秋霜烈日の桜   作:千火チロル

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2弾

 時刻は深夜1時。

 半グレを強襲逮捕したり霞ヶ関で菊代にオシオキ――と称したイケナイ遊び――したりしていた俺が、今日最後に訪れたのは、日本全国どこにでもある居酒屋チェーン店、ある意味安定感のある「臼木屋」だった。

 なぜ居酒屋に来ているかと言えば……菊代へのイケナイオシオキの最中、狙ったかのようなタイミングで掛かってきた、電話の相手に会う為である。

 「いらっしゃーせぇー!」

 「お客様ご来店でーす!」

 目の前に立つと自動で開いたドアを潜り、入店した俺に対して、こんな時間だというのに元気一杯の声で店員達が出迎えてくれる。

 まぁ俺もそうなんだが、今日、と言うか昨日は花金だったからな。

 仕事帰りに一杯引っ掛ける社会人や、二次会、三次会を終えてもう一呑みする人間も、この時間ならそこそこいる。

 稼ぎ時と言うことも有り余計に気合いが入ってるのかもしれないな。

 そんなことを思いながら、人数を尋ねに来た店員に手短に伝える。

 「あー連れ、と言うか先に来てる筈なんだ。山根って名前で」

 「山根様ですね。通路の1番奥、窓側の小上がりの席となっております」

 店員に言われた席にゆっくりと、敢えて気配を殺しながら近づいていき……

 小上がりの席ではあったが、襖に僅かな隙間があったので、その隙間から中をおそるおそる覗くと……

 ――居た。武装検事である俺の外部協力者兼情報提供者であり、現在は読買新聞の女性記者――山根ひばりが肘を机につきながら、極細ポッキーをポリポリポリポリ、と高速で食べている。

 と言うか、電話の口振りからある程度予測していたが、ひばりの奴、大分イライラしてる様子だ。

 今はポッキーをひたすら食べているが、角度を変えて机上を見れば……既に飲み始めていたのだろう。空になったジョッキが5つ程乱雑に置かれている。

 確かに、半グレの件が片付いたら直ぐに連絡すると言っていながら、連絡の遅れた俺が悪いのだが

 ……入り辛いなぁ……

 ひばりは常日頃から、上下共に飾り気のないスーツ姿では有るものの、薄化粧でも充分に美人な、顔立ちの整った女子なんだが……はっきり言って、余り酒癖が良くない。

 ぶっちゃけ絡み酒――それも人に強要するタイプの、だ。

 明日が休みとは言え、これは心して掛かる必要がある――そう、俺は腹を括り襖を開ける。

 開口一番先ずは謝罪をしようとした俺だったが――

 「悪い、おそ――」

 「おっそいわよ!!遠山君!」

 開けた俺の姿を見るや否や、俺に謝罪の言葉も言い終わらせること無く、被せるようにひばりはがなりたてて来た。

 て言うか、まだ距離も有るのに凄まじい酒臭さだ。

 もう机上のどこにもアルコールは残ってないのに……と思った俺だったが

 うわっ、よく見たらひばりと窓の間に冷酒の空き瓶が三本ほど転がってるじゃん。

 襖の隙間からは死角になっていて気付かなかったな、これは。

 しかし、電話から1時間ほど経ってるとは言え、どんだけハイペースで呑んでいたのか……

 「悪かったよ。ちょっと事後処理に時間が掛かってたんだ」

 嘘では無いが100%の真実でも無い言い訳をしながら、俺はひばりの向かい側に腰を下ろす。

 「どーせまた女の子とイチャイチャしてたんでしょー」

 「……いや、仕事だぞ?」

 据わったジト目で、なんだかいじけた様な表情のひばりが痛いところを突いてくるが、俺は若干の間を開けつつどうにか返す。

 新聞記者だからなのか、妙に鋭い。

 「まぁ別に良いけどね……遠山君は私みたいな魅力の無い娘は趣味じゃ無いもんね……」

 言いながら、着ていたスーツの下のYシャツのボタンを幾つか外しはじめたひばり。

 お、おい4つも外したら流石に見えるぞ!

 「そ、そんなことしなくても充分魅力的だから!」

 ボタンの外れたYシャツの間から、少しばかり見えてしまっているブラと胸から、目をそらしつつフォローする俺。

 今日は既に二回もヒスってるんだ……っ!

 流石に、1日に3回はキツいものがあるんだよっ……!

 チラ見なのに少し集まり始めている、あの血流を抑えようと藻掻く俺だった……

 だが、そんな俺の言葉を聞いてもひばりは外したボタンをかけ直してはくれなかった。

 とは言え、目を逸らした俺の反応と、咄嗟のフォローに少しは満足したのか、ひばりからの詰問は終わってくれたようだ。

 「ふーん。私って魅力的なんだ」

 言いながら、酒とは別の理由で、少し頬を染めながら心底嬉しそうな顔をするひばり。

 酒が入っているとは言え、普段はクールで仕事人間という風体のひばりの、こう言った反応は正直かなり可愛い。

 さっきの菊代もそうだが、俺ってギャップにホント弱いよな……

 そんなことを思う俺だったが、詰問への終了に安心したのも束の間、新たな試練が俺を襲うことになる。

 なぜなら、ひばりのセリフは、これで終わりでは無かったのだから。

 「それはさておき遠山君も飲むのよー!駆けつけ三杯!」

 などと言いながら、机上にあったタッチパネル式の注文用機械を操作し始めるひばりは……

 俺が何を飲むか聞くまでも無く、生中×4とつくね串四本を素早くオーダーする。

 て言うかひばりさん、一杯は自分用にしても、×4ってことはホントに俺に駆けつけ三杯させる気ですか――

 俺は明日の頭痛を覚悟しながら、半グレ達やタトゥーの超能力者相手にもついぞ感じることの無かった、今日一のピンチに僅かな震えを感じるのだった……

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