中学生提督日記   作:SAMICO

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出産

幕僚達や坂本将補等の墓参りから、数日遡る。

 

大石健太の母親・泰子が、新米医師倉田めぐみを伴い、四国の土佐にやって来た。

最初は、三人も一気に孕ませた息子へ、お説教をしようと意気込んでいたが、

 

「羽佐間准将補と関係を持った、ってどう言うこと?」

 

深海棲艦化したことにより、変化したアイスブルーの瞳で一睨みされた泰子は、ぐうの音も出なかった。

 

「そ、それは……その……流されて………」

「呆れた。全く、父さんが心の広い人でよかったね?」

「本当にそうね……」

 

全く母親の威厳が発揮できない泰子は、肩を落としている。

そんな泰子に、援護射撃をしてくれたのが、燿子だった。

 

「あのねえ、健太。12歳でパパになって、20代のお母さんを祖母にさせるのも、ソートー問題がある行為だと思うんだけど?」

「うぐっ」

 

今度は、健太がぐうの音も出なくなる。

そんなやり取りを、愛はニコニコと見守り、リーヴェはどちらの味方をしようか、ワタワタしている。

因みに、当のリーヴェは、死んだ時に年齢が停止したとしたら、推定年齢一桁である。

何れにせよ、深海棲艦になった時点で、年齢なぞあってないようなものである。

 

「全く、健太と言い、慎くんと言い、師匠の()()()()()()()を真似しなくてもいいのにねぇ?」

 

泰子が溜め息を吐くと、健太も苦笑いになる。

 

「健太は、深い傷を負い過ぎたんです。だからその傷を、三人で埋めようって決めたんです。だから……」

 

愛はそう泰子に言うと、ふっと思い出したように、一言加える。

 

「健太のハーレムじゃなくて、()()の健太です」

 

その言葉に、泰子はキョトンとしてから笑い出す。

傍に控えていためぐみも、笑いを堪えている。

 

「めぐみさんもお久しぶりです」

「愛ちゃんも元気そうですね。新米ですけど、産科医としてお手伝いに来ました」

「診察は、皆お年の医学博士とか、ナントカ大教授とかで、皆男の人だったから、女医さんが一人でもいてくれると、ホッとします」

 

そう。診察は、産婦人科医師界の大御所が総結集して行われているのだ。

主治医の先生は学会に出すんだ、と張り切っていたが、その前に先に、学会の大御所達が、四国は土佐に総結集して主治医の先生を指導しながら、経過を見守っている。

 

そして主治医同伴の下、代わる代わる大御所の医師達が診察するものだから、思春期の女子としては、複雑な思いなのであった。

 

「あー、確かに。でも産科医って見慣れてるから、何とも思ってないと思いますよ?」

 

めぐみが、ふふっと笑いながら愛のお腹を優しく撫でると、急激な脱力感に襲われた。

 

「っ!!」

「大丈夫ですか?」

 

愛が心配して声を掛けると、めぐみは苦笑いを浮かべる。

 

「これが、『霊子を奪われる』ということなんですね。科学者である医師としては、オカルトチックなサムシングにはちょっと抵抗がありましたが、実体験すれば分かります。この赤ちゃんは、生命力エネルギーを欲しています」

「足立一佐も同じような事を言っていました。この子は霊子欲しい欲しいって言ってる、って。燿子やリーヴェはそんな事ないのに……」

 

自身のお腹をナデナデしながら、「困った子だね」と語り掛ける愛を見ながら、泰子はとんでもない孫ができるんだなあ、と実感を新たにしていた。

 

――――――――

入院前のやることである幕僚達や坂本将補等の墓参りを済ませると、三人は入院態勢に入る。

土佐の総合病院の特別室に、それぞれ入院することになる。

めぐみも医師団の一人として、研修するという立場で、診察を任されることも出て来た。

如何せん、皆未経験のことなので、手探りでの診察である。

 

連日会議が行われ、診察を元にした出産計画の策定が、夜遅くまで連日行われている。

主治医である医師は、大御所の医師達を前に恐縮していたが、

大御所中の大御所である医学博士の老医師の、

 

「皆未経験の立場だ、そういう意味では平等だ。恐縮しなくてよろしい」

 

との言葉で、活発な意見を出し合える場になっていた。

 

まず最初に、リーヴェが産気付いた。

リーヴェの身体の小ささを考えて、帝王切開術が選択された。

急遽、外科の名医が招聘されて、丁寧に帝王切開手術が行われた。

術中、急激なバイタル低下が見られたが、泰子の持って来た霊子のコアで持ち直したリーヴェは、無事帝王切開での出産が果たせた。

 

やはり青白い肌、そして青い瞳の赤ちゃんは、通常の赤ちゃんより大きかった。

何より、首が座っている事に医師達は驚愕していた。

 

「やっぱり成長が早い分、これは推定的に一歳くらいだ、と判断すべきだな?」

 

老医師の発言に、医師団の医師達は頷いた。

派遣された自衛隊の医官の提案により、高速修復材を用いた回復が行われた。医官の言葉どおり、縫合を用いなくても高速修復材を掛けただけで、傷口はみるみるうちに塞がって行き、傷口が綺麗に消えていた。

これは、深海棲艦だから出来ることで、後に続く燿子達には通用しない。それは、医師達の共通認識になっていた。

 

すぐに産声を上げると、意識を取り戻した母リーヴェに抱き抱えさせた。

出産直前に駆け付けた深海提督ハーフェンが、「この子は駆逐艦級の子ですね」と、医師団に説明した。

霊子を与え続ければ、すぐに五~六歳になるが、リーヴェの希望により、普通に成育させることになった。

早速、リーヴェのお乳を飲んでいる女の子の赤ちゃん。リ―ヴァネス…愛称リヴァは、母親に縋り付いて一生懸命母乳を飲んでいる。

 

「美味しそうに飲んでる………」

 

慈しむような笑みをリヴァに向けながら、リーヴェは授乳をしている。

そんな様子を二人は、

 

「次はどっちかなあ?」

「どうだろうねえ?……っ、あいたたたた……」

 

燿子の陣痛が始まった。慌てて、愛がナースコールを押して呼び寄せると、

燿子はすぐに、分娩室に運び込まれた。

 

身長が高くて体格のいい安産体型の燿子は、自然分娩で行う選択をした。

リーヴェの前例から、霊子のコアを与えて生命力が高い状態での出産を行う。

「――――――――!!!」

 

こちらも、通常の赤ちゃんより大きい赤ちゃんである。

産道を通る為、骨盤が開くのに激痛が走る。

 

「大丈夫、燿子ちゃん、頑張って」

「燿子!頑張って!」

 

めぐみがギュッと燿子の手を握り、反対側では健太が燿子の手を握り元気付ける。

健太がそばに居てくれるだけで心強いのか、歯を食い縛って出産の痛みに耐える。

数時間の苦闘の末、漸く赤ちゃんが産み落とされた。

 

産声を上げる赤ちゃんの泣き声を聞きながら、燿子は意識を手放した。

 

「死ぬかと思ったわ」

 

意識を取り戻した、燿子の第一声がこれである。同じく授乳をしている。

人間と深海棲艦のハーフ赤ちゃんは、やはり通常の成育で育てる、と燿子は決めていた。

名前は(ひなた)。やはり女の子で、人間の肌に青い目に白い髪色の女の子。

健太は、名前は母親に任せることにしていたのだ。

 

そんな様子を見ながら、愛は自分の赤ちゃんはどんな感じなんだろう?

そう考えつつ、二人の先輩ママの様子を見ながら、自分のベッドに腰掛けている。

特別室には三つベッドを並べて、皆一緒の病室である。

 

代わる代わる、幕僚達や艦娘達がお見舞いに来てくれる。

スマホからは、宮戸島の仲間達がビデオメッセージを送ってくれていた。

 

―――――

「おっす、愛。頑張ってるか?」

 

番長の圭一が、いつもの学ランのボタンなしスタイルで、画面にフレームインする。

 

「愛ちゃん、安産のお守りを泰子さんに預けたからね」

 

次に、寛太がひょっこり顔を出す。

 

「よっす、愛ちゃん。ギャルズ達がお守り、ってミサンガを皆で付けて、こっちで応援してるよ」

 

慎がそう言うと、三人でお揃いのミサンガをカメラに見せる。

 

「愛ちゃん、元気な赤ちゃんを生んでねぇ」

 

優花がミサンガを見せながら、横から顔を覗かせる。

 

映像が横にずれると、史絵とギャルズ達が千羽鶴を見せる。

 

「今日宅配便で送ったから、明日には届くと思うよ!」

 

望がサムズアップして見せると、史絵が控え目に 、

 

「皆で作りました。……私達も応援してます」

「それな」

「だね」

 

史絵の言葉に、奈緒子と櫻子も同調する。

 

「おーい、誰かカメラ代わってくれ」

 

直哉の言葉から少し後に、更に映像が横にずれる。

 

お揃いのミサンガを付けた直哉に電、それに卯月に薄雲が映し出される。

 

「愛ちゃん、そっちには宮戸島を代表して泰子さんとめぐみ先生を向かわせたから、私達はこっちで愛ちゃんの安産を祈念しているよ」

「絶対に、いい赤ちゃんを産むのです」

「うーちゃんは、毎日神社に行って安産祈願してるぴょん」

「愛さんならきっと大丈夫。頑張ってください」

 

その言葉の後に、皆集まってミサンガを見せる。

 

『頑張れ愛ちゃん!』

 

――――――――

 

「いい友達に巡り逢えたね」

「そうだね……」

 

そう言った直後、ガラガラッと扉が開かれる。

恵奈カルテットの面々である。

「愛ちゃん、お見舞いに来たよ」

「お腹もものすごく大きくなっちゃって」

「私より大きい……あ、私は太ってるだけだから」

「クラスの皆で、千羽鶴を折ったんですよ」

 

そう真由が言うと、病室に千羽鶴を吊るす杏子。

 

「私は早々と出産しちゃったから、間に合わなかったんだよねえ」

 

そう燿子が言うと、恵奈が、

 

「出産の日は授業中断して、一組は皆で安産を祈ってたんだよ」

 

そう言ってくれる。

 

「そうなんだ。それじゃあ、私もいつ出産になるか判らないから……っ」

 

愛が、激痛に顔を歪めた。

 

すぐに、分娩室に運ばれて行った。

 

愛は難産だった。

赤ちゃんが大き過ぎて、産道を通れなさそうだったのだ。かと言って、帝王切開も腹腔破裂の危険があって選べない。

生命力は、霊子のコアで充分ある筈なのに、バイタルがどんどん低下していく。

 

名医達は頭を悩ませ、緊急会議が行われている。

取り敢えず、強心剤を投与して生命活動だけは維持して、分娩室横の部屋で医師達が顔を突き合わせている。

腹腔破裂、つまりは母体を犠牲にする覚悟で、出産を強行すべきという意見や、出産を中止して赤ちゃんを犠牲にする……つまりは母体を優先にする意見も出された。

 

侃々諤々とした会議は、会議が踊れど結論は見い出せなかった。

 

大御所中の大御所である老医師は、静かに口を開いた。

 

「倉田先生はどう思うかね?」

 

めぐみは、まさかこの医師団で、意見を求められるとは思ってもみなかった。

俯いて、暫し考えてから顔を上げた。

 

「分娩を続行しましょう。バイタルの低下は、強心剤と栄養剤輸液でガンガン栄養を取らせて、対処しましょう。出血しているようなら輸血を、心臓が止まったらカウンターショック、人工呼吸を行いましょう。とにかく母体の生命を優先にしつつ、出産を継続させます」

 

「帝王切開は……?」

 

医師の一人が口を開くも、めぐみは首を振る。

 

「もう遅いです。さっきも先生が仰った通り、腹腔破裂の危険があります。母体の生命があるうちに、引き摺り出しましょう」

 

めぐみは、一番乱暴で過激な方法を提案した。

 

産道を可能なだけ拡張させて、まずは頭を引っ張った。そこから、愛が激痛でのたうち回るのを、複数の医師で体を押さえ付ける。

 

「モルヒネを投与しましょう」

 

鎮痛にモルヒネが投与される。それでも激痛は、愛を襲い続ける。

 

「―――――――――!!!!!」

 

バッツンと意識がなくなり心停止した瞬間、赤ちゃんが漸く愛の体内から出たのだ。

 

「カウンターショック!」

 

電極板を胸に当てて、カウンターショックを行う。

愛の身体が跳ね上がると、心臓の鼓動が再開して、呼吸も弱々しくも元に戻る。

赤ちゃんは、本当に()()()()としては大き過ぎて、

「ママ……」と、意識を失っている愛に擦り寄って行く。

 

「喋った………」

 

修羅場とも言える出産を終え、ぺたりと座り込んだめぐみが、ポツリと呟いた。

 

めぐみが分娩室を出ると、健太が高熱を出して倒れていた。

深海提督曰く霊子の枯渇で、ケッコンカッコカリリングを通じて愛に霊子を奪い取られたんだろう、と。

 

「しっかり栄養を摂れば、一週間ほどで改善しますよ?」

 

との深海提督の言葉に、特別室のベッドがもう一つ増えた。

 

分娩室から出て来るぐったりしている愛と、その横で愛に擦り寄って行く赤ちゃんを見て、深海提督は目を丸くしていた。

 

「これは……棲姫か水鬼クラスの霊子を持っていますね……」

 

そう。複数人が、お腹を撫でたのが原因だった。

大量の霊子を与え続けた結果、ここまで育ったのだ。

勿論女の子である……

 

病室まで運ばれた頃、愛は漸く意識を取り戻した。

 

「う……ん………川の向こうで、岩崎三佐が手を振ってました……」

 

完全な臨死体験である。

 

この愛達の体験が後々、深海棲艦の産婦人科分野の基礎となって行った事で、

四国に結集した産婦人科医の著明医達が編纂した、深海棲艦出産マニュアルとなって世に送り出され、

深海棲艦と人間のハーフが増えていくことになるのだが、今は誰も知らない。

 

――――――――

漸く二人の体調が戻ったところで、名前について話しあいが持たれた。

 

「名前、どうしよっか?健太」

「うーん。愛が決めてもいいと思うんだけど、一つ考えてた名前があるんだ」

 

その頃には、特別室のベッドは二つになって、水鬼クラスの赤ちゃん――と言うより幼児――は、もう既にハイハイを卒業して、とてとて歩いている。

青い瞳に白い髪、そして、白人程度の肌の白さ。額にちっちゃな角。

 

「どんな名前?」

真愛(まな)って名前。ディーゼンリーヴェ、真実の愛」

 

そう真面目に答える健太に、ふっと慈愛に満ちた笑みで、とてとて歩行の練習をしているモンスターベイビーを見遣る。

言葉も、恵奈カルテットが喋ってる言葉を真似したりしている。

 

「真愛、おいで」

「はぁい まぁま」

 

とてとてベッドの横に歩いて来る真愛を、愛が抱き上げる。

 

「ねえ、真愛。こっちは?」

 

健太の方を向かせると、ぱあっと笑顔で、

 

「ぱぁぱ」

 

と答える。そして健太の母、泰子の方を向かせて、

 

「じゃあ、こっちは?」

 

「ばあば」

 

と答える。答えられた真愛の祖母泰子は、早くも「ばぁば」呼ばわりされたことに、苦笑いを浮かべている。

めぐみの判断で、離乳食をいきなり食べさせても大丈夫だろう、という提案でいきなり離乳食スタートである。

離乳食をスプーンで掬って食べさせると、美味しそうに食べる。

 

「おいち」

 

そんな、辿々しいワンフレーズな言葉も、この子があらゆる意味で規格外だ、と言うことを示している。

 

――――――――

八月中頃、漸く退院が許されて、健太を愛でる会の三人は、土佐鎮守府の司令官官舎に戻って来れた。

それぞれの赤ちゃんを抱き抱えて、女子会が始まる。

 

「まあ、一番のお姉ちゃんはリヴァで、その次が陽、そして妹が、おっきい真愛ちゃんね?」

 

燿子が生まれた順番での姉妹を提案すると、二人はウンウンと頷いた。

 

「そうだね。しかし、12でママかぁ………お母さんを追い抜いちゃったね?」

「泰子ママは15歳で産んだって……」

「それも大概よね」

 

そう言うと、三人はうふふっと笑っている。

 

出産を見届けた泰子は、めぐみと共に帰途に就いていた。

健太は強いパパになる為に、郷里二佐の下で体を鍛えている。

何れ、陸戦隊員に加入するだろう、と言っている。

 

勇次郎と悠里が、結婚しました。と、はがきを送って来たのは、その頃だった。

それぞれ最愛の人の亡骸を抱えながら、二人三脚で前へと歩き出す、と綴られていた。

 

そろそろお盆の季節。死者達が帰ってくる時期だ。

きっと優しいあの二人のことだから、新しいカップルをあっちで出来た新しいカップルで、見に帰って来るだろう。

 

そんなことを考えながら、育休を過ごしている。

 

各方面から、出産祝いが沢山届いた。

足立秋也は、子供が三人並んで眠れる、特注のベビーベッドを送り付けて来た。

 

「ばっか。現金だと、査察する側とされる側で贈収賄になんだろ?」

 

と、言うのは本人の弁である。

 

いきなり扉が開かれると、入って来たのは艦娘達である。

旧土佐鎮守府の艦娘達は、手薄になった四国の教導の為に、各地に転属になっていた。

やはり土佐の地は、悲しい思い出が詰まった場所なのだろう。

 

「提督、赤ちゃんを見に来たわ」

「MonsterBabyは元気?」

「哨戒も終わりました。今日も異常なしです」

「しかし、真愛は本当に規格外ね………水鬼クラスっていうだけあるわ」

「北上さん、一緒に抱っこさせてもらいましょ」

「そうだね、大井っち」

 

皆が順番に、赤ちゃんを抱っこしている。

真愛は、艦娘の皆の名前を覚えたようで、順番に抱き抱えられると、

 

「びすこねーたん」

「あいおわねーたん」

「ほーしょーねーたん」

「いせねーたん」

「おおいっち」

「きたかみたん」

 

と、舌っ足らずな声で呼んで来るのだ。

それが堪らなく可愛くて、北上一筋の大井もキュンキュン来るらしい。

愛は、真愛がいきなり卒乳してしまった為、胸が張った時には、リヴァや陽にお乳をあげたりしている。

真愛についても、いきなりブーストスタートではあるが、通常の速度で育てるつもりで居る。

 

「よっす!」

 

翼も、ちょくちょく見に来る。

漸く航空隊基地も完成して、出撃三昧の日々である。

 

「つばたたん」

 

真愛も、翼には懐いて来る。

父と母達以外で、一番懐いているのは郷里二佐、と言う不思議である。

 

「ごりたん」

 

と言う、どストレートな名前で呼ばれることになるのだが……

 

――――――――

「そうですか。無事出産されましたか」

 

三人と子供を伴って、坂本家に挨拶に出向いていた。

仏間には、坂本将補と葵の遺影が飾られており、坂本将補の姉でもあり葵の母である、大葉 忍にも出会えた。

若くしてこの世を去った娘のことを、どうか忘れないでやって欲しい、それだけ言うと、

 

「龍子さん、私はご遠慮して席を外すわ」

 

そう言って、座を外す。

 

「あ、お構いなく……」

 

そう愛が言い終わる前に、忍は隣室に下がってしまった。

 

「義姉さんも、まだ気持ちの整理が着いてないんです」

 

そう龍子が言うと、困ったような笑みを浮かべる愛。

 

「失われた生命があって、そして生まれた生命があって、世の中はそう回って行く、と思います」

 

その龍子の言葉を噛み締めながら、三人は縁側から見える空を見上げた。

 

―――そのとおり、おまん等は前に進むぜよ。

―――応援してます。

 

愛は、そんな声が聞こえた気がした。

 

今はお盆、死者が家に帰ってくる時期だ。

そして生者は前に進まなくてはならない、やがて命数を使い果たして死者に合流する日まで。

三人のママ達は改めて、この子達を守り育んで行こう、と強く死んで行った者達に誓った。

 

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