目を覚ますとおねーちゃんもあたしを抱いたまま眠っていた。
「ふふっ・・・おねーちゃんの寝顔、可愛いなあ」
まじまじと寝顔を観察するあたし。
こうやって二人でくっついて寝る機会なんて今はほとんどないからこの瞬間は貴重かもしれない。
スマホで寝顔を撮ろうとするが充電が切れていて動く気配はない。
「あ、充電充電・・・・ってうわっ・・・」
おねーちゃんを起こさないようにすぐ近くから伸びている充電コードを差し、電源が入るとものすごい数の着信とLI●Eが入っていた。
パスパレのみんな、幼馴染のみんな、学校のみんな。とにかくすごい数だ。
そして日付を確認すると5日前から毎日。あたしは5日間も何もしないでいたんだ・・・・
―ひとまずみんなに謝罪の連絡を送る。
その瞬間着信が鳴り響く。
発信元は彩ちゃんだ。さすが彩ちゃん、普段エゴサしてるだけあって反応速度がすごいね!
『日菜ちゃん!?大丈夫』
「あはは・・・色々心配かけちゃったみたいでごめんね・・・うん、事務所には自分で・・・うん。ありがと、彩ちゃん」
そこから色々話をする。どうやら近くに千聖ちゃんやイヴちゃん、麻弥ちゃんもいたみたいで変わりばんこで話してたら結構時間が経っちゃってた。
「うん、じゃあまたね。ありがと、みんな」ピッ
ふぅ・・・・
みんなの声が聞けてすごく安心してる。
そっか、あたしは一人じゃないんだ。
「ん・・・・」
あ、おねーちゃん起きちゃった。
「ひな・・・・?」
「おはよ、おねーちゃん」
うーん、寝顔を撮るのはお預けかあ・・・
ま、いっか!
prrrr
あらら、また着信。こりゃ当分やみそうにないね。
そう思いながらもあたしは笑顔になっていて、次々と電話に対応していったのだった。
※
「ふぅ~」
「お疲れ様、日菜」
「ありがと、おねーちゃん」
電話の対応を終え、リビングで一息つくと、おねーちゃんがお茶を持ってきてくれた。
ピンポーン!
すると突然家のインターホンが鳴った。
おとーさんとおかーさんが帰るにはまだ早い時間だし配達か何かかな?
「私が出るわ。日菜はゆっくりしてないさい」
「はーい」
すると玄関先でおねーちゃんが対応する声が聞こえる。
すると足跡が二人分、家に中に入ってくる気配を感じた。リビングのドアが開くとそこには・・・・・
「陽葵のお母さん・・・?」
「氷川さん。先日はわざわざ来てくださってありがとうございました」
おねーちゃんに連れられてきたのは陽葵のお母さんだった。
「あの子の部屋を引き払うために整理してたらこれが出てきて・・・あなた宛てになっていたのでわたさなきゃって思って」
そういって差し出す手には小さな箱と、あたしの名前が書かれた封筒があった。
あたしはそれを受け取り、そして封筒を開ける。
するとそこには手紙が入っていたんだ。
日菜へ
改めてこうやって手紙を書くのってめちゃくちゃ恥ずかしい・・・
まずは誕生日おめでとう。そんな記念すべき日なんだが果たして俺の告白は上手くいったのかな?
まあ・・・どちらにせよ言いたいことは一緒だけどね。
日菜、俺を変えてくれて、見捨てないでくれて本当にありがとう。
俺がこんなことを考えるようになったのも、いまこうやってるのも日菜のおかげだよ。
これからの俺の決意・・・っていうか今まで人に散々もたれかかってきた罪滅ぼしというわけじゃ
ないけど、これからは人を助けられるようになりたい。
今までの自分の平穏を考えるだけじゃなくて、人の役立ちたいんだ。
まずは一番の功労者である日菜からスタートかな(笑)
そして今まで仮面を被って無理してたぶん、日菜とのこれからは、自分の素を出して本気で楽しみたい。
悪いけど付き合ってくれると嬉しい。
とまあ慣れない手紙はこれで終わり!俺たちはこれからだし、これからも色々頼むな!
P.S.一緒に入ってるペンダントは誕生日プレゼントです!
センスがないなりに選んだんだけどどうかな?
なんでも世界に一つの手作り品で、スピリチュアルな霊石を使ってるとかで願いをかなえる効果があるらしい。
怪しげな露店のばーさんがいってただけだからまあオマケ程度に考えればいいよ。
「ばか・・・・っ!ほんとこれからだってのに・・・あたしだって一緒の事考えてたのに・・・!せっかく助けてもらったのに・・・・でも・・・でも・・・!」
手紙を読み終えた途端、感情があふれる。
そしてついに・・・・ついに認めてしまう。
「死んじゃったら何の意味もないじゃん・・・ばか!ばか陽葵・・・・・!」
頭ではわかっていたけど心がずっと認めていなかったコト。
”弓神陽葵の死”
手紙を読むことでその事実をついに認めてしまったあたしはただひたすら泣いた。
「そうやってあの子を想って泣いてくれて・・・あの子も少しは浮かばれると思います。外面ばっかよくて人に迷惑をかけてばかりの子だったけど・・・最後にあの子に向き合ってくれてありがとう。母親として、あなたに感謝します」
「日菜・・・・・」
「うわあああああああああああん!!!」
再びおねーちゃんも胸を借りて大声をあげて泣く。
そうやって泣くあたしの手には、手紙と一緒に入っていた、太陽の形をした天然石のペンダントが握られていたのだった。
※
― 夏 お盆
ノースリーブのワンピースに麦わら帽子。
日焼け止めもバッチリ。手には柄杓に桶。完璧(?)な夏スタイルだ。
「久しぶりだね、陽葵」
目の前にある”弓神家之墓”と刻まれた墓標にあたしは語り掛ける。
「もう半年くらいになるのかな?早いよね」
でも帰ってくる返答はない。
それでいいんだ。過去は変えられない。
あたしが喋って呆れ気味に陽葵が答える。そんな日常はもう戻ってこないのはわかってる。
「やっぱ・・・・さみしいよ陽葵・・・・・」
おっといけないいけない!
「でも、陽葵の分まで強く生きるって決めたから。弓神陽葵が生きた証として、あたしは生き続ける」
それは決意。
弓神陽葵はあたしの中で生き続ける。だから陽葵が確かに生きた証としてあたしは存在し続けるんだ。
「さて、しんみりしてても仕方ないから陽葵に水をぶっかけて帰ろうかな!」
”ひ、ひなさん・・・?桶いっぱいに水をためてなにしてるんですかね・・・・?”
”なんだと思うー?あははは!陽葵ビクビクしてる!やらないよ!冗談だよ!”
”なんだ、冗談か・・・・”
きっと陽葵がいたらこんなやり取りをしているのかな。
だから・・・・
「えいっ!」
バシャーン!
「やらないっていうのが冗談だよ♪」
陽葵の墓石にお水をかぶせ、あたしはそう呟く。
”冷たいいいいい日菜ああああああ”
「・・・・!」
陽葵・・・・?
「・・・気のせい、だよね」
少しセンチメンタルな感じになっちゃった。
「ばいばい、陽葵。また来るね」
偽りの幸せで塗り固められた弓神陽葵の人生。
これが結末。それを語るのが本人じゃなくてあたしなのが何とも言えないけど。
確かな決意と思い出を胸に。
でもやっぱりキミにもう一度会いたいという思いも抱きながら。
あたしはその場を後にし、確かな一歩を進み始めたんだ。
偽りの幸せとクズの結末-TRUE END-
というわけで偽りの幸せとクズの結末
これにて終了です。
息抜き&気まぐれで書き始めて内容が内容なのでお気に入り一桁・低評価大量を覚悟して書いていたのですが、思っていた以上にたくさんの方に読んでいただき、凄く嬉しく思います。
他の作品も連載中でございます。よろしければお読みいただけると嬉しいです!
ここまで1か月かからなかったくらいの短い時間でしたがお付き合いいただきありがとうございました!
※
「本当にそれでいいのかい?」
お墓参りの帰り道を歩いていると聞こえる声。
声がする方に目を向けてみると・・・露店を開いているおばーさんの姿があった。
「どういうことですか?」
「そのまんまの意味さ。本当にこれでいいのかい?」
なんのことを言っているんだろう?
「あの時の気まぐれがこんな形を迎えるなってねえ・・・」
「あの時の気まぐれ?それってどういう・・・・」
「強く願われた想いは体を伝わる。すると石はその想いに応え、一度だけ・・・願いを叶えてくれる」
「石・・・・?・・・!?これは・・・!」
輝きだしたあたしのペンダント。
これは陽葵にもらった霊石のペンダント・・・・?
「えっ!?うそ!?きゃああああああああああああ」
その光に包まれたかと思うと、あたしは暗闇に閉ざされてしまった。
”陽葵ともう一度会いたい”
”本当にいいの?あたし?”
”さっきの決意を無駄にすることになるんだよ”
―そうだよね・・・・
聞こえるのは・・・すべてあたしのこころの声
―でも
でもあたしは・・・
”どうするの?”
”やめなよ”
”いくの?”
”無駄だよ、また陽葵が死んじゃうのを見るだけだよ”
それでもあたしは・・・・!
「陽葵にもう一度会いたい」
強く、そう願ったんだ。
そしてあたしはそのまま再び光に包まれ・・・・
目を覚ますとあの日の朝・・・
3月20日の朝に戻っていた。
「これは・・・・!うん、なるほどね。今度こそ目指すんだ・・・・ハッピーエンドを」
どうやら結末はやり直しになったらしい。
あたしはさっきとは違った強い決意のもと・・・・・
大きな一歩を踏み出した。
次回
偽りの幸せとクズの結末-HAPPY END-
自己満足の特別編ですが少し書き足していきたいと思います。
よろしければ引き続きよろしくお願いいたします。