ではどうぞ・・・
迷いの竹林にて
「ん?おい!?何だこれは?!」
顔に照り付ける太陽の光に目醒めいつもの所へ遊びに行くか、と廃屋を出て数分。
妹紅は目前に広がる残骸が散らばる平地を捉え驚愕する。
そうその残骸とは竹が根元から折られていたり無惨に粉砕されその身を地に横たえていた。
「誰がこんな事を…?!」
歯をくいしばり拳を固く握って未だ見ぬ怨敵への憎しみを込め思いを馳せる。
「筍が無くなったじゃないかー!!!」
おいそこか、とツッコミを入れたい所だが如何せん彼女に此方の声は聞こえない様である。
「こっちは太陽の畑か…。ん?…まさか幽香がやったのか?!」
竹林とその周辺の構造を知る妹紅は恐らく太陽の畑方面から切り開かれている荒れた道を見てあらゆる事象を目測する。
「いや、違うな、幽香じゃない。もしそうならこれだけ骨が折れる事をするはずない。」
そう、妹紅が視線を後ろに向けるとさらに曲線を描く様に長い道が続いていたのだ。
「まぁ犯人を突き止める為、これ以上筍を減らさない為に辿ってくか。」
荒れた道は竹の破片で進行の妨げになるため妹紅は宙に飛び道を辿って行く。
それから少しの事だった。
断続的に空気が震え自身の肌にその振動が衝突しこれは何か強大な者の足踏みだと伝える。
「ふむ、これは元凶か…。」
そう呟くと飛行速度を上げ敵の下へ急いだ。
…
……
「ぐあああぁぁぁ――。」
辺りに響き渡るノイズの低い音。
「何だ、こいつは?!」
目前に道を塞ぐ様にしていたのは15mは裕に越えるだろう躰で頭上に白く発光する輪が浮かび、背に一対の白い翼を持つと言う頭の輪と翼を見れば天使と思われるが、その身長はで漆黒の躰に所々に半透明な紅い物が嵌まっている。
その黒い天使の黒くつやのある双眼は一人の蓬莱人を捉え紅く鈍く輝く。
「ぐああぁぁぁ。」
辺り一面に数多の羽毛を舞い散らした黒天使は端から一定間隔に縦長の赤い装甲を纏った翼をはためかせた後、右腕を振り上げた。
斜めだ!と相手の攻撃を見切った妹紅は風に長い白髪を靡かせながら敵の左へと進み出る。
が、突如黒天使の輝く円が生まれその光に目が眩んだ為進行を止められる。
「ッ!?」
そしてそれと共に耳元を圧縮された空気が通り抜ける。
妹紅は攻撃の軌道から数メートル離れているにも関わらず風が届いた事に気を取られそうになるが妹紅はさらに警戒を強め精察する。
お互い一歩も動かず睨み合いが続く。
「………、とりあえず。」
先に動いたのは妹紅だった。
丸く黄色に光る模様が浮かび上がると同時に攻撃が来ると目測を建てた妹紅は先手必勝と考え妖術で炎弾を5発放つ。
「どうだ?!」
しかしその攻撃は避けられる。
その鈍重な身に似合わぬ程に高く跳躍することで…。
だがやはり己の重さ故に滞空は出来ない様で直ぐさま跳んだ地点に質量と重力が加わり音速並の速度で落下した。
響く衝突の音と立ち上る砂煙。
「ケホッケホッ、何なんだほんとうに…。」
開いた左手で口と鼻を覆いもう片方の手で舞う砂を払い除ける。
だが妹紅は得体の知れないものに戦慄するが面白いとも思った。
―本気で殺れる。
そう思いほくそ笑むとすっかり薄くなった煙の向こう側に動かない敵が見えてくる。
「あれは……、何だ?」
それは左翼・右翼を躰を隠す様に躰の前で合わせ防壁を思わせるものだった。
「どう来る…?」
今のこの状況、普通なら再び何らかの方法で続けて攻撃するのが普通だろう。
だが、この黒天使は何を思ったのか装甲で躰を覆うと言う防御を選択したのだ。
「なら、此方から行かせて貰うのみ。」
妹紅はこれが何かの罠だと判断したが未だに有効打を与えていない為、また、この状態では埒が空かないと思ったが為にこの一撃を喰らわせんと黒天使との間隔を狭め、開いた右手を前に突き出す。
「はぁ!」
そこで妹紅の手に炎が顕れバスケットボール大の大きさに集まり収縮し揺らぐそれは太陽の
そして炎弾が爆発するとそこから翼も合わせ幅3mにもなる
続いて2羽、3羽と合計5羽が後に続き残炎の軌跡を描く。
誰もがそう確信しただろう。
だが相手は1羽目が当たる寸前に自らの合わせた翼を高々と広げ風を巻き起こす。
その風は刃と化し竹を切り刻み周辺を平地にする。
「ぐっ?!」
刃が風勢に耐えながらも飛ばされそうな体に切傷を次々に付けていく。
未だに慣れない痛みに顔を顰める妹紅。
風が収まり漸く顔を護っていた右腕を降ろし正面を見据える。
そこには最初に発見した時と同じく傷一つ無い体の黒天使が立っていた。
攻撃の直後で直ぐに攻撃に写さないのか再び見下ろしている眼に妹紅は争いに負けた犬の様に視線を下に降ろしてしまう。
「なっ?!」
そして眼を下ろした先には誰かの片腕と片足が投げ棄てられていた。
それを認識した瞬間、それは己の一部であったという仮説が浮かぶ。
妹紅は再起した痛みを感じその部位を見ると肌色の先は見慣れたものではなく紅い液体が滴り新緑の竹片を真っ赤に染めていた。
只、外れた肉片や血の臭いは随分と慣れたものの為それを確認し僅かに嫌がる顔をしただけで再び顔を敵の顔へ向ける。
「ぐおぉぉぉぉぉ。」
雄叫びを上げる黒天使の視線の先には不老不死の妙薬により変質した体質の為、一瞬の隙に生え終えている左腕と右足を試しに動かしている妹紅がいた。
「さぁ、死闘はこれからだ!」
元々の輝きを取り戻した紅き瞳を天使へと力強く向けた妹紅は疲労を負った体に鞭を打ち飛翔する。
「そこ!待ってください!!」
右から突然響き渡る声に動きを止めてしまう妹紅。
黒天使も突然の援護に態勢を整える為、一旦後ろへ数歩下がる。
「お前は、輝夜のとこの玉兎じゃないか!」
「そうです。お師匠様に外が五月蝿いからって見回りと頼まれたんですよ。そしたら妹紅さんがいたんです。」
「そうか。なら共闘といくか!。」
「そうですね。あ、てゐもいますよ!?」
「ん?」
後ろを見ると竹が重なり他と比べると違和感がある束の横から兎の尻尾がのぞいていた。
「おーい、てゐ?もうそこに居るのは知ってるぞー。」
妹紅の呼び掛けに垂れていた兎の尻尾がびくっと立ち上がる。
「てゐ?私も知ってるんですからねー。」
妹紅に続きてゐに呼び掛ける鈴仙の声に観念したのか姿を現す小柄な兎の妖怪。
「わたしゃ非戦闘員なんだからもっと労わってよー。」
「嘘言え!お前が戦いならまだしも弾幕ごっこやってたのは周知の事実だ。」
げんなりとした顔のてゐにそう言う妹紅。
「私って何時の間に有名人になった?」
「知らん。」
「知りません。」
てゐは自身の放った言葉に短く返す二人に溜息を吐く。
「分かったよ。出来るだけやる。これで良い?」
「おう、そんじゃやるか。三人寄ればなんとやらだ。あいつをどうやって倒すか、を試すか。」
「あ、私さ、さっきまで見てたけどさ。あいつが攻撃を繰り出す度にあの紅い玉から輪が浮かぶからその玉を壊したらどうなる?」
てゐのその言葉に妹紅は納得する。
端的に言えば動力を破壊する、と言うことだ。
「おっしゃ、私は真正面から行く。レイセンは右から、てゐは左からだ。破壊する玉は15個の内の胸部の一つ。」
「分かりました。」
「分かった。」
三つ又に分かれた三人は黒天使の下へ飛翔する。
それを戦闘開始と受け取った黒天使は両肩部の紅い玉から輪を浮かばせ両手を振り下ろし進行を阻ませる。
「そこじゃないですよ!」
波長を操り三人の姿の場所を大幅にずらしていた鈴仙が銃弾の弾幕を放つ。
反応が遅れた為右肩の玉に銃弾が殺到し硝子を撃ち破るように粉砕する。
「てゐ!」
「あいよ!…やいお前!こっち来い!」
目前に来たてゐを標的にした黒天使が重々しい一歩を踏み出す。
「があぁぁぁ――。」
「よし、掛かった!」
なんと黒天使が踏み出した場所。
そこは半年ほど前にてゐが暇潰しに造った幅8m程もある落とし穴だったのだ。
その為、人が落ちて来たりしても耐久度が高く穴が開くことすらしないのだが、今回は直ぐに開いた様だ。
「妹紅!最後の一撃を!」
「おうよ!」
てゐが天高く飛び上がった妹紅に叫ぶ。
足を穴に嵌めて身動きが取れない黒天使の胸部の紅い玉に向け飛び降りる人影。
自身より下にある玉に向け炎を纏う右足を突き出す。
パリンッという音の後、辺りに飛び散る硝子の破片。
「どうなった?!」
後ろへ飛び退いた妹紅が黒天使へ視線を向ける。
その先にはもう動作をしなくなり頭上の輪や眼の紅い光が消滅している黒天使が存在していた。
「もう大丈夫みたいだな。」
「そうですね。」
「まぁ、…まだ居るみたいだけど……。」
「ハハッ、そうだな。」
てゐの指摘に乾いた笑いを返す妹紅。
その時!
赤い何かが目前を通り過ぎた様な気がした。
そう、気がしたのだ。
三人は自らが目で終えない速さで動く何かに寒気を感じる。
自分達の目前に降り立つ赤いものは頭上に光る輪があり先程倒した黒天使と似たような雰囲気を帯びている。
その赤い装甲は戦闘機に白い翼と足と腕を付けた様な形でコックピット辺りに眼がある様だ。
只、腕の先には白い刃が装甲と一体化している。
「きゅええぇぇぇ――。」
「ッ!」
その時、その紅天使の先端部の碧玉に一本の矢が一瞬の煌きを放ち突き砕く。
その場の三人は突然の出来事に唖然とするが鈴仙は直ぐに我に帰る。
「お師匠様!何処ですか?!」
その紅天使を動作不能にした矢に見覚えがある鈴仙はそれを彼女の師匠―八意 永琳のものだと分かったのだ。
「あら、一撃で倒してしまった様ね。あ、鈴仙じゃない、それにてゐと妹紅も。」
「お師匠様、どうしたんですか?それに弱点も知っているなんて…。」
三人に気付いた永琳に鈴仙が疑問を口に出す。
それに永琳はこう答えた。
「鈴仙が屋敷から出た後にこれと同じ型のものが後5体程いたわね。弱点は直ぐに分かったわ。後はそこを狙うだけ…。」
「お~、凄いです!お師匠様!」
「「はぁ~。」」
それを聞き鈴仙は羨望の眼差しを向ける。
てゐと妹紅はそれを見て今まで張っていた気が抜け自然と溜息を吐く。
「あ、そうだったわ。あの畑の所に貴方達が倒したそこの黒いものが白くなって幾分か大きいものが落ちてったわ。」
「え~っと、それってまた新しい奴か?」
「そうね、でも弱点は一緒でしょう、問題ないわ。…それより妹紅、今日は姫様とは殺り合わないのかしら?」
「今日はいい。私には今、輝夜より倒すべき奴等が居るからな。」
「そう、ならいいわ。鈴仙、てゐ、貴方達も付いて来なさい。」
「お師匠様!一生付いて行きます!」
「はぁ~。…付いてくよ、ここまで来たら選択肢はそれしか無さそうだし。」
永琳の声に挙手しながら発声する鈴仙とその隣で肩を落としているてゐ。
「行くわよ。」
「「「は~い。」」」
お前ら遠足に行くつもりか!と言いたくなる程清清しい返事をした三人は先を行く永琳の後に続く…。
その頃、、、
「……誰か居ないの~?!!え~り~ん!!うどんげ~!!」
何時もより幾分か暗い永遠邸には輝夜がたった一人。
最後の支えである永琳までもが何処かに行ってしまい、それからはと言うものの自室の隅でしくしくと体操座りで誰かの帰宅を待っている。
「しくしく…、もういいわ。私には…、これがあるんだから!」
涙を拭うと懐から取り出したのは一つの画面が付いた複数のボタンがある長方形の何かだった。
それはとある河童がぼったくり当然の金額で販売していた機械だ。
何時も妹紅と殺し合いをする以外は暇、とにかく暇だったので刺激を求めて買ったそうだ。
輝夜は内心これが動作しないものと思っていたのだがスイッチと思われる所を触るとどんな構造なのか電源が付いた為、輝夜は迸る喜びに体を震わせた。
「あの時はこれがこんなに面白い物なんて思ってなかったのにね…。」
因みにこの機械、河童が外の世界で様々な機種があることに気付き幻想郷にだけある機種を作ろうとその心を一つにして造られた物なのだ。
「こいつ中々に…、え?!あれ、ちょ!待っ、……うぅ~~~。また負けた~。」
しかもこれ、難易度が非常に高い、本当にクリア出来るのかを疑う程に。
「はぁ~。あ!そうだ!これを使えば…。」
そう言い向かった先は白い箱、外来人の式神――ではなくパソコンが置かれていた。
その隣にはコ○コーラと文字が浮き出ている瓶が置かれている。
どちらも巫女と魔法使いが外に全く出ない私に持って来てくれたのだ。
需要が無くなったとか言ってたからだと思うけど…。
電源を付けしばらくするとパソコンの画面が青く光る。
「ぶらうざをくりっく…。」
慣れない手付きでマウスでカーソルを操作する。
そしてブラウザの検索ボックスに文字を打つのも何だかぎこちない。
「おお、あった。」
何であるのかは知らないがそれは河童の偉業としておこう。
ヒットした中で一番上に丁度あったので開ける。
「ふむふむ、此処はこうやるのか……。」
攻略サイトを見ては手元に集中し、再び詰まっては攻略を見る。
そのサイクルを何回も何十回も繰り返す。
輝夜の一日は長い……。
今回書いたものが予想以上に長くなったので次回まで続きます。
今回永夜沙組が戦った敵は「PRISMARK」の天使です。
シリーズの方が書きやすいと思った為選びました。
もう一つもシリーズです。
出すべき時にに残りの天使も出します。
では次回もよろしくです~~。