その間に、死体や救助不能の人たちを次々にトラックに搬入させながら、

ヤクザもんや暴走族を臨時の戦闘員として中岡准将は認めることにした。

指揮系統は建前上は自分だが

「もう、皆さんのご自由にしてください。但し死んでも責任は取りませんよ」

と有志の皆さん(武闘派)のフリーハンド裁量 即ち自由裁量で片付けた。

 

中岡はこの戦闘が終わったら引責辞任する覚悟で、霊子弾などをヤクザにも配って回らせた。

明石は「えっ、良いんですか?」とかなりドン引きした顔をしているが、

「私はもう知らん。これで四国の非戦闘員が守られるなら私の首など安いもんだ」

と、達観した目で答えていた。

 

この休息の間に、艦娘の数を揃え直した坂本提督は順次艦娘達に仮眠と食事を許可していた。

「しかし、このままでは消耗戦ですな」

参謀の大塚一尉がそれを告げると坂本は握り飯を食いながら

「まずいぜよ。早く笹野三佐たちがジレーネとやらを開封しないことには……」

「明石謹製のブースターでも数日はかかりますからな……」

「今デスペランが仕掛けてこないってことは、再生産中ってことぜよ。或いは司令官が休息をとっているか……」

「いずれにせよ、こちらも再準備しなければ戦線が崩壊しますぞ」

「解っとるわい、大塚一尉はここじゃなくて西の方に行って負傷した提督の支えになりに行ってくれ」

「承知いたしました」

 

大塚一尉が去ると、坂本提督と副官の葵だけになった。

 

――――――――

「ぐっ、何だこの体たらくは」

 

仮眠を終えて司令室にやってきた健太はこの様子を見て顔を歪めていた。

 

「テキ チジョウニ イッパイ」

 

駆逐艦型深海棲艦・アイがその歪めた顔に怯えて答えると

健太はそのアイを優しく抱きしめる。

「大丈夫、もう死なせたりしないから」

 

このアイは沢山の駆逐艦の無念と、死んでしまった亜衣の無念が混ざり合わさって出来た存在だと健太は気づいていた。姿かたちが亜衣とそっくりだったからだ。

デスペランが迎え入れたのも、アイがハーフェンの留守のときに乗っ取って迎え入れたのだ。

 

アイの頭を撫でると、再び航空機で敵の艦娘たちの様子を偵察させる。

「愛ちゃん……燿子ちゃん……どこだ……」

 

再び復讐者の顔になると、手を上げ振り下ろした。

 

――――――――

 

第二回戦の開始である。

再生産したクラーリンが順次デスペラン要塞から出撃していく。

 

「皆さん、砲雷撃戦準備ですよ!」

 

各自緊急修復と補給を終えて戦場に舞い戻ってきた。

士気は最初よりは下がっているが、不敗の女神の凛々しい表情を見ると、

負けない!絶対に負けない!と決意を込めて前を見る。

 

陸上では自衛隊と有志の皆さんで武器を構えていつ抜かれても良いように待ち構えている。

自衛隊はその休息の間に増員をし、九州の各鎮守府、東海の各鎮守府から回せられるだけの艦娘を派遣したのだ。

勿論陸上部隊も、隣接する九州・中国などから次々と普通科連隊を送り込み、第1空挺団など中央即応集団も集結してきた。

まさに自衛隊と民間有志のオールスターである。

 

 

その戦火の火蓋が再び切って落とされた瞬間だった。

 

二人だけの司令室に何者かが忍び込んだ。

パシュン パシュン

 

銃声が二発した。

その凶弾は坂本提督と葵を貫いていた……。

そしてその謎の暗殺者は何食わぬ顔をして去っていった。

 

「葵………どこを、やられた……」

「………」

「そうか『胸をやられた』か……ワシは頭じゃ……もうあかん……」

「………」

 

坂本提督が息絶えると葵は最後の力を振り絞って指揮命令システムのもとに行き

大和に「ゼンケンイニン」と通信文を送ると、やり遂げた顔をしながら崩れ落ちて息絶えた……。

 

 

戦闘が始まったところで全権委任の通信文

大和は坂本提督に何かあったと感じて、自身が司令官代理として采配を取り始めた。

「さあ、私が指揮を取ります。絶対に四国を焼け野原にしてはいけません!!」

「おー!!!」

 

 

再び基地航空隊の出撃から戦闘が開始される。

空の魔王部隊がガンガンクラーリンを落としながら爆撃をすると、

翼部隊が第一中隊を引き連れてデスペラン要塞航空隊とのドッグファイトに入る。

この1日の戦闘で、ジレーネ玉将が預けていた空母は全て使い果たしてしまったため、

制空権は優勢のまま事が運んでいた。

 

だが無限に増殖するクラーリンに対し、有限の艦娘が押されているのも事実である。

次々来援する艦隊に一時期は要塞まで肉薄されるも、大和の後退命令で下る。

 

大和は要塞の攻防戦をするつもりは一切なかったのである。

デスペランを叩き落としながら、艦娘が沈んでいくのを目の当たりにしている。

「大変です、坂本提督戦死の模様……」

大淀が小杉一尉からの連絡を伝えると大和は顔面蒼白になっていた。

何かあったとは思っていたが死んでいたとは思ってなかったのだ

 

だが、総司令官になった自分にはそんな動揺を見せることは許されない。

グッと歯を食いしばると、前の戦場を見据えていた。

 

 

――――――――

「みんな大丈夫かなあ……」

避難所に指定された高校の体育館でカルテットは寄り添いながら一夜を過ごした。

「愛ちゃんと燿子ちゃんなら絶対無事だって!」

恵奈の心配に美雪が力強く答える。

「そうだよ、あんな強い子いないって」

「そうだね……」

続けて杏子と真由も答える。

「そうだ!」

恵奈が立ち上がった

「みんなに頑張れってここから応援しようよ!」

大きな声で言うと、カルテットだけではなく、皆が立ち上がった。

 

「せーの!」

『頑張れ皆!頑張れ艦娘!!』

 

 

――――――――

 

――『頑張れ皆!頑張れ艦娘!!』

大和は突然聞こえた名もなき力なき者たちのエールが聞こえて気分が高揚している思いだった。

「小杉一尉!各避難所に回ってください!皆さんの応援をください!今解りました、皆さんの思いが力になります!」

『了解した! おい、お前ら、行くぞ!』

 

「よし、大和推してまいります!」

高らかに宣言すると、装填していたアイキャンフライ砲こと80cm3連装砲改”トールハンマー”を敵に向けて放った。

大和は改装を受けて改二大和型になっていた、薄雲飛翔事件のデータをも用いて大和専用に改良されたのがこの80cm3連装砲改”トールハンマー”である。

 

ズドォォン!

ズドォォン!

ズドォォン!

 

その強烈な砲弾はクラスター弾であり、敵の艦隊の中心部で炸裂し、航空部隊もろとも敵中心部のクラーリンを木っ端微塵に引き裂いていく。

勿論、アンカーを下ろした大淀が後ろで抱きしめて抑えているが三連装で数十体のクラーリンを屠っていた。

 

――『頑張れ皆!頑張れ艦娘!!』

 

その声はだんだん大きくなっていった。

被弾して艦載機も飛ばせなくなった空母も空母を飛ばせるようになり、

沈みかけていた艦娘も最期の一矢とクラーリンと刺し違えて沈んでいった。

 

想いは力になる。

 

そのキーワードが艦娘を動かす原動力となっていったのだ。

 

「那珂ちゃんセンター行くよー!」

中心司令部を大淀に引き継ぐと那珂ちゃんも水雷戦隊を率いて細かく細かくクラーリンを倒していく。

川内も同じである、駆逐艦の子を率いて酸素魚雷攻撃でのクロスファイアを行う。

リーヴェ・サーカスを使うのはデスペラン側だけではない。

土佐鎮守府の面々は坂本提督戦死の報を聞きながらも、涙を後ろに隠して戦い続けていた。

 

 

――――――――

 

四国の戦闘が開始して数日経っていた。

愛達リーヴェ・サーカス団はブースターのお蔭で何回かの寄港の補給の末、

フロリダ諸島のアイアンボトムサウンドまでたどり着いていた。

 

「ここが……アイアンボトムサウンド………」

「では、Keyを差し込みましょう」

 

アイオワが隠していた核弾頭を装填するとアイアンボトムサウンドに向かって核弾頭を撃ち込んだ。

 

 

チュガッ!

 

 

きのこ雲が上がると同時に海面から沈んだ船たちが浮かび上がってきた。

その船たちが形を変え、城のようなものになっていた。

…………まさにアイアンボトムサンドキャッスル。

 

城の門が開くと、旧日本軍の制服を身にまとった艦娘達のような存在が次々と現れてきた。

そして、元帥の軍服を身にまとった女性が現れた。

 

「やってくれましたね、笹野愛」

「貴女が……ジレーネ」

「はい………人類殲滅装置です。人類はやりすぎました。ここらで滅びてもらわねば困ります。……残念ながら、艦娘も深海棲艦も滅びませんでしたが、私達が裁きを下します」

 

すっと手を上げると綺麗な所作で振り下ろした。

 

「ぐううっ!!!」

まずは『歩兵』……つまりは駆逐艦型の砲撃雷撃は始まる。

それだけで前で庇ったル級は大破に追い込まれていた。

 

「だ、駄目です……一旦退却しましょう」

その直後だった、指揮艦に魚雷の流れ弾が飛んできたのは………

「危ない!!」

 

ドカーン!!

指揮艦のコンソールが爆発すると燿子と愛の二人に立ちはだかってかばう岩崎二尉。

「ぐうっ………」

「「岩崎二尉ーーーーーっ!!!」」

 

愛と燿子の叫びがアイアンボトムサウンドに響き渡った。

岩崎二尉は自分の胸に手をおいてその手が真赤に染まっているのを見ると

 

「よせよ、痛いじゃないかね……」

 

そう、目の前の戦場の『歩兵』に呟くように言うとそのまま崩れ落ちた。

 

「岩崎二尉!!!!」

 

崩れ落ちた岩崎二尉を揺する愛だが燿子が「ヒッ」と悲鳴を漏らす。

操船していた笠原三尉はあちこち切り裂かれて即死だった。

ハーフェンはその衝撃で海に投げ出されていた。

燃え上がる船体から救命胴衣を付けながら二人の遺体に涙を浮かべて敬礼をすると愛と燿子は海に飛び込んだ。

その直後指揮艦は爆発炎上して沈んでいった………。

 

「提督!!!!」

 

指揮艦が爆発炎上したときにビスマルクは悲鳴をあげたが

すぐに耐水性のパーソナル通信装置に切り替えた愛からの

 

「私は生きてます……この戦いはまずいです、逃げましょう」

 

と言う言葉にビスマルクはどう退こうか考えていた。

 

敵も一線級の指揮官なら未完成のフィーアも通用しない。

ビスマルクたちはジリジリ下がりながら逃げ出すスキを探していた。

 

後退砲撃戦を行いながらル級を3隻失いながら戦闘は6時間超を経過していた。

愛は水面に漂泊しながらの指揮であり、魚雷が飛んできたらサヨウナラである。

燿子は怯えながらも愛に抱きついて一緒に漂泊している。

それを流れていかないようにハーフェンが抱きしめながら一緒に下がっていく。

 

ジレーネの『玉将』は余裕を持った笑みを浮かべていた。

歩兵の陣形を広げて包囲しようとしていたその瞬間だった、

後方から高速に近い速度で飛んでくる物体が飛んできた。

「愛ちゃん!空から女の子が!」

「えっ……あれは……」

 

その女の子カッコカリはパラシュートを使ってゆっくりと舞い降りて着水した。

そして、浮かんでいる二人と水面に立っているハーフェンの側まで滑ると笑みを浮かべた。

 

「待たせたのです。リーヴェ、ハーフェン」

「新アイキャンフライ砲とブースターで6時間で飛んできました、ぶい」

 

電と薄雲だった。

その瞬間『玉将』の顔が驚きに歪んだ。

 

ビスマルクはその瞬間を見逃さなかった。

「よし、逃げましょう!」

ビスマルクたちは一気に急速反転し逃げ出した。

その途中、改ル級FSがハーフェンを、ビスマルクが愛を、アイオワが燿子を抱き寄せて所謂お姫様抱っこでブースターに点火して一気に離脱を図った。

 

薄雲と電も、残っているブースターに点火してその後を追いかけていた。

 

 

――――――――

その6時間前、緊急で防衛省の記者会見が行われていた。

大貫悟が事前に緊急記者会見の可能性を示唆し、記者たちは連日防衛省記者クラブに集まっていたのだ。

 

そして、アイアンボトムサウンドに核攻撃が行われたそのときに、緊急記者会見の通達を大貫が行った。

 

「諸君、本日の記者会見ですが私は重大な真実を伝えねばなるまい」

 

その直後だった、自衛官の服を着た男が飛び込んで大貫に銃を発砲した。

銃は胸を貫通して大貫は青い血を吐いた。

記者たちは騒然とするのを手で制した。

すぐに銃撃犯は取り押さえられて、大貫は言葉を続ける。

口元から血が溢れているが毅然としている。

 

「みての通り私は人間ではなく、深海棲艦である……。まずは国民の皆さんに侘びねばならない、深海棲艦との戦争は私と、深海棲艦の提督とのマッチポンプだったのだ。それには理由がある。私は人類が滅びた未来から来た未来人なのだ。深海棲艦と艦娘は表裏一体であり、何れかが滅びればもう片方が滅びる。私はその両者が滅びた世界からやってきた大垣守と言う人物だ。私達は、深海棲艦と艦娘が共に居なくなった時、ジレーネという海の魔物に世界を滅ぼされた。ジレーネとは……」

 

再び別の自衛隊員が飛び込んで大貫に銃を打ち込む。

左胸が貫かれて「うぐっ」と血をこぼす。

すぐに銃撃犯は取り押さえられて記者クラブの扉が閉じられる。

 

「ジレーネ……とは……日本軍の制服を着た艦娘……まさに、人類に罰を下さんとする……神………。深海棲艦は敵ではない……知性のないものが害獣と化すのは仕方ないが……心も……感情も……ある……我々の仲間……だ……そしてもう一つの敵は……艦娘の身分を……遅々として……進ませない……この国の政治中枢そのものだ………どうか国民の皆さん……艦娘を受け入れ………共に歩んで欲しい………この国の政治家は………長寿不老の艦娘の社会進出を……恐れ………艦娘を社会から…… 排除……しようとしている………この国は……民主国家だ……皆さんが……考え……決めて」

 

その続きは放送されなかった。

爆弾を持った自衛官が記者クラブの会見場に飛び込んで部屋ごと自爆したからである。

 

 

――――――――

 

その様子をテレビで羽佐間一佐・郷里三佐と観ていた花梨は宮戸島鎮守府に居た。

勿論高菜二佐や卯月、薄雲や電も一緒だ。

「電さん、薄雲さん『ディーゼン・リーヴェ・デア・ヴェルト』」

 

花梨はハーフェンから託されたキーワードを告げるとふっと二人は笑みを浮かべた

「記憶を封印していたのですか。思い出しました、電は別の世界から来たのです。そして、ジレーネという海の魔物はアイアンボトムサウンドに居るのです」

「新井田博士は違う世界に逃げ出しましたが、博士の助手としてはジレーネを破壊しなければなりません」

 

まっすぐ直哉に告げると

「それがあのブースターと艦娘投射機(新・アイキャンフライ砲)か」

明石が何も言わずに置いていった装備と装置を見遣る。

「直哉、ちょっと弟子を助けに行ってくるのです」

「行ってきます」

そんな二人の頭を撫でると

「行っておいで」

そういうと、投射機に入って空を舞っていく二人を見送ると振り向いた。

「さあ、卯月、どうやら最終決戦のようだね」

直哉の表情は真剣そのものだった。

羽佐間一佐と郷里三佐は頷いた。

 

――――――――

そして東京の国会前でも戦いが起こっていた。

怒れる市民たちである。

 

「政府は艦娘を国民として受け入れろー!」

「政権を明け渡せ―!」

「ジレーネと結託している政府を許すなー!!」

「大貫悟の暗殺の真相を話せ!!」

 

市民の数はどんどん増えていった。

全国から集った市民たちは数十万人にのぼっていた

 

そしてその先頭には高菜直樹・湊子夫妻や三友龍太郎・優衣夫妻も居た。

国会前デモ活動は政府を連日どんどん圧迫していった。

 

マスコミはついに政府と決別し、今まで闇に葬ってきたブラック鎮守府やその他をどんどん取り上げるようになった。

そしてデモに進んで協力をするようになった。

 

経済界も戦後は艦娘を労働者として受け入れる声明を発表した。

そして、政権は市民からの圧迫という憲政史上初めての理由で解散総選挙に追い込まれた。

GHQ体制から脈々と受け継がれてきた日本という国に、新しい風が吹き込まれた瞬間だった。

 

――――――――

ジレーネの追撃をようやく振り切った愛たちはようやく日本に戻ってきていた。

日本に戻ってきた愛たちを待っていたのは

坂本陸将補と大葉葵一尉の戦死と二階級特進の一報だった。

そして、政変が起きていたのも聞かされていた。

日本国民の各地のデモで衆議院は解散に追い込まれていたのだ。

 

四国での戦闘は、クラーリンとの消耗戦が続いていた。

慢性的に数日間掛けて行われている消耗戦に次ぐ消耗戦、

すぐに愛達も実戦に参加するも、このままダラダラやっているとジレーネが日本に先に到着してしまう、そう愛は感じていた。

ジレーネの動きは監視衛星で座標指定してアイオワが連絡したためすぐに追ってくれるだろう。

とにかくデスペランとの戦いをなんとか終わらせねば……そう思い悩んでいた時、

 

「愛ちゃん!」

 

懐かしい声が聞こえた。師匠である高菜直哉の声である。

 

「お久しぶりです!先生!」

 

両手で握手をすると顔を上げる

 

「健太君がデスペラン要塞で……」

「難攻不落の要塞なら取るべき道は一つだね……」

愛が直哉にそう言うと、直哉は悪戯っぽくウィンクして見せた。

 

「要塞司令官を落としてしまえばいいのさ」

「はぁ?」

 

愛は目をまん丸くしていた。




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