「さぁさぁさぁ、当主自ら船旅ご苦労にござる。足を落ち着けてくだされ」
会談はジャパリ博士の想定よりも快活な口調な男の喋りで始まった。織田家の四国方面軍司令官、羽柴秀吉である。
「いえ羽柴殿、お気遣いは無用なのです」
流れに乗せられてはならぬ。こちらも必死であった。
「まぁまぁ、この度は正式な和を結ぶための場。設けられたこと誠に感謝極まりないでござる!」
「こちらこそ、天下を握る織田殿と近づけるのは幸いです」
「堅い話は後にしましょう。まずは食事をどうぞ」
南蛮からのカリィなるものに舌鼓を打ちつつ、一杯の茶を回してから会談が始まった。
「……それで、我が織田家に臣従する、とのことですが、ただではございますまい。こちらとしては大隅、薩摩、日向は安堵しましょうぞ」
「お断りいたすのです」
「なっ……」
「その三国はもちろんなのです。しかし大隅の一領主から九州ちほーの主人まで身を立てたのです。
伊予の旧大友領はもちろん、豊前豊後と筑前筑後はお渡しするのです」
「ということは……肥前と肥後は持つと仰せか!そのようなことは認められん!」
「お忘れですか?我々ジャパリは織田を一度撃退しておるのです。それでもなお臣従してやるというのですよ?」
「この……」
織田家の面々はこの発言に思わず声をあげる。
「落ち着いてください!国力的にはこちらは下なのです!」
アリツさんがフォローにはいって一旦は落ち着いたものの、しばらく険悪な雰囲気は晴れなかった。
「それではこちらも毛利攻めを行うことでいかがですか?そちらも毛利を挟み撃ちにできるなら利は大きいかと思いますが」
「毛利なぞ上様のいらっしゃる限り敵ではないわ!それより領内の反発を警戒したらどうじゃ!」
「すでに治水には手をつけております。万全な状態でお渡しいたしますよ」
「反抗したところで無駄じゃ!畿内を含む日の本の大部分と九州、どちらが強いかは明白でござろう」
「その明白な差の中で負けたのはどちらでしたかな?」
「なにおぅ!」
「確かに戦い続ければジャパリは負けるのです。しかし我々ジャパリには大量の鉄砲、豊富な兵糧と銭、そして民からの信頼全て揃っているのです。
確かに織田家は我々との戦に勝つでしょう。しかしそれが終わるのは何年、何十年先のことなのです?それまでにどれほどの数の民が犠牲になるのです?」
「……くっ」
「では肥前もお返ししましょう。そして毛利攻めへの協力と毛利攻略完了後に織田家に毛利領占領地に加え豊前、豊後、筑前、筑後、肥前をお返しし、臣従。これでいかがですか?」
「いやしかし肥後一国を許すわけには……」
結果としてはこれは受け入れられた。ここにジャパリは織田への臣従を表明。
そして翌月、筑前小倉城、豊前中津城に集まった足軽軍による周防、長門同時上陸。そして毛利攻めがはじまったのである。