デレマスの貞操観念逆転モノ   作:桟橋

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森久保乃々ちゃん視点で。
9000文字ほどあるのでお暇な時にどうぞ。
後書きに感想やメッセージについての返信を書いています。


もりくぼの憂鬱

 もりくぼ、最近ぐっすり寝られません……それというのも、こんなもりくぼを放っておいてくれない人たちが増えたからです……。

 最初は、キノコさんでした。もりくぼは勧誘されてアイドルになったものの、トップアイドルやシンデレラガールなんて目指すつもりは全く無いので、隠れるようにプロデューサーさんの机の下に潜ってました……。

 

 いつも誰かが居て騒がしい事務所ですが、この机の下、このもりくぼの聖域には誰がすき好んで近寄ってくると言うのでしょうか、もりくぼはつかの間の安寧を欲しいままにしていました……。

 プロデューサーさんは、お仕事に連れて行くときこそ強引に机の下のもりくぼを引っ張っていきますが、基本的には同じ担当アイドルのまゆさんの相手をしているので、もりくぼのお仕事やレッスンの間以外は1人で居られます。アイドルはむーりぃーですけど、机の下で1人、ポエムを書くのも好きでした。

 

 その日も、いつものようにレッスンに連れ出そうとするプロデューサーさんの手から逃れて、机の下に潜り込んだ……そのはずだったのに、机の下の様子は前の日までと全く違っていたんです……!

 周りに積み上げられたきのこの鉢植えで、もりくぼはようやく気付きました……隣の机に間違えて入ってしまったんだと。住居不法侵入罪……もりくぼの頭の中でその言葉がぐるぐると踊り始めました……とにかく見つかってしまう前に早く出ないと……っ!

 

「あれ、お隣の……フヒッ……もしかして、ボノノさんもトモダチたちに興味あるのか?!」

 

 体育座りのまま、ずりずり少しずつ進み机の下から出ようとした時、ドアが開きおそらくレッスンから帰ってきたキノコさんがもりくぼを発見してしまったのです……。

 このきのこたちはキノコさんが毎日霧吹きでお世話をしている大事なきのこ……無断で立ち入ってしまった所をみられてしまい、怒られると思ったため身を固めていたもりくぼを、キノコさんは笑顔で迎えてくれました。

 

「フヒッ……ボノノさんなら、いつでも触らせてあげるぞ……ほら、このタマゴタケくんは、まだ新入りで……丸っこくて可愛いんだ……」

 

 普段プロデューサーさん以外にすることの出来ない、きのこについての話を嬉しそうにするキノコさんの様子に、今更そんなつもりじゃなかったと言うわけにもいかず……もりくぼはじっとキノコさんの語りを聞き続けます。

 

「このシイタケくんは、この間のロケで貰ってきたんだ……原木シイタケ……艶があるぞ」

「原木……もりくぼがテレビで見たシイタケは、培養所? のような場所にズラッとならんでました……」

「ヒャッハー!ボノノさんが見たのは多分、菌床シイタケくんだぜー! 原木は森のなかで育てるんだ!」

 

 だんだん興味が湧いてきて、思ったことをふと口走れば、嬉しそうにヒャッハーモードになったキノコさんが更に熱のこもったきのこ話をし始め、こうなったらもりくぼでは止められません……どんどんヒートアップしていくキノコさんにやけくぼ状態で相槌を打っていると、また明日もトモダチたちを見せてあげるぞ……フヒというキノコさんの〆の挨拶でようやく開放されました……。

 

 その日は沢山のきのこを思って良いポエムが書けたので結果オーライでしたけど……次の日に事務所へ着くと、もりくぼの聖域にはキノコさんがいくつかの鉢植えを持ってスタンバっていました……。こんな、自分から人の方へ向かっていくなんて、そんなのもりくぼにはむーりぃー。そう思っていると、ドアの前で立ち尽くすもりくぼに気づいたキノコさんは笑顔でボノノさ〜んと手を振ってくれます。

 その笑顔を見て、立ち去るなんてもりくぼにはできませんでした……。おずおずと、自分の机……正確に言えばプロデューサーさんのですけど……に潜り込むと、待ってましたとばかりにキノコさんはもりくぼの肩をガッシリ掴みました。

 

「ひっ」

「おっと、悪いね……フヒ……ボノノさんがトモダチたちのことを分かってくれるのが嬉しくて……」

 

 どうせ私はボッチだから……ふひ……。少し前とは打って変わってそう、悲しそうに言うキノコさんに、つい、もりくぼはもりくぼらしくないことを言ってしまったのです……。

 

「き、キノコさんはボッチじゃないです……もりくぼが居ますけど……」

「ぼ……ボノノさん! ……フヒ、フヒヒッ……ヒャアッハーッ!」

「ひっ……」

「お、おっと……フヒヒ……ごめん……舞い上がっちゃって……」

 

 もりくぼがそう告げると、キノコさんは昨日の時のように一瞬でハイテンションモードになり、もりくぼの肩をがっしり掴みます……もりくぼが驚いて縮こまると、さっと元の落ち着いた様子に戻ったキノコさんは申し訳なさそうに謝ってくれました。

 もりくぼは……てっきり、ノリが悪いことを言われてしまうのではないかと、不安に思っていただけに逆に驚きました。もりくぼの周りに近づいてくる人は、もりくぼの消極的な態度にイライラしてしまう人ばかりだったので、キノコさんの対応は予想外でした。

 

「落ち着いた……フヒッ……ボノノさん、トモダチに霧吹きをしてみないか? ……凄く、落ち着くんだ……」

「き、霧吹きですか……? 別に、良いですけど……」

 

 キノコさんが差し出してくれた、おそろいの色の霧吹きで一緒にトモダチたちにシュッシュしていると、なんだか……すごく落ち着きました。一人でいる時以外で、こんなにゆったりした気持ちになったのは、初めてです……。こういう、心が落ち着く関係を、友だちと……そう呼ぶのでしょうか……。

 

「どうだ……? 悪くないだろ……こいつらも、喜んでるぜ……フヒ」

「そうですね……すごく、落ち着きます……キノコさんと、友だちと一緒だからかも……」

「フヒッ!? ……と、友だち……ふ、ふふっ……ヒャアッ!」

「ひぃっ」

 

 嬉しいこと、言ってくれるじゃないか……フヒヒ! そう言いながらがっしりハグをしてくるキノコさんは、パッと見の言動さえ激しいですが、おどおど回してくる手はすごく優しく、やっぱり落ち着きました……。

 

「ボノノさん……コイツにも、霧吹きをしてくれ……フヒ」

 

 笑顔で、隣の机の下から他の鉢植えを持ってくるキノコさんと一緒に、2人でしばらく霧吹きでトモダチたちにシュッシュしてました……。気づいたのはそう、キノコさんがレッスンに出かけてからです……もりくぼのサンクチュアリに、そう、キノコさんスペースができていました。

 

「こいつらを、大切にしてやってくれよ……たまに、見に来るからな……ふひ」

 

 レッスンに向かうキノコさんは、もりくぼの聖域にいくつかトモダチを置いていきました……。もりくぼは今も毎日、彼ら? が乾いてしまわないように霧吹きをシュッシュしています……。そして、キノコさんも毎日、もりくぼの下へ訪れるようになりました。友だちができたこと、嬉しいはずなのに、何だかもりくぼは嫌な予感がしていたのです……。その予感が実現するまでに長くはかかりませんでした。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 1週間ほど前から始まった、お隣のキノコさん……友だちとの交流が今日もまた、行われていました。もりくぼの机の下で。

 その日はいつにも増して、穏やかな時間が流れていたのを覚えています……。そう、レッスンの時間になったのを忘れてしまうほど。日課であるトモダチたちへの霧吹きをしていたところで、ドアが騒々しく開きました。

 

「ショーコ! レッスン始まっちゃうぞ!」

 

 開いたドアの前に立っていたのは、トレーナーさんに言われてキノコさんを呼びに来た美玲さんでした。せっかくレッスン場まで行ったのに! そう、ちょっと怒っている様子の美玲さんの様子を見て、ようやくレッスンの時間なことに思い至ったキノコさんは、少しづつ焦り始めています。

 それでも、霧吹きを手放さずトモダチたちへ水を吹きかけ続けるキノコさんに、業を煮やした美玲さんはツカツカと机まで歩み寄り、キノコさんの腕を掴みました。

 

「いつまでやってるんだ! それは後で良いだろ! ほら、遅れちゃうんだ!」

「わわっ……ぼ、ボノノさん……!」

 

 美玲さんに引っ張られながら、もりくぼに助けを求め手を伸ばしたキノコさん……。もりくぼは、レッスンの時間を守る美玲さんが正しいことを分かっていながら、キノコさんの手を掴みました。

 

「むっ……ウチの邪魔するのか……? 上等だぞ、止めるつもりならノノごとレッスン場へ連れて行くからな!」

「えぇ! そ、そんなの……」

 

 むぅーりぃー。そう続け、手を離そうとした時、キノコさんの縋るようなもりくぼを見る視線に気づいてしまいました……。自分、友だち……もりくぼは、友だちを取ることに決め、手を離しませんでした。

 

「うぐぐ……なんでウチが2人、ノノまで連れて行かなきゃいけないんだ……重い……」

 

 レッスン着に眼帯の女の子が、霧吹きを持った女の子2人を引きずっている光景は恐ろしいほどに人の目を集めました……。幸いなことに、もりくぼたちの事を見てすぐに、ああまたアイドル部署か……と興味を失ってくれましたが、それでも注目からなるべく遠ざかっていたいもりくぼには辛すぎます……。道中で、何度も手を離しそうになりました。

 

「何だ、森久保もレッスン受けるのか? まぁ、人数の多い方が対抗意識が出るか。よし、さっさと着替えてこい!」

 

 レッスン場まで引きずられたもりくぼは、トレーナーさんの言うがままレッスンを受けることになってしまいました……。むりです……でも、レッスンを受けるつもりがないなんて、今更トレーナーさんに言うことはむりむりむりです……。もりくぼは、言われたとおりに更衣室に置かれているご自由にレッスン着へと、着替えました。

 

 それからはよく覚えていません……とにかく、やけくぼで乗り切ったことだけは確かでした……。

 

「うん、3人共いい動きをしていたぞ! 特に、森久保は振り付けを知らなかったはずなのに、2人と同レベルで動けていた!」

 

 トレーナーさんに褒められることなんて、滅多に無いはずなのに、もりくぼは素直に喜ぶことができません……。ただ、がむしゃらに頑張っていただけで、もう一度同じことをしろと言われたら……むぅーりぃー。

 

 レッスン後、燃え尽きたもりくぼが真っ白になりながらシャワーを浴びていると、美玲さんが話しかけてきました。

 

「ウチ、ノノのこと勘違いしてたぞ……本気でやれば、あんなに凄い動きができるんだなっ! 良かったら、一緒にダンス練習しないか?」

「だ、ダンス練習!? もりくぼは、自主練なんて、むりですけど……」

 

 美玲さんから伝わる熱意は、とても無碍にする事ができず、助けを求めてキノコさんへ視線を送りましたが……帰ってきたのは助け舟どころか、鋭いストレートパンチでした……。

 

「美玲ちゃんは……友だちだから……大丈夫……フヒ」

「ショーコもこう言ってるし、良いよな? ウチも、さっきのノノみたいなダンスがしたいんだ!」

 

 キラキラ輝く美玲さんの瞳を正面から見て、やっぱりもりくぼには断ることはできませんでした……。

 もしかすると、美玲さんから逃げ回っていれば、自主練習をしなくて済むはず……きっと、おそらく、たぶん……かもしれないです……。

 

 この日から、もりくぼの下を訪れる人が1人増えました……。もりくぼは、ただひっそりと、植物のような心で暮らしたかっただけなのに……!

 

 

 

 ◆

 

 

 

 この日はもりくぼにとって厄日でした……。もりくぼが美玲さんの誘いをはぐらかしながらいつもの机の下に戻るのと同時に、プロデューサーさんが部屋に入ってきたんです……。多忙なプロデューサーさんが直帰をせずにわざわざ事務所に寄る時は、何か仕事や企画を持ってくると決まっていました。

 もりくぼは、影を薄くして存在を消します……そうすれば、お仕事が舞い込んでこない、そう思っていました。

 

「乃々ォ! あれ、居ないのか……美玲! 輝子! ちょっと来てくれ」

 

 プロデューサーさんの開口一番にもりくぼの名前が聞こえて、心臓が口から飛び出てしまうかと思いました……。もりくぼが返事をせずに黙っていたことで、この部屋に居ないと考えたプロデューサーさんは次に、さっきまでレッスンで一緒だった2人の名前を呼びます。

 

「おっ、2人は居るんだな。実はな、さっきまゆを寮まで送った時に廊下を歩いていたトレーナーさんから聞いたんだ……乃々と美玲に輝子が息ぴったりだったって!」

 

 プロデューサーさんの声が若干上ずっていました……これは、新しい企画を思いついた時のプロデューサーさんの癖です……。

 

「だから、ちょうどいいと思ったんだ! これからは、3人にユニットを組んでもらうからな!」

「ほ、本当か! 親友!」

「あぁ!」

「やったぞ……ウチも念願のユニットデビューだ!」

「待たせたな!」

 

 喜色満面といった様子の3人とは対照的に、もりくぼのテンションは地を這うかのようでした。むしろ、現在進行系で掘り進んでいます……。こ、こんなところには居られないです……! もりくぼは巣に帰ります……。

 そんな気持ちで机の下の、更に奥まで下がろうとするもりくぼは、ミスを犯しました。

 

 カツンっ……。もりくぼの足がキノコさんスペースの鉢植えに当たった音。恐ろしいほど耳の良いプロデューサーさんは、その一瞬の物音を聞き逃しません。もりくぼは、チェックメイトでした。

 

「……森久保ォ! そこに居たのか! 聞いてただろ、ユニットだぞユニット!」

「ひぇぇぇ〜」

 

 超人的な動きで机の下を覗いたプロデューサーさんは、もりくぼを発見すると即座に手を伸ばし、ガッシリと掴みます。そして、脇の下に手を入れて高い高いをはじめました。

 もりくぼは、見つかってしまっただけでなく何故か持ち上げられ、回されている状況についていけず目を回しています。少しして、もりくぼが弱り始めたのに気づいたプロデューサーさんは、やさしく椅子の上にもりくぼを下ろしてくれました。

 

「まだ思いつきだが、すぐに企画書用意して会議にかけるから! 来月にはバンバン仕事を取ってきてやるぞ」

 

 そう言って気合を入れたプロデューサーさんは、もりくぼの頭をガシガシ撫で、去って行ってしまいました。

 仕事が出来る人は、あんなにも行動が素早いものなのでしょうか……もりくぼの行動速度とは、一段も二段も違うその様子は、加速装置が付いていると言われても信じてしまいそうです。

 

 プロデューサーさんが嵐の様に吹き抜けた後、美玲さんとキノコさんは早めに寮に帰るということで、部屋にはもりくぼ一人になりました。これが、ここ最近ずっと求めていたはずの1人……。

 いざ1人きりになってみると、思っていたよりも心地よいものではなく感じます。むしろ前には感じなかった寂しさという感情が芽生えている事を自覚してしまい、このままではもりくぼのアイデンティティが……。複雑な気持ちになりました。

 

 椅子から降り机の下に向かう途中、ふと誰かの視線を感じて周囲を見回します。ざっと部屋を見回しても、やっぱりもりくぼ以外には誰もいませんでした。気のせいでしょうか……。そう考えて机の下に潜り込んだ瞬間、隣から女の人の笑い声が聞こえてきたのです……。

 

「ふふ、ふふふ……。抱っこに、ナデナデですか……?」

 

 心臓が潰れそうになるほど驚愕しながら、もりくぼは机の下から飛び出しました。

 

 声の聞こえたほうの机を見ていると、下から大きなリボンが這い出してきます! ……頭に付けたりピンクのリボンが特徴的な、ここには居ないはずのまゆさんでした……。

 

「うふ……ずぅーっと、見てたんですよぉ? ここで、プロデューサーさんが入ってきた時から!」

 

 優しげなタレ目が、言葉に合わせてカッっと見開かれました。ハイライトが消え、じっとりとした視線がもりくぼを見つめています。

 

「机の下……そこに居れば、同じようにしてもらえますか……?」

 

 じりじりと近づいてくるまゆさんは、もりくぼの聖域……プロデューサーさんの机の下を見つめていました。

 もし、下手なことを言ってしまったら、もりくぼは、もりくぼは……。まゆさんの醸し出す怪しい雰囲気に充てられ、思わず逃げ出しそうになる足が震えました。

 

「乃々ちゃぁん……」

「ひっ……!」

 

 眼の前、息がかかるほどの距離まで近づいたまゆさんが、もりくぼの名前を呼びます……。あぁ、もりくぼの人生が……思い返せば儚い人生でした……。そう末期の覚悟を決めました。

 

「まゆも、一緒に机の下に居て良いですか……?」

「えっ……」

 

 まゆさんが口にしたのは、お願いでした。完全に予想を裏切られ、なんと言ったのか処理をすることを脳が拒み、もりくぼの口から出たのは短い驚きの声だけです……。

 

「その、まゆも……プロデューサーさんを、近くに感じられたらと……そう思って……」

 

 直前のホラーにすら感じるような凪の無表情から、今の照れた表情はまるで恋する乙女のようです……。信じられないほどの変貌で、なんとかもりくぼが発せたのは、大丈夫ですの一言でした。

 

「本当ですかぁ! 嬉しいです……よろしくね? 乃々ちゃん」

 

 キノコさん、美玲さんに続き、もう1人、今度はまゆさんが、もりくぼの周りに来るようになりました。

 

 

 

 ◆

 

 

 

「ふぅ……」

 

 久しぶりに読み返した日記を置き、一息つきました。あれから、1人になる時間がほとんど取れなくて、日記を書くのも……手にとることさえ随分前のことになっていました……。

 

 人が増えたこと以外に大きく変わったことと言えば、もりくぼの聖域がもりくぼの森になってしまったということです……。生い茂るキノコことトモダチ、ファンシーなセンスの人形たちに、いたる所に飾り付けられた可愛らしいリボン。殆ど物がなかった状態からは想像がつかないほどの雑多な様子に、今は少し、満足感を感じようになりました。

 

 美玲ちゃんやまゆさんとも、友だちと言えるような関係になりました。相変わらず美玲ちゃんはもりくぼをやけくぼにしようとしますし、まゆさんはプロデューサーさんの事になると雰囲気が怖くなりますが、もりくぼはそんな2人も悪くない、なんて……。

 

 キノコさんこと輝子ちゃんは、隣の机の下からせっせと毎日少しずつ鉢植えをこちらに運び込み、今ではほとんどのトモダチがこの机の下に来ています。必然的に、輝子ちゃんも もりくぼの机に入り浸るようになってます……。輝子ちゃんは、未だに唯一の、一緒にいると落ち着く友だちだから、もりくぼは、毎日でも歓迎ですけど……。

 

 忙しくなってから、日記に書けていない新しい友達も増えて……小梅ちゃんや幸子ちゃんは特に仲良くしてますけど……でも、これ以上はむぅーりぃーなので、やっぱりもりくぼは机の下に居るのがお似合いだと思います……。

 

 けれど、そんなもりくぼにとっての安寧の時間はもろく崩れ去ってしまいました……。

 

 コンコン。ドアをノックする音が聞こえます。今この部屋にいるのは、もりくぼ1人。尋ねてきているのは誰か用がある人だとしても、もりくぼに用がある人の可能性は限りなく低いはず……。心の中のわるくぼが、そう囁きました。もりくぼは、悩んで居留守を使います……。

 

「あれ、居ないのかな……おかしいな、プロデューサーさんはここに乃々ちゃんが居るって言ってたんだけど……」

 

 ドアの前に立っている知らない声の人は、事もあろうにもりくぼに用がある人でした……! なぜ、一体もりくぼが何をしたというのでしょうか。久々の1人を満喫していたはずが、気づけば周りに人がいないことで知らない人と一対一の状態になってしまいます……。

 もし神様がいるとしたら、なんて意地悪なんだろう。恨まずにいられませんでした。

 

「えっと……乃々ちゃん居ますかー?」

「い、いないですけど!」

 

 ドアの前で粘る謎の声に、もはや居留守になっていない居留守を使うほどに、やけくぼです。

 

「あ、もしかして乃々ちゃん? 隣の課のアシスタントの鴨川です……失礼します」

「あぁ!」

 

 入ってきちゃったんですけど……! ドアが開いた先に立っていたのは、何故かレッスン着を着ている男の人でした。優しそうな雰囲気で、人を甘やかして駄目にしてしまうような……なんとなく、無防備さを感じました。

 

「あれ……っと、ホントに机の下に居るんだね……」

 

 もりくぼの事をプロデューサーさんから聞いていたのか、机の下で丸くなっているもりくぼの事を見て苦笑いを浮かべた男の人は、ゆっくりと歩いてもりくぼに近づいてきます。

 机の前までたどり着くと、大胆な……人によっては行儀が悪いと言われてしまうしゃがんだ姿勢になりました。

 

 もりくぼは、最近ようやく人に慣れて来ましたけど……近くにいる異性の人なんてプロデューサーさんとお父さんくらいなもりくぼには、ちょっと刺激が強すぎるんですけど……!

 ちらちら、見つめるもりくぼの視線に気づいた男の人は、体育座りをしているもりくぼに目線を合わせようと、しゃがんだ体勢から前に手をつき、四つん這いに!

 み、見えてるんですけど……! 運動のしやすさを考えたゆるめのレッスン着が、全く胸元を守ること無く、前から丸見え……見ちゃいけないと分かってるのに、眼が離せない魔力を感じます。

 

「あ、ごめん見えてる? インナーもぐしょ濡れで、ちょっと着られないからレッスン着だけなんだ」

 

 ちらちら……とは言えないほどしっかり見つめているもりくぼの視線に、流石に気づいた男の人は衝撃的な発言をしました。インナーを着てない……胸元から覗ける肌色で何となく分かってはいたんですけど……。

 眼の前の、男の人が着てるのは、ペラペラのTシャツ一枚。も、もうもりくぼは色々いっぱいいっぱいなんですけど……!

 

「この課のプロデューサーさんから聞いたよ? 乃々ちゃんは無理に出そうとしないで、一緒に入ってあげると喜ぶって」

 

 入る……? 一体どこへ……? 頭がマヒして、そんなことさえ考えが及ばないもりくぼの横へ、男の人が潜り込みました。

 

「うわっ……流石にちょっと狭いね……肩がくっついてるけど、大丈夫?」

 

 どう考えたら大丈夫なのか、もりくぼが聞きたいんですけど……! 肩どころか体の側面全体が、Tシャツ一枚の男の人に当たっている……この、少女漫画の陳腐なお色気展開のよう状況。こ、この人、完全に痴漢なんですけど!

 

「改めて自己紹介するけど、鴨川です。普段は隣の課に居るけど、流石に1人ではこなせない量になってきたこっちの仕事も手伝うから。これからよろしくね?」

 

 これからよろしく……もしかするともりくぼは、これからこの痴漢によろしくされてしまうのでは……あうぅ……。

 自分の周りに人が加速度的な勢いで増えてることには、薄々気づいてましたけど、こんなスケベな男の人までなんて、むーりぃー!!




貞操観念逆転のタイトル詐欺で、ただのハーレムモノになっているという評価メッセージを貰いました。
というわけで初心に帰って、主人公には思いっきり変態ムーブをしてもらいました。無自覚ということで。
前半というかオチ以外は、みんなが仲良くなっていく過程がたっぷり書けて楽しかったです。

それと、主人公が蘭子ちゃんの言葉を分かる件については、オリ主が蘭子ちゃんの言葉を翻訳するお話が沢山あるようなので、この作品では素のまま理解する(むしろ難解な言葉はわからない)主人公と蘭子ちゃん及び周囲の戸惑いやすれ違いを書こうと思ったのですが、設定を生かせず手抜きという誤解を生んでしまう結果になり申し訳ありませんでした。

もう一つ、ハーレムモノになっているという指摘について、どうしても異性だらけの事務所の関係上、出会うキャラが殆ど女性になること、また、ストーリーの大筋が変わってきてしまうので基本的にはアイドル達から嫌われるような展開にはならないことをご了承ください。

出来れば7月中、遅くても8月の頭には更新します。
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