中学生提督日記   作:SAMICO

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前回がクライマックスでした。

今回ジレーネ編最終回。


愛が勝つ!

「要塞司令官を落としてしまえばいいのさ、真正面から」

 

「はぁ?」

 

 

直哉の言葉は愛は目をまん丸くしていた。

 

「つまりはこうさ、健太君がどういう状況でこうなったかは知らないけど、その指輪、まだ輝いているだろう?」

 

そんな彼の指摘に指輪を見る。鈍くなってきたが愛の左薬指の指輪は輝いている。

 

「つまりは心が通じているという証左だよ。だから、この指輪を媒体に出て呼びかけるんだ。とにかく呼びかける。呼びかけるんだ。この世界は想いで出来ているんだろう?信じることは決してやめちゃいけないよ。愛はね、ちょっとほろ苦くて甘いものなんだよ」

 

直哉は愛と燿子の頭を優しく撫でながら

 

「事情は大石さんから聞いたよ。それにここでの出来事も生き残った警務隊員に聞いた。健太君はひどい思いをして、つらい思いをして、またひどい思いをして、君たちを傷つけて自分からはもう戻れないんだね。だから、愛ちゃんと燿子ちゃんだっけ、君たち二人で………」

『チョット待って!』

 

やってきたのは恵奈カルテットだった。

 

「私達も、健太くんの友達だよ!」

「そうだよ!」

「デブだけど、声量は大きいからね」

「想いは通じるんでしょう!?」

 

恵奈、美雪、杏子、真由がそれぞれ口にすると

 

「そういうことなら俺たちも負けてらんねえな」

 

圭一が車から降りてきた。

次々に降りてくる番長と愉快な仲間たち。

 

「いじめてた僕たちだけど、それでも、健太に戻ってきて欲しい」

「あのバカヤロウにカツを入れてやんよ」

 

寛太と慎である。

 

「圭一のお友達の足しになるのなら」

 

史絵もやってきてくれた

 

「けんちゃんにめっッテしてあげるの」

 

優花ちゃんも喜んできてくれた

 

「慎のたのみだからさあ」

「それな」

「うん」

 

ギャルズたちも笑顔でやってきた。

 

そして、皆で手を繋ごうとするとビスマルクたちがやってくる。

 

「ちょぉっと待ちなさい!」

「Meたちも健太のFriendよ」

「すみません、勝手に戦場離脱しました」

「私達も健太に声を届けたい」

「北上さんも健太に声を届かせましょう」

「そうだね」

「レディとして健太にカツを入れなきゃ」

 

そして後ろに止まる装甲車

降りてくる薔薇の騎士団の面々と、大塚一尉に小杉一尉、それに飛んできた航空機から人間化して飛び降り着地した翼

更には花梨と郷里二佐

「私達も忘れないでいただきたい」

大塚一尉がニィっと笑う。

「小官はこっちの健太の師匠だからな」

小杉一尉も輪に加わる

「健太の事私もちょっとスキだったんだよね」

翼も輪に加わる。

「健太君に声を届かせましょう」

「うむ!」

郷里夫妻も輪に加わっていく

 

そして

 

「私達もなのです」

「うーちゃんも」

「私も参加します」

 

宮戸島トリオも輪に加わる。きっと宮戸島では両親も祈っているだろう。

 

「せーの」

 

『健太―!』

 

 

――――――――

 

『健太―!』

 

「この声は………皆……でも皆が僕を裏切ったんだ!」

 

「違うよ」

 

アイが悲しそうに言った。

 

「健太君、違うよ。私が死んだことで重荷を背負っちゃったんだね……ごめんね、健太君。皆が裏切ったんじゃない、健太君が皆から背を向けちゃったんだ……」

 

「でも、もう後戻りできないじゃないか!あんなにいっぱい人を殺して、僕はもう……」

 

「健太君。やり直せるんだよ。ふふ、私が健太君を操ってたの。それで全てまぁるく収まる。」

 

「アイちゃん………」

 

『健太―!』

 

「ほら、皆呼んでるよ。クラーリンの機能、止めていいかな」

 

「…………」

 

アイは何も言わない健太に悲しそうに呼びかける

 

「健太君、皆呼んでるよ。愛ちゃんが呼んでるよ、燿子ちゃんも呼んでるよ」

 

「僕はそんな権利なんてない。そんな権利なんて」

 

『そんな事ないよ、健太。辛かったんだね、愛情が欲しかったんだね、ねえ健太。私じゃあ満たせないかな、その傷……』

 

愛の声が聞こえてくる。

 

『満たせなかったら私も居るわよ。愛と決めたの。あんたは二人で一生かけて愛していくんだって。ちゃーんと責任とってもらうわよ」

 

燿子の声が聞こえてくる。

 

「いいのかい、僕は燿子を傷つけた……愛ちゃんを裏切った………皆に背を向けた……取り返しの付かないことを」

 

『いいかい。人間はいつでもやり直せるんだ。それに自ら死ぬことは逃げだ。絶対に君に逃げるような真似はさせないからね、忘れないでおいてもらおう。生き続けなさい。』

 

師匠である高菜直樹の厳しい声が聞こえてくる。

 

「師匠………」

 

「さあ、機能を停止したよ……みんなを迎え入れていいかな?」

 

アイが静かに言うとコクリと頷いた。

 

――――――――

愛は気がついたらだだっ広い部屋に入っていた。

愛だけではない、手を繋いでいた全員である。

 

「健太君。迎えに来たよ」

「健太、迎えに来たわよ」

 

愛と燿子が二人並んで手を差し出す。

 

「愛ちゃん、燿子ちゃん……」

 

フラフラと近づくと二人は優しく抱きとめた。

それを見て、ふっと立ち去ろうとするアイを愛は

 

「待って、おいでよ、アイちゃん」

 

そう呼び止めた。

その笑顔には驚いてから健太に抱きついた。

 

「健太くん…………」

 

抱きしめてる3人から離れると

 

「ごめんなさい……」

 

皆口々に温かい言葉を掛けてくれる。

その暖かさに健太は涙がこぼれ、堰を切ったように泣き出して、そのまま意識を失った。

 

意識を取り戻した健太は、深海棲艦化後の記憶を持っていなかった。

 

「やれやれ、これで、健太がデスペランを操っていた証拠はなくなってしまったなあ」

 

直哉が肩を竦ませて笑みを浮かべると指揮座に腰掛け足を組んだ。

 

「さて、デスペラン要塞起動」

 

ウィーンと要塞のモニタが光り始めた。

 

「さて、デスペラン始動。アイオワ、奴らはどこまで来ているかね?」

「WAO!マリアナ諸島まで来ているわ」

「よし、こっちから打って出よう。その前に、基地航空隊を収容しよう」

 

翼が妖精さんになると、次々とデスペラン艦載機収容口が開き、基地から発進した艦載機を収容していく。

艦載機を収容し終えると、デスペランはゆっくりと海を航行し始める。

 

艦娘と深海棲艦達は数隻残ったクラーリンと共に薄暗い収容庫に移動する。

正直気持ち悪いがここからしか出撃できないので仕方がない。

現状再生産は不可能だとハーフェンに告げられた

 

デスペランのモニター席には燿子と恵奈カルテットが座っている、

愛は直哉の横に。そして、健太は隅っこでアイの膝枕で眠っている。

そんな様子を番長と愉快な仲間たちが見守っている。

 

「さて、艦娘の指揮統率は愛ちゃんに任せるよ」

「はい!」

 

ジレーネたちは大型な輪形陣を組みながら20隻の大艦隊で迫ってくる。

 

「艦隊出撃!」

愛の号令で艦隊出撃口がパカっと開くとビスマルクを先頭に、リーヴェ・サーカス団の愉快な仲間たちが次々と出撃していく。

そこには電、薄雲、卯月も一緒である。

 

「さあ、航空支援をしてあげよう。要塞航空隊発進」

 

要塞航空隊は翼の第1航空隊に続いて、空の魔王の第2航空隊、そしてデスペラン第3航空隊と順次出撃していく。

敵も『飛車』『角行』『金将』が順次艦載機を発進させていくが、そこに鳳翔、伊勢の航空隊が加わると、一気に優勢に傾いていく。

 

「いいこと思いつきました」

薄雲がデスペラン要塞に背中を預けると、アイキャンフライ砲こと80センチ三連装砲を発射させる。

 

常識外の威力で直撃した歩兵が3体木っ端微塵に沈んでいく。

「リーヴェ・サーカス・ヒュンフ」

 

愛の指示で艦娘達が解散して

 

「わー!にげろー!」

 

とわざとらしく言いながら逃散ようにバラけていく

 

「何をしているのやら、各個撃破の好機」

 

『玉将』はそう言いながら密集して各個撃破を狙おうとする。

 

「残念、それは罠だね」

 

指揮座に腰掛けたまま手を上げて振り下ろす。

 

燿子と恵奈カルテットが砲塔発射画面から密集した敵艦に向けて集中砲火をする。

その後ろではハーフェンが使い方を丁寧懇親に説明している。

そんな素人の砲撃でも、デスペランの自動補正機能によりどんどん追い込んで足を止めていた。

 

「未だ、反転!」

 

逃げ散っていた艦娘達がくるっと引き返すと、次々と砲雷撃を打ち込み始めている。

どんどんジレーネたちが沈んでいく中で、『玉将』一人バリアを張って攻撃を防いでいる。

 

「まだだ。私は地球の神……」

 

そう『玉将』がうそぶいたその直後だった。

 

――『お前なんか神じゃない!頑張れ艦娘!!頑張れ深海棲艦!!』

 

そう声が聞こえていた。

 

『玉将』は背筋が凍る思いがしていた。そして、電の砲撃がバリアを素通しして艤装に直撃していたのに気づいた。

 

「えっ……」

 

バリアが展開できなくなっていた。

 

「ファイエル!!」

 

愛が手を上げ振り下ろした。

その直後クロスファイアを受けた『玉将』は脆くも海に崩れ去っていった……。

 

「えっ……」

 

前回戦ってきたときよりかなり弱くなっていた。

愛はあっさり片付いてしまったジレーネ戦に唖然としていた。

 

「人の思いが力になる、その前には神も無力なんだろうね、でも、何れはいつか第2第3のジレーネが現れるかも知れない、人類はそう心がけて生きていかないとね」

「……はい」

 

――――――――

季節は流れ7月になっていた。

 

総選挙が行われて現職議員がバタバタと敗れていく前代未聞の選挙となっていた。

選挙公示後立ち上がった市民派の議員候補が現職議員に勝利し、議席を奪い取ったのだ。

そのトップには艦娘と人間の融合の象徴だった高菜湊子が自ら立ち上がり、東京1区で大勝利を収めた。

そして、東京2区には妊産婦ながら立候補した三友優衣が大勝利を収めたのを皮切りに、

『日本国民艦娘会議』と言う政党が立ち上がり、党首に高菜湊子、幹事長に三友優衣を据え置いて、

高菜湊子は史上初の女性かつ元皇族の総理大臣である。

 

高菜湊子政権初の大仕事は、艦娘・深海棲艦基本法の制定である。湊子はずっとこの7年間温めていた、

お付きの法学者を招いて、法案をせっせと作りずっと温めていたのだ。

いつかこの法案を託せる人に渡せる日まで。

 

これが彼女の所信表明演説である

「さあ、皆さん。艦娘や深海棲艦と手を取り合って歩いていける時代がやってきました、人間にもいい人や悪い人が居るように、艦娘にも深海棲艦にもいい人と悪い人が居ます。深海棲艦の一部は動物と同じものですから、迷惑をかけたら退治しなくてはなりませんが、人間と同じ心を持った個体には人間と同じように接するような社会がやってきます。これから、私達国民の手で。 さあ、戦後は終わりました。これからは――」

 

―――明るい未来です

 

 

――――――――

世間はそんな騒動の中、リーヴェ・サーカスご一行様はあまり変わらなかった。

 

「………でー、翼さんは何でまた男子寮に侵入したんですか。しかも、健太まで誘うとか何考えてるんですか!」

「そうよ!私達の健太よ。冗談じゃないわよ!何で致したのよ!」

「駄目じゃない!翼さん!」

「ま、まあ、翼さんも反省してるようだから………」

 

激怒している司令官デスクのチェアに座っている笹野愛特任二佐に、隣に立って腰に手を当てて怒っている日下部燿子特任三尉、そして深海棲艦のアイ改めリーヴェちゃん。

そんな横で、副官デスクのチェアに座って自分の仕事をしている花梨二尉。

正座させられているのは大垣翼三佐である。

そして、二人を宥めているのは大石健太特任曹長である。

 

 

外では、海援隊副隊長の小杉三佐と同隊長郷里二佐が陸戦隊『海援隊』をしごいている。

ここは土佐鎮守府。

 

深海棲艦と和解はしたものの、害獣化している深海棲艦退治や海のギャングや海賊化した艦娘や深海棲艦の取締のために大本営は残されることになった。

参謀長は大塚三佐、副参謀長は空位のままにしてある。

笠原三尉と岩崎二尉、それに坂本陸准将補、大葉三尉はそれぞれ二階級特進が決定した。

それぞれ一尉、三佐、陸将補、一尉となった。

 

少し寂しくなってしまった司令部だが、艦隊は少々賑やかになった。

 

ビスマルクら率いる旧室戸鎮守府艦隊 そして、天城率いる旧土佐鎮守府艦隊

そして、旗艦の改ル級FSこと、ジェニファー、新参者の副旗艦のレーちゃんことレ級の率いるル級隊である。

 

ハーフェンはデスペランに戻って、日本に溶け込めない深海棲艦を引き連れて静かな太平洋のど真ん中に浮かべて静かに暮らしている。

 

そして大きな違いが一つある。愛も燿子もリーヴェも三人共お腹がぽっこり大きくなっている。

深海棲艦に雄の個体が存在してなかったので初めてわかったことだが、結局健太は人間に戻れなかった。

 

そのため、深海棲艦化したまま二人を妊娠させたら、深海棲艦の子は妊娠速度が5倍になるという特性分かって

このような有様になってしまったのである。たったの56日間の妊娠期間である。

これは深海棲艦が数を増やす生物的特性があると考えられており、実は第3艦隊のジェニファーは陸戦隊の宇津井曹長との間の子供が出来ており、こちらも5倍の速度で妊娠するため産休中である。

そのため現在はレ級が旗艦代理を務めている。

 

「まさかとは思うけど、ナカダシしてないわよね」

「あっは、あたし避妊手術済みだから大丈夫。卵管結紮術してるからさぁ、お腹ポッコリするくらいどばっと貰ったけど」

「あ、あの、ごめん……」

 

そのような特性のため燿子が確認すると、翼はケロッと答える。

それに、申し訳無さそうな顔をする健太。以前より青白い肌で瞳は青いが元気になった。

元気になったと言うより中学生離れした肉体を持ったと言うべきだろう。

あと精力も……。

 

そんなわけで、欲求不満に陥ってる健太君は風俗に行けないために、翼が侵入しては遊んでいってくれるのだ。

そして、大抵はこうなる。

 

「本当に健太もしっかりしてくださいね」

「ほんとよ。パパになるんだから」

「大丈夫?これ以上ママを増やさないでね」

 

そう、残念なお知らせである。

大石泰子は20代でお祖母ちゃんとなってしまった……一気に三人も。




今回の小説を書いて思ったのは

「ああ、私短編集向きだわ」

でした。

スタート決めて、ゴール決めて書いた小説ですが
1話1話のエピソードを書いてるほうが作風として向いてるのかなと

でもいい経験でした。

良くも悪くも完走できたから。ね。


《Tips》ジレーネは実は弱い

人間に対して無敵だったので滅びましたが、実は強いわけではないんです。
だから、裏で暗躍して、深海棲艦と艦娘を滅ぼそうとしてたんですね
だから、健太が恫喝した時マジ焦りだったでしょう『玉将』

次回から短編エピソード「ママは中学生提督」
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