「どうしたんですか...その手!?」
「ああ...ちょっとね」
「ちょっとじゃないです...!とりあえずこっちに来て、手当します...!」
燐子はそういうと救急箱を持ってきて俺の手当をする。
彼女の手際よく、優しく行われる手当は俺の心に安らぎを与えていた。
「ほら、これで終わりましたよ」
「ありがとう、燐子」
手当が終わり、燐子は優しく微笑む。
その笑顔が眩しくて。俺は思わず燐子を抱きしめてしまった。
「きゃっ//陽葵さん...?」
「聞かないのかい...?」
俺は何でこんなことを聞いてしまったんだろう。
こんなことを聞く必要なんてない。ただ黙ってことをすすめて、偽りの好意を向ければ済む話なのに。
「だって陽葵さん、私がどうしたんですかって聞いた時、応えませんでした...なら聞かれたくないことなのかなって...それなら私がやれるのは手当と、陽葵さんを励ますことだけです....」
眩しい微笑みを俺に向け、燐子はなんの躊躇いもなくそういう。
心が苦しくなった。何故だ?意味がわからない。さっき沙綾と別れた時だって自分にイライラして拳が血まみれになるまで殴って...
気がつくと俺は燐子を力いっぱい抱きしめていた。
「燐子、ごめん、ごめんな...」
俺は泣きながら燐子に謝っていた。
何に対して謝ったんだろう?
夜に押しかけて手当までしてもらったことだろうか?
それとも俺がキミを裏切っていることだろうか?
「いいんです...陽葵さんが隣いてくれるだけで。陽葵さん...好きです...」
"好き"
なんて薄っぺらい言葉だろう。
他人に溺れ、もたれかかるのが常だった俺は好きだなんて感情はわからない。
しかし好きという言葉は人を安心させ、無条件で喜ばせる魔法の言葉。
この一言を言うだけで上手くいくのなら意味なんかわからなくても楽だからどんどん使えば良い。
「ああ、俺も好きだよ。燐子」
俺はいつも通りそう返す。意味もわからないのに。
ただ単にこの場を綺麗におさめたいが為に。
しかし、いつもやっているそれだけの行為のはずなのに。
俺はとんでもない不快感を感じ燐子と別れたあと盛大に嘔吐をした。
「もう...限界なのかな」
無自覚の良心。
俺の本質は依存、利用、そして仮面をかぶること。
そして他人の好意を踏み台にして俺の平穏を保つ。
それがアイデンティティだった俺の心境にちょっとずつ変化が訪れていて、崩壊しつつあることを俺は何となく感じながらも無理矢理押さえ込み...
そして順調に、崩壊への歩みを進めて言っているのを自覚しつつも認めたくないのであった。
引き続きよろしくお願い致します。