「やっと・・・見つけた」
一人たたずむ少女。何かを果たし自由を手に入れた少女の目は輝いていた。
「うん、今行くよ。陽葵」
そしてその輝きは暗い輝き。闇が光るという矛盾した目をした彼女はつぶやく。
「あなたを幸せに・・・る・・・も・・・・い・・・に」
彼女は光るそれを手につぶやいた。
※
「なーんか最近陽葵がおかしい」
いやおかしいっていうのは語弊があるかもしれない。
正確には”おかしくない”
おかしくなくておかしい。何を言っているのかわからないと思うけどそんな感じ。
沙綾ちゃんと燐子ちゃんの一件が解決した日からこの違和感は続いている。
「二人とどんなやりとりがあったんだろ」
そう、あの日から陽葵は人が変わったみたいに普通になっている。
時々見せていたあたしへの依存はほぼない。
つまり”普通になってしまった”
”普通じゃない”のが普通だったのに。
あー!自分でいってて意味わかんなくなってきた!
「モヤモヤするぅー!でも聞かないって決めたし・・・・あああああああ!」
「日菜!うるさいわよッ!」
「あ、ごめんおねーちゃん」
そういって部屋に入ってきたのはおねーちゃん。
ヤバ、夜にちょっと大声出しすぎたかな?
「何をそんなに悶えているのかしら?」
「うーん、ちょっとね」
「ちょっとじゃわからないわ」
「・・・ねえおねーちゃん、聞いてもいい?」
あたしはおねーちゃんにちょっとした質問を投げかけることにした。
「えっとね、悪いことばっかしてた人が迷惑をかけた人に謝りに行きました。すると人が変わったみたいに悪いことをしなくなりました。なんででしょう?」
「・・・なにかのクイズかしら?そうね・・・考えられるのはふたつ。一つは見せかけだけ取り繕って反省してますとだけ言ってるクズ野郎」
「口が悪いよおねーちゃん!?」
ポロッっと怖いことをいうおねーちゃんに思わずツッコミを入れる。
「おっと私としたことが」
「それでもう一つは・・・・?」
「そうね・・・その謝罪のやり取りでその人の意識を変えるほどの会話があったってことかしら?」
「やっぱそーだよねー・・・・」
「参考にならなかったかしら?」
「ううん、ありがとおねーちゃん」
おねーちゃんは部屋を出ていく。
うーん・・・モヤモヤするけど考えても仕方ない!寝るか!」
prrrr
「っと・・・」
そこでスマホが光る。
・・・!陽葵からのメッセージだ!
『今度の日曜日、遊びにいかないか?二人で』
今度の日曜。それは――—―—
「あたしの誕生日だ」
あたしは、それにたいして”OK”と即答した。
でもあたしはこの時はまだ知らなかった。
この日がすべてを。
すべてを変えてしまう日になってしまうだなんて。
あたしは後に後悔する。
この日は・・・行くべきでなかったんだと。
すべてが終わってから、後悔したんだ。
※
「お待たせ、陽葵」
「別に待ってないさ。俺も今来たところだ」
「うんうん、デートの待ち合わせテンプレとしてはまあまあだね」
待ち合わせ10分前に合流するあたしたち。
「んじゃ、移動しよっか!」
電車に乗って目的地に向かう。
今日は前回のリベンジ・・・ってわけじゃないけど前回とは違う水族館に来ていた。
この前とはまた違った感じの水のゲート。ドーム型の水槽にしなやかな水流。
その中を自由気ままに泳ぐ魚たち。
それに歓迎されたあたしたちは笑顔だ。
「なあ日菜・・・手、つないでいいか?」
あれ、陽葵からそんなこと言ってくるなんて珍しい。
ふと顔を見ると陽葵は顔を背けながらそんなことを聞いたのが分かり、ちょっと陽葵が可愛くなった。
「しょーがないにゃー」
なんておどけて見せるけど心の中らるるるんっ!ってしてた。
その後、手をつなぎながら見て回る。
いろんな種類の魚、番いでじゃれるコツメカワウソ。
「おおおおおおすごい!」
そしてやっぱり最後はイルカショー。
盛大な音楽と季節の衣装に身を包んだ女性トレーナー、そして観客にかかるほどの壮大な水しぶきを上げるイルカたち。
盛り上がるには十分だった。あたしたちは今まで見たことのないパフォーマンスに圧倒されたのだった。
「いやーここの水族館はアタリだったね!」
「ああ。まさかイルカでサーフィンするとは・・・・」
各々感想を言いながら駄弁るあたしたち。
そして手は繋がれたままだ。やがて海沿いの公園に到着し、ベンチに腰掛ける。
「あっ・・・・この辺・・・」
「お、おう・・・・」
陽葵も気が付いたみたいだ。
そう、このあたりはカップルがいちゃつくスポットと化していたんだ。
周りをどれだけみても男女のペアしか座っていない。
「移動する?」
「そうだな・・・いや。実は日菜・・・聞いてほしいことがある」
「・・・・?なにかな?」
陽葵が聞いてほしいこと?
なんだろ。
「俺さ・・・この前、沙綾や燐子に謝ったとき。言われたんだ」
・・・・!これは!あたしがすごーく気になってた話!
まさか陽葵の方からしてくれるなんて!
「変えてくれた人の事、真剣に考えろって。その時はなんか突き刺さる言葉だなーって漠然と考えてたんだけどさ。後になってその言葉の意味を考えて理解したんだ」
「・・・・つまりどういうこと?」
「えっと・・・・それはだな・・・ええっと・・・」
陽葵は言い淀んでる。まって、変えてくれた人って・・・あたし?
「だから・・・その。こんな俺なのに真剣にぶつかってきてくれて、変えてくれて・・・日菜、ありがとう。日菜のおかげで今の、そしてこれからの俺がある。あの日二人と話して、日菜のためにも本気で、甘えることなく変わらなきゃって思えたんだ」
「・・・!」
ただひたすら。びっくりした。そっか、最近の陽葵がおかしかった・・・っていうか普通になったのはやっぱあの二人のおかげだったんだね。
「ううん。あたしは手伝っただけ。ちゃんと変われたのは陽葵の力だよ」
「ははは・・・買いかぶりすぎだよ」
照れ臭そうに笑う陽葵。
「それでな・・・日菜。もう一つ言いたいことがある」
「え?まだあるの?」
「あ、ああ。日菜・・・俺・・・俺は」
あれぇ?この雰囲気ってもしかして・・・・
「俺は日菜のことが・・・好きだ。今までのクズの俺としてではなく、純粋に女性として。氷川日菜のことが大好きだ」
とっさのことで言葉が出なくなってしまった。
でも確かにあたしの心臓は鼓動が高まり、ドキドキしている。
「・・・・・・えーっと」
しばらく沈黙が続き徐々に不安そうな顔に変わっていく陽葵。
それを見てあたしはさすがになにか喋らなきゃって思って口を開いた。
「陽葵さ・・・。前に聞いたよね?なんで俺を助けるのかって」
「あ、ああ」
「それがね。答えなんだ」
「どういうことだ?」
あたしは深呼吸して、そして言い放つ。
今まだ押し殺してきた想いをすべて、素直に。
「あたしも陽葵のことが好きだから」
ついに言ってしまったその一言。
もう、いいよね?陽葵はもう大丈夫。彼を矯正するための厳しいあたしはもういらないはず。
そう考えたあたし。そして、あたしたちはベンチで見つめあい、徐々に顔を近づけ・・・
唇を重ねた。
あの日の観覧車ような苦いキスではなく・・・うれし涙が混じったちょっぴりしょっぱい、甘いキスをしたんだ。
※
「あ、日菜に渡したいものがあるんだ」
「んー?なになに?」
手をつなぐどころか腕に抱き着きながら歩くあたし。
陽葵がそう言ったところで、今日があたしの誕生日であることを思い出した。
色々ありすぎて忘れちゃってたよ、反省!
「あ・・・・っ」
「んー???もしかして陽葵????」
「ごめん・・・家に忘れた」
「やっぱり!もう~おっちょこちょいさん!」
肝心なところで抜けてるなあ~
これが陽葵の本質、なのかもね。それともあたしに告白することで頭がいっぱいだったのかな?
「よーし!じゃあ今から陽葵の家に行っちゃおう!」
「え!?今から来るの!?」
「なにー?ダメなのー???彼女に見られたくないものでもあるんだー」
「そ、そういうわけじゃないけど」
「よしっ!じゃあ決まり!」
嬉しくなって陽葵から離れ、陽葵の方を向きながら後ろ歩きするあたし。
「おいおい、前を向かないと危ないぞ」
「へーきへーき!ほら、陽葵も早く早く!」
「わかったよ・・・・!?」
幸せな時間。
そのはずだったのに。
「日菜あああああああ!」
「え!?」
「あなたを幸せにするものを奪いにきた」
後ろから聞こえる女の子の声。
そして突然駆け寄ってきた彼に突き飛ばされ、しりもちをつく。
「なんで・・・お前が・・・・」
そういって膝から崩れる陽葵。
そして倒れた陽葵を中心に深紅の海が広がりを見せてて・・・・
その女子の手には真っ赤に染まり、銀色交じりに光る刃物が握られていた。
あらら急展開・・・・
刺したの誰やねんこいつ・・・っていうのは次回わかります。
次回、文量が増えすぎなければ最終回です(早い)
まさか趣味全開で書いたものがここまで見ていただけるだなんて思いませんでした。
引き続きよろしくお願いいたします。