転生者が仮面ライダーになってヴィランしてるからちょっと殺してくる 作:日本人
「死に晒せクソ転生者」
奴────偽カブトの言葉を聞き怒り心頭の俺は奴に向けてブレイガンを腰だめに構えて撃つ。西部劇などの抜き撃ち、それの予備動作を極限まで無くした高速の射撃術。確実に当てるつもりで放ったそれは、しかし、奴が軽く首を捻る事によって躱された。
「おっと、危ねぇ危ねぇ。いきなりはないんじゃないか?」
「黙れカスが。これ以上テメェと問答するつもりは微塵もねぇ。だからよ────」
地面を蹴って奴に迫る。
「とっとと死ねやぁ!!」
「はっ、やなこった!」
首目がけて振り下ろされる黄の刀身をダガーで受け止める偽カブト。そのまま鍔迫り合いに持ち込むつもりなのかダガーに力を込める。
生憎とパワーで負けてる相手に馬鹿正直に向かって行くつもりは無いので奴の腹を蹴った反動で距離をとった。
「っ、とと。オイオイ少しは手加減してくれよ?」
「余裕で反応出来てた癖して何抜かしてやがる」
「あ、わかった?」
⋯⋯認めたくはないが目の前の偽カブトのスペックは高い。カブトが、と言うのではなくカブトの中身がだ。
仮面ライダーカブトは昭和における仮面ライダーストロンガー、つまりは平成における“最強”を意識してデザインされたライダーだ。本体スペック自体はあまり高くない。オリジナルカイザとほぼ同じである。
が、コイツの恐ろしい部分はここではない。
まず仮面ライダーの必殺技として1番有名なライダーキック。食らえば最後、
もう1つが『クロックアップ』。早い話が自身の高速化。
これが尋常じゃなく速い。ファイズのアクセルフォームなどを始めとする歴代高速フォーム、もしくはロボライダーやイクサなどの動体視力に優れたライダー達でもない限り対応は難しい。ただし体への負担はめちゃくちゃ大きいが。
⋯⋯多分1号とか3号なら余裕で対応出来るんだろうけど。
前置きが長くなったが手っ取り早く言うとカブト自体はかなりピーキーでノーマルスペックの一般人では扱いきれない代物だという事だ。つまり、中身もオリジナルの天道総司並のスペックを持っている可能性が高い。
ともかく、こちらがやる事は一つだけだ。早い話、
「何もさせないまま倒す!!」
ブレイガンによる射撃で奴が技を使う暇を与えない。そのまま接近するが奴もただ手をこまねいている訳では無い。奴はダガーを投擲してきた。
「あらよっと!」
「っチィ!」
間一髪弾き飛ばす。クルクルと空中で回るダガーを飛んでキャッチし、奴はそのままこちらに振り下ろしてきた。ガキッと硬質な音を立てて刃はブレイガンの刀身に阻まれる。
「お、防いじゃう?ならもっといこうか!」
「ガッ、ハァッ!?」
「き、木場ぁ!?」
偽カブトはそのまま空中でくるりと回り、蹴りを放つ。ダガーに気を取られていた俺はその蹴りをモロに食らってしまった。俺は吹き飛ばされて地面に転がった。上鳴の心配したような声に答えてやりたいが生憎とそんな暇は無い。
「まだまだいくよん!」
「クッ⋯!」
「⋯シッ!」
「うおっちょあぶなぁ!?」
1度ブレイガンから手を離して裏拳を繰り出す。大袈裟に声を上げて仰け反りながらたたらを踏むそいつに足刀蹴りを叩き込む。しかし浅い。どうやら背後に飛んで威力を殺した様だ。
「おっほほ!やるじゃんやるじゃん!もっと楽しもうぜ!」
「チッ、無駄にスペックの高い奴だ!」
「なんと言っても天道総司の肉体ですから!」
「聞いてねえよクソッタレが!」
思った通り奴の体は天道総司の物の様だ。天道自身生身で怪人と戦える化け物スペックの持ち主だ。さらに注意が必要だろう。
「今度はこっちからいくよん!」
「くぉっ⋯!?」
ボクシングのジャブ気味に放たれた拳をギリギリで躱す。俺の首の真横を通って行ったそれを掴み、一本背負いの要領で投げようとするも、
「ところがぎっちょん!」
「ぐっ⋯!」
偽カブトは俺の首に腕を回してチョークスリーパーを掛けてくる。否、仮面ライダーのスペックでそんなものを食らえば確実に草加の様に首をへし折られる。
「させっ⋯⋯るかっ⋯!」
「ぶへっ!?」
ブレイガンを俺の顔の後ろに向けてそこにあるであろう奴の顔面に叩き込む。奴も驚いた様で軽く後ずさった。
────好機!
「フッ!」
「わわっ!?」
袈裟斬り気味に振られた刀身はダガーで受け止められる。そこで一旦メモリを引き抜いた。
「おわわっ!?」
押し返そうとダガーに力を込めていたのであろう。奴はあっさりと体勢を崩した。その隙を逃さず奴に銃撃を撃ち込みまくる。
「う、おおおおお!?」
これには奴も余裕を崩し、声に焦りの色が混じり始めた。俺は更に奴を追撃する。
右のボディーブロー。奴が思わず蹲ると頭を抱えて右膝。それを何発も。ムエタイで言う“首相撲”の体勢だ。
奴はそれをクロスガードで防ぎ、何とか顔への一撃は阻止している。好都合。俺は奴と組んでそのまま、
「ブレーンバスタァァァア!!」
「ぐおっ、ほぉっ!?」
全力のブレーンバスター。無様な声を上げて地面に叩きつけられる奴にトドメを刺そうと拳を振りかぶる。
「っらぁっ!!」
「がっ!!?」
顎に衝撃。目の前がチカチカする。たたらを踏んで後ずさり、膝をつく俺を偽カブトは悠然と見下ろしている。
「かぁ〜〜〜!なんだよ、思ったより強えーじゃん!!聞いてないんですけど!?」
まるで餓鬼のような癇癪を起こす偽カブトを見ながら、俺は今何が起こったのか冷静に分析していた。
(いくらなんでも起き上がるまでが速すぎる⋯⋯!クロックアップを使う動作も無かった⋯⋯⋯別の転生特典か?だとすると何だ?反射神経の強化?クソっ、分からねぇ⋯!!)
「ああもうくそっ!!おい!雑魚野郎!」
「⋯あ?」
偽カブトから声が掛かり、俺は思考の海から浮上する。奴は相当カッカしているようで、先程までの余裕そうな態度は微塵も見受けられなかった。
「遊びはお終いだ!!これでぶっ殺してやるよ!!」
『ONE TOW THREE』
そう言うとゼクターのボタンを押し始める。ケリを付けるつもりの様だ。
「⋯チィ、やるしかねぇか」
『Ready』
ポインターにメモリを挿入し右脚に装着。カイザフォンを開いてEnterを押す。
『Exceed charge』
ギアから光点がポインターに流れ込み、それを確認して瞬時に飛び上がった。
「ライダーキック!!死ねよオラァ!!」
『RIDER KICK』
奴の体を紫電が伝い、それが奴の右足に流れ込んだ。俺はポインターを射出して奴に向けて狙いを定める。
「ゴルドスマッシュ!!死ぬのはテメェだぁぁあああああ!!!!!」
黄金の矢となって奴に向けて突き進む俺。思いっきり振られる奴の右脚。それが、ぶつかり合う。
「ぐ、おおおおおおおお!!!」
────拮抗。2つの巨大なエネルギーがぶつかり合い、辺りにその余波が撒き散らされる。
「うわっ!危ねぇ!」
「上鳴!?」
「下がって!でないと巻き込まれますわよ!!」
誰かの声が聞こえた気がしたが構っている暇は無い。今は、目の前のコイツを倒す事だけを⋯⋯!!
────ふと、気付いた。
(おかしい⋯⋯なんでコイツには焦る様子が見受けられない?)
偽カブトは何事かをブツブツと呟き別の事に気を取られているかの様だ。にもかかわらず奴の蹴りは全く衰える様子が無い。いや、寧ろ────
(馬鹿な⋯⋯
有り得ない。俺の蹴りはゆっくりと、しかし確実に押し返されている。そんな事があるはずが無い。確かに俺のライダーズギアはオリジナルには及ばないがそれでも他のライダーに一方的に押し返されるほど弱くは無い。
「────もういいや」
そこで奴が口を開く。その声音は、まるで玩具に飽きた子供の様だった。
「何をっ⋯⋯!?」
「死んでいいよ」
────瞬間、足に触れていた奴の右脚の感触が消失する。
「何────」
何が起こった。そう言う前に
「がっっっ、ハァッッッ!?」
「「木場ぁ!!?」」
「木場さん!?」
3人の悲鳴のような声が聞こえる。何だ、何が起こった⋯⋯⋯!?
「あーあ、こんなカス野郎に特典使っちまうなんてなー。もったいねぇ」
「とく、てん⋯⋯だと?」
奴が放った単語に反応すると奴は聞いてもいないのにベラベラと喋り始めた。
「そうそう!俺が貰った特典はこのカブトゼクターと『常時発動型のクロックアップ』さ!すげぇだろ?」
「ん、だよそのクソチートは⋯⋯⋯!!」
ファイズで言えば制限無しのアクセルフォーム。原作ですら精々数分が限界のクロックアップを無制限に、しかも常時発動型?それはつまり────
「手加減っ⋯!してやがったのかっ⋯⋯!?」
「は?当たり前じゃん。カイザみたいなクソザコナメクジ相手に本気とか恥ずいもん」
「ハッ⋯⋯、それが、あのザマかよっ⋯?ダッセぇなぁお前⋯⋯!」
「ちっ!黙れよカスが!!」
「ごっ、ほぉっ!!」
先程蹴られた部分にもう一度蹴りを叩き込まれて上鳴達の所まで吹っ飛ばされる。しかもその際にベルトが外れ、変身が解除されてしまった。
「木場さん!?大丈夫ですか!?」
八百万が俺に駆け寄り、抱き起こしてくれる。俺はと言うと「クソッタレが⋯⋯!」と悪態をつくぐらいしか出来ない。奴を見れば俺以外は楽勝という余裕の表れなのか、既に変身を解除している。
ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべてこちらに近寄って来る奴の前に、上鳴と耳郎が立ち塞がる。
「んん〜?何だよお前ら。野郎には興味無いから退けよ」
「ウチは女だ!ていうかここでそう言われて素直にどくならヒーロー科になんか来てない⋯!」
「木場が頑張ってくれたんだ!だから次は俺達がやる番だぜ!!」
「⋯⋯あー、そういうのいいからさ。退けよ」
「「どかねぇ(ない)!!」」
「じゃあ死ね」
奴────翌々見れば中々天道総司に似ていた────偽天道は一瞬で上鳴に近寄って、そのまま拳を叩き込んだ。
「お゛っ!?」
「おらよっ!!」
そのまま蹴りをくらい、声を上げる間もなく吹き飛ばされて大岩に叩きつけられる上鳴。耳郎はその隙にプラグを差し込もうとするが逆に掴まれて引っ張られる。
「うわっ!?」
「てめぇも⋯⋯だっ!!」
「っうあ゛ぁ゛!?」
引っ張られた耳郎は膝を腹に叩き込まれてノックダウン。蚊の鳴くような声を絞り出しながら倒れ込んだ。
「に⋯⋯⋯げ⋯、て⋯⋯⋯」
「さーてと、お楽しみタイムと行きますか♪」
奴は八百万に抱えられている俺の胸倉を掴んで投げ捨てる。俺は既に声を上げる気力も無く、されるがままだった。
────負けた。偽物に。
奴はチートを持っていた。だから何だ?それが何の理由になる?
俺はあの日、偽物の仮面ライダー達を倒して、彼らの名誉を挽回することを誓った。その結果がこのザマだ。
力を好き勝手振るうクズに叩き潰され、仲間を傷つけられ、気付けばボロ雑巾の様に打ち捨てられている。
チートなど言い訳にならない。俺は、あの日の彼らへの誓いを果たせずに、あっさりと敗北した。
────情けない⋯⋯!!
「ぐ⋯⋯⋯うぅっ⋯⋯!!」
あまりの情けなさに涙が溢れてくる。13歳でライダーズギアの制作に成功し、スマートブレインを15歳で立ち上げ、更には難関高校の雄英にすら合格した。世間的には鬼才、天才と呼ばれる様な事を成し遂げ、天狗になっていた。それが招いたのは無様な敗北。今も仲間が傷つけられようとしている。
俺は残り少ない力を振り絞って偽天道達の方へ声を発そうとする。せめて、八百万だけでも逃がそうと────
「き、きゃあっ!?な、何をっ⋯!?」
「何って、負け組の女がされる事なんて1つしかないっしょ?」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯は?」
間抜けな声が盛れる。偽天道は八百万に覆いかぶさって、彼女を組み敷いていた。その目は、情欲に溢れている。
(おい、嘘だろ⋯?いくらなんでもそんな事⋯⋯?)
この期に及んで俺はそんな考えを巡らす。そんな考えも布を引き裂く音で粉々にされた。
「嫌っ!?やめて下さい!!」
「そう言われて誰がやめるかよ!」
「痛っ⋯!やめて!触らないで!!」
「おほほっ♪やわらけ〜!」
奴は八百万のコスチュームを引き裂き、顕になった彼女の柔肉に指を埋めている。八百万は必死に抵抗している。その反応を楽しんでいた偽天道。が、やがて鬱陶しくなったのか八百万の顔を平手で叩いて黙らせようとする。
パチン、と高い音が響き渡る。
「うるせぇんだよ!!お前は黙って俺に犯されてれば良いんだよ!!」
「ひっ⋯⋯!」
偽天道の大声に萎縮し、小さく悲鳴をあげる八百万。その反応を見て舌なめずりをする偽天道。
俺は────限界だった。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
とっくに限界を迎えていた肉体にムチを打ち、無理矢理動かす。全身が痛むがそれを誤魔化すように雄叫びを上げた。偽天道がこちらを振り返る。俺は既に駆け出し、偽天道の顔面に拳を叩き込んでいた。
「ぷげらっ!?」
奇妙な声を上げて無様に吹き飛んでいく偽天道。いい気味だ。
「き、木場さん⋯?」
八百万の声に答えることは無く、俺はコートを脱いで八百万にかける。流石にこのまま放置して置く訳には行かない。
「あ、ありがとうございます⋯」
「て、んめぇ!?よくも俺の顔にぃ!!?」
偽天道が起き上がってくる。俺のパンチで顔はなかなか面白いことになっていた。
「ハッ、中々の不細工ヅラだ。ゴリラにならモテそうだなぁ偽物さんよォ?」
「ふ、ふざけんなぁ!!?もう少しでお楽しみだったのによォ!!」
「⋯⋯⋯
それは────
「こっちのセリフだクソ野郎ォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!」
ビリビリと空気を震わす咆哮と共にオルフェノク体へと変身する。よく見れば鎧の端々がいつもと違う。“激情態”というヤツだろうか。
────だがそんな事はどうでもいい。
コイツの肉体は、どこで調達したかは知らないが天道総司そのもの。それで八百万を陵辱しようとしたのだ。そして、それを成し遂げる為に使ったのもライダーの力。
────許す訳には、行かない。
「へ、変身!」
俺のオルフェノク体への変貌に焦ったのか慌てて変身する偽天道。今度は始めからライダー形態である。
普段の俺なら使い分けも出来るのかと呑気に考える所だが生憎と今の俺の頭は目の前の
「あああああああああああああ!!!」
「う、おおぁ!?」
疾走態へと肉体を変貌させながら奴に向けて剣を振るう。振り下ろされたそれを奴は転がって回避する。その姿は隙だらけだった。
「ぜェりゃあ!!」
「アガッ!?」
返す刀で切り上げ、ぶっ飛ばす。奴は空中で手足をジタバタさせながら崖下へと落ちていった。
俺は奴を追いかける為に崖から飛び降りる。確実に、奴の息の根を止める為に。
────エントランス広場・水難ゾーン中間の水辺
僕、緑谷出久は慢心していた。蛙すっ⋯⋯梅雨ちゃんと峰田くんと共に何人もの
思ってしまった、というより思い込んでしまったのだ。自分達の力が
────そんな僕達の思いは、あっさりと打ち砕かれた。
水辺から顔を出し、ゆっくりと広場の方向を伺う。目の前に飛び込んで来た光景を、信じたくなかった。
相澤先生が、倒れていた。黒い脳味噌丸出しの
「なっ⋯⋯」
「相澤先生が⋯⋯」
「お、オイィ!!?どうすんだよ緑谷ぁ!?」
驚愕の声を上げる僕、呆然と声を漏らす梅雨ちゃん、慌てる峰田くん。三者三様の反応だが根底にある考えは同じだ。
『プロヒーローが敗北した相手に自分達が勝てる訳がない』
この時漸く理解した。僕達に当てられたのは所詮捨て駒に過ぎないチンピラ
(不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い!?どうする!?逃げる?ダメだ、下手に動いたらバレる!それに相澤先生を助けないと!?でもどうやって!?今出ていっても殺されるだけだ!?)
焦りで思考が纏まらない。どうすればいい?この場での最適解は?無事に切り抜けられる方法は?
考え込んでいると
「死柄木弔。生徒の1人に逃げられました。もうすぐプロヒーロー達が駆けつけて来ます。ここは撤退するのが良策かと」
「ハァ?ゲートの外周りには見張りが居たハズだろ。そいつらは何やってんだ」
「それが皆ノビていまして⋯⋯誰がやったのかは分かりませんが同士討ちでもしたのかと」
「ハァ⋯⋯んだよそれっ⋯⋯!アイツら全員崩してやろうか⋯⋯!」
手塗れ
「帰るぞ」
こんな大事件を引き起こした張本人とは思えないほど気軽な声で、そう言った。
「か、かえる?アイツ今帰るって言ったのか!?」
「ケロ、私にもそう聞こえたわ」
⋯⋯⋯おかしい。これだけの事をしてあっさり引き下がる?いくらなんでも不自然だ。峰田くんは喜んでいるが梅雨ちゃんは僕と同じ考えなのか険しい表情を崩さずにいる。
「けどまぁ帰る前に────平和の象徴の矜恃を少しでもへし折って帰ろうか」
ゾッとする様な目を此方に向ける手塗れ
場所がバレていた────!?
「殺れ、2号」
────一瞬後に、赤銅色の
「よせぇええええええええ!!?」
全身にフルカウルを展開する暇も惜しい。僕は右腕だけにワンフォーオールを発動して思いっきり赤銅色
拳を奮った際の風圧で水面がさざ波を立てる。
(オールマイトの力の、100%を、耐えた?)
信じられなかった。あの、NO.1ヒーロー オールマイトの一撃を耐える事が出来る存在かいるなんて。そうして惚けている僕は、
「────!」
「あ゛?」
音も無く振り下ろされた拳に叩き潰され、僕は地面へとめり込んだ。
「────!────!?」
声が出ない。代わりに溢れてくる血に、呼吸すら困難な状態だった。
────あれ、ぼく⋯⋯しぬ?
きゅうげきにちをうしなったせいかあたまがまわらない。だんだんしかいもくらくなってきた。うでもうごかない。
「う⋯⋯⋯あ゛ぁ⋯!?」
「お゛っ⋯⋯⋯じにだくっ⋯⋯!?」
つゆちゃんとみねたくんがう゛ぃらんにくびをしめらている。ふたりともくるしそうだ。たすけなくちゃ。でもからだもうごかない。まえもみえない。ああ────
────しんじゃった。
────これは、何時の記憶だろう。
周りは炎に囲まれている。瓦礫が崩れ、誰のものともしれない血が点々と、時にはベッタリとそこら中に付着している。
そんな中を歩く1人の子供。多分、僕。10歳くらいだろうか。母さんとはぐれて、涙目になりながら必死に出口を探している。
キョロキョロと辺りを見回す
────結論から言えば僕は助かった。
全身を粉砕骨折、更には大火傷。あらゆる治癒個性での治療を施して尚、死は覚悟しておいた方がいいと言われた程の重症だった僕は、割とあっさり回復した。
まさに奇跡、
────死ぬ間際に死にかけた記憶を見るなんて、変わった走馬燈だ。
そんな事を、どこか達観して考えていると、声が聞こえた。
『────立て』
「────え?」
『立つのだ。王たる資格を持つ者よ』
「王?何を言って⋯?」
『良いのか』
「え⋯⋯」
『貴様が立たねば、カエルの娘も阿呆な小僧も死ぬぞ?』
「っ!?」
しぬ⋯⋯⋯死ぬ?梅雨ちゃんと峰田くんが?
「と、止めなきゃ⋯⋯⋯でも、どうやって⋯⋯」
『王としての力を振るうが良い。未だ完全なる覚醒とは行かぬが木っ端程度なら葬れよう』
「王としての⋯⋯力⋯⋯」
『然り。人間がオルフェノク⋯⋯⋯貴様らで言えば灰色の怪物と呼ぶ者達、その王が有する力だ。
さぁ、立つがいい。貴様に死なれる訳には行かんのだ』
「っ⋯⋯!?待って!貴方は!?それに灰色の怪物って⋯!?」
僕の疑問に答える声は無かった。
────そして僕の意識は闇に飲まれた。
────変化は突然だった。
「あ゛っ⋯⋯⋯?」
「う゛ぁっ⋯?」
蛙吹梅雨と峰田実両名は突然自身の喉を圧迫していた万力の様な力が消失した事を認識した。何故、という思いがよぎるが身体は生命維持の為の酸素を欲している。考えを巡らす前に貪る様な呼吸を余儀なくされた。
しばらく、と言っても数十秒程だろう。彼らが目にしたのは────
────赤銅色の
「え⋯⋯なに、が⋯⋯?」
「そ、それより緑谷は⋯⋯⋯?」
峰田の言葉にハッとなる蛙吹。そうだ、今はそんな事はどうでもいい。早く緑谷を連れて離脱しなければ。
そう判断して先程までの緑谷が赤銅色に叩き潰された場所を向く。
────そこには、血溜まり以外何も残っていなかった。
「え⋯⋯⋯?」
あるべきはずの緑谷の肉体が、そこには無い。一瞬粉々に砕かれたのかという考えが起きるがそんなはずは無い。自分達が首を絞められている時点で間違いなく彼の肉体は残っていた。
では何処に?それは目の前の灰色のナニカの背中が物語っていた。
赤黒い背中。灰色の全身の中で唯一色がついている場所。それが示すのは、つまり、
「緑谷ちゃん⋯⋯なの⋯⋯?」
この灰色のナニカが緑谷出久本人だという事だ。背中に付着しているのは倒れている際についた血液だろう。
峰田も蛙吹の言うことを理解したのか絶句している。
そんな灰色と相対する赤銅色は────震えていた。
武者震い?否、それは
『あ゛あ゛あ゛ア゛ア゛ア゛A゛A゛A゛■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ーーーーーーーー!!!!!』
声にならない、雄叫び。怒り、憎しみ、悲しみ、様々な感情が綯い交ぜになった、咆哮。
────異界の地にて、怪物の王が降臨した。
まさかの緑谷アークオルフェノク化。詳細はそのうち。
キャラ説明
・偽天道
見た目:天道総司まんま。でも目が三下並に汚い。
性格:クズ。これ以上何を語れと?
個性:無し
備考
・クソ転生者1号。仮面ライダーカブトの力を使って
赤銅色の
見た目:赤銅色の皮膚とオークみたいな歪んだ顔。
性格:黒い脳無こと脳無1号はただの人形の様だったがこちらは本能に近いレベルとはいえ意志を宿している。ちなみにベースは残虐性抜群の殺人鬼タイプ
個性:1号とほぼ同じ。
備考
・イレギュラーの脳無。通称2号。ぶっちゃけほぼ1号と同じ。が、まだ何か秘密がある様で⋯⋯?
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