中学生提督日記   作:SAMICO

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本日ショート(~4000文字前後)


真愛ちゃんとまゆちゃんととしちゃん

『ねえ、真愛ちゃんは遠くに行っちゃうの?』

 

いつもどおりにリヴァを背負い、(ひなた)を抱っこして、真愛と児童公園にやって来たリーヴェは、公園に入った途端駆け寄って来たとし子と麻由良に、涙目で見上げられた。

 

「えっ?何の話ですか?」

 

助けを求めるように麻由良のお母さんに視線を向けると、麻由良のお母さんはいつもの天然な笑顔でニコニコと答える。

 

「ほら、真愛ちゃんすくすくと大きくなってるでしょう?私が『真愛ちゃんは鎮守府の子だから、海に出るかもしれない』と言ったのが切っ掛けで、遠くに行っちゃうと思い込んで……」

 

その言葉に、リーヴェは頭痛がする思いがした。

何て余計なことを子供に言ってるんだ?と。

 

「い、いや、二人共いい?真愛は遠くに行ったりしないよ」

 

真愛も二人の頭を撫でるも、二人共首をブンブン振ってイヤイヤをする。

 

「ちんじゅふに行って、真愛ちゃんのママに遠くに行かないで!って言う!」

「うん!言わないと!」

「だから、真愛は遠くには……」

『嘘ついちゃ嫌だ!!』

 

二人共泣き出して、真愛も対応に困って三人共に泣き出してしまう。

 

『うわああああああん!!!』

 

三人共に抱き付いて、わんわん泣いているのを見ながら、リーヴェは頭を抱えた。

 

「どうするのこれ……」

 

――――――――

 

 

「……で、連れて来たのか?このチビ助達を?」

「そうなります」

 

丁度、監査と言う名の()()()()で鎮守府に居座っていた秋也に、ちびっこトリオを連れて戻って来たリーヴェは、経緯を話した。

 

「真愛ちゃんのママはどこ!?」

「すぐ出して!」

 

すごい剣幕で秋也に迫る、麻由良ととし子。

秋也は苦笑いしながら、

 

「ああ、真愛ちゃんのママは会議中……って分からねえか?今、お仕事のお話をしてんだ。ちびっこ達はそこで座って待ってな。おじちゃんがジュース持って来てやっから」

 

「だめっ!そうやって逃げるんでしょ!?」

「大人はそうやって逃げるんだい!」

「そーだそーだ!」

 

そう立ち上がるも、二人で通せんぼする。

正確には、真愛も通せんぼしている。

 

「お?」

 

秋也も困ってリーヴェを見るも、リーヴェの姿はない。

おそらく、こっちはこっちで秋也に押し付けて、二人の赤ん坊の世話モードに入ったようだ。

 

ガチャッと扉が開く。

そんな中入って来たのが、問題児レ級である。

 

「おっす、秋也。って何だ?このガキ共は?」

「おー、丁度いいところに来た。後任せるわ」

「は?」

 

キョトンとするレ級に秋也は、

 

「ばっか。俺も、警務隊の仕事で忙しいんだよ」

 

と言い、さっさと通せんぼをすり抜けて敵前逃亡してしまう。

 

「ちょ、何が何だか説明してから行けよ!?」

 

バタンと閉じられた扉に向かって叫ぶレ級に、二人のちびっこが迫る。

 

「山田麻由良です!」

「今田とし子です!」

「大石真愛です!」

 

三人共ペコリと挨拶する。

 

「おー、まゆちゃんにとしちゃんね。んで、真愛は知ってる」

「それな」

 

最近覚えた言葉を、よく使ってる真愛。

 

「それで、雁首揃えてどうしたん?」

 

しゃがんで笑顔を向けるレ級。大人の男には鬼畜だが、ちっちゃい子には優しいレ級である。

 

「真愛ちゃんが遠くに行っちゃうって」

「本当なの!?」

「それな!」

 

三人の言葉に、レ級はふむ……と首を捻る。

 

「真愛ちゃん、どんどん大きくなって行って……」

「このままじゃ、遠くの海に行っちゃうかも?って」

「それな」

 

レ級はそれぞれの顔を見回すと、真愛にチョップを入れる。

 

「あたっ」

 

真愛が頭を抑えると、二人のちびっこが真愛の前に立って、レ級に立ちはだかる。

 

「真愛ちゃんをいじめないで!」

「まゆちゃん、この人悪いお姉さんかも!」

 

身構える二人にレ級はあっはっはと笑うと、二人の勇敢なちびっこ達の頭を撫でる。

 

「まゆちゃんにとしちゃんは、小学校はいつ?」

『4月だよ!』

「うん。そのな、ちょっと大きいけど真愛も四月から小学生だ。成長も安定して来て、どんなに霊子を吸い取っても大きくならないみたいだよ?」

 

そう言うと、真愛がレ級にギューっと抱き付いて、全力で霊子を奪い取る。

 

「ちょ、やめ……ぎゃあああああ!!!」

 

数秒後、レ級は窶れた顔になっていた。

 

「だ、大丈夫?おねえちゃん?」

「目の周りが真っ黒だよ?」

 

対して真愛は、肌ツヤツヤでおめめキラキラしている。

成長していたのも打ち止めになって、これ以上急激な成長はしていない。

 

「ほらね!」

 

えっへんと胸を張る真愛に、レ級は明石印の霊子回復薬(栄養ドリンク)を飲んでから大きな溜め息を吐く。

 

「真愛、霊子吸い取りはやり過ぎんな、って言ったよね?ママに報告するよ?」

「ふぇ、それだけはやめて!」

「それじゃ、ごめんなさいは?」

「ごめんなさい……」

 

シュンとなっている真愛に、二人のちびっこは頭をナデナデしている。

 

「元気だして、真愛ちゃん」

「そうだよ。きちんとごめんなさい出来たね?」

「うん……!」

 

二人に撫でられると、笑顔に戻る真愛。

 

「それで、同じ小学校に行くことになるんじゃないかな?」

『そうなの?』

「そうなの」

 

目をキラキラさせて見つめる二人に、レ級は優しい笑みを浮かべてふうっと吐息を吐いて、今度は二人の頭を両手でナデナデする。

 

「そう、おんなじ小学一年生。心配ならママの所に行こうか?」

「えっ?今、お仕事のお話してるんじゃないの?」

「いいの?」

「それな」

 

三人のちびっこの問い掛けに、レ級はニヤァと笑うと、

 

「良いわけ無いじゃん。でも行くぞー」

『おー!』

 

レ級と愉快なちびっこ達の四人は、司令官執務室を後にした。

 

――――――――

 

「最近は、流入して来るDSビースト以外は特に問題もなく……」

 

副官の花梨が、資料を説明している所に、バタァンと勢いよく扉が開いた。

 

「おっす!愛ちゃん。ちびっこ共が質問に来たぞー」

『きましたー!』

 

全員の視線が、入って来た四人に注がれる。

 

「真愛ちゃんのママ、真愛ちゃんも来年小学校って本当ですか!?」

「遠くに行っちゃうって嘘だよね!?」

「それな」

 

三人の真剣な顔――と言っても真愛は半分巫山戯ているが――に、愛は優しい笑みを浮かべる。

 

「うん。真愛は、今度小学校に上がることになったんだよ?遠くには行ったりしないよ」

 

愛は、心の中で(私が解任されない限り)と、付け加えた。

 

「ほんと!?」

「やったぁ!」

 

ぎゅっと真愛に抱き付く二人のちびっこを見ながら、皆の顔がホンワカ顔になる。

いつもは渋い顔をしている筈の大塚二佐も、笑顔になっている。

 

「まあ、今日の議題はこの辺ですから、会議は解散しましょうか?」

 

副官の花梨がコホンと咳払いをすると、皆ぞろぞろと持ち場に戻って行く。

 

「あの、ごめんなさい、お仕事中に」

「ごめんなさい」

 

申し訳なさそうにする二人のちびっこに、愛はしゃがんで目線を合わせると、頭を撫でる。

 

「初めまして、私が真愛のママ。真愛とこれからも仲良くしてあげてね?」

『はいっ!』

 

この友情が、ここからずーっと続いて行くことを、三人は()()()()確信していた。

 

 

――――――――

 

意気揚々と、三人で児童公園に戻って来る。

そんな三人に、男の子が立ちはだかった。

 

「やいやい、待て」

 

その男の子は小学校中学年くらいで、野球のバットを持っている。

 

「あっ」

「帰ろ?」

 

その男の子は暴れん坊で有名で、小さい子をいじめている拓君と言う子だった。

 

「何なの、あの子?」

 

くいっと二人に引っ張られるのを振り払って、じいっと拓を見つめている。

 

「おい、チビ?何か俺様に用か?」

「用なんて無いよ。ここで遊びたいから退いて!」

「うるせえ!ここはオレが占領したんだよ!」

 

木製のバットを振り上げて威嚇する。

後ろの二人の女の子は、怯えて涙を浮かべる。

「怖い……」

「ううう……」

 

「あっ!!男の子が女の子を泣かせるなんていけないんだ!」

 

真愛は、二人を庇うように両手を広げて、拓を睨み付ける。

 

「うるせえ!!オレの言うことを聞かないやつはこうだ!」

 

そのままバットを振り下ろす。

 

「……っ!」

 

真愛は、ギラッとバットを睨み付けると、虚空からたこ焼き型艦戦が現れて、バット目掛けて機銃を乱射する。

 

ズダダダダダダ!!

 

バットは根元から圧し折れると、カランと音を立てて転がった。

放ったのは()()である。

人間に当たれば、殺してしまえるほどの殺傷力を持った武器を、真愛はバットに向けた。

 

「な……!?」

 

何が起こったかわからない拓に、真愛は上空を周回しているたこ焼き型艦載機に向けて命令する。

 

「ペイント弾装填、ファイアー!」

 

ズダダダダダダ!!!

 

「うわあああああああ!!!!」

 

パシャパシャパシャ!!

 

拓の体は、色とりどりの水性絵の具で染め上げられて行く。

真愛の真っ白なワンピースも、近くにいた為に跳ねた絵の具で汚れて行く。

後ろの二人にかからないように、真愛は両手を広げて守っている。

 

「うわああ!!!助けてくれぇ!!!」

「第二弾装填……ファイ」

 

逃げ出す拓に向かって追撃をしようと、指を上げて振り下ろそうとすると、二人がガシッと押さえる。

 

「もうだめ!」

「これ以上やっちゃうと、真愛ちゃんがいじめっ子だよ!」

「あっ……」

 

真愛は気づいてしまった……拓が泣きながら逃げて行ったのを……

 

 

――――――――

 

「うちの娘が申し訳ありませんでした」

「申し訳ありません」

 

ペイント塗れで帰って来た真愛と麻由良ととし子を見て、経緯を聞いた愛はすぐに真愛をゲンコツの刑に処し、麻由良の母経由で住所を聞き出して、健太と共に拓の家にお詫びの茶菓子を持って来ていた。

もちろん制服での謝罪である。

 

「はっはっは、うちのバカ息子がまた悪さをしたんだろう?いい薬さね」

 

そんな母の隣で、拓は神妙にしている。この恰幅のいい拓のお母さんにこってり叱られていたのだろう。

 

「いや、いくらなんでもやり過ぎで……本当に申し訳ありません」

 

隣で、同じく神妙にしている真愛の頭をぐいっと下げて謝る。

 

「……ごめんなさい」

 

不満そうに謝る真愛に、拓のお母さんは豪快に笑ってから、

 

「うちの人は死んじゃってねえ、何年も前に深海棲艦にやられて。それで女手一つで育ててたんだけど、まだまだ教育が足りなかったみたいだね?申し訳ないよ」

 

同じく、ぐいっと拓の頭を下げる。

 

「ごめんな」

 

拓も不満そうに謝る。

 

『…………』

 

それから、じーっと拓の顔を上目遣いで見上げる真愛。

拓は、そんな真愛を可愛いと思ったのか、

 

「……そ、そんなに謝るなら、家来にしてやってもいいぞ?」

「としちゃんやまゆちゃんにも意地悪しない?」

「お、おう」

「わぁい!やったぁ!ありがとう!」

 

真愛は喜ぶと、拓に抱き付いてほっぺにキスをする。

拓は、顔を真っ赤にして振り解こうとするが、姫クラスの深海棲艦を振り解くなんて出来ない。

 

「わっ、ばか!よせよ!?」

 

そんな様子を、三人は楽しそうに眺めていた。

 

因みに帰った後は、秋也を含めた大人一同による説教と、実弾使用禁止命令が下されたのは言うまでもない。

 

 

――――――――

遠い未来。

 

「なんてことがあったね?」

 

海沿いの道路を、並んで帰る中学生の二人。

 

「そうだな」

 

男の子の方が思い出して、少し顔を背ける。

 

「ちゅーしれ」

 

女の子の方が男の子の前に立ちはだかると、顔を突き出すと目を閉じる。

 

「はいはい」

 

男の子の方は大きな溜め息を吐くと、女の子を抱き寄せて軽く唇にキスをする。

 

『んっ……』

 

ぱっと目を開けると、するりと抱き寄せた男の子から抜け出して、

 

「それじゃあ、また明日ね?」

 

そう言って、走って行ってしまう。

 

「おうっ!!またな」

 

そんな彼女を見送る男の子……

これは、一つの未来のカタチである。




■本日のお題(toshi-tomiyamaさん提供)

・まゆちゃんととしちゃん(中学生)
→真愛ちゃんが「迷子」になった時に知り合った、麻由良ちゃんととし子ちゃん……
遊んでいるうちに、自分達より大きくなった真愛ちゃんが、遠くに行ってしまうんじゃないかと大騒ぎ……
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