よろしくお願いします!
警察が到着し、連れていかれる女の子。
あたしと陽葵はその様子を後ろから見ていた。
「あいつ・・・昔俺を刺したヤツなんだ・・・・」
「・・・そっか」
”知ってたよ”その言葉を飲み込む。だって未来から来た(?)なんていったら頭のおかしい人じゃん。
二人してぎこちない会話を続けるけど、ほんとは今すぐに陽葵を抱きしめたい。ぎゅっとして生きててよかったって言いたい。
でもここでそんなことをするわけにいかないし、我慢だ。
「あなた達にも話をききたいんですが・・・・」
警察の人が話しかけてくる。
しかし警察の事情聴取は明日になるとうことで、あたしたちは帰宅を許された。
帰り道―
あたしたちの間には会話がなく、歩く。
やがて陽葵の部屋に到着し、靴を脱ぎ、荷物を下ろす。
「ごめん・・・日菜」
陽葵が謝ってきた。
「なんで謝るの?」
「せっかくの誕生日なのに、せっかく付き合えたのに。結局俺が昔やったことが原因で日菜を危ない目に遭わせちゃったから」
「・・・・気にしてないよ。陽葵こそケガがなくてよかった」
あたしは気づいた。自分の顔に違和感があることを。
そう、瞼が熱くて、それが顔を伝ってるんだ。
「な、なんだよ日菜・・・なに泣いてるんだよ・・・・」
「うっさいバカ陽葵。キミこそ泣いてるじゃん・・・!」
あたしも、陽葵も目から大粒の涙が流れていた。
そして―
「陽葵・・・・!」
「日菜・・・・!」
あたしたちは強く、強く強く抱き合った。
精いっぱいの力で、潰れちゃうんじゃないかと思う力で思いっきり抱きしめた。
「陽葵・・・陽葵いいいい・・・」
「な、なんだよ。日菜ってそんなに泣き虫だったのか」
「だってぇ・・・だってぇ・・・もう一度こうできるなんて思ってなかったから・・・」
もうこのぬくもりを感じることはできない・・・そう思っていたのに。
あたしの悲しみは一気に喜びに変わったんだ。
「そっか・・・俺も・・・!」
あたしたちは感情をオープンして泣いて、抱き合って、もうよくわからない状態だった。
そして落ち着くころにはすでに夜中になっていた。
※
「やば・・・おねーちゃんとおかーさんから着信入ってる」
「あー・・・もうこんな時間か。春休みで明日も休みとはいえ、さすがに一回帰らなきゃな。送ってくよ」
陽葵が立ち上がり、外出の準備を始める。
それを見たあたしはとっさに、体が勝手に動き・・・陽葵の手をギュって掴んだんだ。
「日菜?」
「・・・イヤ」
「え・・・?」
「帰るの、イヤ。今日は陽葵と一緒にいたい」
※
なんてことをおっしゃるんですか日菜さん。
え・・・?俺と一緒に・・・?ってことはもしかして・・・もしかしなくてもそういうことなのか・・・・?
確かにそれなら俺も嬉しい。
もう会えないと思っていた日菜にまたこうして会えているんだ。
一緒にいられるならずっと一緒にいたい。
「日菜と家の人がいいなら・・・・」
「・・・!うん、すぐ電話してくる!!」
そういって日菜は電話をしに外へ出る。
その間、俺は今日のことを考える。俺はかつて日菜の死を目の当たりにしたこと、そして俺はそれを回避する代償として一度死んだはずであること。
そして霊石のペンダント力かわからないが今こうやってもう一度生きていて、日菜も俺も死なないイマを作ることができたこと。
『やり直しているんだ、あの日を・・・!』
『だってぇ・・・だってぇ・・・もう一度こうできるなんて思ってなかったから・・・』
そしてふと思い出す日菜がつぶやいていた言葉、そして俺に言った言葉。
さらに言ってしまえば過剰といえるまでにさっきまでのやり取り。
日菜があれだけ泣くなんて珍しいどころかみたことなんてない。
「ちょっと待て、これはどういうことだ・・・?」
まるで日菜は”俺とはもう二度と会えないと思っていた”みたいじゃないか?
そう、日菜が発した言葉は”日菜とはもう二度と会えないと思っていた”俺の心情をそのまま表してる言葉だったのだ。
「警察から連絡いってたみたい・・・でも外出るの怖いから友達の家に泊まるって言ったらOKだってさ!」
日菜が帰ってきた。嬉しそうにそうやって俺に報告する。
「そっか、嬉しいな」
「うん!あたしも!」
ベッドに横たわった俺たちはしばし歓談し、俺はついに気になっていたことを話しだしたのだ。
※
「なあ日菜・・・変なこと聞いてもいいかな」
「なに?陽葵が変なのは今に始まったことじゃないけど」
「さりげなくひどいな・・・アイツに襲われたときにつぶやいてた言葉。あの日をやり直してるって・・・どう意味なんだ?」
ベッドの上であおむけになり駄弁っていたあたしたち。
すると突然、核心を突く言葉。まさか陽葵に聞かれていたなんて。
「えっと・・・・それは・・・」
なんて答えたものかわからなくていい淀んでしまう。
そりゃ陽葵は一回死んじゃって、時間が巻き戻って今になってるなんて絵空事、信じられるわけが・・・・
「もしかして・・・日菜も・・・繰り返しているのか?」
信じそうな人いたー!!!
ってちょっと待って、それって・・・・
「え・・・?”も”?ってことはもしかして陽葵も戻ってきたの・・・・?」
その言葉ですべてがつながった。
やり直したのはあたしだけじゃなかったんだ。
陽葵の口から語られたのはあたしが一度死んでしまったこと。そしてその過去を変えるためにペンダントの力で戻ってきたこと。
次に陽葵があたしの身代わりになって死んでしまったこと。おそらくこれがあたしが経験したことだろう。
つまりあたしたちはそれぞれを助けるために一度ずつやり直したんだ。
「あたしと・・・同じだ」
「なるほどな・・・・」
話がまとまった瞬間、あたしは感情を爆発させた。
「なっ!?日菜・・・むぐっ」
あたしは起き上がり、横たわる陽葵に覆いかぶさった。
そしてそのまま・・・唇を奪いに行ったんだ。
「陽葵・・・・」
そしてあたしは再び、力いっぱい陽葵を抱きしめた。
「陽葵・・・生きてるっ・・・あったかい・・・!陽葵・・・会いたかったよ陽葵・・・!」
お互いが同じ境遇にあるということを知り、感情を隠す必要がなくなったあたしは大爆発した。
それは陽葵も同じようで、あたしがこうやって生きていることを心の底から喜び、またしても二人で泣いてしまった。
「日菜・・・好きだ・・・」
「あたしも・・・大好きよ、陽葵・・・」
重なる唇。そして布のこすれる音。重なる肌と肌の感触。
無音の部屋に鳴り響くそれらは、やがて幸福感へと変わり、あたしたち絆をより強いものへと変えていった。
※
あれから何十年たったかな。
今やあたしはしわしわのおばーさん。
そしてあたしの隣には陽葵はいない。
その代わりにおじーちゃんになった陽葵がにっこりと笑う写真が立っている。
「まったく、あのしわくちゃジジイめ~こんな美人をおいて先に逝っちゃうなんてなあ」
そう、陽葵ったらあたしより先に遠いところに行っちゃったんだ。
とはいっても誰かに殺された、とかじゃなくて普通に歳と病気によるものだ。
最後は子供たちに、孫たちに、そしてあたしに看取られながら安らかに、そしてゆっくりと旅立っていった。
「ねーねーおばーちゃん!このペンダントってなに?」
「ああ、それはね・・・」
孫娘が持ってきたのは太陽を模した霊石のペンダント。
あたしと陽葵にハッピーエンドをもたらしてくれた功労者。
「おばーちゃんとおじーちゃんの命の恩人だよ」
優しく、あたしはそういう。
・・・さて!と、いうわけでこれが本当の弓神陽葵の結末。
塗り固められた偽りの幸せはすべて剥がれ落ち本当の幸せへと変化を遂げた。
そしてクズはクズでなくなり、妻に、子供たちに孫たちに囲まれて安らかに終えることができたんだ。
―ねえ陽葵。陽葵は最後、幸せだったかな?
あたしは最後の瞬間まで幸せだったよ。そっちに会いに行くまでまだ時間がかかりそうだけど、もう少し待っててくれると嬉しいな。
『うん、待ってる。あ、でもあんま急がなくていいからね?ゆっくりこっちにおいで』
漠然とそんなことを考えていると、あの時の・・・昔の陽葵のままで。
そんな声が聞こえた気がしたんだ。
~fin~
ぬわああああああああああああああん疲れたもおおおおおおおおおおおん
というわけで本当の最終回を終えることができました!
別作品の息抜きで書いてたつもりだったんですけどねえ・・・
以前の最終話のあとがきでも述べましたが、まさかこんなにたくさんの方に読んでいただけると思っていなかったのでめちゃくちゃ驚いているんですね。
こんなぶっ飛んだ設定、クズな主人公、ヒロインのキャラ改変・・・・
普通に考えればお気に入り一桁、低評価連発上等の内容のはずだったんですけど・・・それでも楽しんでいただけたようで嬉しい限りです!
またぼちぼち書いていきますのでどこかで見かけることがあればお読みください!
それと、完全に最終回をむかえたということで活動報告にこの作品の質問箱を置いておきます。
設定だけ存在してて作中では述べていないこと、説明不足なとこと、理解できなかったことなど聞いてくださると嬉しいです!
最後に、ここまで読んでくださった皆様。本当にありがとうございました!