ガタガタになった鎮守府に追い打ちをかけるような大事件が勃発する。
そしてそんな鎮守府を立て直そうと奔走する仲間たち。
そしておっさんたちの悪企みが始まる。
サーカス団の第二幕のための準備が始まる。
「機動要塞デスペラン」
その名称を出したハーフェンに笠原三尉は口を開く
「機動要塞デスペランとやらの概要をお願いします」
ハーフェンは、概要ですよと前置いてから愛の方を見て語り始める。
「機動要塞デスペラン。我々ハーフェン派深海棲艦がこの数年をかけて作り出した硫黄島要塞に次いで制作した、第2の要塞。駐留艦隊であるクラーリン級深海棲艦は一隻一隻がル級と同様で、陸上にも展開可能の水陸両用艦、クラーリン級には知性はなく、ただ司令官の命令するままに破壊と殺戮を行うだけの代物。現在は突然現れた少年型深海棲艦に占領されて、我々は深海にある本拠地まで撤退しなくてはならなくなりました」
大きなため息を吐くハーフェンに愛は続きを促す。
「要塞そのものは、半球体で浮かんでいます。半径500m。要塞の武装は全て重巡クラスの主砲を取り揃えており、ジレーネ側深海棲艦と互角に戦っていた難攻不落の要塞です。ただ不思議なのは少年型深海棲艦をクラーリンが出迎えたことです。まさにデスペランに選ばれたかのような………」
「そこに健太はいるんですね。まずは要塞の陥落を考えないよいけませんね」
「どうやって?」
挑発的なハーフェンに愛は暫し考える。
「思いつくまでは先送りでしょうね。まさかデスペラン側から攻撃を仕掛けて来るとは思わないですし」
「でしょうねぇ」
その愛の言葉にハーフェンも同意したが、笠原三尉は妙な不安感を感じていた。
「ともあれ、様子を見ましょう。またいずれここで……」
――――――――
その深夜。
幕僚たちは寝る間も惜しんでデスペランの捜索のための緊急幕僚会議が開かれていた。
洋上を哨戒中の土佐・室戸鎮守府合同艦隊の暫定旗艦ビスマルクよりから緊急連絡が入った。
「未知の深海棲艦が大挙して押し寄せ、艦娘を無視して突破されたわ」
Jアラートのサイレンが鳴り響く中、連装砲ちゃんも出動して高知に急行していた。
しかし全てが遅かった……。
その晩、進行線上の民間人および高知駐屯地は新型の深海棲艦に皆殺しにされた。
四国警務隊片桐一佐以下駐屯地にいた全員が虐殺され、
第50普通科連隊、第14後方支援隊、第2普通科直接支援小隊
第348会計隊高知派遣隊 第323基地通信中隊高知派遣隊 高知駐屯地業務隊
133地区警務隊高知派遣隊以全員が虐殺された。
建物は炎上し、焼け焦げた死体やらで悲惨な有様だった。
そして周囲の民家も多数被害を受け、新型深海棲艦は再び陸上を並び帰って行った。
小杉一尉・笠原三尉の護衛の元、高知駐屯地に駆けつけたときにはもう遅かった。
片桐一佐が槍に貫かれ晒された状態で死んでいた。
その周囲には逃げ遅れた隊員や、周囲の民間人の死体まで無残に切り裂かれ晒されていた。
「……………これは……」
愛は其の惨状に絶句する他無かった。
「これが新型深海棲艦クラーリン型の威力でしょうか……」
ポツリと笠原三尉が呟いた。
「いずれにせよ、四国警務隊は機能不全に陥りますな……」
小杉一尉が呟いた。いずれにせよ、生存者がいない以上、ここにとどまるのは危険だと小杉一尉が判断して、室戸鎮守府に引き上げていった。
洋上では戻ってくるクラーリン級深海棲艦をビスマルクたちが迎撃体制に移るが、反撃も回避もせずただ帰るというだけのクラーリン型を何隻か沈めるだけにとどまった。
まさに、やることは済んだからお前らには用はない。そう言わんばかりの態度であった。
機能不全に陥っているのも室戸鎮守府も同様だった。高知駐屯地は焼け焦げてしまって、リーヴェサーカスの戦術案など、重要な書類から、司令官用コンピューター、司令官用携帯電話まで焼失してしまっているのだ。
司令室にあったものすべてが引き上げられていたのだった。
更に厄介なのは室戸鎮守府を監視している生き残りである。
この惨事の容疑者を室戸鎮守府と決めつけ監視し、出入りを著しく制限した。全員軟禁状態と化していた。
監視のため生き残っていたのは2個中隊。こちらは陸戦隊1個中隊である。
相手はさらなる命令もないまま、片桐一佐の言い残した自由裁量で締め付けはより過激になってきていた。
室戸鎮守府に戻ってきた愛たちを犯人呼ばわりして、司令官執務室に軟禁した。
また、残っていた部隊員には女性がいなかったため、愛の着替えなども男性の監視付きである。
其の処遇に激怒していたのは陸戦隊員である。
暴発を起こさないように小杉一尉が睨みを効かせ、翼や笠原三尉、女性隊員や艦娘達が血の気の多すぎる男性隊員をなんとか慰撫し押さえつけている状態である。
愛は司令官デスクに座り、燿子は其の横に控えながら軟禁状態である。
デスペランを攻略するにせよ、何にせよこのままでは何も出来ない状態だった。
この際スマートフォンも没収され、破壊された。
愛が高菜二佐に連絡を取れる手段を完全に失ってしまっていた。
こうして監視が続いて数日経っていた。
現場の自由裁量はどんどんとエスカレートしていた。
ついに女子官舎・艦娘寮の臨検が行われた。
家探しのように、証拠の品を探る連中。
だが、深海提督との繋がりはあの臨時会議の参加者の記憶の中だけに残っているため
どこを探しても、高知駐屯地虐殺や深海棲艦との内通の記録は見つからなかった。
何れにせよ、ついには艦娘の出撃禁止命令が出されるに至った。
基地航空隊も出撃が禁止され、室戸鎮守府は完全にロックアウト状態に陥っていた。
足立陸将補も四国に足を運びたいと常々思っていたが、副長としての仕事が多忙すぎて東京から離れられなくなっていた。
同じく七原一尉も、大本営から次々と降りてくる副長業務の手伝いで東京に缶詰状態になていた。
結果、其のことで二人の命が救われたのが事実であるが、当の本人は四国の異常事態に結果的に何も出来ないでいた。
宮戸島の高菜二佐も、愛との連絡手段が完全に途絶えてしまったのと、
愛自身からの、関わらないほうがいいという忠告を受けて、自身の室戸行きを諦めていた。
それも、大貫空将直々に、四国への介入禁止命令がでていたのだった。
これが湊子が皇族であったならまだ打つ手はあったものの、一民間人になってしまった以上政治ルートを失った高菜二佐が取れるべき道は何もなかった。
せめてもと、自身の口座から当面の資金を振り込んで、愛の足しになれることを祈る他無かった。
愛は師匠の気遣いを感謝しながら、その資金を有効活用した。
なんとか没収を免れたタブレットで、戦術書を読みながら過ごしつつ、軟禁状態にあるからと監視している警務隊員に買い物に行かせた。
其の中には女子としての必需品も含まれていたため、結局燿子の外出が可能になった。
「流石にいい男の人がナプキンやタンポンを買いに行くのはハードル高かったですね」
と悪戯っぽく笑いながら、厳重な監視網から蟻の一穴をあけていた。
燿子は、そのまま帰ってこなかった。監視の目を振り切って土佐に走らせたのだ。
ようやく外部に室戸鎮守府のロックアウトと機能麻痺が伝わったのだ。
結果、郷里三佐率いる土佐鎮守府の陸戦隊『海援隊』が半分応援に駆けつけた。
この土佐鎮守府の『海援隊』は並の一個中隊ではなく、2個中隊で1個連隊に相当する猛者たちである。室戸鎮守府内に監視を続けていた警務隊員をすべて叩き出した。
この緊急時の間に、坂本一佐は陸准将補昇進・四国警務隊長代行の任命を受けていた。
足立は多忙すぎるスケジュールの中自身の権限で打てる最善の手を打っていたのだ。
郷里三佐はその坂本准将補の名代・警務隊副隊長代行として命令を伝えた。
曰く、四国警務隊本部を坂本陸準将補率いる土佐鎮守府に移す、というものだった。
警務隊員は郷里三佐のもと、土佐鎮守府に引き上げていった。
生き残りが2個中隊半とはいえ、この警務隊員には本来の警務隊の任務についてもらわねば困るのだ。
土佐鎮守府の陸戦隊を合わせて3個中大半で四国の警務隊任務を熟さねばならなくなった。
だが、坂本が手綱を握っている限りは暴走は起こらないだろう。
ようやく室戸鎮守府に人と物の出入りが可能になった。
郷里三佐から、花梨は坂本准将補の次席副官という立場で補職したと伝えられると幕僚たちの心配も一つ減った。
ようやく機能不全に陥った室戸鎮守府の立て直しが始まった。
司令官コンピュータは旧室戸鎮守府の置き去りになったコンピュータと無線装置が生きていたため、それを引き上げた。
まずは、室戸鎮守府の基本方針を決定せねばならない。
まずは燿子を自由裁量で司令官が任命できる最大の階級の曹長に任命して、次席副官にした。
これは、燿子の愛の力になりたい、という意向もさることながら陸戦一筋だった笠原三尉の負担軽減でもあった
「まずは、デスペランの位置を補足しないことには話しになりませんね。今回の一件ではっきりしました。デスペランを操っているのは健太です。でなければ艦娘を放置して高知駐屯地だけを狙った理由になりません」
愛がそう切り出すと、全員が頷いた。
「まず、ビスマルク。アレがデスペランの全戦力として、真正面から戦うことは可能ですか?」
「まず無理ね。土佐鎮との連合艦隊でなんとか拡大サーカスを決めれば勝機がある程度ね」
愛の問いかけにビスマルクは即座に首を振った。
「では、デスペランを真正面から落とす作戦は捨てましょう。よって第2の案を取ります。デスペランからなんとか土佐鎮守府に攻撃を仕掛けるよう仕向けましょう」
「どういうこと?」
ビスマルクが愛の意図を掴めないでいると、愛はふっと笑って
「高知の虐殺が健太の復讐だとするなら、私を土佐鎮守府で処刑すると喧伝してもらえば何れ健太の耳にも入るでしょう。クラーリンの全戦力を持って土佐に襲いかかるでしょうから、土佐鎮守府司令部を無人化して、廃止された安芸鎮守府跡地に司令部を移転してもらった上で、艦娘と郷里三佐、あとは2個中隊で1個連隊に匹敵する土佐が誇る熟練陸戦隊『海援隊』に迎撃してもらいましょう。郷里三佐が本気になればクラーリンをなんとか倒してもらえると信じたいです」
「なるほど」
岩崎二尉が頷く。信頼と実績の説得力上昇力である。
「それで、どうなさるおつもりですか?」
大塚一尉が口を開くと
「クラーリンの出処をたどって、室戸泊地の艦娘でデスペランを探し当てます。私も戦場に出ます。なんとか健太に呼びかける方法があればいいのですが……今回はデスペランの位置を確認するだけでいいです。確認さえできれば監視衛星で追尾することは可能です。せっかくのアメリカさんの軍事衛星を自衛隊も使わせて貰えるのですからそれくらいの努力は大本営にしてもらいましょう」
「つまりは、提督自ら撒き餌になるというのですか」
「健太にとっては、私自身が最大のご馳走ですからね。現状私達は3つの敵を抱えています。日本に巣食う反艦娘派の連中、ジレーネに感化された将棋の駒深海棲艦、そしてジレーネカッコカリ。それにデスペランが増えたら、正直生命がいくらあっても持たないです」
小杉一尉の質問に冗談めかして応える愛だったが実際の所本音でもあった。
「最終的には、我々の派閥のボスに直接面会して真意を問いたいところですが、差し当たりは、ハーフェン率いる、深海棲艦ハーフェン派を頼るほか無いということですね。高菜二佐の考えていた深海棲艦との共闘の可能性がいよいよ現実味を増してきたということですね……」
「分かったわ。私達はクラーリン型深海棲艦のやってくる位置を分析してデスペランを見つけ出せばいいのね。ところで、攻略はしなくていいの?」
ビスマルクの言葉に愛は首を振る。
「正直、情報不足で攻略まで至れないと思います。今回は私の愛する健太の居場所さえOKです。それより……中長期的な戦略を考えなくてはいけないと思います。反艦娘派は倒すのは無理でしょう。戦後GHQ体制から脈々と受け継がれた日本の国制そのものですから。なので、ジレーネを滅ぼすほか有りませんね。ジレーネと反艦娘派は潜在的には敵同士なので、結託することはないかと思います。人類は滅びたくないですもん。ジレーネさえ滅びればあとは深海棲艦とゆるゆる戦争をし続けていえばいいわけです。下級の深海棲艦はトドや海獣と同じようなものですから、災害対策としての艦娘戦力の有用性はなくなりはしません」
「なるほど」
岩崎二尉が頷く。
「そして私はもう一つ大きな仕事があります」
そう言うと全員が集中する。
「中学生としての仕事です。反艦娘派の目を鎮守府からそらすためにも、粛々と中学生をやらなくてはいけません、ただでさえ勉強があまり好きでないのに、勉強が遅れてるんですから。そこは隣りにいる優等生と未来の弁護士に頼りましょう」
そう言うと、燿子がクスッと笑う。あんなに酷い目にあったのに、強い子である。
「学校にも潜在的な敵がいるでしょうね。今回の一件で迷惑をかけたので、私に反感を持つ人も居るでしょう。最悪いじめのターゲットになるかもしれませんが、そこは恵奈カルテットの力を借ります。これが私の考える基本戦略です。デスペランの位置を補足して、攻略プランを考え、ジレーネを滅ぼす。洋上に出ればジレーネと出会えるかもしれません。其の情報も得たいと考えます。其のためには皆さんのお力を借りたいと思います。宜しくおねがいします」
深々と頭を下げると小杉一尉が立ち上がる。
「私は大貫派ですが、同時に笹野派でもあります。室戸鎮守府陸戦隊「
続いて岩崎二尉が立ち上がる。
「いやあ、私は笹野提督がこんな年齢で頑張っている姿を見ると、つい全力で支えたくなるものです。小官も、提督に忠誠を尽くします」
そして、ビスマルク達艦娘も立ち上がる
「私達は最初から愛ちゃんファンクラブよ」
「そうよ、Meは提督にloyaltyを誓うわ!」
「艦娘達は皆あなたの味方です」
「リーヴェサーカス団の団長たる笹野愛にはサーカスの収支が黒字になるまでは生き残っていただかねば困ります」
「北上さんも私も同意見です」
「大井っちのいうとおり。なんとしても20代で愛ちゃんママをグランマにさせる計画もあるし」
「レディとして、クイーンである愛ちゃんに忠誠を誓うわ」
ビスマルクから始まり、アイオワ、鳳翔、伊勢、大井に北上、それに暁が続く。
「あたしも、最初っから愛ちゃん派だよ」
会議でずっと黙っていた翼も立ち上がり敬礼する
「小官も、提督に忠誠を誓います」
「私もよ、愛ちゃん」
笠原三尉と燿子も愛に向かって敬礼する。
最後に大塚一尉が立ち上がる。
「全く困ったものだ。自衛官ともあろうものが国家にではなく個人に忠誠を尽くすなど。軍閥化の第一歩だな。だが、私も同意見だ。リーヴェサーカス団団長に敬礼!」
全員が敬礼をすると、愛も立ち上がって答礼する。
「やりましょう!まずはデスペラン捕捉作戦です!」
こうして、室戸鎮守府艦隊は『リーヴェサーカス団』となった。
――――――――
「……というわけで、坂本提督の協力をお願いします」
通信では盗聴の危険があるため、愛は笠原三尉の護衛の元、土佐鎮守府を訪れていた。
「なるほど、土佐から再び維新を目指すか、面白いぜよ」
話を聞いた坂本准将補はニヤリと笑みを浮かべる。
さすがは坂本龍馬かぶれである。
「お願いですから坂本龍馬のような最後だけにはならないでくださいね。坂本さんには花梨さんと郷里三佐の仲人になってもらわなければ困ります」
其の軽口に、副官として控えていた葵はくすっと笑い、次席副官の花梨は顔を赤らめる。
当の本人は大笑いである。
「あっはっは、了解ぜよ。では、司令部を安芸に移し、土佐を司令部不在にした上で、警務隊本部を土佐に残したまま、笹野愛を処刑すると喧伝すれば良いがぜよ?あんアホどもには少々怖い思いをさせるべきじゃき」
「はい、クラーリン型深海棲艦は一隻がル級と同じと聞きます。十分に気をつけてください」
「了解ぜよ」
「それでは、タイミングはおまかせします。盗聴の危険もあるので、通信は控えましょう。こちらは哨戒網を密にしてクラーリン型の攻撃を監視します」
「わかったきに」
「それと、先日は失礼いたしました。お見苦しいところをお見せしました」
「……いやあ、あれはワシが無神経だったぜよ」
坂本准将補は優しく語ると、ぽんと頭を撫でる。
――――――――
坂本たちが準備を進めている中、愛はようやく学校に登校できるようになった。
『愛ちゃん、待ってたよ!』
1年1組の皆は全員愛を歓迎してくれていた。
「あれ、何で杏子や真由も居るの?」
いつの間にかカルテット総結集になっていた1組にキョトンとしていると
「協力者は多ければいいと思って、クラス移籍を校長先生に直談判してきた」
美雪がドヤ顔でいうと、真由が補足する。
「美雪のお父さんが教育委員会だから、それ経由で半分脅迫で実現したんだよ」
補足されると美雪は
「脅迫ゆーな、人聞き悪い」
と、不貞腐れるのを皆がどっと笑う。
担任の先生が
「いろいろいう人は居るけれど、少なくともこのクラスは笹野さんの味方だよ」
そう穏やかな声でいうと、「さあ授業ですよ」
と皆を着席させる。
他のクラスや、上級生から因縁をつけられたり嫌がらせを受けたりもしていたが、
クラスみんなで対抗した。
「おう、喧嘩なら任せとけ」
大野くんが自信満々にいうと男子たちが次々に「俺も!」「俺も!」と言い出す。
「女子だって負けてないんだから」
そう恵奈ちゃんがいうと、杏子が
「柔道初段のデブがここにいますがなにか」
と自虐ネタを加えて前に出るとクラスにもどっと笑いが上がる。
教室移動などはクラス全員でやったし、着替えなどもしっかりガードした。
上級生からの因縁つけは主に大野くんと杏子が対応した。
物理的に説得するという方法で。
担任の先生は職員室で孤軍奮闘をしてくれて、一人、また一人協力者を獲得していった。
担任の先生の願いは「学校にいるときくらいは中学生でいて欲しい」のだった。
ある意味、1年1組もリーヴェサーカス団の一員だった。
――――――――
その頃、東京では足立陸将補が大貫総監の元を訪れていた。
何時もの完全防音室で余人を交えずの会談である。
「大貫総監にお話があります」
「四国の件か……あれはそのままでいい」
食って掛かる勢いの足立を手で制するとソファーを進める。
「失礼しました」
「足立くんの言いたいことは最もだ、だがこれは君のためでもある」
そう言うと、ソファーに足立が座るのを確認すると、大貫も腰掛ける。
「実の所を言うと、深海棲艦と艦娘の戦争は私が仕組んだものなのだ」
「んなっ!?」
足立は二の句が告げなかった。
「頭がおかしくなったと思ってくれて構わんが私は人類が滅びた未来からやって来た」
「未来……ですか?」
「そう。深海棲艦と艦娘は根源的には同じものなのだよ。だから深海棲艦のコアで艦娘が生まれるし、艦娘が沈むと深海棲艦になる」
「高菜二佐のいう通り、深海棲艦と全面戦争をするというのはナンセンスということですな」
足立がニヤッと笑いながらいうと、大貫は目をまん丸くしてから笑い出す。
「あの男は事の本質を掴んでいたな。それこそ、リーヴェの導き手に相応しかったのだな。勿論、宮戸島の一件もマッチポンプだ」
「………」
「高菜直哉という男には、リーヴェ……笹野愛の導き手になって貰う必要があった」
「小官から直接査察の権限を取り上げたのも……」
「そう、連中をあぶり出すため。高知駐屯地の一件は私にとっては予想外ではあったが……」
足立は不快さを隠そうとしなかった。
「閣下は深海棲艦と艦娘と果てしなき茶番を繰り広げて何をお目指しになっているのですか?」
「その先の『真の敵』を滅ぼすためさ」
足立は敢えてそれについて何も口を挟まなかった。
「私はあっちの世界でも深海棲艦と戦う艦娘本部にいた。名前は少し違ったが。その世界からは、艦娘も深海棲艦も両方居なくなった。めでたしめでたし、ではなかったのだ。 海の化物セイレーン。ドイツ語でいうならジレーネが突如現れ、深海棲艦以上の猛威を奮った。前線で戦う歩兵。特攻隊のように突き進む香車 トリッキーに進む桂馬 疾風のごとく蹂躙する飛車・角行 そして、王を固める銀将に金将。 そして連中は本土で化けた。『成り』だ。『成り』になったジレーネは金将のごとく無双をし、次々と滅ぼしていった。私達は、その世界を放棄して逃げ出したのだ、平行世界の過去に。明石の力で」
「なるほど、明石の魔改造バカは擬態だったのですな」
ようやく納得がいった明石の暴走に足立は苦虫を噛むような表情を浮かべていた。
「我々の敵は2つある。ジレーネと日本そのものさ。イ級がと金になったとき確信したよ。ジレーネは存在すると。」
「………なるほど、小官には納得がいきました。艦娘をこれ以上社会進出させないため、艦娘の関連の法整備が遅々として進まないということですかな」
「そう、正解だ。 そして君の役目は中立を保つことだ。 ちなみに、提督怪死事件の主犯も私だ」
「でしょうな。反艦娘派の温床だった各地の警務隊を動かすのに私から権限を取り上げたんですな。私だってそのくらいの事はわかります、手足を当てましょうか。浜松の村上兄妹」
ほう、と漏らした大貫にニヤッと笑った足立は一言続ける
「私の持病は腰痛でしてな。宮本くんには不快な思いをさせたが、彼を通して誰がどういう立ち位置か把握できました。まさか本当に腰痛を持病にしてしまうとは思いませんでしたが」
その言葉に大貫は再び目を丸くする。
「やはり、名古屋以西にそういった連中を固めたんですな。であれば高菜二佐には精々宮戸島で騒動を起こして、のんきに暮らして連中の目を欺いてもらわなければなりませんな」
「うむ、最終局面に必要となる電、薄雲の指揮を取れるのは彼だけだ」
ニヤニヤ笑いながら足立の顔を見ると、足立もニヤリと笑っていた。
「では小官は何も知らない風を装って、忙しい日々を送らねばなりませんな。どうも小官は仕事が骨休めのようでしてな。万事型通りの生き方しかできない……と思わせなければなりませんからな」
「うむ。君もあまり介入しすぎると命の危険を招く。無論私もそうだ。若人にすべてを任せっきりになるのは申し訳ないが、今は雌伏の時だ。奴らをあぶり出すまで。その時はもう一つの敵も奴らに対抗せざるを得ない。その後は……」
「まあ、ゆるゆると深海棲艦との果てしなき戦争が始まりますな、災害派遣としての艦娘の有用性。その後は自由裁量でじわりじわりと、艦娘との共存を既成事実化すればいい、ということですな。では小官はせっかく頂いた休暇ポスト、存分に満喫させていただきます」
「うむ、頼む」
こうして悪い顔をしたおっさん二人はにやりと笑った
《次回予告》
次回予告が予告にならない(そこまで進まなかった、あと予告を無視し始めた)のでやめました。
《こぼれ話》
デスペランとクラーリン型深海棲艦はシュヴァルツシルトから名前を拝借しました。