モアがホグワーツに転入してから一ヶ月が経った。
モアはハーマイオニー指導の下、呪文学よりも難易度は高いが、途中成果の見えやすい変身術に絞って魔法の練習を重ねるようになっていた。しかし当然のように、一向に呪文の発動しない日々が続いていた。
どんなに魔法が上手く行かなくても、ハーマイオニーはモアを見放さなかった。それどころか、モアの失敗の原因を何とか多角的に分析しようとしている節さえあった。ハーマイオニーはマクゴナガル先生に負けず劣らぬ厳格な指導者に徹し、モアのどんな些細なミスにも修正を加え続けた。
一方のモアといえば、魔法の不発を重ねる度に自分が魔法使いでないことを証明できるような気がして、一生懸命に杖を振り続けていた。自分が魔法使いでないことを証明する術が何も浮かばない中で、モアは縋るような思いだった。
そうしてこの日も、四十八回目の失敗を迎えた所でモアはふうっと息を吐いた。
「ほら、やっぱり変化しないわ!」
「どうしてなのかしら、発音も杖の振り方もこんなに完璧なのに、全く何も起こらないだなんて!」
「そんなの、答えは一つに決まってるわ。それは私が魔女じゃないからよ」
モアは得意満面になってそう言ったが、ハーマイオニーは懐疑的な態度で首を傾げた。
「スクイブってこと? でもあなたは魔法薬は上手に作れるし、それにスクイブなら組み分けの時に帽子が気付くはずだわ。何か他に原因があるはずよ」
ハーマイオニーは真剣な眼差しでモアの操っていた杖の先を見詰めていたが、やがて閃いたとばかりに右手で膝を打ち据えた。
「待って! もしかしたら杖が合ってないんじゃないかしら。相性の悪い杖を無理矢理使おうとすると呪文が失敗するって聞いたことがあるわ。もっと単純に、杖が不良品ってこともあるかも知れないけど」
杖に何か不具合があると呪文が上手く行かないというのは、ロンの壊れた杖と惨憺たる魔法の成果を見て散々理解していた。というのも、ロンは壊れた杖の所為でこのところ授業の度に何かと問題を起こしていたからだ。
モアは不良品かも知れないと言われた自分の白い杖を睨み付け、それからふと思い出した。
「あー、残念だけど、それなら心当たりがあるかも知れないわ。杖選びの時にね、ちょっとした問題があったのよ」
モアはハーマイオニーの熱心さに根負けして言った。ハーマイオニーはすぐさまこれに食い付いてきた。
「問題ですって? オリバンダーの店で買ったんじゃないの?」
「ええ、そうよ。そうなんだけど……」
モアは言葉を濁らせた。ハーマイオニーは自分で不良品の可能性を持ち出した癖に、随分と驚いた様子で身を乗り出した。モアは溜め息を飲み込んで言った。
「ただ……その、何も起きなかったのよ。今みたいに」
「杖選びの時に何も起きなかった杖を買ったってこと? そんなことってあるの?」
「何本も試したけどどれも駄目だったのよ。で、これしかないって言われて買わされたわけ」
ハーマイオニーは信じられないとばかりに目を丸くしたが、すぐに切り替えて明るい声を出した。
「じゃあ私の杖で試してみましょう」
「でもね、ハーマイオニー。これはつまり、杖の問題じゃないんじゃないかと思うの」
「試せることは何でも試さないと駄目よ、さあ!」
そろそろモアが魔法使いじゃないと認めてくれてもいい頃なのに、ハーマイオニーは俄然やる気を取り戻してしまったようだった。
ハーマイオニーは自分の杖とモアの杖を取り換えると、モアに杖を振るように促した。モアが杖を手に取ると、何百回何千回と振り続けた自分の杖とは違って、手に馴染む感覚はなかった。それどころか、杖に細かく彫られた蔓のような文様がモアの手を拒絶しているように感じられた。
モアはマッチ棒を掲げると、呪文を唱えながら反対の手に持ったハーマイオニーの杖をゆっくりと振るった。ハーマイオニーは呪文が掛けられたと思しきマッチ棒を凝視した。
「あっ、見てモア! マッチ棒が薄ら銀色になってきた気がするわ!」
「気の所為じゃないかしら。私にはただのマッチ棒にしか見えないんだけど」
「自信を持つのよ! 確か、自信の有無も魔法の成否に影響するって研究結果があったはずだわ」
自信を持てと言われたところで、モアは自分に魔法が使えるなんて微塵も思っていないし、使いたいとも思っていないのだった。
結局この日も、モアの練習が実を結ぶことはなかった。近頃はハーマイオニーとの自主練を終え、何も魔法の現象が起こらなかったことにほっとして眠りにつくという日々が続いていた。
長い雨の日が何日も続き、ホグワーツにはハロウィーンが近付いていた。
ある土曜日、モアは魔法薬学の宿題を終わらせるべく、一人で図書室に篭ってレポートを書き続けていた。同じくまだ課題の終わっていないロンも誘ったのだが、ロンは大好きなクイディッチチームであるチャドリー・キャノンズの写真集を眺めて現実逃避するのに忙しいようだった。
モアが参考資料の本を捲っていると、頭上から男の子の声が降ってきた。
「真面目にやっているようだね」
顔を上げると、エミールが隣の椅子を引きながらモアのレポートを覗き込んでいた。モップ・トップの前髪がはらりと崩れて、目元を覆い隠している。
「この考察は良い着眼点だと思うよ。薬の副次効果についても良く書けている」
「一体何の用?」
モアはつっけんどんに聞いた。エミールは大して気にした様子もなく口を開いた。
「フィネガンから、君が随分前から毎日談話室で魔法の練習をしているって聞いたんだ。それで、この間のことを謝ろうと思って。格好悪いだなんて言ってすまなかった」
エミールは素直な様子で言った。モアは謝罪なんていらないとばかりにゆるゆると首を振るった。
「別にやりたくてやってるわけじゃないわ。あなたに言われたからやってるわけでもない。熱心に見てくれるハーマイオニーの厚意を無碍にしたくないだけよ」
「それでも努力は努力だ。やりたくないことを続けることほど難しいことはないと俺は思うよ」
感心したように告げたエミールは、モアの書きかけのレポートを取り上げると興味をそそられた様子で本格的に目を通し始めた。エミールのマイペースな様子に呆れ返りながら、モアは自分のレポートを読まれるがままにした。
真剣にレポートを読み進めるエミールの横顔を眺めながら、モアはホグワーツでお世話になっている人達の顔を思い浮かべた。
「熱心な先生に熱心な友達……魔法使いになりたいのならこんなに恵まれたことはないんだろうけど、残念ながら私は魔女になんてなりたくないのよね。それに、どんなに自分は魔法使いじゃないって主張しても誰も聞き入れてくれないの」
「当然だろう、魔法使いじゃない人間はホグワーツに来られないんだから」
そこでエミールはレポートから顔を上げた。
「そもそもどうしてそんなに魔法使いになりたくないんだい。ここでの生活もそんなに悪いものじゃないだろう?」
モアは凝り固まった筋肉をほぐすように腕を前に伸ばした。
「私はね、ずっと魔法のない世界で生活してきたの。小さい頃から一緒の、家族同然の友達に囲まれて楽しい毎日を過ごしてた。それをいきなり転校しろだなんて言われて、そんな勝手な話呑み込めるわけがないわ」
「つまり君は、魔女になりたくないんじゃなくて前の学校に戻りたいのかい?」
「そうよ。それの何がいけないって言うの」
エミールは瞳をぱちくりさせると、何が面白いのかふっと笑みをこぼした。
「君が何をそんなに複雑に考えているのかは知らないけれど、退学届を出せばいいだけの話じゃないのかな」
モアは一瞬言葉を発するのを忘れかけた。
「……退学届ですって?」
「ホグワーツを辞めたいだけならそれで十分だろう? 退学して前の学校に戻れば良いじゃないか」
エミールはなんてことないとばかりに言った。
このひと月、モアは自分が魔法使いでないと証明することに気を取られすぎていて、退学届のことは頭からすっかり抜け落ちていた。エミールの言う通り、前の学校に戻るだけならそんなに難しいことではないのかも知れない。
モアは、目の前に光明が差してきたような気持ちになった。
「ありがとうエミール、本当にありがとう! あなたってすっごく良い人ね!」
「君がこんな単純なことに気付かないことの方が驚きだよ」
モアはエミールの手からレポートを取り上げると物凄い速さでくるくると巻き、羽ペンやインク壷と一緒に鞄に押し込んで席を立った。
「レポートなんてやっていられない、私、早速退学届を書いてくるわ! 本当にありがとう! 大好きよ、エミール!」
感情に任せてモアが叫ぶと、エミールは狐につままれた顔をしながらひらひらと手を振った。
モアは走りに走って閲覧席の間を抜け、図書室の出口を目指した。これを目撃した司書のマダム・ピンスはカウンター越しに「図書室で走らない!」と叱り飛ばしたが、モアの耳には届かなかった。
廊下を大急ぎでグリフィンドール塔に駆け戻ると、モアはベッドルームを目指した。談話室でレポートに取り組んでいたロンとハーマイオニーが呼び止めようとしていたのも気づかず、モアは大股で二人の横を横切った。
モアが扉を跳ね除けてベッドルームに飛び込むと、部屋の真ん中で背中を掻いていたブーティが驚いてカーテンの陰にさっと隠れた。モアはトランクを開けると、友達に手紙を書くために持って来た花模様の便箋を取り出し、机に向かって意気揚々と羽ペンを構えて――すぐに詰まった。
「退学届って何を書けばいいのかしら」
これまで退学届はおろか、誰かに提出する正式な書類の類を一切書いたことのないモアだ。こういった時に何を書かなければいけないのかまるで分かっていなかった。まさか退学するなんてことを誰かに相談するわけにも行かないから、一人でうんうんと十分ほど悩んだ挙句、モアは思ったことをそのまま文章にすることにした。
「私、モア・クレイズは転校前の学校に戻るため、ホグワーツ魔法魔術学校を退学します……これで良いかしら」
便箋の右下にサインをしてから、淡い桃色の封筒に入れる。封筒の表には『退学届』と記載して、最後に便箋と同じ花模様のシールを封蝋の代わりに貼り付けた。
パーフェクトに可愛い仕上がりにモアは満足して頷いた。部屋が静かになった気配を察して、カーテンの裏からブーティが探るような足取りでゆっくりと出てきた。モアはこれを見付けると、嬉しくて堪らないという微笑みを浮かべた。
「あら、ブーティ。さっきは驚かせてごめんなさい。私、ちょっと校長室に行ってくるわね!」
ブーティはモアの顔をじっと見つめると、不意に視線を外してパーバティのベッドの下に潜り込んだ。
前の学校に戻れる。また皆と一緒の生活が送れる。モアの心は逸った。
退学届を手に大急ぎで螺旋階段を下り、今すぐ談話室を飛び出そうとしたが、すぐさまモアは立ち止まった。談話室を振り返り、隅のテーブルで羊皮紙を広げているロンとハーマイオニーを見付けると急ぎ足で歩み寄った。
ハーマイオニーはロンのレポートの面倒を見ている様だった。ロンの羊皮紙はまだレポートを書き始めたばかりといった感じで、ほとんど真っ白だった。
邪魔するのも悪いとは思ったが、モアは思い切って二人に声を掛けた。
「ねえ、校長先生のお部屋ってどちらにあるのかしら」
遅々として進まないロンのレポートに釘付けになりながら、ハーマイオニーがやや苛々した様子で答えた。
「校長室の入り口なら三階にあるって聞いたことがあるわ。ダンブルドアに何か用なの?」
「ううん、ちょっと聞いてみただけ。これだけ大きな学校だもの、校長室はさぞかし立派なお部屋なんでしょうね」
流石に退学届けを出しに行くとは言い出せずに、モアは作り笑いを浮かべた。
退学届が受理されれば、ハーマイオニー達とは別れることになる。特にハーマイオニーには散々お世話になったのに、まだ何も返せていないことを思うとモアは胸が痛んだ。二人の遣り取りを眺めながら、モアは少しだけ寂しい気持ちに駆られた。
「二人ともありがとう、さようなら」
モアは小さな声で言い残して、二人に背を向けた。
グリフィンドール寮から階段を下って三階に辿り着いたモアは、またもや困り果てる羽目になった。どれが校長室の入り口かさっぱり分からなかったのだ。唯一分かったのはDADAの授業で使われる教室とロックハートの部屋だったが、モアはこの二つを無視して廊下をうろうろした。
この廊下には、気味の悪いガーゴイル像がそびえているのが目に付いた。モアはその像を避けるように廊下を歩き回り、取り敢えず、目についた扉を一つ一つ開けてみることにした。しかし開けた扉のほとんどが空き教室や物置で、校長室らしきものは何処にも見当たらなかった。
モアが不安に駆られ始めた頃、運の良いことに、廊下の向こうから薄青色のローブを引き摺るようにしてダンブルドアが歩いてきた。
「校長先生!」
モアはそう叫んでダンブルドアに駆け寄った。何かを小脇に抱えたダンブルドアは、ガーゴイル像の前で立ち止まると何事かとばかりにモアを見詰めた。
モアは息を切らして言った。
「先生、私……私、校長先生にお話があって」
「もしや、ずっとここで待っておったのかね」
「はい。と言っても、多分十五分くらいですけど」
ダンブルドアは深く頷くと、モアの背中に手を回した。
「それはさぞかし待ったことじゃろう。入りなさい。フィフィ・フィズビー!」
ダンブルドアが合言葉を言うと、突然ガーゴイル像が動き出した。像は左にぴょんと飛び退き、その後ろにそびえていた石の扉が左右に割れた。こんなのが入り口だなんて分かるわけないとモアは思った。
壁の向こうには動く螺旋階段が伸びていた。モアはダンブルドアに続いてこれに乗り込むと、エスカレーターのようにオートメーションで上へと運ばれていった。
「校長先生はお出かけだったんですか?」
校長室に入るなり、モアはダンブルドアに問いかけた。ダンブルドアはゆったりとした足取りで机を回り、背凭れの高い椅子に腰掛けた。
「いや、キッチンに出来立てのチョコレートファッジを貰いに行ったところでのう。屋敷しもべ妖精たちの渾身の作じゃ。良ければ一つどうかね」
ダンブルドアは小脇に抱えていたガラス壷の蓋を開けると、モアに向けて差し出した。モアが大きな欠片を一つ摘まんで口に放り込むと、ファッジは口の中でほろほろと崩れた。鼻が詰まっていたので芳醇なチョコレートの香りはよく分からなかったが、それでも十分に美味しいと思えた。
ダンブルドアはファッジを頬張るモアを見て、満足したようにうんうん頷いた。
「さて、用件を伺おうかの」
「その、私、ホグワーツを退学したいんです」
「ほう。して、何故に」
「ホグワーツを退学して、前の学校に戻りたいんです」
モアはファッジを飲み込みながら言った。ダンブルドアは薄青の瞳をきらりと輝かせた。
「一つ小言を言わせてもらえば、わしの所に来る前に、まずは寮監であるミネルバの所に行くのが筋じゃったな」
「ごめんなさい。私、とにかく退学届を提出することしか考えてなくて」
モアが俯くと、ダンブルドアは柔らかい声で語り掛けた。
「なに、怒っている訳ではない、顔を上げなさい。退学届を見せてくれるかね」
モアは無言で薄桃色の退学届を差し出した。ダンブルドアはモアの退学届を受け取ると、微笑みを浮かべて封筒を様々な角度から眺め始めた。
「随分と可愛らしい退学届じゃのう」
「そうでしょう! そのレターセットはジョアンナと色違いで買ったものなの。私の一番のお気に入りなのよ」
モアは嬉しくなって言った。ダンブルドアは目を細めると、花模様のシールを剥がして便箋を取り出した。便箋には退学したい旨とモアの署名しか書かれていない。ダンブルドアが中身に目を通すのにそう時間はかからなかった。
「気持ちのこもった丁寧な字じゃ。良く書けておる」
ダンブルドアは封筒と便箋を机の上に置くと、深い瞳でモアを見詰めた。
「しかし、残念だが、この退学届は受理できん。退学届は保護者の署名がないと受け取れんのじゃ」
「なんですって!?」
モアは衝撃のあまり、その場に崩れ落ちた。ダンブルドアは眼鏡を外して困ったように眉間を揉んだ。
「そんな! あの人達、絶対に署名なんてしてくれないわ! どうしよう、これじゃあ絶対に前の学校に戻れない……!」
床にうずくまりながら、モアは涙が込み上げてくるのを感じていた。やっとアレイヤ達の居る学校に戻れると思ったのに、こんなのはあんまりだった。ぼろぼろと大粒の涙をこぼし始めたモアは、堪えきれないとばかりに何度も目元を擦った。
ダンブルドアは気の毒そうな声色で言った。
「君に関しては幾つかの噂を聞いておる。さっき君が言ったように、前の学校に戻りたいそうじゃな。それから魔女になりたくないとも」
「そうよ、前の学校には、家族みたいに大切な友達が沢山居るのに……」
モアは俯きながら言った。ダンブルドアは長い溜め息を吐いた。
「大切な友達と離れたくないという気持ち、それはよく分かる。わしにも昔、離れたくないと思える友がおったものじゃ。結果的に仲違いしてしまったが、今でも大切な友だったと思っている。ひと時でもそうした友と一緒に居られたことは人生の大きな収穫じゃ」
モアは同意を示すようにこくこくと頷いた。ダンブルドアは机の向こうからモアに優しく微笑みかけた。
「ホグワーツはの、ただ魔法を学ぶための学校ではない。魔術の授業を通して、持って生まれた自らの魔力をきちんとコントロール出来るようにすることも重要な目的の一つなのじゃよ」
「魔力をコントロール出来るようにする?」
「そうじゃ。わしが思うに、君は高い魔法の素養を持っているが、まだ自分の力をコントロール出来ていない」
モアは涙を拭いながらダンブルドアを見上げた。
「私が魔法を使えないのは、自分の魔力をコントロールできていないからってこと?」
「ある意味で言えば、完璧にコントロール出来ているとも言えるのじゃが、それは今はよい。君は自分の魔力をきちんと操れるようになるべきじゃ、自分自身のためにのう」
ダンブルドアはそこで言葉を区切った。魔力を自在に操れるようになるとはどういうことなのだろう。ハーマイオニーのようにどんな魔法も使えるようになるということだろうか。
ダンブルドアはモアの疑問を見透かすような瞳を向けた。
「君がきちんと自分の持つ力の性質について理解することが出来た暁には、その時は正式にこの退学届を受け取ろう。勿論、ご両親のサインも込みでな。さあ、ファッジをもう一ついかがかね。落ち込んだ時には甘い物が良く効く」
「ありがとう、校長先生……お気持ちだけ受け取っておくわ」
モアは気持ちを立て直すようにゆっくりと立ち上がった。涙は次から次に溢れてきて留まることを知らなかったし、胸の痛みもなくなることはなかったが、それでもモアはお礼を言うと何とか校長室を後にした。