「ベアトリーチェさん?」
「はい。そうですよ、モモンさん。」
「ほんとのホントに!?」
「はい。ほんとのホントですよ。」
「あれ?でも確か今日って検査の日なんじゃ・・・。」
そこまで言いかけてハッとした様に動作を停止させた目の前のアンデッド・・・ギルド長モモンガに向かってベアトリーチェは照れ臭そうに頬を掻いた。
「ええと・・・その、少しズルしちゃいました。」
「す、少しって・・・。」
骸骨のため表情にコレと言って変化は見られないが、声の抑揚からしておそらく落ち込んでいるのだろうことがわかる。
自分だけの終わりが寂しかったためにベアトリーチェが戻ってきたのが嬉しい反面で、リアルでの彼女の姿を知り、直接会ったことがあるが故に検査の重要性がわかるのだろう。
「うふふ、気にしないでください。こっちの方が私にとってはリアルみたいなものですから。」
「そう…ですか…そういえばベアトリーチェさんはこれからどうされるんですか?」
「うーん。此処で最後を過ごしたいんですが……あの子たちにも会いたいですし……。少し向こうに行ってきます。」
「ああ、あそこですか。そういえばあの子たちは元気ですか?」
「はい。相も変わらずといった所ですね。ここの所敵襲もありませんし。」
そんな世話話を二、三話した後手を振りあって別れる。
彼女の居た場所には転移の際に黄金の蝶が舞う課金エフェクトが表示され、その名残の蝶が数匹鱗粉を溢しながら飛んでいた。
***
次に黄金の蝶のエフェクトとともにベアトリーチェが姿を現したのは先程のナザリックとは打って変わって木造建ての古めかしくも何処か気品を感じさせる、聖堂と校舎が一体になったかのような造りの美しい建造物・・・
そのまま足を進め、昇降口染みた出入り口から中に入る。
入ってすぐのところに待機していた案内役岸波白野がペコリと礼を取る。
コマンドで一緒に来ることを選ぶと白野が斜め後ろに控える形でついてくる。
その微笑ましさに口元を緩めつつ、ある一か所を目指して最短ルートを歩いていく。
着いたのは、用具室と書かれたプレートの付いている扉だ。
その扉を開くと、何故か広がった光景は中庭というには中々広い見事な作りの庭園と、その奥に位置する礼拝堂だった。中庭に待機していた蒼崎燈子、青子姉妹がベアトリーチェに手を振る。
そのまま礼拝堂の中へと歩を進めると、そこからは更に別世界の如き0と1の乱数が広がる海を思わせる……否、実際には霊子の海とされる空間にソレはあった。
どこからどこまでが稼働区域かわからないが故に中心というのもどうかと思うが恐らく中央に、遠近法すら無視するかのような大きさの一つの立方体が。
正確にはまるでルービックキューブの様な塊が欠け、所々から桜が蔓延っているというある種異様、ある種滅びと再生の美とやらを感じさせるソレ。
ベアトリーチェの本体である。
「……我ながら久しぶりね。私。」
誰も何もしゃべらない中で、ベアトリーチェの声のみが聞こえる。
そうして、しばし自身を見つめた彼女はそうだっとまるで良いことを思いついたと言わんばかりにポンと手を叩いて満面の笑みを浮かべた。
「どうせなら終わりくらいみんなで過ごした方がいいわよね!そうと決まれば……さあさあおいでなさい。私の可愛い子供たち!」
その発言とともに軽く手を打ち鳴らすとその場に転移の光が無数に拡がっていく。
現れたのはここSE.RA.PHのNPCたちであった。
それもその筈。此処のNPCは2種類おり、まずは他のギルドと同じように彼女や他のメンバーが製作した者。
そしてもう一つが彼女の特殊技能『
集まった子供は一様に笑顔を浮かべている。
「……本当は、あちらにみんないけたらいいのだけれど。」
そうすればこの子たちだけでなく、モモンガやナザリックの面々ともともに最期を過ごすことが出来るのだ。
が、残念ながらこれだけの人数をすぐに転移させられるようなものは現在の手持ちにはない。
仕方がない、とあきらめる。
カウントダウンが始まる。
「ああ、もうすぐ終わりが来るのね・・・。」
***
カチ カチ
カチ カチ
カチ……
ここで、ユグドラシルは機能を停止し終わりを迎える。
……はずだった。
「……?」
何時までたってもやってこない感覚にベアトリーチェは目を開くモーションを取ろうとして、驚愕する。
今まで特に何も思わなかったが何故自分は此処にいるのであろう。
そもそも自分は2D……あくまで平面な画面を見ていただけで体感はできないはずなのにも拘らず、何故?
前に画面上でメンバーが言っていたコンソールやらも出てこない。もちろん運営に対するGMコールもだ。
余りの出来事にベアトリーチェが首を傾げる。
と、そんな彼女の周りに集まっていたNPCたちが不安そうにベアトリーチェを見る。
「いかがなさったのですか?母上。」
心配そうに声を掛けたのは金髪紅顔の美少年。名はギルガメシュ。
ある事情からナザリックの協力を経て造り出した原初の泥の人形。
発案はその時昔のエロゲ発掘に嵌っていたぺロロンチーノ。素体情報は一応ほとんどがモモンガ(正確には彼ほど人型に近いものが他にいなかったからだが)、製作はベアトリーチェが担当した、ある種最高傑作と言っても過言ではない
……もっとも最初はそのゲーム群の中でプロトアーサーとか言われる奴を作ろうという話だったのだがぺロロンチーノの猛プッシュによって急遽仕様とかその他諸々を変更してできたものだ。
事の次第を知ったぶくぶく茶釜が「なんなのオマエは馬鹿か?」と言って「だって最強って言ったら金ぴかじゃん!!」と言って泣くぺロロンチーノが思い出された。
確かに神器級のアイテムやら世界級のアイテムを無差別に投擲するという頭の悪い発想にはモノを知らないベアトリーチェでも引いた。何考えてんだこの人、と。余談だがその時以来彼女はぺロロンチーノをペペロンチーノと呼ぶようになった。本人はかっこ悪いからやめてくれと言っていたが、無論やめる気は無い。
貴重なリソースでなんつー大喰らいみたいな奴造ろうとしてんだ。
ある種父親と言っても過言でないモモンガに至ってはお口あんぐりであった。
……結局その後姉に「そんなに作りたいならてめーで使うもん集めてきな!!」っと尻を引っ叩かれた弟が一週間と保たずに泣きついて交渉した結果、その朋友にあたる泥人形もプラスして自給自足()にすればいいんじゃね?の形に落ち着いたのがこの目の前にいるギルガメシュである。
因みに泥自体は一応ベアトリーチェ経由ではあるモノのぺロロンチーノの頼みで開発した「ケイオスタイド」とか言う呪いとかのデバフ満載の泥である。お前は何を目指しているんだとまた弟は姉に説教されていた。
……なぜ、NPCが動いているのだろうか。
というか、何故母上?
混乱する頭をそのままにその場凌ぎといった態を隠しつつベアトリーチェが頷いた。
「……ええ、大丈夫。私よりもあなたたちは?何処か異常は無い?」
「ええ、何も異常ありませんわ。お母様。毛並みもいつも通りモフモフツヤツヤです。ミコ!」
「うむ、余も大事無い故心配は無用だぞ母上!それより下兄上の姿が見えぬようだが……。」
順にタブラ・スマラグディナと造ったNPC青い露出度の高い和服を纏った九尾の玉藻の前と、ブクブク茶釜と造ったNPC……赤を基調にした派手な男装()の少女ネロが返答する。
と、そこに更に転移独特のモーション音とデータの再構築の光とともに現れたのはこの学園のような空間に唯一適応しているかのような学生服に身を包んだ赤銅色の髪の少年……ウルベルト・アレイン・オードルと造り出した彼は名を無銘という。もちろん彼もNPCだ。ウルベルト曰くタッチ・ミーに目にもの見せてやる設定になっているんだとか……。
「済まない。各階層の確認をしていたら遅くなった。」
「……まずは報告を聞きましょう。無銘。」
静かな、少女の外装を被った母の声に無銘はこくりと頷く。
「まず、表七つの階層、ここは異常なし。ただ、七の二層から見た外はかなり外観が変わっている様だった。」
「と、言うと?」
ぴくっと耳を動かして鋭い目線を向けてくる玉藻に無銘は居心地悪げに顔を逸らしつつ話を続けた。
因みにこの二人、生まれ順やら設定やらでは玉藻が姉にあたる。
「……一面が、空だったんだよ。上空。一応下に大きな町…いやたぶんあの賑わい様からして首都か交易都市か……?が見えた。」
「そう……。」
(おかしい……普通なら下に見えるのはナザリック地下大墳墓のはずなのに……)
元々このSE.RA.PHはぺロロンチーノがベアトリーチェの見た目(異形種としての)と
……もっとも、るし☆ふぁーやらウルベルトやらはもっと別の……トラップに引っかかった攻略者が此処に転送されて慌てふためいたうえで一般人または人型プレイヤー(に見える者たち)を斬れるのか?という精神的に来る仕様にしたかった者たちも嬉々として協力してくれたが……。
因みにユグドラシルでは眼下にナザリック地下大墳墓を臨む巨大な城の邸をしており、常時不可視化が掛かっていた。
ベアトリーチェは嫌な予感とともにメッセージを起動した。
あの時同じようにゲーム内にいたモモンガとなら連絡が取れるのではという淡い希望とともに。
(繋がらない)
何度目かの呼び出しの後認めた非常事態。
「皆、話があります。各階層のフロアマスターを集めなさい。」
―――これは、アインズ・ウール・ゴウン。ナザリック地下大墳墓が転移してくるよりも二十数年ほど前の出来事である。
此処で人物紹介…とは言っても一人か二人ずつしていく。
今回は主人公と仲の人について
ベアトリーチェ
本作の主人公。ガワはもっぱらBBだが状況に応じてアバターが変えられる。
本体はSE.RA.PHの底、熾天の檻にあるムーンセル・オートマトン(ver.CCC)そっくりのキューブ状の異形種。中の人は(おそらく)富裕層出身の重病人。本名は百目鬼 静流。
たまたまやってたキャンペーンの抽選で決定された直接的攻撃力を一切持たない異形種プレイヤー。PKによって膨大な経験値が得られることからいいカモとして追い回されプレイヤー不信に陥りかけていたが、モモンガをはじめとした9人の自殺点に助けられ、行動を共にする。(この時は未成年だったため加入できず)
その後、アインズ・ウール・ゴウンに正式加入し第三虚構世界Serial Phantasm(ようはSE.RA.PH)を起動させ第二の防衛拠点の構築、百獣母胎によるNPCなどの戦力増強をしていた。また、周りが働いている中で自身だけが暇人()だったのでROM監視もしていた模様。ぺロロンチーノから借りた外伝作品にド嵌りしてしまいなんだかんだ言ってノリノリで造っていた。
ゲームが現実になるとともにNPCたちから向けられる異常なまでの親愛やら信頼やらに若干の恐怖を覚えた。というかそれとともに浮上してくる自身の在り様に頭を抱えた。
(重婚してて、それぞれ父親の違う子が5人いる。まるでケルトビッチか何かみたいな)
百目鬼 静流
日常のほとんどをベッドの上で過ごしていた女性。
見た目はらっきょの巫条霧絵に似ている。
本当はPKされ続けた時にこの世界にも居場所はないと思って自死を考えており、そうしたときに出会って助けてくれた9人の自殺点牽いてはアインズ・ウール・ゴウンには特別な思いを抱いている。
オフ会の時はなんとか参加する許可が医師から降りたらしくリアルでも面識があり、これまたどこまでも普通で穏やかな悟に個人として焦がれ、無意識な拠り所にしていた。
学はあり、頭もいいのかもしれないが、基本的に人間を自立式家具くらいの認識しかしていない異常者。……もっとも、もっと早い段階で理解者に出会うか熱中できることに出会っていたら頭は良くともちゃんとした、人格者になっていたかもしれない可哀そうな人。たぶん仮に鈴木悟と一緒になったとしたらそれこそラナーとクライムになったかもしれない。……倫理も一応教養として備わっているのでちゃんと扱いは人間である。
常識は理解しているが、実感はわかない。型月で近いのはたぶんファブリーズ姉さん。