中学生提督日記   作:SAMICO

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お引越しと年末のひととき

結婚式翌日から、慌しい日々が始まった。

花梨と剛の、新居引っ越しである。

 

「お手伝いに来ました!」

 

鎮守府司令官・駐留艦隊司令官の笹野 愛が、笑顔と共に花梨の官舎を訪れたのは、朝七時(0700)の事だった。

 

「おはようございます。メリークリスマス」

「はい、メリークリスマスです」

 

結婚式当日から、竜馬と向日葵はリーヴェが預かっていて、真愛と二人で面倒を見ている。

 

早速二人で、官舎の荷物をダンボールに詰める作業が始まる。

と言っても、最初から殺風景な部屋なので、思ったよりも早く作業が進む。

 

そんな時、愛はふと机の上に飾られていた、若き日の眞一郎と母親の写真に目が留まった。

 

「きれいな人ですね」

「はい。私の憧れの人でした、母は。……乳がんで、発見した時にはもう……」

「…………そうだったんですか」

 

愛は、もしも早期に発見していたら、花梨はどう生きていたのだろう?そう考えて、首を振る。

師匠の言葉である「歴史にもしもは付き物で、禁忌(タブー)」という言葉を思い出して。

 

「ところで、健太君はどうしたんです?」

「ああ、今燿子と郷里二佐と一緒に、京都の実家に荷物を取りに行きました。何でも、趣味のものを持って来たい、と」

「趣味のもの…………」

 

『趣味のもの』で、大体察してしまうのは、ちょくちょく剛の官舎に行っているからである。

郷里 剛は武器収集家の一面を持っている。美術刀や現代刀を集めて飾ったり、猟銃免許も取得しており、散弾銃やライフル銃を多数持っている。

それに、仕留めた獲物の剥製も作っている。

剥製は官舎にもあって、ル級の剥製がダイニングに鎮座していたのを見た瞬間、花梨は腰を抜かしかけたと言う。

 

ケーキ入刀の際に用いられた、三池典太光世もその一つであり、郷里家代々の家宝である。

因みに郷里家は、徳川家重臣で譜代大名の郷里能登守剛康(ごうりのとのかみかたやす)家がルーツだと言われている。

怪力無双の大男であり、戦場では家臣が止めるのも無視して、足軽よりも前に飛び出ては七尺もある特製の大太刀『斬艦刀』――即ち艦船を斬る刀――を振り回し、一振りで豊臣方の足軽を十数人撫で斬りしたと言う『戦場(いくさば)で剛康通った後、血と肉と屍の山が残る』との伝説も残る、要するにご先祖様からミンチメーカーなのである。

残念ながら、斬艦刀は太平洋戦争の金属類回収令により失われてしまっている。きっと現存していたら、剛は今でも使っているに違いない。

 

三池典太光世は、その武勇を称賛して晩年の徳川家康公から拝領した刀、と言う伝説が残っており、(なかご)に葵の御紋が刻まれており、『葵典太』と呼ばれている……らしい。

伝説の真偽は、確たる史料が少ない為定かではないが、高菜源一郎が徳川家康伝説を著した際、大典太に言及し『現存する大典太と、葵典太のいずれかが贋作(ニセモノ)であろう』と結論付け、明言を避けた。

もしその伝説が本当だったら、そんな天下五剣の名刀を、何百年も後に子孫にウェデキングケーキ入刀に使われた、今は東照大権現様となっている家康公は、草葉の陰でどう思っているだろう?

 

きっと、大いに笑っているに違いない。

 

「はい。何でも、いろいろ面白いものがあるそうですよ?地元では、サバイバルゲーム同好会にも入っていたらしくて、エアガンやモデルガンもいっぱい持ってるらしいです」

「でしょうねえ」

 

愛の言葉に、花梨は大きな溜め息を吐いた。

新居は4LDKで、二階の二間を子供部屋に残し、一階の居室をそれぞれ寝室と、剛の書斎にする予定だ。

それぞれの居室も広く、一階の居室は12畳で、二階の居室も八畳間である。

LDKも広く、オープンキッチンになっている。

 

「そうだ、調理器具も買わないといけないですね?」

「えっ?今までどうしてたんですか?」

「外食専門でした」

「…………」

 

そう答える花梨を、じーっと見ている愛に、花梨は慌てて付け足す。

 

「料理ができない訳じゃなくて。その、一人だと作るのが億劫で……」

「分かります……」

 

愛も、料理はできない訳ではなかったが、外食でも賄える給料なので、外食やコンビニ飯で済ませていたのだ。

最近は、リーヴェが料理をしてくれるおかげで助かっている。

たまに愛も料理を作るが、それはストレス発散の為で、殆どはお菓子類である。

 

そんなガールズトークをしながら荷物をダンボールに詰め終わると、据え付けの家具だけ、と言う更に殺風景な部屋になる。

早速ダンボールを、女子陸戦隊員がトラックに積み込んで行く。

そして、新居に運んでくれるのだ。

 

「さあ、愛ちゃん。岩沼に行きましょう?」

「えっ?」

岩沼鎮守府(実家)に残して来た荷物も多少ありますし、車も取りに行かないと」

「そうなると、神戸に出て新幹線ですか?」

「いえ。羽田までのチケットが取れましたので、飛行機で行きます」

「ひゃあ……その資金は、どこから出て来たんですか?」

 

驚愕の表情になる愛。直哉達から、遠方の人達には航空券を送ったことを聞いていたのだ。

 

「他の人には秘密ですよ。特に岩沼の皆には……父が、生前贈与と言う形で1000万ほど、慰謝料()振り込んで来たんです」

「慰謝料ですか……」

「はい、父は()()()と言っていました。これだけの金額どうしたのか?と訊いたら、雪絵さんの話をされました」

「雪絵さん……ですか?」

「はい、父の恋人だった人です。雪絵さんのご両親は、自衛隊に反対する政治思想の方で、雪絵さんは叶わぬ恋に絶望し、亡くなったそうです」

「そうなんですか……」

 

眞一郎の背景に、そんな悲恋があったと思わなかった愛は、漸く眞一郎の行動の意味が、少しだけ理解できた。

 

「羽佐間准将は、さぞ悲しんだでしょうね?」

「はい。それ以後の人生は空虚だ、と言っていました。ようやく七人の嫁と眞梨沙ちゃんのおかげで満たされた、と昨日の夜話してくれました」

「昨日のクリスマスパーティの後、病院に行かれたんでしたっけ?」

「はい。七原さんの子供の海人くんも元気そうでした。明日にも、それぞれの掛かり付けに転院するそうです」

 

その花梨の言葉に、愛は自然と笑みが零れる。

 

「それは良かったです。昨日は、いろいろな記念日になりましたね?」

「そうですね」

 

花梨も、自然と笑みが零れる。

 

「話を戻しましょう。それで、三尉の頃からずっとお金を貯めていたんだそうです。何に使うつもりだったかは、教えてくれませんでしたが、慰謝料代わりで受け取れ、と。流石に受け取れないと、剛さんが固辞したのですが、掛からなかった私の養育費と孫の養育費だ、と」

「羽佐間准将も、不器用な人ですね?」

 

苦笑いを浮かべる愛に、花梨は楽しそうに笑う。

 

「器用な人だったら、宮戸島パニックを起こしてませんよ」

「ですね」

 

二人はベッドに腰掛けていたが、時計を見ると花梨が立ち上がり、

「さあ、行きましょう」

「はい」

 

と言う言葉に、愛も立ち上がった。

 

――――――

その頃、健太と燿子は剛の私室に入って、腰を抜かしかけていた。

虎や熊の剥製や鳥の剥製等が、こっちを睨んでいるようだった。

 

「こ……これは」

「剥製……よね?」

「ぐわははは、ワシが仕留めた獲物でな。猟が趣味で、北海道で仕留めたヒグマだよ」

「素手で……ですか?」

「郷里二佐なら、有り得るわね」

 

最近は、郷里アレルギーも薄らいだ燿子だったが、やっぱり苦手意識は消えていない。

この、燿子には悪趣味に思える部屋から、早く出て行きたかった。

逆に、男子の健太は部屋に飾られているレプリカの古式銃等を、目をキラキラさせて見ている。

 

「ぐわははは、まさか。ツキノワグマはともかく、いくらワシでもヒグマは不可能だよ」

「…………ツキノワグマは殺ったんですか?」

「うむ」

「やっぱり人間じゃないわ」

「ぐわはははは。最近は、体の調子も()()良くなったから、今ならヒグマも行けるかもしれないな?」

 

燿子の失礼な言葉にも豪快に笑いながら、美術刀剣の数々を箱に仕舞い始める剛。

健太に、「これはどれどれの刀のレプリカで」と説明しながら仕舞っている。

レプリカの方は多種多様であり、エクスカリバー等伝説の名剣等も収蔵している。

燿子はさっさと部屋を出て行き、鐵太郎と小夜子とお茶を飲んでいる。

 

「そうだ、健太君。今度、陸戦隊でサバイバルゲームをやるんだが、来ないかね?」

「サバゲーですか?」

「うむ。どれ、銃はワシが好きな(モノ)を買ってあげよう」

「いいんですか!?」

「うむ」

「FN F2000とかありますか?」

「また珍しいチョイスをするな?普通なら、M16とかM4とかを選ぶんだが……」

「かっこいいじゃないですか!?近未来っぽくて」

「確かに。確かあった筈だから、クリスマスプレゼントに買ってあげよう」

「有難うございます!」

 

嬉しそうにしている、健太の頭を撫でる剛。

 

「今度、猟にも連れて行ってあげよう。イノシシなぞ、美味しいぞ?」

「猟かあ、僕も猟銃免許取れるかなあ?」

「成人扱いになってるし、大丈夫だろう」

「猟銃で、PSG-1とか許可下りないですか?」

「ああ。ワシも申請したけど、駄目だったよ」

 

所謂軍用ライフルは、猟銃申請をしても、許可が下りないのだ。

口径の理由で、バレット対物狙撃銃も、猟銃としては許可が下りない。

 

「それに、まずは散弾銃だからな。本気で猟銃免許を取るなら、申請を手伝おう」

「有難うございます!」

 

健太が、どんどんサバイバルボーイになって行く。

そして、健太が散弾銃免許を取得するのは、もうちょっと先の話である。

 

「今夜は泊まって行って、明日は京都を案内しよう」

「いいんですか?花梨さん達は……?」

「うむ。花梨も、明後日に土佐に戻るしな」

「なるほど」

 

翌日、健太と燿子は、剛と京都観光を楽しむことになった。

 

――――――

 

愛と花梨は、岩沼鎮守府に立ち寄った。

 

もちろん、岩沼の面々はまだ土佐に滞在しているので、花梨は合鍵で、岩沼鎮守府の横に併設されている眞一郎の自宅の鍵を開けると、自分の部屋に入る。

 

「こっちでは断捨離をしながら、運ぶ荷物を選定しましょう」

「はいっ」

「それでは……」

 

花梨の私物をいくつかもらいながら、以前の引っ越しの際に残っていたダンボールで荷造りを始める。

 

「ところで、家の前に大きな車とセダンが停まってたけど、どっちが花梨さんの車なんですか?」

「ああ、ランクルですよ」

「らんくる?」

「ランドクルーザー。大きい方ですから、荷物もたくさん積めますよ?」

「大きい方なんですか?意外だなあ」

「車は、大きい方が好きなんです」

「そうなんですねぇ」

 

こっちでも、和気藹々と話をしながら、荷物を詰めて行く。

詰め終わったら、土佐までの()ロングドライブの始まりである。

 

「余裕を持って行くので、途中東京まで行ったら泊まりましょう。そして明日は神戸、明後日に土佐に戻ります」

「了解です」

 

――――――

 

そして五人が新居に合流したのは、28日である。

もう鎮守府は、仕事納めを済ませており、輪番で鎮守府常駐義務がある隊員や艦娘や深海棲艦がいるものの、今日から四日までは年末年始休暇である。

 

「おーい、ゴリ。手伝いに来たぞー感謝しろ」

「おっさん。暇だから、手伝いに来たよ」

 

レ級と秋也が、仲良く手伝いにやって来た。暁と翼は、当番艦娘・士官でいない。

翼と秋也、レ級と暁はそれぞれお付き合いが始まって、二カップル四人で仲良くなっている。

翼とレ級の頭の中が()()なので、こうやってカップル交換して行動を共にしても、浮気扱いされない。

 

「「交換プレイとか、燃えるじゃん?」」

 

とは、翼とレ級の言である。秋也は面白ければいいと言う性格で、暁もそういう部分ではレ級に染められて、拒否しなかった。

出かける際に、翼と暁は士官当直室で仲良くテレビ見てた、とはレ級の言である。

 

 

五人掛かりで、荷物を搬入して行く。

レ級は、私室にある深海棲艦やヒグマの剥製にギョッとするも、秋也は「おー、おっさんいい趣味だな」

と言いながら、壁に刀剣類を飾り始める。

レ級は寝室に、燿子と愛と共に洋服を仕舞いに向かった。

 

「ああ、おっさん。転居祝い」

 

秋也が、ポケットから封筒を出す。

中には、ホームセンターの商品券が入っていた。

 

「調理器具とかも新調しようぜ?折角のIHだしな」

 

キッチンはIHコンロで、据え付け型食器洗浄乾燥機も付いている。

 

「おお、先輩。有難うございます」

「有難うございます……でも、何で商品券なんですか?」

「ばっか。現金渡したら、賄賂になるだろうが?」

 

結婚式では、きちんと現金を渡している為、秋也ならではのユーモアな行動なのだろう。

 

「おーい、花梨。()()()()とか、どこにしまえば良いんだ?」

 

レ級の声で、顔を真っ赤にして、慌てて寝室にダッシュする花梨。

 

「し、下着は自分でやりますから、触らないでください!」

「あは、これ見つけちゃった」

「っ!!!」

 

レ級が取り出したのは、所謂セクシーランジェリー、と言うやつだ。

 

「あの……それは……」

「勝負パンツ?」

「…………はい」

 

顔を真っ赤にして、か細い声で答える。

そんな様子を、下着以外の服を畳んで仕舞っている愛と燿子は、生暖かく見守っている。

 

「良いじゃないですか?勝負パンツくらい、誰だって持ってますよ?」

「そうよ」

「えぅ……」

 

援護射撃の形のフレンドリーファイアに、更に顔を真っ赤にする花梨。

ばしっと奪い取るように下着を受け取ると、顔が真っ赤なまま仕舞い始める。

 

「顔真っ赤だね」

「それな」

 

愛と燿子は、そんな花梨を見てくすっと笑っていた。

 

ドタバタしながら引っ越しの荷物運びが終わり、燿子と愛とレ級は剛の書斎でミリタリー・武器話で盛り上がる男子達を放っておいて、ホームセンターに買い物に向かう。

もちろん、商品券は剛から預かっている。

 

「炊飯器はあったし、オーブンレンジもあったろ?冷蔵庫もでっかいのがあって、鍋とかフライパンとか食器とかかねえ?」

 

レ級が、顎に手をやりながら考えている。

もちろん、外に出る時は露出度の高い服ではなく、ブラウスにスカート姿である。今は黒頭巾もなく、広島カープ野球帽を逆被りに被っている。

 

「ホットプレートも買いましょう。今日は焼き肉パーティしましょう?」

「六人掛けダイニングテーブルセットもありますからね。さすがはお値段以上の家具屋(ニ〇リ)ですね」

「焼き肉か!あたし、土佐あかうし食べたい!」

「良いわね。それじゃあ、食料品も買い出しましょうか?」

 

食器等を買い揃えて、次に向かったのはスーパーである。

 

「おーい、おっさん。土佐あかうしのうまいところ10㎏くらい用意して!焼肉用!はよ!」

「えっ?」

「えっ?じゃなくて、はよ」

 

レ級は、遠慮なくスーパーに入っているお肉屋さんに、無茶振りをする。

ステーキ肉から焼肉用の肉まで、どっさりとカートに乗せる。

ストッパー役の暁がいない為、歯止めが効かない。

 

愛と燿子も、お菓子やジュースをポンポン籠に入れて行く。

花梨は、野菜を籠に入れている。

そんなそれぞれのお買い物をした後、レジにて合流すると、価格を見て愛の動きが固まる。

 

「よっ……43万8590円です……」

「えっ?」

 

愛は、自分が払うつもりだった。

そんな現金は持ち合わせていないから、仕方なくデビットカードを取り出そうとすると、それより先に花梨がカードを出す。

 

「今日は、私が持ちます。司令官のお気持ちだけ、頂いておきます」

 

花梨が優しい笑顔を向けると愛は、

 

「すみません、ゴチになります」

 

と、頭を下げる。

 

――――――

家に帰ると、剛達は近くの酒屋で酒を買い出しに行って来たようで、

ダイニングで酒を飲みながら、武器の歴史について談義している。

まだ午後四時(1600)である。

健太は、酒がものすごく強く、成人認定もされてるから、大手を振って飲めるのだ。

艦娘・深海棲艦基本法の穴を突いたものであるが、成人認定されたからには仕方がない。

と言う訳で、珍しい()()()()()()()()なのである。

 

「おーう!お帰り」

「おかえり、愛ちゃん、燿子、花梨さん、レーちゃん」

「ぐわははは、お帰り」

 

もう飲んでいる男子組に、女子組はレ級以外呆れ顔である。

 

「はいはい。今日は焼き肉にしますから、ホットプレートを買って来ましたよ」

「健太君、昼から飲んでたの?」

「秋也さんも何してんのよ?」

 

そんな女子組の呆れ顔に、

 

「ぐわははは。思ったより、引越し作業が早く終わってな」

「おうよ」

「うん、こっちは終わったよ。何か手伝うことある?」

 

豪快に笑う剛、それに同意する秋也、そして何か手伝おうとする健太である。

 

「それじゃあ、早いけど夕飯にしましょうか?」

『はーい!』

 

花梨の号令で、夕飯の焼き肉が始まる。

早速、健太の手伝いで野菜を切リ始める愛と曜子と花梨。

 

既にレ級と秋也と剛は、肉を焼きながら酒を飲んでいる。

「ゴリは、夜の生活どうなん?」

「おっさんはやばいだろ?」

「ぐわははは。そう言うのは、花梨に『言うな』と言われててな」

「そりゃそうだ。それより武器談義しようぜ、やっぱ最強は槍だろ?ローコスト武器だぜ」

 

再び武器談義が始まる。

 

野菜を持って来た花梨達も席に着くと、予備の椅子を持って来て八人で食べ始める。

 

女子達は過激なガールズトークが始まるし、男子達は相変わらずの武具談義である。

お酒もジュースも足りずに、愛が曜子と買い物に行くことになる。

最終的に日本酒を花梨に飲ませ続けた結果、花梨は泥酔してしまった。

 

「あんのクソ親父、かっこつけやがってぇ。あたしはもう立派なオトナなのよ」

 

徳利ごと日本酒を一気飲みした後、ドンッと徳利を置く花梨。もはや人が変わっている。

 

「ところで、夜の生活はどうなん?」

「夜の生活ぅ?」

 

とろ~んとした目でレ級を見ると、何かを耳で囁く。

 

「で、毎回気絶しちゃってさぁ」

「マジで!?」

 

レ級が、目を見開いて驚愕して聞き返すと、花梨は既にレ級に凭れ掛かって眠っていた。

 

「すぅ……すぅ……」

「ありゃ、電池切れだね」

「ぐわははは、ワシが寝室まで運ぶよ」

 

剛が笑いながら、花梨をお姫様抱っこして寝室に運ぶ。

肉も主にレ級が食らい尽くして、後は酒だけである。

 

「今日は皆、泊まって行くと良い」

 

そんな剛の言葉に甘えて、残った七人は、花梨の話を夜遅くまでしていた。

 

 

翌朝。

花梨は、強烈な頭痛と共に目を覚ましたのは、言うまでもない。

 

「…………頭痛い…………何も覚えてない…………」

 

因みに、レ級に囁かれた内容を囁き返されて真っ赤になりながら、二度と泥酔するまい、と誓う花梨であった。

 

――――――

大晦日、愛達は司令官官舎と執務室の大掃除をしている。

真愛もお手伝いしている。

 

「おそうじー、おそうじー」

 

雑巾片手に、きゅっきゅと窓拭きを健太としている姿を見ながら、愛は去年の鎮守府大掃除を思い出していた。

 

「あれからもう一年かぁ…………いろいろあり過ぎてあっという間だったなあ」

 

感慨に耽っていると、司令官官舎の扉が開かれる。秋也とレ級がやって来た。

最近秋也とレ級は、何かとセットでやって来る。暁と翼は、艦娘達と女子隊員と共に女子寮の大掃除である。

 

「おっす、大掃除の手伝いに来たぜ」

「手伝いに来たぞー、感謝しろー」

「足立さん、レーちゃん、助かります」

 

秋也とレ級を加えた七人で、大掃除の開始である。

 

「あきやさま。まなね、お掃除できたの」

「おお、偉い偉い」

 

頭をナデナデする秋也に、ニパッと笑顔を見せる推定六歳児。

真愛も、秋也には懐いている。

 

「れーちゃんもほめてほめて」

「うん、偉い偉い。ママのお手伝いができていい子だね」

 

レ級も、真愛には優しい。

 

大掃除が終わると、おせちとお寿司を取りに行って、お夕飯である。

 

「よし!行け!」

「ああっバカ!!右だ!右を殴れ!!」

 

いつもの年末恒例の総合格闘技を見ながら、秋也とレ級がエキサイトしている。

真愛も、

 

「あのはげたおじさんつおい!でもどうしてかみのけないの?もうこんしんじゃったの?」

 

と、目をキラキラさせている。

因みに、選手の名誉の為に言っておくが、スキンヘッドでまだ20代である。

毛根とかそういう単語を誰が吹き込んだかは、謎である。

 

「はい、健太君」

「ありがとう」

 

健太は、愛に日本酒を注いでもらってぐいっと飲み干す。

漸く子ども達を寝かし付けたリーヴェもやって来る。

 

「お疲れ様。リーヴェの分も取ってあるからね、お寿司」

「ありがと……」

 

ちょこんと座ると、燿子からお酒を注がれ、くいっと飲み干す。

 

「今年も一年、いろいろあったわね」

 

燿子が感慨深げに話す。

 

「悲しいこともいっぱいあったけど、愛ちゃんと燿子、それにリーヴェの旦那さんになれたのが嬉しいよ」

 

健太はジレーネ戦役を思い出す。

 

「…………私は、また健太君に会えて、一緒にいられるのが幸せ」

 

リーヴェもニコっと笑って、健太を見る。

 

「今年は学校での思い出は娯楽部だけだったけど、来年は学校での思い出もたくさん作りたいね?」

 

愛がジュースを飲みながら、しみじみと語る。

 

「そうだな、学校での思い出は大事だからな。オレなんか親泣かせ、先公泣かせ、他人泣かせで……」

 

秋也も缶ビールを飲み干しながら、学生時代の悪行の数々を自慢する。

そんな秋也に、愛はふふっと笑って、変わらない人だな、と感じていた。

 

レ級もしみじみと酒を飲みながら、

 

「いやはや、茶番も終わって深海棲艦も人類と一緒に暮らし始めて、来年もいい年になりそうだ」

 

と、笑いながら語っている。

 

深海棲艦と人間と艦娘の共存が叶って半年。

来年もいい年になりそうだ。

 

ゴーン ゴーン

 

2019年が終わり、2020年になる。

今年は、東京でオリンピックが開かれる年だ。

 

「さて、お参りに行きましょう」

 

眠ってしまった真愛をベッドに寝かせると、愛は皆を振り返った。

 

『お~!』

 

近くの神社には、艦娘達もお詣りに来ていた。

「提督、今年も宜しくね」

「New Yearも宜しくね」

「今年もお世話になります。いい年でありますように」

「去年はいろいろあり過ぎたからね」

「そうですね」

「そうだね」

「レーちゃん、みんなにご迷惑掛けてない?」

 

今年は()()だから、あけましておめでとうは使わない。

 

愛達も、

 

『今年もよろしくお願いします!』

 

と、頭を下げる。

 

レ級は、暁に抱き付くと公衆の面前でキスをする。

 

「はい、新年チュー」

「なっ?」

 

暁の顔は真っ赤である。

 

レ級を含めた艦娘達と別れると、神社にお詣りに行く。

皆で祈った願いは、一緒だった。

 

(今年こそ平和な一年でありますように)

 

しかし、おそらく今年も、ドタバタは続くだろう。

 

主にレ級と翼が問題を起こすに違いないのだ。

 

余談だが、その翼は女子隊員達と、大阪で行われる男性アイドルの年越しカウントダウンコンサートにお出掛け中である。




なんとか、投稿できました


Tips《葵典太》

エピソードは古着屋総兵衛影始末シリーズからの輸入ネタです。


Tips《郷里能登守剛康(ごうりのとのかみかたやす)

イメージは真田丸で本多平八郎忠勝を演じた藤岡弘、氏とオフレッサーです。
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