NLが駄目な人。
要注意。
「おかあさまーーー!」
力強くも可愛らしい声にベアトリーチェが振り向くと、ドスっと鈍い衝撃が腰あたりに奔る。
そこに注視するとそこから顔を上げた末の娘、エリザベートが満面の笑みでもってベアトリーチェを見上げていた。
この娘は生まれたばかり故当たり前だとは思うが、まだ母に甘えたい盛りを抜け出してはおらずまるで子熊か何かの様にベアトリーチェの後を追いかけては泣いて笑って構ってもらうという甘えんぼうだった。
……本音を言えば傍に控えているメドゥーサだって、他の兄弟たちだってこの妹の様に甘えたいが、年上として、兄姉としての意地というか、と、単純に末の妹が可愛いのもあって表向きは態度に出さないようにしていた。
もちろん、これ以上ないくらいうらやましいが。
そんな気持ちを整理しつつ、目の前のベアトリーチェとエリザベートとのやり取りを連写しつつ、耳を聳てる。
今日はこんなことがあった。これを覚えた。これが出来るようになった……。
そんな些細なことすら聞き漏らすことなく無駄のない動きで片方の端末からは先程の画像と文章を、もう片方の後ろ手で握っていた端末からは動画を各々の持つ端末へと発信する。本来なら電脳空間にダイブするところだが例え一秒にも満たない時間であろうとこの光景を目から離すものかという彼女の信念という名の執着がそうさせる。
(最期は双方笑顔で締める……ああ何て素晴らしい。癒しです。)
そんな心が洗われる思いのメドゥーサの元に端末から着信が届く。
それは、現在ある国に嫁いだ姉からのモノだった。
「……お母様。お取込み中申し訳ありませんが、姉さまからの定期連絡が入っています。」
「ああ、もうそんな時間なのね。ありがとうメドゥーサ。ごめんなさいねエリザベート。」
言って、ベアトリーチェは手を打ち鳴らす。
と、即座に子供たちの長女にあたる玉藻の前……その霊子体がその場で再現される。
『お久しぶりでございます。お母様。』
「ええ、久しぶりね。玉藻。何か不都合とかはあるかしら?」
霊子体の玉藻の前は此処で見ていた20代前半といった体ではなく、明らかに若返っている。
どんなに見積もっても10代前半の美少女であった。本人がチャームポイントと言っていた狐の耳も尻尾もない。
何処からどう見てもとんでもない美貌の少女である。
『いえいえー。そんなものはありません!むしろけっこうチョロ……んんっ。とても頼もしい夫とよくできた臣下たちのおかげでとても、そう。下にも置かないような待遇を受けているので安心してくださいまし。』
ミコーン!!といつものような明るい調子でいう姉にほっとしたように「そう……。」とベアトリーチェが声を漏らした。もちろんメドゥーサも内心で胸を撫でおろす。
この世界にきて早十数年。いろいろと面倒ごとはあったがSE.RA.PHはいちおう国としての体裁を保ちつつ、実質鎖国状態でその機能を維持していた。
勿論方々からNPCらを使って情報を収集していたが、外交に関しては最初に出た交易都市……実は城塞都市であったエ・ランテルのあるリ・エスティーゼ王国との対談に失敗して以来、まだ好印象だった帝国のみと外交を行っている現状だ。
そして、そんな中で持ち上がったのは―――政略結婚。
これからの関係をより良いものに……という建前で、王国に目にものみせたSE.RA.PHの力を欲しているのは目に見えて明らかだった。
が、こちらも知識を蓄え世界を把握するための時間は必要なため、立候補もあって玉藻にその任を授けたのである。……帝国の現状を知ってやる気満々の姉がほくそ笑んでいたのはおそらくメドゥーサしか知らないだろうが。
確か、相手は正妃の子でジルクニフとかいうメドゥーサにとっては少々いけ好かない……中途半端な天才とでも言うのだろうか。そんな奴だった気がする。いや、彼女のいけ好かないの部類の中ではまだマシなほうではあるのだが。
その他にも有象無象の蔓延る中で、よく姉は何年も襤褸を出さずに任務が遂行できるなと、素直にメドゥーサは称賛の言葉を送りたくなった。
『で、ですね。今年もまた王国と小競り合いをするそうなんです。ほんっともうよくやるというかなんというか……。』
「ふうん。そう、確か今年は王国の第一王子とやらが出張る予定だけれど……まあ、それ自体は別に影響何て吹けば飛ぶようなものだもの……別にいいわね。となると、やっぱり残るは帝国内部の抗争かしら?」
軽い調子で未来を算出する母に姉は眉を下げて悲し気な表情を作る。
『そうなんですよねー。まあ、私の理想としては妃様とその親族、ご兄弟の一部の方には死んで頂いて……更に下の弟妹の方々はいざという時のスペアとして野に下ってもらう感じだと一番丸く収まるんですが……たぶん事の発端の妃様とご親類は真っ先に現皇帝を殺しにかかるでしょうから……うまくいかないと思うんですよね。主に物的証拠と状況証拠の補填の問題で。』
あの方には酷なんですが。と疲れ気味にはあーと深いため息を吐く。
しかし、その次に見せた表情は全く別の笑顔だった。
『まあ、その方が私としては後程、楽が出来ますので、ありがたいと言えばありがたいですが。』
彼女が現在行っているのは次期皇帝と目されるジルクニフとの関わりを強固にし、SE.RA.PHが世界の表舞台で動くため土台を作る作業である。ぶっちゃけると、皇帝、牽いては国の掌握だ。
「人って弱ってる時のタイミングが一番付け入りやすいんですよねー。」という姉の言葉を聞いて心底自分が男でなくて、身内で良かったと思った。
そしてそのあと、「まあ、夫婦という関係上一応情はありますが」という付け加えられた一言で安心する。
……こんな姉にも人(?)の心はあったのだ。
「そう、お疲れ様。苦労を掛けるわね。玉藻。」
『いーえー。私はやりたいことを遣りたいようにしているだけですので。でも……お母様に労われるのは悪くありませんねえ。』
「……ところで姉さま。近々そちらに会いに行くと上兄さまが仰っておられましたが、お会いになられましたか?」
『いいえ?全く。くる気配どころか連絡一つすら来ていませんが。』
「「『……。』」」
***
―――一方そのころ。話題に上がっている
「フハハハハ。もっとだ!もっと上昇せよ!!SOF!!」
はるか上空を自由気ままに散策していた。
雲を抜け、滑空を続ける彼の目に留まったのは……。
「ん?なんだ、遺跡……のようなものか?」
朽ちかけた都市の残骸。
法国よりあるモノが守りを任された遺跡が目の前には広がっていた。
人物紹介
玉藻の前
タブラ・スマラグディナとベアトリーチェの合作。
九尾の狐。傾国の美女。豊穣の女神、の欠片。
設定盛沢山。fateのも併せて造りこまれているためこれでもかというほど。
バハルス帝国に嫁()に行った。
現在の容姿は夫に合わせて10代なったばっかり位の幼女。……少女?
この人が早々に正妃として納まったためにロクシ-さんの出番はないと思われる。
今後、帝国の中枢で活躍(暗躍?)する予定。
尚、正体も目的も何もかも明かさずにいるが一応夫には情がある()らしい。
お母様から貰ったデータバンクのおかげで独自の呪法が使えたりする。
目の上のたんこぶ的な存在である姑とその親類の失脚及び暗殺を画策している。
人心掌握やらいろんな方面に明るい。
因みにラナーみたいに民に指示される案を幾つか出していることもあってこの段階で既に人気がある。
辛い時も楽しい時もジルクニフを支えてきたこともあって絶対的な信頼を置かれることとなる……たぶんもう離れない()。
ジルクニフポンコツ化計画、はっじまっるよー!
ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス
次期皇帝。皇太子。
最近実母や周囲の不審な動きに疑問を感じている。
困ったときはフールーダと玉藻に相談。
某事件後は一時的に人間不信にはなりはしたが心が壊れるには至らなかった。
玉藻のポンコツ化計画被検体。
たぶん良き王と良い父親(親ばか)と良い亭主(嫁馬鹿)の人となるだろう。
玉藻を心の底から敬愛する人。