幾度かの剣戟。
のち、何かの倒れる音。
それはまるで氷が解けるように、されどそれとは比較にならない速度で血液を放出している。
それを見ているのは十代ほどの、まだ幼さの残る顔立ちのビキニアーマーのような出で立ちの女。
名をクレマンティーヌ。スレイン法国が誇る漆黒聖典。その第9席次を頂くものだ。
「あっは。」
無邪気に笑うその頬には血が付いている。
その血は現在彼女と向き合うように……現在は倒れ伏している男。彼女の兄にあたる者から出たものだ。
「あは、あはははははは。」
笑う、嗤う。
なんだ、こんなものだったのか。とあらん限りの嘲りと、憎しみの様な、それよりもどろどろとした黒い感情を露にして哂う。
(ほんと何してたんだろうあたし。)
幼い頃から期待され、同時に比較されてきた兄。
その兄が、あろうことか漆黒聖典第5席次であるクアイエッセ・ハゼイア・クインティアが、自身の手によって倒れ伏している。
それが、クレマンティーヌは可笑しくてたまらない。
こんな奴に何を譲っていたんだろう。こんな奴に、こんな奴にこんな奴に。
罪悪感、なんてものは彼女にはなかった。それはきっと自分が逆に死んだとしても相手もそんな態度だっただろう。……もっとも、そんなことは欠片も感じさせないくらい巧妙に周囲には隠すのが兄だろうが。
ひとしきり笑った後。まるで糸が切れたかのように止まって、無表情になったクレマンティーヌはぽつりと言った。
「……ま、いっか。」
どうせこんな辺鄙な場所、それも怪し気な儀式跡になんてそう人をよこすことはないだろうし、あくまでもこれは任務。犠牲は付き物だ。経緯はどうであれ何か証拠になるモノでも持っていけばいいだろう。仮にばれてしまったとしても此処にある
そんなことを思いながら男の骸に近づいて何かないかと探ろうとしていると、何かが突如光を放った。
「今回の勝者は、貴方?」
光が止んで現れたのは一人の少女。
紫の地面に付きそうなほど長い紫の髪の十代後半くらいの少女だった。
服はまるで冒険者の女の様に短いスカートのくせに、それにはあるまじき軽装だ。造りは奇抜にも拘らず何処か気品を感じさせる。
「あ?誰だてめえ?」
もう一匹と、内心で、否、内外ともに舌なめずりをしつつ秘密裏にスティレットを構える。
女に武器は無く、全体的にまだ油断している。今ならクレマンティーヌの攻撃も通るだろう。
「うふふ、別に、聞いてみたかっただけよ?」
今だ。そう思って足を踏み出そうとして……出来なかった。
何故なら、赤く絶えず発光している何かが、クレマンティーヌの身体を突き抜けていたのだから。
動けなくてあたりまえ。むしろなぜそのまま生きていられるのかが不思議なくらいだった。
「母上。この雑種が最後か?」
後ろから、声が聞こえた。
よく通る男の声だ。
動かない身体をそのままに無理矢理頭だけを動かしてそちらを見ると、確かに男が一人立っていた。
金髪紅眼の恐ろしく美しい男だ。美しいが故に恐ろしいのか、はたまたは別の何かが恐怖させるのか。
蛇の様な紅眼に射すくめられる。
「ええ、そうなの。このこ、とってもかわいいのよ。はしゃいじゃって、もう本当に。」
うふふとまた紫髪の女が笑う。親子にしては容姿がとか年齢がとか、疑問は尽きないのかもしれないが、絶賛命の危機に瀕しているクレマンティーヌにそんなことを考えるような余裕はもはやなかった。
必死に逃げようと身を捩り、暴れる。
「あ、あ゛あ゛ァっ離せっ離せええええっ」
男が煩い、と漏らす様に言うと何処からともなく現れた鎖がまるで猿轡の様にクレマンティーヌの口に巻かれる。
「はがへえええっ」
「ねえ、お嬢さん。貴方、どうしてここに来たの?まさか、本当に何でも願いが叶う器があるとでも聞いてきたの?」
変わらず微笑む女が楽し気にクレマンティーヌに質問する。
しかし、クレマンティーヌは答えない。暴れるだけだ。
そんな彼女を余所にまあ、どうでもいいけれど。と言って女が一回パンっと手を打ち鳴らすと瞬時に世界が変容する。先程まであった不気味な儀式跡も、周囲の景色も、そして兄の死体も消えて、ただの数字と青いだけの空間に変わる。
余りの出来事にクレマンティーヌは暴れることすらやめて呆然とする。
「な……で……。」
「なんで?なんでも何も、貴方元々一人だったじゃない。元に戻しただけよ?」
女の言葉にクレマンティーヌの記憶が今更再生されていく。
―――そうだ、確か、聖杯とやらの噂が正しいのかどうか調査して来いとの命令を受けた。
―――そうだ、自分が、自分だけがこんな外れ任務を任されて、潜入することになったんだった。
―――そうだ、じぶんは自分は、あたしは……。
「あ、ああああああああああ!!」
最初から、一人だった。
同行者なんて誰一人いなくて。
勿論あの兄も別な任務に就いていて……。
最早獣の咆哮の如く叫ぶだけのクレマンティーヌに男が何か腕を降ろす様な動作をしたかと思うと女がそれを制止して、近づいてくる。と、ゆっくりと嫋やかな動作でクレマンティーヌの顔を包み込むように覆って、そのまま彼女を赤い何か越しに抱き締めた。
「決めたわ。」
耳元で優しく甘やかな、そして何よりもぬるま湯の様な声が囁いた。
「貴女を、私の子どもにしてあげる。」
おやすみなさい。
そこで、クレマンティーヌの意識は閉じて、溶解した。
ドロドロに溶けていく中で、彼女が見たものは―――――。
***
「……お帰りなさい。お母様。今回はどうでし……いえ、愚問でしたね。」
生誕の間でベアトリーチェを出迎えた紫髪の美女……メドゥーサが微笑む。
そんな彼女にこれまた微笑みで返したベアトリーチェはその部屋の中央辺りに立つと何かをステンドグラスに向けてふうっと息で飛ばしてやる。
「とってもかわいい子が出来ると思うの。……父親がいないのは少し残念だけど、その分私が愛してあげればいいわよね?うふふふふ。」
彼女、愛されたかったんですって。とニコニコと頬を染めながら笑う少女にそれはそれは、とメドゥーサが返した。
少女の様な母の姿に癒されつつ、メドゥーサはガタガタと揺れるステンドグラスを見る。
今回はかなり早いなとか思いながら、他の四人に秘密裏に召集を掛ける。
が、予想に反してガシャンとステンドグラスが砕け散った。
「……最新記録ですね。全く、どれだけお母様に会いたかったのやら。」
溜息を吐きつつも、自分もこうだったのだろうかと何故か気恥ずかしくなりながらも持っていた布を生まれたばかりの
「……。」
産まれたばかりの赤毛の幼子は、そのままテチテチとベアトリーチェの前まで歩いていき、思い切り抱き着いた。
「おや。」
「あらあら。」
ぎゅうぅっと抱き着く幼子は溢す様に「おかあさま……。」と言って顔を腰にうずめる。
それに顔を緩めたメドゥーサとベアトリーチェは代わる代わる少女の世話を焼いてやった。
新しい家族。末の妹は見事な赤毛に、立派な角と尻尾の生えた竜人の少女。
名前はエリザベートという。可愛い可愛いお姫様である。
人物設定
ギルガメシュ
長兄ポジ。次男の無銘とは「愚弟」「愚兄」と言い合う仲……だが決して仲は悪くない。
が、表向きは悪く見せかけている。
戦い方はギルガメッシュと見せかけてエルキドゥ。「串刺しだねえ、解るとも!!」
ヴィマーナとか天の鎖とか、エヌマなあれとかもちろんある。
というか戦い方以前に基本戦闘はSOFを使ったテイマー染みた戦い方をしており本気にならないと本人はまず出てこない。
基本子ギルモード。というかこれも元々は運営を納得させる(ごまかす)ための仕様で、この時は2割程度の出力しか出せない。
……ぺペロ……ぺロロンチーノの要望で造りまくった結果、その辺のプレイヤーじゃたぶんレベル100でも負けないチート仕様になり、運営から使用頻度etcを絞られたほどの傑作()。
ケイオスタイドの件から、壁役としても優秀。
父親にあたるモモンガと母であるベアトリーチェを心酔レベルで慕っている。
し、もちろん弟妹は可愛い。愛い。
デミ君その2みたいな感じ。観察(洞察)力あって、スキル(全知なるや全能の星)もあるのに……。ちなみに名前が少しfateと違うのはあんまり慢心したりしないように似てるだけの別人になりますようにというベアトリーチェの願いである。
しかし、忠誠心etc抜くとおそらく近い性格になる可能性ガガガ……。
スピリット・オブ・ファイア
某幽霊漫画(シャーマン〇ング)でラスボスの持ってた持ち霊。
炎の精霊王……らしい。元々はユグドラシルのコラボ企画で手に入った素材で作ったモンス…ター…?みたいなものらしい。現在の所有者はギルガメシュ。
今回クレマンティーヌの身体を貫いてたのもコレ。
ただし今回は物理的にではなく霊的にだったので外傷はなかった。
……というかこれ持ってるだけでも既にチートじゃね???