「ハッピーエンド・・・・?」
なんであたしはこんなことこんなこと考えてるんだろう・・・?
なにが「なるほど」なんだろう?
「やばい、記憶がない」
この年齢でこれってやばいよ!?
直前に自分が言ったことの意図がわからないなんてよっぽどだよ!?
「ってこんなことしている場合じゃないや!」
時計を見るとそろそろ出ないと陽葵との待ち合わせに間に合わなくなっちゃう。
うーん、まあ忘れるってことはどうでもいいことだよね!
とにかくいかなきゃ!
「日菜、どこかいくの?」
「あ!おねーちゃん!ちょっと友達と遊びにね。夕飯は食べてくるから今日はいらないっておかーさんにいっておいてくれる?」
「わかったわ。気を付けていくのよ」
「うん!」
とにかく出発だ。せっかく水族館にいくんだから楽しまなきゃ!
前みたいに暗い感情はもうない。
・・・・はずなのに。
「え・・・?」
なんだろうこの感じ。本能が行っちゃダメと警鐘を鳴らしてる感じがする。
それを自覚した瞬間、足が重くなり、体が小刻みに震えだす。
これはなに・・・・?
「日菜?大丈夫・・・?」
「え、ああ、うん!じゃあ行ってくるね♪」
「ええ」
気のせいだと自分に言い聞かせあたしは家を出る。
そして、待ち合わせ場所につくと、すでに陽葵は到着していた。
※
「お待たせ、陽葵」
「別に待ってないさ。俺も今来たところだ」
「うんうん、デートの待ち合わせテンプレとしてはまあまあだね」
この違和感は何なの・・・・?
この感じ、以前も感じたことがある気がする。
ただのデジャヴ?それとも・・・?
「どうしたんだ?日菜」
「ううん、なんでもない!じゃあ、いこっか」
気のせいかな。
とにかくせっかくの陽葵とのデートだ。よくわからに違和感を気にするよりも楽しまなきゃ損だよねってことで電車に乗って目的地に向かう。
水のゲートにドーム型の水槽にしなやかな水流。その中を自由気ままに泳ぐ魚たち。
それに歓迎されたあたしたちは笑顔だ。
でもやっぱりおかしい。はじめてくる場所のはずなのに見たことがある気がする。
するとあたしの手が自然と横に伸びる。
コツン
すでに伸びていた陽葵の手をあたしの手がぶつかる。
「あっ・・・」
「なにー?陽葵そんなにあたしと手をつなぎたかったのかなー?しょうがないにゃあー」
おどけた感じでいい、陽葵の手をしっかり握る。
あっけからんとしているけど内心はバクバクだったりしている。
「そ、そんなこと・・・ナイデス・・・イヤ・・・ソウジャナクテ・・・」
「うふふ、可愛いっ」
「お、男に可愛いなんていうもんじゃないよ」
「うわ!陽葵に顔真っ赤!可愛い!」
「だからやめろって・・・・」
端から見たら完全にバカップルだろうなー
あ、バカップルって言い方は古いかな?
その後、手をつなぎながら見て回る。
いろんな種類の魚、番いでじゃれるコツメカワウソ。
「おおおおおおすごい!」
そしてやっぱり最後はイルカショー。
盛大な音楽と季節の衣装に身を包んだ女性トレーナー、そして観客にかかるほどの壮大な水しぶきを上げるイルカたち。
盛り上がるには十分だった。あたしたちは今まで見たことのないパフォーマンスに圧倒されたのだった。
「いやーここの水族館はアタリだったね!」
「ああ。まさかイルカでサーフィンするとは・・・・」
各々感想を言いながら駄弁るあたしたち。
そして手は繋がれたままだ。やがて海沿いの公園に到着し、ベンチに腰掛ける。
しかしあたしは何かが胸につっかえたような感じがずっと続いていた。
「あっ・・・・この辺・・・」
「お、おう・・・・」
このあたりはカップルがいちゃつくスポットと化していたんだ。
街灯は薄暗く、二人掛けがちょうどいいベンチが並びソレを目当てに作られたと思うほど。
事実周りをどれだけみても男女のペアしか座っていない。
「移動する?」
「そうだな・・・いや。実は日菜・・・聞いてほしいことがある」
「・・・・?なにかな?」
心臓が跳ねる。
「俺さ・・・この前、沙綾や燐子に謝ったとき。言われたんだ。変えてくれた人の事・・・・」
「変えてくれた人の事、真剣に考えろって・・・そんな感じかな?」
「えっ?なんで知って・・・」
・・・わけがわからない。無意識に、そして不思議とこんな言葉が自然に出てきたんだ。
「あ、話の腰を折ってゴメンね」
「あ、ああいいよ。それでな・・・だから・・・その。こんな俺なのに真剣にぶつかってきてくれて、変えてくれて・・・日菜、ありがとう。日菜のおかげで今の、そしてこれからの俺がある。あの日二人と話して、日菜のためにも本気で、甘えることなく変わらなきゃって思えたんだ」
「ううん。あたしは手伝っただけ。ちゃんと変われたのは陽葵の力だよ」
「ははは・・・買いかぶりすぎだよ」
そんなことないと思うけどなー・・・
陽葵の頑張りは知っている。しかも傷つけた女の子と話してちゃんとそう思えるのはすごいと思う。
「それで・・・もうひとつ・・・えっと俺は日菜のことが・・・好きだ。今までのクズの俺としてではなく、純粋に女性として。氷川日菜のことが大好きだ」
不意打ちにも思えるこの一瞬。あたしの心臓は鼓動が高まり、ドキドキしている。
「・・・・・・えーっと」
でもなんでだろう・・・?どこか告白される準備ができていたようにも思える。
そんなことを考えているとしばらく沈黙が続き、徐々に不安そうな顔に変わっていく陽葵。
それを見てあたしはさすがになにか喋らなきゃって思って口を開いた。
「陽葵さ・・・。前に聞いたよね?なんで俺を助けるのかって」
「あ、ああ」
「それがね。答えなんだ」
「どういうことだ?」
あたしは深呼吸して、そして言い放つ。
今まだ押し殺してきた想いをすべて、素直に。
「あたしも陽葵のことが好きだから」
※
「あ、日菜に渡したいものがあるんだ」
「んー?なになに?」
手をつなぐどころか腕に抱き着きながら歩くあたし。
そういえばあたしの誕生日だったなー
でも陽葵プレゼント家に忘れてんじゃん!おっちょこちょい・・・・
アレ・・・?
”なんであたしは陽葵がプレゼントを忘れたことを知っているんだろう?”
「あ・・・っごめん・・・家に忘れた」
その直後・・・あたしの考えていたことがピタリと当たってしまった。
とりあえず違和感を悟られないため、いつも通り振る舞う。
「もう~おっちょこちょいさん!あ、じゃあ今から陽葵の家に行っちゃおう!」
「え!?今から来るの!?」
「なにー?ダメなのー???彼女に見られたくないものでもあるんだー」
「そ、そういうわけじゃないけど」
「よしっ!じゃあ決まり!」
嬉しくなって陽葵から離れ、陽葵の方を向きながら後ろ歩きするあたし。
「おいおい、前を向かないと危ないぞ」
「へーきへーき!ほら、陽葵も早く早く!」
この刹那―
突然心臓の鼓動が早まるのを確かに感じた。
「日菜あああああああ!」
突然叫ぶ陽葵。後ろには殺気を放つ気配。
あたしは―
ドゴ!ガシッ!
「なっ!?」
「ぐおおおおおお嘘だろおおお」
こちらへ来る陽葵に申し訳ないけど蹴りをお見舞いして遠ざけ、腕で後ろから迫る何かを掴んだ。
この行動にあたしの思考は絡んでいない。
なぜかこうしなきゃって思って、体が無意識に動いたんだ。
「放せ!放せこのお!」
暴れ、叫ぶ女の子の声。それを聞いた瞬間・・・
あたしはすべてを思い出した・
「—!」
そっかあたしは・・・・
「やり直しているんだ、あの日を・・・!」
凶器を女の子の手からねじり落し、地面にたたきつけて制圧するあたし。
その光景を陽葵や通行人は静かに見ていた。
次回、真の最終回です。
構想こねこねして頑張ります。
引き続きよろしくお願いいたします。