秋霜烈日の桜   作:千火チロル

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2弾-2

 「うぅ……気持ち悪い……」

 俺の背中で、自業自得にも関わらず吐きそう、みたいな状況を前面に押し出しているひばり。

 かく言う俺も、ひばりからそれなりに飲まされたせいで、足下が覚束ない程ではないものの、コンディションは最悪と言える。

 「ひばり、吐いても良いけど俺の背中にぶちまけるなよ……?」

 「一応女なんだから、吐くとか言わないでよ……」

 おそるおそると言った風にひばりに注意する俺に、どうにかと言った感じでひばりが軽口を返してきた。

 軽口を返せるあたり、意外と平気なのかもしれないな。

 しかしこの状況……そもそも何のために今日ひばりと会ったのかを改めて思い返す。

 半グレ達の件や今後の調査案件についての依頼が目的だったはずなんだが、ひばりを大分待たせていた俺は、その罪悪感もあり、そこに触れることもできず延々ひばりの愚痴を聞き続けるハメになってしまったのだ。

 そして今。

 俺の到着前からかなり呑んでいたひばりは、俺の到着後は更にペースを上げて飲み続け、その結果が今のこの有様である。

 ひばりの借りているマンションが「臼木屋」の近所だったので、この酔っ払いを一人で家に帰らせる事にならなかったのは幸いと言えるかもしれないが……

 考えている間に、ようやくと言うべきかひばりの借りているマンションのエントランスに到着する。

 女の一人暮らしと言うことも有り、ひばりの借りているマンションは電子ロックされたエントランスを通らなければ各部屋に入ることは出来ない。

 「おい。着いたぞ。そろそろ降りて部屋に戻れ」

 部屋番号とそれぞれ設定された暗証番号を打ち込まなければ部屋に戻れないことも有り、俺はひばりに背中から降りるよう促すのだが……

 「305号室の1080だから……遠山君、よろしく」

 あろう事か俺に部屋番号と暗証番号を伝えたひばりは、背中から降りる気が一切みられない。

 シンドイのかもしれないがひばりよ。一応部外者の俺に簡単に部屋番号と暗証番号教えるのはマズいだろ……と思うが、酔っ払いゆえの判断力の低下だろう。

 こう言う状況なのでやむを得ないが、今日知った番号は忘れることにしよう--そんな至極真っ当な事を考えつつ、俺は伝えられた番号を打ち込み、ホントに合っていた番号に少々驚きつつも、ひばりの部屋へと向かう。

 「ひばり、部屋まで着いたぞ。今日はもう水飲んで寝た方が良い」

 305号室、つまりは三階まで到着した俺は、先ほどと同様にひばりを促すのだが……

 「ごめん、遠山君。自分で開けられそうに無いからお願い……鍵は右の内ポケットに入ってるから……」

 「自分で開けられないって、この部屋カードキー通すだけだろ」

 「お願い……」

 話ながら、チラッと背中越しにひばりの顔を見ると、ひばりは既に半ば目を閉じ、半分夢心地と言った様子だった。

 これも俺の自業自得か――ここまで来た以上仕方ない、と思いつつ俺はひばりをゆっくりと背中から降ろし、言われたとおりひばりのスーツの内ポケットにある鍵を取り出そうとするが……

 これは目の毒過ぎるな……

 目を瞑ったひばりの、「臼木屋」で先ほど外したYシャツのボタンは当然外されたままであり、非常に際どいライン、と言うかぶっちゃけ下着が見えている。

 更には道中俺に背負わせていたからか知らないが、スーツの上下も妙に乱れた感じになっており……

 色気、ではないが妙なエロさを感じる、そんな姿に出来上がっていたのだ

 そんなひばりを間近で見つめた俺は、

 ドクン――、あの血流を感じ、慌てて目を背ける。

 それはマズい。主に人としてやっちゃいけない部類のことだぞ俺よ――

 こんな状態のひばり相手にヒステリアモードになった日には、取り返しのつかないことになりかねんぞッ……! 

 俺はなんとかひばりを見ないようにしつつ、手先の感覚だけでどうにかカードキーを取り出そうとするのだが、

 「んっ……」

 なるべく見ないように取ろうとしていた俺は、この状況に少しばかり焦っていたせいもあってか……手が、ひばりの胸に当たってしまったのだ。

 少し声を出したひばりへの驚きと、ヒス性の感触を感じた俺の心臓が

 ドギクン!と変な反応をしたが――大丈夫だ、なんとか我慢できた

 もう同じ轍を踏まないためにも、薄目で見ながら、どうにかカードキーを取り出すことに成功した俺は、迅速に解錠し、ひばりを起こそうとする。

 「ひばり!部屋の鍵も開けだぞ!もう大丈夫だろ!起きろ!」

 「……」

 しかし、近所迷惑も考えずそこそこ大きな声を掛けた俺に対してひばりは無言のままだ。

 寝息もするようだが、流石にコレには気が付いた。たぬき寝入りだ。

 「おい、流石にたぬき寝入り位わかるからな。起きろよ」

 「……」

 なおも無言のひばり。

 と言うか、お前もしかしてエントランスからこっち、自分で全部出来たんじゃ無いか?そもそもそこまで酔ってない……ともすれば全然平気なんじゃないか?と今更ながらに思う俺だったが……

 そのまま、3分ほど経過してもひばりはたぬき寝入りを続けている。

 「……はぁ」

 まぁ、ここまで来たら乗りかかった船のようなモノだ。

 ひばりの無言のワガママにも最後まで付き合ってやるか……

 俺はひばりを改めて背負い、ひばりの部屋へと入っていくのだった…… 

 

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