結婚式翌日から、慌しい日々が始まった。
花梨と剛の、新居引っ越しである。
「お手伝いに来ました!」
鎮守府司令官・駐留艦隊司令官の笹野 愛が、笑顔と共に花梨の官舎を訪れたのは、
「おはようございます。メリークリスマス」
「はい、メリークリスマスです」
結婚式当日から、竜馬と向日葵はリーヴェが預かっていて、真愛と二人で面倒を見ている。
早速二人で、官舎の荷物をダンボールに詰める作業が始まる。
と言っても、最初から殺風景な部屋なので、思ったよりも早く作業が進む。
そんな時、愛はふと机の上に飾られていた、若き日の眞一郎と母親の写真に目が留まった。
「きれいな人ですね」
「はい。私の憧れの人でした、母は。……乳がんで、発見した時にはもう……」
「…………そうだったんですか」
愛は、もしも早期に発見していたら、花梨はどう生きていたのだろう?そう考えて、首を振る。
師匠の言葉である「歴史にもしもは付き物で、
「ところで、健太君はどうしたんです?」
「ああ、今燿子と郷里二佐と一緒に、京都の実家に荷物を取りに行きました。何でも、趣味のものを持って来たい、と」
「趣味のもの…………」
『趣味のもの』で、大体察してしまうのは、ちょくちょく剛の官舎に行っているからである。
郷里 剛は武器収集家の一面を持っている。美術刀や現代刀を集めて飾ったり、猟銃免許も取得しており、散弾銃やライフル銃を多数持っている。
それに、仕留めた獲物の剥製も作っている。
剥製は官舎にもあって、ル級の剥製がダイニングに鎮座していたのを見た瞬間、花梨は腰を抜かしかけたと言う。
ケーキ入刀の際に用いられた、三池典太光世もその一つであり、郷里家代々の家宝である。
因みに郷里家は、徳川家重臣で譜代大名の
怪力無双の大男であり、戦場では家臣が止めるのも無視して、足軽よりも前に飛び出ては七尺もある特製の大太刀『斬艦刀』――即ち艦船を斬る刀――を振り回し、一振りで豊臣方の足軽を十数人撫で斬りしたと言う『
残念ながら、斬艦刀は太平洋戦争の金属類回収令により失われてしまっている。きっと現存していたら、剛は今でも使っているに違いない。
三池典太光世は、その武勇を称賛して晩年の徳川家康公から拝領した刀、と言う伝説が残っており、
伝説の真偽は、確たる史料が少ない為定かではないが、高菜源一郎が徳川家康伝説を著した際、大典太に言及し『現存する大典太と、葵典太のいずれかが
もしその伝説が本当だったら、そんな天下五剣の名刀を、何百年も後に子孫にウェデキングケーキ入刀に使われた、今は東照大権現様となっている家康公は、草葉の陰でどう思っているだろう?
きっと、大いに笑っているに違いない。
「はい。何でも、いろいろ面白いものがあるそうですよ?地元では、サバイバルゲーム同好会にも入っていたらしくて、エアガンやモデルガンもいっぱい持ってるらしいです」
「でしょうねえ」
愛の言葉に、花梨は大きな溜め息を吐いた。
新居は4LDKで、二階の二間を子供部屋に残し、一階の居室をそれぞれ寝室と、剛の書斎にする予定だ。
それぞれの居室も広く、一階の居室は12畳で、二階の居室も八畳間である。
LDKも広く、オープンキッチンになっている。
「そうだ、調理器具も買わないといけないですね?」
「えっ?今までどうしてたんですか?」
「外食専門でした」
「…………」
そう答える花梨を、じーっと見ている愛に、花梨は慌てて付け足す。
「料理ができない訳じゃなくて。その、一人だと作るのが億劫で……」
「分かります……」
愛も、料理はできない訳ではなかったが、外食でも賄える給料なので、外食やコンビニ飯で済ませていたのだ。
最近は、リーヴェが料理をしてくれるおかげで助かっている。
たまに愛も料理を作るが、それはストレス発散の為で、殆どはお菓子類である。
そんなガールズトークをしながら荷物をダンボールに詰め終わると、据え付けの家具だけ、と言う更に殺風景な部屋になる。
早速ダンボールを、女子陸戦隊員がトラックに積み込んで行く。
そして、新居に運んでくれるのだ。
「さあ、愛ちゃん。岩沼に行きましょう?」
「えっ?」
「
「そうなると、神戸に出て新幹線ですか?」
「いえ。羽田までのチケットが取れましたので、飛行機で行きます」
「ひゃあ……その資金は、どこから出て来たんですか?」
驚愕の表情になる愛。直哉達から、遠方の人達には航空券を送ったことを聞いていたのだ。
「他の人には秘密ですよ。特に岩沼の皆には……父が、生前贈与と言う形で1000万ほど、慰謝料
「慰謝料ですか……」
「はい、父は
「雪絵さん……ですか?」
「はい、父の恋人だった人です。雪絵さんのご両親は、自衛隊に反対する政治思想の方で、雪絵さんは叶わぬ恋に絶望し、亡くなったそうです」
「そうなんですか……」
眞一郎の背景に、そんな悲恋があったと思わなかった愛は、漸く眞一郎の行動の意味が、少しだけ理解できた。
「羽佐間准将は、さぞ悲しんだでしょうね?」
「はい。それ以後の人生は空虚だ、と言っていました。ようやく七人の嫁と眞梨沙ちゃんのおかげで満たされた、と昨日の夜話してくれました」
「昨日のクリスマスパーティの後、病院に行かれたんでしたっけ?」
「はい。七原さんの子供の海人くんも元気そうでした。明日にも、それぞれの掛かり付けに転院するそうです」
その花梨の言葉に、愛は自然と笑みが零れる。
「それは良かったです。昨日は、いろいろな記念日になりましたね?」
「そうですね」
花梨も、自然と笑みが零れる。
「話を戻しましょう。それで、三尉の頃からずっとお金を貯めていたんだそうです。何に使うつもりだったかは、教えてくれませんでしたが、慰謝料代わりで受け取れ、と。流石に受け取れないと、剛さんが固辞したのですが、掛からなかった私の養育費と孫の養育費だ、と」
「羽佐間准将も、不器用な人ですね?」
苦笑いを浮かべる愛に、花梨は楽しそうに笑う。
「器用な人だったら、宮戸島パニックを起こしてませんよ」
「ですね」
二人はベッドに腰掛けていたが、時計を見ると花梨が立ち上がり、
「さあ、行きましょう」
「はい」
と言う言葉に、愛も立ち上がった。
――――――
その頃、健太と燿子は剛の私室に入って、腰を抜かしかけていた。
虎や熊の剥製や鳥の剥製等が、こっちを睨んでいるようだった。
「こ……これは」
「剥製……よね?」
「ぐわははは、ワシが仕留めた獲物でな。猟が趣味で、北海道で仕留めたヒグマだよ」
「素手で……ですか?」
「郷里二佐なら、有り得るわね」
最近は、郷里アレルギーも薄らいだ燿子だったが、やっぱり苦手意識は消えていない。
この、燿子には悪趣味に思える部屋から、早く出て行きたかった。
逆に、男子の健太は部屋に飾られているレプリカの古式銃等を、目をキラキラさせて見ている。
「ぐわははは、まさか。ツキノワグマはともかく、いくらワシでもヒグマは不可能だよ」
「…………ツキノワグマは殺ったんですか?」
「うむ」
「やっぱり人間じゃないわ」
「ぐわはははは。最近は、体の調子も
燿子の失礼な言葉にも豪快に笑いながら、美術刀剣の数々を箱に仕舞い始める剛。
健太に、「これはどれどれの刀のレプリカで」と説明しながら仕舞っている。
レプリカの方は多種多様であり、エクスカリバー等伝説の名剣等も収蔵している。
燿子はさっさと部屋を出て行き、鐵太郎と小夜子とお茶を飲んでいる。
「そうだ、健太君。今度、陸戦隊でサバイバルゲームをやるんだが、来ないかね?」
「サバゲーですか?」
「うむ。どれ、銃はワシが好きな
「いいんですか!?」
「うむ」
「FN F2000とかありますか?」
「また珍しいチョイスをするな?普通なら、M16とかM4とかを選ぶんだが……」
「かっこいいじゃないですか!?近未来っぽくて」
「確かに。確かあった筈だから、クリスマスプレゼントに買ってあげよう」
「有難うございます!」
嬉しそうにしている、健太の頭を撫でる剛。
「今度、猟にも連れて行ってあげよう。イノシシなぞ、美味しいぞ?」
「猟かあ、僕も猟銃免許取れるかなあ?」
「成人扱いになってるし、大丈夫だろう」
「猟銃で、PSG-1とか許可下りないですか?」
「ああ。ワシも申請したけど、駄目だったよ」
所謂軍用ライフルは、猟銃申請をしても、許可が下りないのだ。
口径の理由で、バレット対物狙撃銃も、猟銃としては許可が下りない。
「それに、まずは散弾銃だからな。本気で猟銃免許を取るなら、申請を手伝おう」
「有難うございます!」
健太が、どんどんサバイバルボーイになって行く。
そして、健太が散弾銃免許を取得するのは、もうちょっと先の話である。
「今夜は泊まって行って、明日は京都を案内しよう」
「いいんですか?花梨さん達は……?」
「うむ。花梨も、明後日に土佐に戻るしな」
「なるほど」
翌日、健太と燿子は、剛と京都観光を楽しむことになった。
――――――
愛と花梨は、岩沼鎮守府に立ち寄った。
もちろん、岩沼の面々はまだ土佐に滞在しているので、花梨は合鍵で、岩沼鎮守府の横に併設されている眞一郎の自宅の鍵を開けると、自分の部屋に入る。
「こっちでは断捨離をしながら、運ぶ荷物を選定しましょう」
「はいっ」
「それでは……」
花梨の私物をいくつかもらいながら、以前の引っ越しの際に残っていたダンボールで荷造りを始める。
「ところで、家の前に大きな車とセダンが停まってたけど、どっちが花梨さんの車なんですか?」
「ああ、ランクルですよ」
「らんくる?」
「ランドクルーザー。大きい方ですから、荷物もたくさん積めますよ?」
「大きい方なんですか?意外だなあ」
「車は、大きい方が好きなんです」
「そうなんですねぇ」
こっちでも、和気藹々と話をしながら、荷物を詰めて行く。
詰め終わったら、土佐までの
「余裕を持って行くので、途中東京まで行ったら泊まりましょう。そして明日は神戸、明後日に土佐に戻ります」
「了解です」
――――――
そして五人が新居に合流したのは、28日である。
もう鎮守府は、仕事納めを済ませており、輪番で鎮守府常駐義務がある隊員や艦娘や深海棲艦がいるものの、今日から四日までは年末年始休暇である。
「おーい、ゴリ。手伝いに来たぞー感謝しろ」
「おっさん。暇だから、手伝いに来たよ」
レ級と秋也が、仲良く手伝いにやって来た。暁と翼は、当番艦娘・士官でいない。
翼と秋也、レ級と暁はそれぞれお付き合いが始まって、二カップル四人で仲良くなっている。
翼とレ級の頭の中が
「「交換プレイとか、燃えるじゃん?」」
とは、翼とレ級の言である。秋也は面白ければいいと言う性格で、暁もそういう部分ではレ級に染められて、拒否しなかった。
出かける際に、翼と暁は士官当直室で仲良くテレビ見てた、とはレ級の言である。
五人掛かりで、荷物を搬入して行く。
レ級は、私室にある深海棲艦やヒグマの剥製にギョッとするも、秋也は「おー、おっさんいい趣味だな」
と言いながら、壁に刀剣類を飾り始める。
レ級は寝室に、燿子と愛と共に洋服を仕舞いに向かった。
「ああ、おっさん。転居祝い」
秋也が、ポケットから封筒を出す。
中には、ホームセンターの商品券が入っていた。
「調理器具とかも新調しようぜ?折角のIHだしな」
キッチンはIHコンロで、据え付け型食器洗浄乾燥機も付いている。
「おお、先輩。有難うございます」
「有難うございます……でも、何で商品券なんですか?」
「ばっか。現金渡したら、賄賂になるだろうが?」
結婚式では、きちんと現金を渡している為、秋也ならではのユーモアな行動なのだろう。
「おーい、花梨。
レ級の声で、顔を真っ赤にして、慌てて寝室にダッシュする花梨。
「し、下着は自分でやりますから、触らないでください!」
「あは、これ見つけちゃった」
「っ!!!」
レ級が取り出したのは、所謂セクシーランジェリー、と言うやつだ。
「あの……それは……」
「勝負パンツ?」
「…………はい」
顔を真っ赤にして、か細い声で答える。
そんな様子を、下着以外の服を畳んで仕舞っている愛と燿子は、生暖かく見守っている。
「良いじゃないですか?勝負パンツくらい、誰だって持ってますよ?」
「そうよ」
「えぅ……」
援護射撃の形のフレンドリーファイアに、更に顔を真っ赤にする花梨。
ばしっと奪い取るように下着を受け取ると、顔が真っ赤なまま仕舞い始める。
「顔真っ赤だね」
「それな」
愛と燿子は、そんな花梨を見てくすっと笑っていた。
ドタバタしながら引っ越しの荷物運びが終わり、燿子と愛とレ級は剛の書斎でミリタリー・武器話で盛り上がる男子達を放っておいて、ホームセンターに買い物に向かう。
もちろん、商品券は剛から預かっている。
「炊飯器はあったし、オーブンレンジもあったろ?冷蔵庫もでっかいのがあって、鍋とかフライパンとか食器とかかねえ?」
レ級が、顎に手をやりながら考えている。
もちろん、外に出る時は露出度の高い服ではなく、ブラウスにスカート姿である。今は黒頭巾もなく、広島カープ野球帽を逆被りに被っている。
「ホットプレートも買いましょう。今日は焼き肉パーティしましょう?」
「六人掛けダイニングテーブルセットもありますからね。さすがは
「焼き肉か!あたし、土佐あかうし食べたい!」
「良いわね。それじゃあ、食料品も買い出しましょうか?」
食器等を買い揃えて、次に向かったのはスーパーである。
「おーい、おっさん。土佐あかうしのうまいところ10㎏くらい用意して!焼肉用!はよ!」
「えっ?」
「えっ?じゃなくて、はよ」
レ級は、遠慮なくスーパーに入っているお肉屋さんに、無茶振りをする。
ステーキ肉から焼肉用の肉まで、どっさりとカートに乗せる。
ストッパー役の暁がいない為、歯止めが効かない。
愛と燿子も、お菓子やジュースをポンポン籠に入れて行く。
花梨は、野菜を籠に入れている。
そんなそれぞれのお買い物をした後、レジにて合流すると、価格を見て愛の動きが固まる。
「よっ……43万8590円です……」
「えっ?」
愛は、自分が払うつもりだった。
そんな現金は持ち合わせていないから、仕方なくデビットカードを取り出そうとすると、それより先に花梨がカードを出す。
「今日は、私が持ちます。司令官のお気持ちだけ、頂いておきます」
花梨が優しい笑顔を向けると愛は、
「すみません、ゴチになります」
と、頭を下げる。
――――――
家に帰ると、剛達は近くの酒屋で酒を買い出しに行って来たようで、
ダイニングで酒を飲みながら、武器の歴史について談義している。
まだ
健太は、酒がものすごく強く、成人認定もされてるから、大手を振って飲めるのだ。
艦娘・深海棲艦基本法の穴を突いたものであるが、成人認定されたからには仕方がない。
と言う訳で、珍しい
「おーう!お帰り」
「おかえり、愛ちゃん、燿子、花梨さん、レーちゃん」
「ぐわははは、お帰り」
もう飲んでいる男子組に、女子組はレ級以外呆れ顔である。
「はいはい。今日は焼き肉にしますから、ホットプレートを買って来ましたよ」
「健太君、昼から飲んでたの?」
「秋也さんも何してんのよ?」
そんな女子組の呆れ顔に、
「ぐわははは。思ったより、引越し作業が早く終わってな」
「おうよ」
「うん、こっちは終わったよ。何か手伝うことある?」
豪快に笑う剛、それに同意する秋也、そして何か手伝おうとする健太である。
「それじゃあ、早いけど夕飯にしましょうか?」
『はーい!』
花梨の号令で、夕飯の焼き肉が始まる。
早速、健太の手伝いで野菜を切リ始める愛と曜子と花梨。
既にレ級と秋也と剛は、肉を焼きながら酒を飲んでいる。
「ゴリは、夜の生活どうなん?」
「おっさんはやばいだろ?」
「ぐわははは。そう言うのは、花梨に『言うな』と言われててな」
「そりゃそうだ。それより武器談義しようぜ、やっぱ最強は槍だろ?ローコスト武器だぜ」
再び武器談義が始まる。
野菜を持って来た花梨達も席に着くと、予備の椅子を持って来て八人で食べ始める。
女子達は過激なガールズトークが始まるし、男子達は相変わらずの武具談義である。
お酒もジュースも足りずに、愛が曜子と買い物に行くことになる。
最終的に日本酒を花梨に飲ませ続けた結果、花梨は泥酔してしまった。
「あんのクソ親父、かっこつけやがってぇ。あたしはもう立派なオトナなのよ」
徳利ごと日本酒を一気飲みした後、ドンッと徳利を置く花梨。もはや人が変わっている。
「ところで、夜の生活はどうなん?」
「夜の生活ぅ?」
とろ~んとした目でレ級を見ると、何かを耳で囁く。
「で、毎回気絶しちゃってさぁ」
「マジで!?」
レ級が、目を見開いて驚愕して聞き返すと、花梨は既にレ級に凭れ掛かって眠っていた。
「すぅ……すぅ……」
「ありゃ、電池切れだね」
「ぐわははは、ワシが寝室まで運ぶよ」
剛が笑いながら、花梨をお姫様抱っこして寝室に運ぶ。
肉も主にレ級が食らい尽くして、後は酒だけである。
「今日は皆、泊まって行くと良い」
そんな剛の言葉に甘えて、残った七人は、花梨の話を夜遅くまでしていた。
翌朝。
花梨は、強烈な頭痛と共に目を覚ましたのは、言うまでもない。
「…………頭痛い…………何も覚えてない…………」
因みに、レ級に囁かれた内容を囁き返されて真っ赤になりながら、二度と泥酔するまい、と誓う花梨であった。
――――――
大晦日、愛達は司令官官舎と執務室の大掃除をしている。
真愛もお手伝いしている。
「おそうじー、おそうじー」
雑巾片手に、きゅっきゅと窓拭きを健太としている姿を見ながら、愛は去年の鎮守府大掃除を思い出していた。
「あれからもう一年かぁ…………いろいろあり過ぎてあっという間だったなあ」
感慨に耽っていると、司令官官舎の扉が開かれる。秋也とレ級がやって来た。
最近秋也とレ級は、何かとセットでやって来る。暁と翼は、艦娘達と女子隊員と共に女子寮の大掃除である。
「おっす、大掃除の手伝いに来たぜ」
「手伝いに来たぞー、感謝しろー」
「足立さん、レーちゃん、助かります」
秋也とレ級を加えた七人で、大掃除の開始である。
「あきやさま。まなね、お掃除できたの」
「おお、偉い偉い」
頭をナデナデする秋也に、ニパッと笑顔を見せる推定六歳児。
真愛も、秋也には懐いている。
「れーちゃんもほめてほめて」
「うん、偉い偉い。ママのお手伝いができていい子だね」
レ級も、真愛には優しい。
大掃除が終わると、おせちとお寿司を取りに行って、お夕飯である。
「よし!行け!」
「ああっバカ!!右だ!右を殴れ!!」
いつもの年末恒例の総合格闘技を見ながら、秋也とレ級がエキサイトしている。
真愛も、
「あのはげたおじさんつおい!でもどうしてかみのけないの?もうこんしんじゃったの?」
と、目をキラキラさせている。
因みに、選手の名誉の為に言っておくが、スキンヘッドでまだ20代である。
毛根とかそういう単語を誰が吹き込んだかは、謎である。
「はい、健太君」
「ありがとう」
健太は、愛に日本酒を注いでもらってぐいっと飲み干す。
漸く子ども達を寝かし付けたリーヴェもやって来る。
「お疲れ様。リーヴェの分も取ってあるからね、お寿司」
「ありがと……」
ちょこんと座ると、燿子からお酒を注がれ、くいっと飲み干す。
「今年も一年、いろいろあったわね」
燿子が感慨深げに話す。
「悲しいこともいっぱいあったけど、愛ちゃんと燿子、それにリーヴェの旦那さんになれたのが嬉しいよ」
健太はジレーネ戦役を思い出す。
「…………私は、また健太君に会えて、一緒にいられるのが幸せ」
リーヴェもニコっと笑って、健太を見る。
「今年は学校での思い出は娯楽部だけだったけど、来年は学校での思い出もたくさん作りたいね?」
愛がジュースを飲みながら、しみじみと語る。
「そうだな、学校での思い出は大事だからな。オレなんか親泣かせ、先公泣かせ、他人泣かせで……」
秋也も缶ビールを飲み干しながら、学生時代の悪行の数々を自慢する。
そんな秋也に、愛はふふっと笑って、変わらない人だな、と感じていた。
レ級もしみじみと酒を飲みながら、
「いやはや、茶番も終わって深海棲艦も人類と一緒に暮らし始めて、来年もいい年になりそうだ」
と、笑いながら語っている。
深海棲艦と人間と艦娘の共存が叶って半年。
来年もいい年になりそうだ。
ゴーン ゴーン
2019年が終わり、2020年になる。
今年は、東京でオリンピックが開かれる年だ。
「さて、お参りに行きましょう」
眠ってしまった真愛をベッドに寝かせると、愛は皆を振り返った。
『お~!』
近くの神社には、艦娘達もお詣りに来ていた。
「提督、今年も宜しくね」
「New Yearも宜しくね」
「今年もお世話になります。いい年でありますように」
「去年はいろいろあり過ぎたからね」
「そうですね」
「そうだね」
「レーちゃん、みんなにご迷惑掛けてない?」
今年は
愛達も、
『今年もよろしくお願いします!』
と、頭を下げる。
レ級は、暁に抱き付くと公衆の面前でキスをする。
「はい、新年チュー」
「なっ?」
暁の顔は真っ赤である。
レ級を含めた艦娘達と別れると、神社にお詣りに行く。
皆で祈った願いは、一緒だった。
(今年こそ平和な一年でありますように)
しかし、おそらく今年も、ドタバタは続くだろう。
主にレ級と翼が問題を起こすに違いないのだ。
余談だが、その翼は女子隊員達と、大阪で行われる男性アイドルの年越しカウントダウンコンサートにお出掛け中である。
なんとか、投稿できました
Tips《葵典太》
エピソードは古着屋総兵衛影始末シリーズからの輸入ネタです。
Tips《
イメージは真田丸で本多平八郎忠勝を演じた藤岡弘、氏とオフレッサーです。