中学生提督日記   作:SAMICO

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手を上げて、横断歩道を渡りましょう
―――松崎 真―――



今回ショートストーリー(4000~5000文字)

■注意■
変態あり
カオス
轟沈(?)あり。


真愛ちゃんの大冒険

それは、九月のとある昼下がりの事だった。

 

『真愛がいなくなった!?』

 

学校帰りの愛と燿子と健太は、半泣きのリーヴェの言葉に絶句した。

 

「ごめんなさい……わたしがトイレに行った隙に……」

「秋也一佐と翼さんは!?」

「翼さんは、海賊団に加わってて、秋也さんは……」

 

愛の詰問に、丁度戻って来た秋也は、

 

「すまん、急な連絡が来て席を外してた」

 

と、申し訳なさそうに言う。

 

「正門には、歩哨が立ってる筈だよね!?」

「それがなぁ………まあ従いて来いや」

 

秋也が先導して、敷地内を歩いて行く。

リーヴェは、(ひなた)とリヴァを抱っこしながら従いて行き、

愛と燿子と健太は、そのうしろを従いて行く。

 

土佐鎮守府の敷地の塀は、コンクリート壁ではなく

金網で、上部は有刺鉄線になっており、

一部に『何らかの強い力で広げられた』跡がある。

 

「多分、ここから出たんだと思うが、おっそろしい馬鹿力だよな?」

 

『……………』

「ごめんなさい……ごめんなさい……」

 

リーヴェが本格的に泣き始めたので、陽を燿子が、リヴァを健太が抱き抱えて、

愛がリーヴェを慰めている。

 

「それで、捜索隊は?」

「郷里のオッサンが一個小隊を差し向けてると思うが……土佐も広いからな……GPSでも付けときゃよかったか?」

 

秋也は再び、大きな溜め息を吐いた。

――――――――

そんなママ達の心配も知らず、推定三歳児の真愛は、海岸線をとてとて歩いている。

 

「~♪」

 

秋也が子守唄に歌っている「U.S.A」を口ずさみつつ、U.S.Aダンスをしながらとっとこ歩いている。

海岸沿いの歩道を歩いているが、車がビュンビュンと走っているのも新鮮な思いがして、

お目々をキラキラさせている。

 

「ぶーぶーだー」

 

秋也は、結果的に一つ()()()を犯していた。

言葉の練習も兼ねて、笑点のビデオを見せていたのだ。しかも昔の……

そう。

 

――――――――

 

手を上げて、横断歩道を渡りましょう

―――松崎 真―――

 

――――――――

 

と言う訳で、横断歩道で元気良く手を上げる真愛。

両方の車が停まる中、とてとてと内陸部に歩いて行ってしまったのだ。

 

『横断歩道を渡る』とは考えていなかった捜索隊は、海岸線を集中的に探していた為、

結果的に、これで郷里二佐の捜索を振り切ってしまっていた。

 

交差点を渡って、商店街を一人練り歩く真愛。

商店街のおばちゃん達も「はじめてのおつかい」的なものか、とスルーしている。

真愛はてくてくと、どんどん内陸部に歩いて行く。

郷里達捜索隊と、どんどん離れて行く。

 

真愛は、児童公園にやって来た。

児童公園では、保育園終わりの園児達が遊んでいた。

 

園児のうち、女の子が駆け寄る。

 

「知らない子だ!」

「おなまえなあに?」

 

二人の女の子が駆け寄って来る。

 

「わたしおおいしまな(大石真愛)

 

自己紹介をして、ペコリと頭を下げる推定三歳児。

 

「まなちゃんね。私やまだまゆら(山田麻友良)

「あたしはね、いまだとしこ(今田とし子)

 

ぎゅっと握手をすると、二人共元気が漲って来る。

霊子を()()()()()感じなのだ。

 

「なんか、まなちゃんと居ると元気が出てくる」

「いっぱい遊べるね!」

 

まゆちゃんととしちゃんは、真愛の手を引いて遊具に連れて行く。

全てが新鮮な真愛は、楽しそうに従いて行く。

 

「ブランコだよ、こうやってやるんだよ」

 

まゆちゃんが腰掛けて、んしょっとブランコをスイングさせると、真愛もよいしょっと腰掛けて、ブランコを揺らし始める。

ぶらーんぶらーんと、三人で無心にブランコを漕いでいる。

そんな様子を、まゆちゃんのお母さんが微笑ましく見ている。

 

「次はすべり台に行こう!」

「まなちゃん一緒に滑ろう」

「うんっ!」

 

そんな感じで、きゃいきゃい笑っている。

とし子ちゃんが勢いよく滑って、顔面からつんのめって転んで泣き出すも、真愛が頭をナデナデすると泣き止んで、傷も塞がった。

「いたいのとんでけー」

「あっ……痛くなくなった」

それを、異常事態に思わない麻友良ちゃんのお母さんは、天然である。

 

――――――――

『真愛ちゃんが居なくなったぁ!?』

 

学校で「娯楽部」と言う名の、TRPG同好会を開催していた恵奈と愉快な仲間達は、慌てて学校に戻って来た愛の言葉に耳を疑った。

 

「待って!歩哨はいるんでしょ!?」

 

美雪のツッコミは尤もであるが、この場合常識が通じる相手ではないのだ。

 

「あのね、金網がこじ開けられて、そこから」

 

『はあああああ!?』

 

全員絶句である。

 

「愛ちゃん、何言ってんの?」

「訳解んないんだけど!?」

「あの、愛さん。何を言ってるか分からないんですけど……?」

「うん、『お前は何を言ってるんだ?』なんだけど……?」

「論より証拠!従いて来て!」

 

愛は娯楽部の恵奈、美雪、真由、杏子を引き連れて鎮守府にとんぼ返りである。

 

「大野くん!従いて来て!」

「お?あ?おう!」

 

丁度、サッカーをしていた大野くんも引き連れてである。

 

脱出現場にやって来た全員は揃って、

『うわぁ』

と、声を漏らした。

 

「今、陸戦隊が一個小隊、海岸沿いを探してるんだけど………」

 

愛が説明すると、大野くんが、

 

「まさか、海に落ちたりしてねえだろうな……?」

 

と、不用意な発言をしたた為、金網の反対側に居たリーヴェが錯乱し始める。

 

「うわああああ!!!!ごめんなさい!!!ごめんなさい!!!」

 

ぼろぼろ泣きながら、ぺたりと座り込む。

 

「縁起でもないこと言わないで!!もしかしたら、横断歩道を渡って行ったかもしれないし」

 

愛が怒りながらに言うと、冷静な大野くんが指摘する。

 

「それじゃ、捜索隊無駄じゃね?もっと、捜索範囲広げようぜ?」

 

『………』

 

その指摘に、全員が沈黙した。

 

――――――――

お家に帰ると言う、としちゃんとまゆちゃんと別れた真愛は、ずいずいと住宅街を歩いて行く。

 

行き交うおばさん達に、

「こんにちはー」

と頭を下げる。

 

まさか、零歳児とは思わない推定三歳児。何の疑問も抱かれずに、

 

「あら、こんにちは。挨拶できて偉いわね、どこの子?ママはどこ?」

「えっとね、お散歩してるのー」

「そう、おばちゃんのところでおやつ食べる?」

「たべりゅー!」

 

そう答えると、おばちゃんの家に入って行く。

その直後、そこを愛と娯楽部と大野くんが走って行った。

 

おばちゃんのお家には、仏壇が置いてあった。

小さい子供と、おじさんの遺影が飾られてあった。

 

「おばさん、あれなにー?」

「あれはねえ、この前死んじゃったうちの子とパパよ」

 

困ったように話すおばちゃんに、聞いちゃいけなかったことだ、と直感で感じた真愛は、

 

「ごめんなさい」

 

と、頭を下げて謝った。

 

「いいのよ、ゆっくりして行きなさい。そしたら、まっすぐお家に帰るのよ?」

「はーい」

 

美味しい水ようかんとお茶を楽しんだあと、真愛はおばちゃんの家を後にした。

 

「おうち、どっちだっけ?」

 

漸く、自分が迷子になったのに気づいた真愛だったが、

海の方向に戻れば帰れる、と呑気だった。

 

――――――――

「真愛ちゃんが居なくなった!?フェンスをこじ開けて脱柵した!?」

 

海賊行為(練度確認)をして、戦利品を担いだビスマルクが戻って来たのは、そんな頃だった。

「WOW! SUPER GIRLね」

「そんな事言ってる場合ですか?」

「そうよ、私達も探しましょう?」

「そうですよ」

「そうだね!」

 

艦娘達も、真愛ちゃん捜索に乗り出した。

翼も航空隊を出撃させて、捜索を始めた。

 

――――――――

そんな大事(おおごと)になっているとは全く知らず、海を目指していた真愛だったが、海とは逆方向に向かっていた。

 

「ここどこだろ……?」

 

ちょっと不安になったところで、オジさんが通り掛かった。

真夏なのに、コートを着ている……

 

「あ、おじさん、こんにちは」

「はあはあ……」

 

オジさんは息が荒く、顔も上気している。

そして、コートをばっと開いた。

オジさんは、コートの下には何も身に着けていなかった。

 

「?おじさん、なんで裸なの?」

「はあはあ、おじさんのお○んちんどうだい?」

「うんっ、ぱぱよりちっちゃい!

 

オジさんは、精神的に大ダメージを受けた。子供は残酷である。

オジさんは一瞬蹌踉けると、路地裏に歩いて行く。

真愛は不思議がって、その後を従いて行く……

 

 

路地裏では、コートを脱ぎ捨てたオジさんが立っていた。

そして、裏路地に入った真愛に抱き付いた。

 

「!?」

 

真愛は、水鬼クラスの深海棲艦である、推定三歳児だが。

霊子を操ることが出来、敵意や害意を純粋に感じ取ることができる。

下着の中に手を入れて、胸や股間を触り始めたオジさんに、真愛は自身への悪意とオジさんに対する嫌悪感を感じていた。

真愛は、絶叫とも言える悲鳴を上げ、更に赤い瞳がギラリと光った。

 

「いや……いやぁぁぁ!!!」

「うわ、うわああああああ!!!」

 

オジさんはみるみるうちに干からびて行き、ミイラと化していた。

真愛が、霊子を()()奪い取ってしまったのだ。

生命を奪うレベルまで……

霊子とは、生命を構成しているエネルギーで、全て吸い取られると生物は生きて行けない。

ミイラ化したオジさんは、サラサラと砂になって風に舞って行った……

 

漸く、その悲鳴に気づいた捜索中の愛と娯楽部with大野くんが、真愛を見つけた。

真愛は更に成長して、もうちょっと大きくなっていた。推定四歳児である。

服が、パッツンパッツンになっている。

 

「真愛!!よかったぁ……」

「ままぁ!」

 

漸く緊張の糸が切れた真愛は、ボロボロと泣き出した。

 

「ママを心配させちゃ、めっでしょ?」

 

恵奈が、愛の代わりに腰に手を当てて叱ると真愛は、

 

「ままぁ、ごめんなさぁい………」

「いいのよ、無事見つかったから」

 

漸く泣き止んだ真愛は、

 

「いま、変なおじさんいたの。お○んちん出して裸で、真愛のお胸とかお股とか触って来たの」

 

その言葉に、全員がぎょっとした。

 

「で、そのオジさんは?」

「砂になっちゃった。れーし全部吸い取っちゃった」

 

『…………』

 

早速、『キルカウント』1である。

 

「真愛、霊子を全部吸い取るのは、もうやっちゃダメよ。おじさん死んじゃったでしょ?」

「ごめんなさぁい……」

 

愛に叱られてショボーンとしている真愛に、大野くんは、

 

「変態ロリコン犯罪者に人権なし。よくやった」

 

と、頭を撫でて褒めている。1年1組の面々も、異常事態の連発で感覚が麻痺している。

一応、()()()()()()案件である。

 

「でもね、ぱぱの3分の1も無かったよ!お○んちん!」

 

にぱっと言う真愛に、娯楽部の面々は顔を赤らめる。

 

「そ、そんなに大きいの?」

「マジで!?」

「真愛ちゃん、そういうのは人に言っちゃ駄目です」

「そうだよ」

 

「まあ、健太のはでかいからな。ははは」

 

水泳の着替えで見ている大野くんだけは、呑気に笑っている。

 

――――――――

「分かった。変質者の一件は、警務隊で手を回して、海に落ちたことにしとくわ……」

 

霊子吸い取り事件を聞いた秋也は、大きな溜め息を吐いた。

 

「すみません、お願いします」

 

愛が、申し訳なさそうにする。

 

真愛は、各部署の心配掛けた大人達に、ごめんなさいをしに娯楽部の面々と回っている。

リーヴェは、真愛が無事戻って来たことに安堵して、倒れて寝込んでいる。

 

「しかしこうなると、GPS装置の取り付けが要るな?」

「そうですね………」

 

こうして、真愛の小さな大冒険は終わった。

変質者を一人退治した、と言う結果と共に……

 

その後、麻友良ちゃんととし子ちゃんとはお友達となり、

毎日リーヴェの同行で、児童公園に通うようになった。

麻友良ちゃんのママからは「仲のいい姉妹」と思われているが、

()()だとは思うまい。

 

愛は、お菓子を食べさせてくれた小母ちゃんの家にも、お礼に立ち寄った。

そこで、デスペラン戦で子供と夫を失ったことを聞かされた。

敢えて自分が、当時室戸鎮守府で戦っていたことを告げると、

小母ちゃんは、優しく抱き締めてくれた。

 

よく頑張ったね、と。

 

そして、推定三歳児の自分の娘が深海棲艦のハーフだ、と告げると、

 

「こんなちっちゃい身体で、すごいお産だったんだねぇ」

と、感心された。

 

その後、脱柵事件は何度も起こることになるが、

身に着けさせたGPS装置で、鎮守府から離れると警報が鳴り、

怖い怖い郷里おじさんがお説教をするから、だんだん数が少なくなって行った。

 

 

尚、秋也達警務隊の調査の結果、真愛が消滅させたオジさんは、残されたコートの指紋から、

連続幼女暴行殺人事件の犯人だと判明した為、秋也は自業自得だ、と事件を秘密裏に処理した。

連続幼女暴行殺人事件は、迷宮入り不可避だろう。




お題「真愛ちゃん、迷子になる」 toshi-tomiyamaさん提供

→生後一ヶ月ではあるものの、精神年齢は推定三歳の真愛ちゃん……
ママ達&教育担当が目を離したスキに、鎮守府の外へ……
さて、どうなる?


どうしてこうなった(汗
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