中学生提督日記   作:SAMICO

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短編集「ママは中学生提督」編
警務隊長は問題児!?


東京の統合幕僚本部内の大本営幕僚総監執務室……

足立昭彦が、総監席で執務を行っていた。

 

「いかがですか?幕僚総監の椅子の座り心地は」

 

大貫暗殺後、幕僚総監代理として間を取り繕っていた足立昭彦は、

正式に第二代幕僚総監として補職され、陸将となった。

 

声を掛けたのは、同じく幕僚総監副官として三等陸佐に昇進した、七原秋奈である。

 

「うむ……大貫前総監の残してくれたノートを元にやっておるが、前総監がここまでのものを背負って孤軍奮闘していたか、と思うと、部下の我々は情けない限りだ」

 

足立は、秋奈の淹れたコーヒーを口にすると、大きな溜め息を吐いた。

 

「今度の騒動では、戦死者や暗殺被害者が多数に上りましたからね。例えば、笹野 愛なんかを提督に残しておかなくてはならない訳ですから」

 

少し皮肉っぽく言うと、トレーに載せたケーキを二つ、足立の執務机に置き、副官デスクから自分のコーヒーを片手に、椅子を引っ張って来て足立とおやつの時間を始める。

 

「うむ、四国が大変だな。戦死者多数、提督の戦死者も多い。轟沈艦も多数に上り、新規艦を集中配備しているが練度は低い。練度が高いのは、新・土佐鎮守府くらいだろう。差し当たり、横須賀第13艦隊を室戸に移す人事案を承認した」

 

足立は、大好物のモンブランケーキを一口食べながら、副官に語る。

秋奈は、コーヒーを一啜りすると、口を開く。

 

「ところで、空席の警務本部長と東北・四国警務隊長の人選ですが………」

 

そう。現在、東北・四国は警務隊長が、東京は警務本部長が空席状態なのだ。

 

「うむ。警務本部長は、七原准将をスカウトするように、陸幕と話を付けてある。東北警務隊は、幸田一尉を特例昇進で二佐にして、警務隊長にするよう統幕と話を付けた。問題は、四国警務隊長の人選だが………坂本がああなってしまったからな」

 

足立は、その任務を坂本に任せるつもりでいた。

しかし坂本は、過日の戦闘のさなか暗殺されてしまったのだ。

 

「坂本准将補はお気の毒でしたね。そっちの方は、既に必殺仕事人(村上兄妹)が片付けております」

 

ウィンクして足立を見遣る秋奈に、ぎょっとした目で見返す。

 

「しかし、『武器』を始末したところで、裏にいる連中を検挙しないことには…………まさか?」

 

足立ははっとした。最近、参議院議員の今回の非改選組や、過日の総選挙での落選議員の不審死が相次ぎ、世間を賑わせていたのだ。

 

「はい。証拠はありませんでしたので、新総理のお邪魔になるような《艦娘殲滅派》の危険な方々には、ご退場いただきました」

 

美味しそうにケーキ――秋奈のはいちごのショートケーキだ――を頬張る娘の笑顔に、冷や汗を流す足立であった。

 

「話を戻そうか。四国警務隊長の人選だが、秋奈は誰かいい案はないか?」

「そうですね、秋也兄さんは如何でしょうか?」

「秋也か……」

 

足立秋也は、現在大本営北海道地区警務隊副隊長として、二等陸佐の階級を持っている。年齢は39で、高菜二佐の同期である。

警務隊員ながら気さくでフランク、やる気をあまり感じさせない態度、と警務隊員らしからぬ問題児である。

口癖は「ばっか」で、提督受けは良いが上官である警務隊長の受けは著しく悪く、何度も転属願いを出していた。

 

ただ転属希望理由が、『頭の固いオッサンの下は嫌だ』と言う、あまりにもろくでもない理由の為、足立が却下し続けていたのだ。

 

「これで12回目の転属願いです。転属希望理由もとうとういい加減になって、「やるかじじい」です」

 

「…………後で説教しておこう。だが、やはり四国警務隊には外の血が必要のようだ。そのように手配してくれ」

「かしこまりました。足立秋也二佐を昇進させて、四国警務隊に異動するよう、人事異動を発令しましょう」

「……あのバカは、喜び勇んで四国に乗り込むだろうな。だから四十前で独身なのだ」

「うふふ、四国も楽しくなりそうですね?」

 

息子が未だ独身なのを愚痴りつつ、モンブランを食べる足立を見ながら、秋奈は楽しそうに笑っていた。

 

――――――――

それから数日後だった。警務隊員を引き連れて、足立秋也《一佐》が乗り込んで来たのは。

 

「突然、何の用件ですか?」

 

副官の郷里花梨二尉が、土佐鎮守府陸戦隊「海援隊」と共に門を塞いで、警務隊員達を睨み付けている。

 

「査察だよ。定期査察ってやつだ」

「査察は事前に連絡を頂かなくては」

「ばっか。事前に査察をします、っつったら査察になんねえだろ?」

 

秋也の言うことは尤もであるが、旧室戸鎮守府の隊員は、査察にいい思い出がない為、睨み合いは続いている。

 

「そうやって、司令官のプライベートまで暴くつもりでしょう!?」

 

花梨が秋也を睨み付けて怒鳴ると、秋也はキョトンとなって後ろを見る。

 

「何?お前等、そんな事やったの?」

 

《増員前》の警務隊員達が目を逸らす。その反応に、秋也は大きな溜め息を吐く。

 

「ああ、それで。こういう対応なのか。旧高知駐屯地が燃えて、報告書も灰だったからなぁ」

「お分かりいただけたなら、お引取りください」

「ばっか、こっちも仕事で来てんだよ。ハイそうですか、って帰れるかい?」

 

秋也の態度は、終始軽い調子である。父を思わせるその態度に、花梨は苛ついていた。

 

「何の騒ぎか!?」

 

そんな中、海援隊の隊長郷里 剛二佐がやって来た。

 

「おお、足立先輩ではないですか」

「おっす、おっさん」

 

秋也の姿を見つけると、海援隊員を掻き分けて笑顔になった剛に、秋也が軽い感じで手を挙げる。

そんな夫の様子を見て、花梨は首を傾げながら剛に問い掛けた。

 

「あなた、お知り合いだったのですか?」

「うむ、高菜先輩と同期でな。足立兄妹の兄の方だ」

「足立ってあの総監閣下の?」

「うむ、息子さんだ。足立秋奈先輩と足立秋也先輩には、色々良くして貰ったもんだ。ところでこの騒ぎは?」

「それが、事前予告なしに定期査察だと……」

 

花梨の物言いに、秋也が口を挟む。

 

「ばっか。定期査察に事前予告なんてしてるから、ブラック鎮守府が残ってたんだろうがよ。いいから査察!今日は査察終わったら風俗行くんだよ、はよ!何なら、オッサンも行く?」

「ふ、風俗……小官は行ったことないのですが……」

「妻の目の前で、風俗なんかに誘わないでもらえますか?」

 

今度は、ジト目で秋也を睨む花梨。

 

「ま、まあ、司令官に確認を取って来よう」

明らかに、妻が怒っているのにちょっと困った剛は、逃げるように司令官執務室に走って行った。

 

出産を控えて、身重の妊婦トリオは学校を休み、司令官私室のソファでテレビを見ながら、お茶菓子を食べていた。

普通の妊婦より一回り大きいお腹で、とうとう執務も覚束なくなったので、《産休状態》なのである。

 

コンコン

 

「どうぞー?」

 

ノックに愛が答えると、剛が「失礼します」と入室して来る。

 

「どうかされましたか?」

「司令官、実は警務隊が査察に来たのですが………」

「ああ、通してください。只今、足立総監からお電話をいただきました」

「了解しました」

 

――――――――

漸く、渋々通された警務隊員達は、秋也の的確な指示通りに査察を開始する。

 

「司令官の、笹野 愛特任二佐です。部下達が失礼しました」

「新しく四国の警務隊長になった足立秋也一佐だ。噂には聞いていたが、本当にJC妊婦だったんだな。やるな」

 

真面目に敬礼する愛に、ケラケラと笑いながら答礼する秋也。

愛は、何かノリが翼に似ているな、と感じていた。

 

「まあ身重だから、どっか座んなさい」

「はい、それでは失礼します」

 

愛が執務机に向かうと、健太が椅子を引き、愛が座ると、健太はその脇に控える。

 

「で、君が噂の深海棲艦ボーイか?」

「はい、大石健太特任曹長です」

 

健太がびしっと敬礼すると、秋也がケラケラ笑う。

 

「やめい。形式張ったのは、あのじじいだけで十分だよ」

「「じじい?」ですか?」

 

愛と健太が首を傾げると、花梨が横から口を挟む。

「足立総監の事ではないでしょうか?」

「それな」

 

40前にして、今どきの言葉を使う。茶髪で童顔の為、もっと若く見える。

 

「隊長!始末書の束が出て来ましたが、いかがしましょう!?」

「そう言えば、四国警務隊は機能不全に陥ってたな。確認するか………」

 

秋也はポケットから眼鏡を取り出すと、ソファに腰掛けて足を組んで、始末書を眺め出す。

愛は、どんな反応を示すか花梨を見ながらワクワクしている。一方花梨は、さっと目を逸らして自分の執務に戻ってしまう。

 

「何だこれ!?全部男子寮侵入じゃねえか!大垣 翼に郷里花梨……て言うか、既婚者が何で官舎にいるんだよ!?」

 

そう。翼と花梨は仲が良くなって、結託しては二人で男子寮侵入を行っている。

相変わらず、燿子とリーヴェの二人部屋を橋頭堡にして脱出し、翼は若手の下士官と遊び、花梨は婚約者の元へと夜這いを掛けるのだ。

基地航空隊が土佐鎮守府に設備移転するまでは暇なので、元に戻ってしまったのである。

その疑問に、花梨が顔を赤らめて説明する。

 

「その……陸戦隊長は寮に常駐……となっておりまして………」

「んで、夜な夜な通ってビッグマグナムにやられてる、と」

「っっっ!!」

 

花梨は、耳まで真っ赤になる。

 

「ビッグマグナムって何ですか?」

 

愛が首を傾げると、秋也はケラケラ笑う。

 

「郷里とは、同じ寮でフロも一緒だろ?当時からデカかったのよ、ち○こ。防大って、男子は野郎ばっかの寮だろ?当然だけど、男子校のノリになってアレのデカさ測ろう、ってことになんのよ。郷里のに比べたら、俺のなんかポークビッツよ」

「そ、そうなんですか……」

 

愛も健太も、ちょっと顔を赤らめる。

バタンッと、扉が開かれる。

 

「なー、今丁度聞いてたんだけど。郷里二佐のアレって、そんなに大きいの?健太のも、めっちゃ大きいよ?」

 

噂の問題児、大垣 翼である。

 

「コレが、問題児の大垣 翼三佐です……」

 

顔を赤らめたまま、額を押さえて紹介する愛。

 

「ほー、こいつが土佐鎮の始末書クイーンか?」

「てへ、大垣 翼三佐です。で、あんた誰?」

「あー、四国警務隊の新しい隊長の足立秋也」

 

警務隊という言葉に、さっと顔色を変える翼。

 

「また、監視にでも来た訳?」

「定期査察なんだけど。抑々何があったか、聞かせて欲しいんだがな。どうして、ここの連中が過剰反応するのか」

「実はね……」

 

翼が、事の詳細を丁寧に話すと、秋也は「ふむ……」と言って考え込んだ。

 

「なるほどな。司令官、生き残ってるその該当の警務隊員、お前さんの好きにしていいわ。ここは自由裁量の治外法権だしな。銃殺刑もよし、海に沈めるもよし、艦娘の艦砲で吹き飛ばすもよし」

「いや、流石にそこまでは……」

 

過激過ぎる秋也の言葉に、苦笑いを浮かべる愛。

 

「恐らくは、会見を警務隊にリークしたのは、大貫のオッサンだな。深海提督と繋がってたらしいからな。炙り出しを狙ったんだろうよ、笹野二佐を利用して。ほんで実際、予言どおりジレーネとやらも出てきたし、深海棲艦も海賊化や害獣化した連中以外は、人間社会に入り込んで来ているしな。或いは、《本来の》大貫のオッサンは疾うの昔に死んでいて、大垣守と言う深海棲艦に《取って代わられていた》のかもしれないな?」

 

「………」

 

バカそうに見えて、鋭い考察をする秋也に、愛と翼は感嘆の声を漏らしていた。

 

「結局民衆が立ち上がった。オッサンにとってはギャンブルだっただろうがね。民衆が立ち上がらなかったら、この計画はおじゃんな訳だし。その為に予め湊子さま…もとい。高菜総理が皇籍離脱したと考えると、迂遠で壮大なプロジェクトだっただろうね。さて、この次は何か?日本にも、漸く国防軍議論が持ち上がってくるんだろうな。俺達は、それを勝ち取る為にあまりにも血を流し過ぎてしまった」

 

その言葉に、全員が頷いた。

 

「まあ結局、これで艦娘と深海棲艦を滅ぼすことは、事実上不可能になってしまった訳だ。今度国会に出される艦娘・深海棲艦基本法で、その流れは一気に加速するだろうね。何せ、人間の妊婦が一人出産するのに対し、深海棲艦は五人も産める訳だしね。人的資源という意味合いでは、人口減少に歯止めが掛かって、少子高齢化時代も終わりを迎えるかもしれないな。艦娘もそうだが、力持ちの人材はどの業界でも、喉から手が出るほど欲しい。ゆくゆくは、大本営機能も民営化して海の安全や保安は、PMSCs(民間軍事警備会社)に移管される時代も来るかもしれないな?」

 

秋也はそう言いながら、出されたコーヒーを口にする。

 

「んで、五倍の速度で育って、人間の母体の影響は大丈夫なん?」

 

お腹を擦っている愛の姿をちらっと見ると、問い掛ける秋也。

 

「はい。毎日産科医が往診に来てくださってるんですけど、お腹が張って痛いときはありますけど………今のところ大丈夫です」

「そうかそうか、深海棲艦と人間のハーフなんて初だもんな。医学的に研究したいんだろうね?」

「はい。先生は、これを学会に出すんだ、って張り切ってますけど………」

「そんなに速い速度で育って、体力とかはどうなん?」

「私も燿子もリーヴェも、食べる量が戦艦並みになっちゃって……産後太らないかなあって心配で……」

 

あははっと笑いながらお腹を擦る愛に、秋也は次々出される報告書に目を通しながら、

 

「ダイエットの基本は、筋肉を付けて体脂肪を減らす。女の子は減らし過ぎたら拙いから、ちょいふっくら目が健康範囲。エアロビクスは割とお勧めよ。あと、あのなんたらブートキャンプもな」

 

と、アドバイスをする。

 

「産後は胃が拡張してるから、食事制限はしたほうがいいなあ。食べ過ぎはカロリーオーバーの原因だからね。後は体を動かす。これは先生にも言われてるかな?」

「はいっ!」

「しかし、何だな……」

 

立ち上がると、秋也は司令官チェアに座っている、愛のお腹を撫でてあげる。

その瞬間、秋也は急激な疲労感を感じていた。

自身の霊子を奪い取られた、と言うことに気づいていた。

 

「っ……この子、霊子欲しい欲しいってなってっぞ。俺の霊子奪い取られた…」

「霊子……ですか?」

「前に、大貫のオッサンから聞いたことがあってね。霊子とは、《人の霊的エネルギー》のことだって。想いやその類い」

「そうなんですね……それじゃあ……」

「愛情を注いでやれば注いであげるほど、いい子に育つってことじゃないかな?」

 

そう言うと、秋也は再びソファに戻って、財務資料に目を通す。

「財務状況は健全、不正な使途不明金もなし。で、男子寮侵入については、提案があるんだが?」

 

その言葉に、愛はお腹を擦りながら首を傾げる。

 

「提案ですか?」

「女子寮の立ち入りは今までどおり禁止。男子寮への夜間立ち入りは許可制。その代り、深夜外出は原則禁止。いくら何でも許可制とは言え、門限なしは駄目だろ?」

 

秋也は、更に出て来た外泊許可申請書の束をぱしんと叩く。

 

「そうなんですけど……」

「ばっか。結局ホテル代が嵩んで、男子寮侵入になってんだろがよ?この外泊理由も「エッチする為(はぁと)」とか大概だろ?もっと取り繕えよ」

 

その言葉に、翼がテヘッと笑う。

 

「テヘッじゃねえよ、ばっか。仮にも佐官なら、自由裁量でゆるゆるな分、ちゃんと最低限のルールくらい守れ」

 

そんな翼の態度に、父親似らしくビシッと諌める秋也。

 

「ばっか、考えても見ろよ司令官。このルールなら、理論上この始末書の束はほとんど無くなる訳だ。基地内秩序云々を言うと何だが、野郎も溜まってるものがあるだろうし、お前さんも欲求不満を解消できる、んで郷里二尉も夫婦の営みが出来る。一石三鳥だと思うんだがね?」

「っ………!!!!」

「あはは。では、一佐のご提案を採用させていただきます」

 

そして、悪戯っぽい笑みで花梨をチラチラ見ながら言葉を続けると、花梨はまた顔が真っ赤になり、愛は笑いながら提案を受け入れた。

 

「やったー!でー、一佐はそっちの方いける口?」

「まあねー」

 

翼は秋也に撓垂れ掛かると、それを気にせず書類に目を通す。

 

――――――――

「はい、これで完了。お前等先に帰ってろ」

 

書類の箱を詰めたものを、警務隊員に引き渡すと、先に帰るよう指示する。

隊員は敬礼すると、引き上げて行った。

 

「さて………笹野 愛ちゃん。それに、日下部燿子ちゃん、大石健太くん。先日の室戸鎮守府事件で、酷い思いをしたと聞いてる。申し訳なかった。自衛隊警務隊を代表して、お詫びさせてもらいたい」

 

びしっと、両手を足に付けて深々と頭を下げる。

燿子も健太も、それに愛も、そのチャラく見える中の誠実さを感じ取っていた。

 

「面を上げてください。私はあれが、ジレーネや反艦娘派の策謀だ、と思うことにしています」

「そうよ。足立隊長のせいじゃ、ないじゃない」

「そうですよ」

 

愛と燿子と健太が口々に言うと、頭を上げて、

 

「一つだけ覚えていて欲しいのは、室戸鎮守府事件の首謀者として片桐の名前が公表されてしまったことだ。彼にも妻子がいたけど、四国を石もて追われ、どこに行くんだろうね」

『…………』

 

妻や子には罪はない!とは、ここに居る全員が言うことは出来なかった。

 

「正直な気持ちなんだろうね。被害者感情としては、許せないもんなあ。それは当たり前のことだと思うな。さて………」

 

立ち上がると、

 

「さて。門限設定は明日以降と言うことにして、大垣三佐を借りて行くけどいいかな?」

「えっ?」

 

キョトンとしている翼に、悪戯をした子供みたいな表情を浮かべた秋也は、

 

「何、モーションを掛けて来ておいて冗談じゃ済まさない、ってことさ。デート代は俺が奢るから、大人しく付き合いな」

「おー、夜は寝かさないパターン?」

「だといいけどねえ………ああ、愛ちゃん。俺達が明日戻って来なかったら有給、ってことで処理しといてね?」

「? 分かりました」

「何々?明日もどっか連れて行ってくれる系?」

 

愛が首を傾げながら了承すると、翼はワクワク顔で秋也の腕にギュッと抱き付く。

こうして二人は、夕暮れの街へと消えて行った。

 

――――――――

「………で、どうでした?」

 

三日後、帰って来た翼を見ながら、司令官の代筆で書いた有給申請書に判子を押しながら訊く愛。

 

「いやあ、朝も寝かしてくれなかったよ。何と言うか、ポークビッツって言ってたけど十分大きい方だよ。健太とタメ張るくらい……その後デートして、楽しく過ごして夜戦して、って感じかな?」

 

その言葉に、皆の視線が花梨に集中する。

 

「そんなに大きいんですか?」

 

割と興味のあるお年頃の愛が代表で問うと、花梨は顔を真っ赤にして、

 

「他の人と……比べたことないから……何とも言えません……」

 

と、蚊の鳴くような声で答える。

そんな中バタンと扉が開かれ、足立秋也がやって来た。

 

「おっす、茶を飲みに来たよ。赤ちゃんの様子はどう?」

 

こうして、四国警務隊長足立秋也は土佐鎮守府に入り浸るようになる。

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