秋霜烈日の桜   作:千火チロル

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※一応微エロ注意?※
読まなくても多分今後の展開には影響ありません。
苦手な方は注意推奨かも


閑弾

 深夜11時を回った東京都霞ヶ関。

 昼間は喧騒に包まれ、精力的に働く人々の熱気が感じられ、忙しく歩き回るスーツの役人達がどこかしこに見受けられるこの場所に――その所在を置く最高検察庁。

 平日の深夜とは言え、窓には未だ幾つかの灯りが灯り、国のため、エリート達が命を削りながら働き続けている。

 そんな最高検察庁に、俺と菊代の二人は居た。

 いや、少し語弊があるか

 正しくはその地下である。

 ――最高検察庁の地下にはごく限られた1部の人間にのみ、その存在を開示された秘密の部屋が幾つか存在している――

 都市伝説として語られる話ではあるが、これは実の所本当の話である。

 この地下室は、庁舎の建設時には図面にも乗っておらず、後に秘密裏に増築されたものなのだが、まさに今、俺と菊代が二人きりで居るのはそんな場所だった。

 武検はその職務上、あらゆる犯罪者、或いは腕に覚えのある無法者に襲われる危険が存在している。

 だが、如何に武検が一騎当千の強者であろうとも、人間であり(大きく逸脱はしているが)、また一応は公務員という職務上、どうしても事務処理を行う際、或いは戦闘向きで無い武検補などの常駐場所として、ある程度の安全が確保された空間が必要である、との判断から20年ほど前の内閣の判断で作られたらしい。

 最高検察庁のとあるエレベーターから、武検と武検補及び公安0課の者にそれぞれ与えられたドッグタグ、そして網膜及び静脈認証を通過した場合のみ入ることが出来る、この国でも最高機密に類する空間なのだ。

 そんな地下室で、俺が今行ってるのは正しくこの地下室の使用目的に準じた事柄である。

 何かと言えば、先ほどのスキンヘッド以下8名の逮捕に係る書類の作成のためだった。

 「……」

 俺に与えられた地下室のデスクにて、真面目に書類を作成する俺の背中に、無言の圧力と何故か不機嫌そうな視線を向けているのは、誰であろう、地下室に居る二人の内のもう一人、菊代だった。

 ……

 いや、自分を誤魔化すのは辞めにしよう。

 俺も昔ほど鈍感では無いし、また世間知らずではない。

 男女の関係から距離を置いていた数年前ならいざ知らず、今の俺には菊代が不機嫌な理由は充分に理解できているのだ。

 つまりはこの無言のアピールは、先刻のヒステリアモードの俺とのやり取りを反故にされたと思っている菊代の、僅かばかりの嫌がらせなのだ。

 ……どうするかなぁ……

 このまま菊代の不機嫌を放置するのも今後に差し障るが……

 菊代の言っていた、お仕置きとやらをするのもな――

 といった感じで。今後の対応を思案していた俺だったが……

 突然、思案しながらも書類の作成をあらかた終わらせた俺の背後から、菊代が抱きついて来た。

 いやいや、いくら思考に注力していたとは言え俺に気配を感じさせず背後から抱きつくとは、実に武偵としてのスキルの無駄遣いに他ならないだろう。

 そんな風に考えながらも、方針を決めかねていた俺は、一先ずは無視することを選択したのだが――

 そこで思考を中断せざるを得ない状況に追い込まれる。

 「……はむっ」

 「ちょ、菊代、お前――」

 あろう事か菊代は、座った俺の背後から抱きつくだけでは飽き足らず、俺の右耳を甘噛みしてきたのだ。

 さすがにこれでは無視出来ない。

 歯を使わず、唇だけの甘噛みではあったが、慣れ親しんだ菊代のヒプノティックプワゾンの香りを0距離で感じながら、甘えるように俺に甘噛みしてくる菊代が、普段とのギャップと相まって、余りにも魅力的で――

 ヒステリア性の血流が固まってくるのは、致し方ないこと――そう、言えるだろう。

 全く――1時間もインターバルを置かず、一日に二度も俺をその気にさせるなんて……

 菊代は本当に、悪い子だね。

 「あっ……遠山、その気に、なったんだね?」

 俺の変貌に気付き、嬉しそうに話す菊代が、甘噛みを止め、抱きついてた両手の力を緩めた、まさにその時――

 「???」

 何が起きたかわからない、という表情になる菊代。

 それも当然の事だろう。スーツの上から羽織っていた和服を半脱ぎ、つまりは両腕の中程まで下げられた、ある種拘束された様な状態になっていたのだから。

 ヒステリアモードになった俺は……

 まずは潜林の要領で菊代の両腕と机及び椅子を潜り抜け、同時に菊代の方向に体を向け、手首から先のみを桜花で加速させ目にも止まらぬ早さでもって、この状況を作り上げたのだ。

 「いけないね、菊代。今の俺はまだ仕事の真っ最中……それなのに、こんな風に俺を誘惑するなんて」

 先ほどは、実の所有耶無耶にしようとしていたにも関わらず、それをおくびにも出さず菊代を責めるような口調の俺。

 「だ、だって、遠山がさっき約束したのに構ってくれないから……」

 「俺は菊代との約束を反故にするような、そんな男だと思われていたってことになるのかな……悲しいよ……菊代」

 白々しく言いながら、両腕を己の和服で拘束された菊代を徐々に、徐々に、後退させていった俺は……

 ついには菊代の背中が壁に付く状態にまで持ち込んでいた。

 何かを言おうとした菊代に対して、俺は被せるように語りかける。

 「本当は菊代へのお仕置きは優しくするつもりだったけど……これは少し、厳しくしなきゃいけないかな?」

 言うと同時に、俺は左手を壁につき――いわゆる壁ドンのような体勢――空いていた右手で菊代の下腹部、それもスーツの下のYシャツの更に下、つまりは直接地肌に触れると……

 そのまま小さく円を描くように、優しく愛撫をはじめる

 「あっ……遠山……そこは」

 俺に直接触れられる恥ずかしさか、或いは喚起の喜びからか

 顔を耳まで赤くした菊代が、艶のある、しかし押し殺したような喘ぎ声を漏らす。

 そして俺はそのままたっぷり5分ほど……

 決して速度を上げず、かといって遅くもせず等速で、時折菊代の耳を先ほどのお返しとばかりに甘噛みしながら、菊代の体を火照らせていった。

 「あっ……んっ……あっ……と、遠山ぁ……」

 そんな俺の、焦らすような愛撫に耐えかねたのか、菊代はすこし潤んだ瞳で見上げながら、俺の名前を呼んだ

 「アタシ、もう」

 「もう、どうしたのかな?」

 求めているものはわかっているのに……

 それでもなお、敢えて意地悪く菊代に聞き返す俺。

 しかし本当に耐えきれないのか、菊代は上気した頬で途切れ途切れに俺にねだってきた

 「アタシ、もう限界だよ……意地悪しないで、頂戴よ……遠山ぁ」

 その部分を直接触れて確認した訳では無いが、菊代の準備は万端なのだろう。

 正直なところ、俺ももう準備は万端――

 ヒステリアモードの本来の意義を果たすことに、なんら不満もないのだが……

 俺はまだ、行為を進めない

 それどころか手を止めることにした

 「な、なんでなの、遠山ぁ」

 熱で浮かされたような表情で、俺に抗議の声を上げた菊代に対して

 「これはあくまで、悪い子の菊代へのお仕置きだからね。……菊代のして欲しいことを、簡単にして上げたら、お仕置きにならないだろ?」

 「そんなぁ……」

 もう限界だよ、と言う潤んだ瞳で見つめる菊代に、俺は畳みかけるように続けた。

 「だけどもし菊代が、上手におねだりが出来る良い子になるなら……俺の気も変わるかもしれない」

 わかるね?と言う意味を込めた俺の言葉をどう受け取ったのか――

 菊代は、ゆっくりと、その場にしゃがむような姿勢になり、媚びるように俺を見上げながら、震える口を開く

 「アタシは、菊代は、これから良い子になります。遠山の言うことを何でも聞く、犬みたいになるよ。だからアタシの――」

 意を決した菊代が、決定的な言葉を口にしようとしたまさにその時、

 ピリリリリリと言う電子音が、俺の内ポケットに入っていた携帯から鳴り響いた。

 ………。

 誰からの着信か、一応確認する俺の目に入ったのは

 『山根ひばり』

 と言う、スキンヘッドの案件を俺に知らせてくれた、情報提供者であり俺の協力者、そして今では気の置けない友人となっていた

 山根ひばりの、名前だった――




R15だからね、仕方ないね
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