演算機は異世界の夢を見るか?   作:九十九夜

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知人M氏「ねーねー暇ー。なんか書いて。新しいやつ」

「いやあの自分もう作品の方は・・・。」

知人M氏「ダイジョブダイジョブ。ほら、お試しでさあ」

「いやいやいやそれのせいでちょっともう頭が限界なんだけど」

知人M氏「いやいやいやいや」「いやいやいや」

結局書くことになった。・・・笑ってくれていいんだよ。

・・・という訳で、特に意味も何もないけれど心にATフィールドを展開して現実と切り離してみてね!!



fragment

けほ、けほけほ・・・ごほっ

カタカタカタ

 

真っ白な病室で、咳をしながらひたすらキーを打ち続ける女が一人。

言わずもがな、彼女はこの病室の患者である。

 

けほ・・・げほ、げほっ。

 

女の能面の様な表情が貼り付けられた顔は青白く、生気というものが感じられない。

長く長くベッドに散らばるほどの長さの黒髪と白一色の病院着もあってさながら幽霊の様だった。

激しくなる咳とともに遂に女の口からは赤黒い血液が滴り落ちるが、それでも彼女の手は止まらない。

 

画面には今では懐かしい2D仕様におとされた体感型MMORPG「ユグドラシル」のログイン画面が映し出されている。

はて、体感型MMORPGというのであればヘッドギアの装着やコンソールが必要になってくるのでは?

答えは単純に、医療、教育のために取り入れたそれですら、今の女にとっては負担となり得る代物だったからだ。

 

女は幼い頃の大病を患って以来、過度な運動はできない身体になってしまった。

それどころか簡単な動作ですら気を付けなければ発作が出てしまうという面倒くさい体質になってしまって、こうして監禁の様な入院生活を余儀なくされてしまったのだ。

気を張らずに動かせる部位なぞたかが知れていて、指か顎位である。

 

酷く窮屈な生活の中、そんな少女の時分だった女に最低限の関わりしか持たなかった親が与えたのがこの「ユグドラシル」の医療分野における運用の試運転だったのだ。

親としては今更赤の他人もいいところの娘と関わるのが面倒くさかったのかもしれないが、女はものの見事にそれにのめり込んだ。

 

3Dの許可が下りず2D仕様のそれだったとしても女にとっては十分だった。

リアルでは決して出来ることのなかった友人。

白ばかりでない色とりどりの風景。

 

楽しかった。

 

誰にも見てもらえなかった自分が気にかけてもらえる。

 

嬉しかった。

 

それはまるで夢の様な日々

 

しかし、そんな夢も後数時間で終わる。

画面にはサービス終了を表す時間が既にカウントダウンを始めていた。

 

とうとう、女の夢が覚める日が来たのである。

 

「おやすみなさいっと・・・」

 

女が自らのアバターにリアクションとメッセージを取らせ、自身の所属していたギルド・・・「アインズ・ウール・ゴウン」のギルド長、モモンガに退出を知らせる。

相手は何処かがっかりした様子で、それでも申し訳なさそうに振る舞っていた。

彼はどうやらギルドで終わりを迎えるようだ。

 

「・・・これで、いいのよね。」

 

ふうっと女が息を吐く。

後はこのログアウトのボタンを押してしまえば終わりだ。

アバターも何もかもが初期化・・・デリートされ、ユグドラシルは終わりを迎える。

 

《・・・本当に、それでいいの?》

 

「誰っ!?」

 

思わず首を回す。本来は禁止事項であるそれをしてしまったことにより、体の各部が早くも悲鳴を上げているが女は慣れっこなのか無視を決め込む。

 

その囁きは今度はよりはっきりと木霊する。

 

《本当にこれでいいの?》

 

「あ・・・」

 

それだけでもう充分だった。

 

***

 

ギルドの証であるスタッフを持とうとするモモンガの元に「呼ばれてないけどこんにちは!!スイートデビルベアトリーチェちゃんです!!」と声を掛ける者がいた。

 

「あ、あなたは!!」

 

どうして・・・とモモンガが喜びや驚きが入り混じった涙声で問いかける。

 

「なーんちゃって!あれ?もしかして泣いちゃってます?モモンさん。」

 

そう言って紫髪の電脳魔。プレイヤー名ベアトリーチェが華の様に微笑んだ。

 

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