秋霜烈日の桜   作:千火チロル

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2弾-5

俄に輝きを増す、左右に立つ二人の瞳ーー

これが何を意味するのか、俺はこの世で最も理解している人間の一人だろう。

色金に由来する超々能力者が行使する規格外の超能力……中でも取り分け殺傷力が高い瞳孔幅のレーザーだ。

フィクションの世界や近未来の物語には必ずと言って良いほどレーザー兵器、或いは武器が登場するものだが……

未だにアメリカですら実用化に至っていない、まさに武装のオーパーツとも言うべき代物である。

「さぁーーどうするんだい?トオヤマくん」

目の前のスキンヘッドから発せられる見た目に沿わない口調。

刻一刻と必殺のレーザーが俺の身を貫こうとしている最中ーー脳裏をよぎるのは過去の経験だ。

ーーある時は英国の至宝を生贄に生き延びた

ーーある時は複数のレーザーを立ち回りで撃たせなかった

しかし過去の経験は今この場で活かせる物ではない。

俺の手元にはレーザーを耐え得るだけの金属は無いし、味方への直撃を気にする様子も無い相手である以上立ち回りでレーザーの照射を止める事も難しいだろう。

だからと言って不詳の弟の様に内蔵避けで致命傷を避けるかと言われればこれも違う。なにせ相手の銃口ならぬレーザー口たる視線は俺の頭と心臓を完全にロックオンしているのだ。

流石のヒス俺と言えど頭蓋骨の中で内臓避けはーー多分、おそらく、それこそ流石に出来ない

普通ならこれで万事休すだろう。或いは俺が武検に与えられた超法規的権限の1つを行使して……殺害をも厭わないのなら、回避は出来るのかもしれない。

だが……俺はその手段は絶対に取らない。

それは俺自身の矜持であり、自らに課したルールなのだから。

それになりよりーーヒステリアモードの頭脳は、殺害と言う最悪の手段を使わずとも、この状況を打破する手段を導き出したのだ。

しかし、タイミングは一瞬。立て直しの暇を与える事は出来ない。

両サイドからのレーザー照射を見極めている俺の前で、タトゥーの男が、

「行くよーー」

ご丁寧にも、照射のタイミングを自ら口にしようとした、正にその時。

ガガァン!と言う激しい衝突音が俺の足元から発せられーー俺の足元から放射状に亀裂が走ったビルの屋上が、俄かに崩落を始めた。

「なっーー」

これにはタトゥーの男、正確には乗り移っている何者かも予想外だったのだろう。

崩落と共に照射された両サイドからのレーザーは片や先程まで俺が立っていた虚空を、片や俺の落下する直下を撃ち抜くに留まっていた。

幸いにも広々とした階下に降り立つ事が出来た俺は、両足の踵から突き出たショートソード程度の長さの刃物をすぐさま着脱し……

「観たかったものは観れたかな?」

突然の崩落により着地に失敗したらしい、尻餅をついた様なタトゥーの男に向かってベレッタの銃口を向けながら言った。

「……どうやったんだい?」

タトゥーの男は未だに何が起きたのか理解出来ていない様子で俺に問いかける。

「大した事じゃないさ。この屋上に降り立った時から古いビルなのはわかってたからね。工事現場のボーリングと似たよう事をしただけさ」

そう。俺がやったのは正にボーリングと言えるだろう。

俺は、レーザーの照射が始まる刹那のタイミングで……多段桜花を仕込んだ刃を出した両足で行ったのだ。

屋上に降り立った際の感触、そしてひばりの部屋からビルに乗り移るまでに確認していた階下の窓の位置から……屋上を崩落させる事が出来るのはわかっていた。

レーザーはその性質上、直線にしか照射される事は無い。

だが、視線=銃口である事や両サイドからの挟み撃ちである事を考えれば2次元的な空間ではどうしても回避する事は出来なかっただろう。

だからこそ、自らの立つ足元を破壊し、相手の虚を突くと共に2次元ではなく3次元の回避を成立させる必要があったのだ。

特に相手は1人(?)の人間(?)が3人を操っているのだ。

レーザーの照射を止める事が出来ない段階での突発的な事象に対応するだけの余裕を与えない……これもまた、必要不可欠な要素と言えるだろう。

「あははは……トオヤマくんは常識が通用しないとは聞いていたけど、まさかここまでとは思っていなかったな……。うん。観たかったモノは観せて貰えたよ」

必殺の攻撃が失敗したにも関わらず、そして銃口を向けられていてもなおタトゥーの男の口調は余裕に溢れている。

「それは良かった……それじゃ見物料を貰わないとね。とりあえずは3人分の身柄がお代になるけど、まさか踏み倒すとは言わないね?」

両サイドに居た二人は落下の衝撃か、或いは操る事をやめられたからなのか、床に倒れ伏して動く様子は見られない。

何かしらの行動を起こすなら目の前のタトゥーの男だけと言う状況で、更なる抵抗を予想した俺は油断せずに相対していたのだが、

「うん。わかったよ」

両手を上げて無抵抗を示すタトゥーの男の言葉に、肩透かしを喰らった。

「まぁ薄々気付いてるとは思うけど、ここに居る僕は僕じゃないからね。3人とも大した事は知らないし、大人しく捕まって貰うことにするよ」

「……そうか」

「ただ、トオヤマくんとはまた近いうちに会える、そんな予感があるよ。その時はまた是非遊んでおくれ。……それじゃ」

一方的に言い終えるや、タトゥーの男は糸の切れた人形の様に顔面から崩れ落ちた。

紫色に光る瞳。そして同時に複数人を操り、レーザーを始めとした超超能力を駆使して襲いかかってきた襲撃者は、事の起こりと同じく唐突に去って行ったようだ。

「これにて一件落着……とは到底言い難いな」

周囲には誰も聞いている人間は居なくとも、ついぼやくような言葉が口をついてしまう。

襲撃者を撃退したから一件落着……とは行かない事が増えた事も、昔との違いかもしれない。

まずはともあれ。

「もしもし俺だ。真夜中に悪いが今動けるか?」

「師匠の頼みとあらば時間、状況問わずーー」

真夜中にも関わらず俺の電話に即応してくれた武検補の1人に電話を掛け、崩落したビルの屋上の後処理と抑えた身柄の確保を頼むのだった。




ふと思い出して見てみたら最後の投稿が1年半以上前で驚きつつ時間に余裕が出来たのでぼちぼち合間を見て再開したいなぁと思います。
お時間のある際暇つぶしでも読んで頂ければ幸いです。
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