演算機は異世界の夢を見るか?   作:九十九夜

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長くなっちゃったよー


原作突入
屋烏の愛


―――ピピッ

 

無機質な電子音がその場に鳴り響く。

その音につられてそちら……電子の世界地図の方を向いたメドゥーサが、僅かに目を見開いた。

見れば赤のマーカーで上書きされた地名にはナザリック地下大墳墓の文字があったからだ。

 

「お母様!!」

 

ハッとして母に報告しようとメドゥーサが出入り口の方を向くと、既に母であるベアトリーチェはメドゥーサの隣まで来ており、感極まっているといった風に瞳を潤ませ口元を緩めながらその画面を見ていた。

 

「ええ、ええ!!ついに、遂に来たのね!!愛しい人。思い出の場所!会いたかった!!」

 

まるで恋する乙女の様に、いやこの場合少なくとも父親の一人がいるはずなのでまるでなどではないが爛々とした表情で年頃の少女の様にキャラキャラと笑う母にメドゥーサの内心での歓喜が更に上乗せされる。

 

「メドゥーサ、ギルガメシュを呼んできて頂戴。」

 

うふふふふと笑う母にせめてあと何名か護衛をと言い募りたかったがメドゥーサはその言葉を引っ込めて代わりに「はい。」と手短に言葉を返すと長兄へと回線を繋ぎ、事のあらましを説明する。

電脳回線越しに珍しく慌てる長兄にこれまた笑みを溢しつつ、メドゥーサは母の代理としてSE.RA.PHの管理をするように岸波白野に会うためにその歩みを進めた。

 

 

***

 

 

 

コンソールが出ず、運営へのGMコールが出来ない。

更に何故かユグドラシルが強制ログアウトされないことに驚愕した鈴木悟……モモンガは玉座から立ち上がる。

と、上から何やら小さなものが、悲鳴……ではなく歓声染みた叫びとともに己の元へと降ってきた。

 

「父上えぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーっ」

 

降ってきたそれを内心で慌てつつもしっかりと抱き留めたモモンガは更に驚愕する。

 

(あいえええええ!?ギルガメシュ!?ギルガメシュなんでえええ!!)

 

すかさず何かの力により抑制される感情。

しかし、モモンガの混乱は収まらなかった。

何故此処に己が息子(という設定)がいるのか、奴は基本SE.RA.PHにいるはずだが、というかそこに向かったベアトリーチェは無事なのだろうか。

 

「父上がやってくると聞いて、いてもたってもいられなくて、来ちゃいました!」

 

「こらこら、お父様の邪魔をしてはだめよ?ギルガメシュ。」

 

えへっと可愛らしく頭を掻く小学生の様な成りの美少年に続いて穏やかな少女の声が響く。

モモンガが視線を向けるとそこには数少ない自身がまとも()だと考えているプレイヤー……ベアトリーチェの姿があった。いつも通りの紫髪の少女の姿の電脳魔だ。

そんな彼女はあろうことかごく自然な動作でNPC……いや、彼女の特性上上級AIだろうか?にあたるギルガメシュを叱り、姿勢を正させる。そこには我が子に対する純然たる慈愛に満ちた母親の姿があった。

 

と、思わず直立不動でいるモモンガの脳内にメッセージが響く。

 

【お久しぶりです。モモンガさん。聞こえて……いますか?】

 

【え!?ベアトリーチェさん?さっき別れたばかりじゃないですか。というかこれはいったい……】

 

【……お互いに食い違うところがあるようですがそれは後程。取り敢えず今は全く別の世界に来てしまって、NPCたちが生命を持ったとだけわかっていただければそれでOKです。……あと、NPCや子供たちはすごいことになってますので、取扱注意です。】

 

【は!?え?ちょっ】

 

言いたいことだけ言ってメッセージを切るとベアトリーチェはアルベドに待機を命じ闘技場までアイテムを使って転移する。

そのまま意を決したように歩を進めるモモンガの片手はギルガメシュと繋がれていた。

モモンガの表情は骨だけゆえに読み取ることは難しいが、ギルガメシュは満面の笑みで楽しげである。

その様をニコニコと嫋やかに見守りつつも片手をギルガメシュと繋いでいるベアトリーチェ。

傍から見れば親子三人が散歩をしているようにしか見えないだろう。……モモンガの見た目が骨で無ければ。

 

そんな三人が出てくるとほぼ同時に何かが掛け声とともに降ってくる。

と、それは地響きとともに着地しモモンガたちへと走り寄ってきた。

 

「アウラか。」

 

「いらっしゃいませ。モモンガ様、ベアトリーチェ様……ってギルガメシュ様!?」

 

やはりというか、普段からSE.RA.PHに引きこもりっきりだった(という認識であろう)ギルガメシュの登場にアウラは顔を若干赤面させつつも、んんっという咳払いとともに仕切りなおした。

 

「あ、あたしたちの守護階層までようこそ!!」

 

そこまで言うと片割れがいないことに気が付いたのか後方に向かって叫ぶ。

 

「ちょっとマーレ!モモンガ様たちに失礼でしょ!!とっとと飛び降りなさいよ!」

 

「む、無理だよお姉ちゃん……。」

 

そこに頼りなさげな声が響く、言わずもがな現在目の前にいるアウラ・ベラ・フィオーラの弟、マーレ・ベロ・フィオーレだ。男のはずだが、アウラとは対照的にスカートをはいて女装している。

暫しの言い合いの後飛び降りてきた彼の動作はどんな女の子よりも女の子らしかった。

 

「お、お待たせしました。モモンガ様。」

 

「うむ、今日は二人に手伝ってほしいことがあってきたのだが。」

 

言って召喚の準備に入る。召喚されたのは根源の火精霊。

どうやらこの召喚獣を双子にぶつけることでこの世界での魔法の使い方を学習しようとしているらしい。

嬉々として引き受けたアウラは愛用の鞭を振るって応戦しているのを観戦しつつモモンガはメッセージでセバスに確認する。

一瞬雰囲気の動いたモモンガにこくりとベアトリーチェは頷いて見せた。

 

【どうやらセバスから連絡が来たようですが……先ほども言いますが此処は異世界です。それも、私たちがいたようなリアルとは程遠い……いいえ大昔と言ってもいいほど技術も環境も追いついていない、ね。】

 

【みたい……です、ね。】

 

そんなことをメッセージで話していると転移門が開き、吸血鬼、シャルティア・ ブラッドフォールンが出てくる。

と、モモンガに駆け寄ろうとして、ベアトリーチェとギルガメシュの存在に気付き居住まいを正した。

とそこにマーレとアウラを見つけて悪態をつく。

 

「おや、いたでありんすかあ?ちび助。ぬしも大変でありんすねえマーレ。この頭のおかしい姉を持って。」

 

蔑むような視線に我慢しようとフルフルと震えていたアウラがぼそりと呟くように言った。

 

「偽乳……「んな!?」図星ねえ!?だからわざわざゲートを使ってやってきたんだあ?急いできたのに盛りすぎてて、走る度に胸がどっかいっちゃうから」

 

「だ、黙りなさいっ。あんたなんかまったく無いでしょ!!」

 

ねーギルガメシュ様、モモンガ様?と同意を求めるシャルティア。

そんな彼女にアウラが頬を引き攣らせる。主にギルガメシュの方を向いて。

 

「?別に胸が有ろうと無かろうとそれがアウラなら僕は構いませんよ?外見より中身何で。」

 

「う、うむ。」

 

不思議とさらっと口説いているかのように宣う息子に取り敢えず同意しておけと言わんばかりにアインズが頷く。

ほんの少しの沈黙の後、ショックを受けたようなシャルティアと金魚の様にパクパクと口を数回動かして硬直したアウラの間で喧嘩が再開された。

それを皮切りに続々と守護者が集まってくる。

集まりきったのを確認したらしきアルベドが代表するかのように口を開いた。

 

「では皆、至高の御方に忠誠の儀を」

 

「第一、第二、第三階層守護者。シャルティア・ブラッドフォールン。御身の前に。」

 

「第五階層守護者。コキュートス。御身ノ前ニ。」

 

「第六階層守護者。アウラ・ベラ・フィオーラ。」

「同じく第六階層守護者。マーレ・ベロ・フィオーレ。」

 

「「御身の前に。」」

 

「第七階層守護者。デミウルゴス。御身の前に。」

 

「守護者統括。アルベド。御身の前に。……第四階層守護者ガルガンチュア。及び第八階層守護者ビクティムを除き、各階層守護者、御身の前に平伏し奉る。ご命令を、至高なる御身よ。」

 

 

粗方の号令染みた宣誓が終わるとモモンガが絶望のオーラを出しつつ対応する。

その改まりすぎた守護者たちの反応に内心でかなり引きつつもモモンガとベアトリーチェ、ギルガメシュはその場を退出した。

 

 

***

 

 

【つ、疲れた……あいつら、マジだ……。】

 

【だから言ったじゃないですか。すごいことになってるって。】

 

【というかなんでそんなに冷静なんですか!ベアトリーチェさん。】

 

【だって……。】

 

「あなたはさっき来たようでしたけれど。私やこの子はおよそ二十数年前にこちらにやってきちゃったんですよ?」

 

ねー?とギルガメシュの方に確認するかのように同意を求めるベアトリーチェ。

対するギルガメシュは元気よくハイ!と返事を返した。

それから照れ臭そうにモモンガの方を向いたかと思うと何かを決心したかのように深呼吸をして穏やかな笑顔を見せる。

 

「お会いしとうございました。父上。……本当に。」

 

心なし潤んだ瞳に内心でぎょっとしつつ罪悪感やらなんやらを感情抑制で諫めながら「う、うむ。私も会いたかったぞ。」とモモンガは返事を返す。

その状態をベアトリーチェはクスクスと笑いながら見守るのみだ。

 

【ちなみにこの子も他の子たちも好感度カンスト済みというかゲージが壊れているというか……なので、あの、覚悟しておいてくださいね?】

 

【りょ、了解しました。】

 

【それからモモンガさん。】

 

【ハイなんでしょう?】

 

【来てくれてありがとうございます。会いたかったです。】

 

【ハイ……は!?】

 

「それでは一応こちらの地図を片手にこの世界の情勢についてお話ししましょうか。」

 

「あ、ああ。だがその前に少しいいだろうか。」

 

「はい?」

 

「装備の確認をしたいんだが……。」

 

「いいですけど、基本的にユグドラシルで駄目だったこと……例えば戦士の装備品を装備とかはできませんよ?出来て真似事くらいです。」

 

私もわざわざそれ用に何体か身体を新しく鋳造することになったんですから。とベアトリーチェは少し頬を膨らませてむくれるような仕草をする。

 

「ふむ……そうか……。」

 

そう言って近場にあった剣をちらりと見たところでモモンガは興味をなくしたかのように視線を逸らし、地図へと向ける。

 

「まず、今ナザリックがあるのはここ。トブの大森林と呼ばれる、かなり弱いモンスターたちが縄張争いをしている森の端っこです。そしてこの地図の右側に広がっている割と大きめの国がリ・エスティーゼ王国。反対側にあるのがバハルス帝国。で、カッツェ平原という平原を挟んで下にあるのがスレイン法国という宗教国家です。

現在ナザリックはこの3つの国に囲まれているというか……国境線辺りにあると思ってもらえばいいと思います。」

 

まあ、どちらかといえばここは王国領なんですけどね?とベアトリーチェは苦笑する。

が、その手は愛用の教鞭をへし折らんばかりに力が籠っているらしく、教鞭からは何やら軋む音があがっていた。

ギルガメシュもさり気になにやらどす黒いオーラを放っている。

確かスキル取得のときに絶望のオーラなんて取得させてない筈なんだが……とモモンガは現実逃避ぎみに思った。

いったい王国は何をしでかしたのだろうか。

 

「それでは次に周辺三国の国家としての特徴を……。

まずリ・エスティーゼ王国。ここは王国とは名ばかりで実質二院制の様な仕組みになっていて、貴族と王との間で派閥が出来ています。絶対王政のはずが貴族が力を持ちすぎてしまい私腹を肥やすことになった腐敗国家のいい例ですね。潰すなら一番イージーかも、です!

主力は周辺国最強と謳われるガゼフ・ストロノーフ率いる戦士団と、《朱の雫》、《青の薔薇》と呼ばれる冒険者集団くらいでしょうか?ヤダー弱ーい!」

 

うふふと笑いつつ棘のある言い方をするベアトリーチェに内心で冷や汗だらだらになりながらモモンガは相槌をうって先を促す。取り敢えず彼女のケアには時間がかかるようだと判断したが故だ。決して逃げなんかではない。

 

「次にバハルス帝国。ここは元々リ・エスティーゼ王国と同じ国が起源とされる国です。この国は最近まで封建制を用いていたのですが、現在の皇帝ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスが即位とともに絶対王政を敷き、中央集権国家になりました。此処はほんとのほんとに独裁的ですが……まあ、王国よりはかなり暮らしやすい筈ですよ?そもそもここは王国の様な私腹を肥やす様な者たちは現皇帝が即位とともに取り潰しやら極刑やらで処分されてますから。貧富の差も余りなく、身分制度もそこまで硬くありません。代わりに根っからの実力主義で、能力さえあれば逆に平民からでも取り立ててもらえます。

此処の主戦力は……戦士としては軒並み高水準な代わりにこれと言って目立つ人はいませんが宮廷魔法使いフールーダ・パラダインは第六位階までの魔法が使えるとか……ああ、あとここには玉藻が行っていますからまず敵にはならないかと思います。」

 

「なに?玉藻の前が?」

 

「はい。なんでも外遊ついでに抑えておくと言ってきかなくて……。」

 

「ああ、あの人なら今楽しくやってるみたいですよ?ちょっとしたことで一喜一憂する対象が可愛らしいとかで……。」

 

心配そうな表情で影を落とすベアトリーチェとは裏腹に朗らかな笑顔でギルガメシュが話す。

モモンガとしては玉藻の前も心配だが、かなり前にタブラ・スマラグディナから見せられたこれまた長文の設定を思い出し、更にアルベドの紹介文を思い出して頭を抱えたくなった。もちろん、ビッチであるは消させてもらった。……他は特に何もしていないが。あれは無い。

 

「……次にここ、スレイン法国。ここは先程言った通り宗教国家です。他の主だった人間メインの国が4大神を信仰するところをここは6大神を信仰するという独自の宗教観が元の……人間の人間による人間のための国家。異形種は徹底的に駆逐し、人間だけの世界を理想として神の名のもとに活動しています。ある種人類の守護者と言っても過言ではないでしょう。

端的に言ってしまえばかなりアレな異形種狩りPKプレイヤーの集団だとでも想像していただければわかりやすいと思います。

此処の戦力に関しては、この国は六色聖典という特殊工作部隊が本来冒険者やワーカー、騎士団などがする仕事を一手に引き受けているためにそれ以外の組織が存在しません。

この六色聖典の中でも漆黒聖典、更にその中の第一席次、番外席次と呼ばれる二人が圧倒的な力を持っているそうです。後……噂によればこの国はユグドラシルの世界級アイテムを複数保持しているとか……交戦する際は気を付けてくださいね。」

 

他には聖王国、竜王国、評議国なんかがありますがそっちはおいおいとにこやかに笑ってベアトリーチェの講義はひとまず終了した。

最後あたりからギルガメシュが半泣きだったのに疑問を残しつつモモンガは断りを入れて部屋を出る。

 

 

このあとデミウルゴスに見つかってひと悶着あるのだがそれはまた別の話…―――。

 

 

 

 




人物紹介

メドゥーサ

SE.RA.PHメンバー次女。この人に父親は居ない。
実はお母さんから予備……というかもう一つの身体をあたえられている。
元が地母神系列(fate軸)のほうから引っ張ってきたこともあって子供の中で比較的お母さんに近い。
この姿の時は大体次男の無銘と一緒に周りのストッパーというか調整役というかに回ることがほとんど。
嫌いなものは口ばかりうまくて乗せられそうな(馬鹿っぽい)軽薄な男。
この点まだ姉の旦那はちゃんと頭が回る方で、見た目に反して軽薄でもなかったため今のところは見守る()のみにしている。
因みに姉に不利益なことをしたら気付かれないうちに泥で「僕と契約()」()して傀儡にする気満々。
特技はストーカー、盗撮。

ティアマト

メドゥーサがお母さんから与えられたもう一つの肉体。
長男とは似て非なる泥の人形……?の様ななにか。
基本的に竜の形態になるときくらいしかこの姿にはならない。
というのもこの器の時はすべからく歌声のため意思疎通が電脳回線でしかできないから。……なにか切実なものがある。言葉が通じるのはたぶん身内含めごく一部だろう。
どっかのドラゴンさんと友達()になった。
……たぶん向こうは真なる竜(竜王)か何かだと勘違いしている可能性がある。
ラナーからからかわれているが本人はまんざらでもない……の、か?
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