「俺を・・・助ける・・・?」
何を言ってるんだこいつは。
助けるどころか俺を追い詰めてるじゃないか。
「くっそおおおおおおおお!」
「陽葵!」
俺は日菜に背を向け、走り出し、沙綾と燐子を追う。しかしすでに姿はなかった。
「ハァ・・・ハァ・・・」
「陽葵!」
「日菜・・・お前なんなんだよ!何の権利があってこんなことをする・・・!」
激昂。俺は感情のままを日菜にぶつける。
許せない。俺の平穏を壊す者は・・・誰であろうとユルサナイ
「ならさ、キミはこのままでいいの?誰かにもたれかかって、偽りの幸福で塗り固めて、一人になったら苦しむ。そんなの・・・いつまで続くかわからないじゃん」
「それでも・・・それでも俺は・・・・!」
「今が良ければそれでいいの?ほんとなんも考えてないんだね」
「ちくしょおおおおおおおお!」
女を殴る度胸もない俺は耐えきれなくなって再び走る。とにかく・・・とにかく沙綾と燐子にあわなきゃ・・・・!
俺はただひたすら走った。
しかしその日・・・・
沙綾にも燐子にも拒絶され、会うことはかなわなかった。
※
言ってしまった。
ついに言ってしまった。
彼が自分を守るためにずっと被っていた仮面。それを無理やり剥がそうとしてしまった。
「すごく・・・怒ってたな」
本当にこれでよかったんだろうか?
陽葵が目を覚ますためにはあたしがやったことは絶対に通らないといけない道だったと思う。
『日菜・・・お前なんなんだよ!何の権利があってこんなことをする・・・!』
ほんとその通りだよね。なんであたしがこんなことやってるんだろう。あたしの役目じゃないでしょ?
怒る彼に対し、あたしは感情を押し殺して淡々と反撃を行った。
そしてそれをしているうちに彼は再び、あたしの前から姿を消してしまったのだ。
「ごめんね」
でも、もう後には引けない。沙綾ちゃんと燐子ちゃん。彼の目を覚まさせるのにはどうしても二人を巻き込まなきゃいけなかった。
そして、それをやってしまった今、あとは突き進むしかない。
たとえ陽葵がどれだけ悲しみ、他人が悲しい思いをするとしても。
その先にある深淵のような悲しみに包まれるよりはいい。
彼を救うためなら私は鬼になろう。そして・・・
「クズにでもなるよ」
そう、ひそかに決意したのであった。
※
「あら、陽葵君」
「あ、どうも」
店先から出てきたのは沙綾のお母さん。
「今日はバイト休みよね?」
「ええ。でも沙綾さんに用事があって」
そう、昨日話すことが叶わなかった沙綾。
一刻も早く誤解を解きたくていつも沙綾が店先にたつ時間になるとすぐにここに来た。
”誤解”・・・・?
誤解とはなんだ?なにが誤解なんだ・・・?
「陽葵君?」
「あ、すみません」
ドロドロとした自問自答が始まりかけたところで、沙綾のお母さんの声で現実に呼び戻される俺。
「ごめんなさいね~沙綾は今日バンドの練習で遅くなるって言ってたわ」
「そうなんですか」
この辺のバンド練習・・・ライブハウスだとCiRCLEかな。
「わかりました、行ってみます」
沙綾のお母さんに頭を下げ、俺はCiRCLEの方へ向かう。
すると到着する前に見覚えのある顔が見えた。
「沙綾!」
「・・・・!陽葵くん・・・?」
俺の顔をみて固まる沙綾。
「沙綾、話を聞いてくれ・・・・!」
「陽葵くん・・・・!私は・・・!」
沙綾は複雑そうではあるが少し緩んだ顔でこちらを見た。
よし、これなら”いけそうだ”
そんな邪な考えが浮かび、近づこうこした俺。
「おい、てめーが沙綾のカレシか?」
「え?」
沙綾の横から発せられる声。
「あ、有咲・・・!」
その有咲と呼ばれたツインテールの少女はキレた表情で俺を睨んできたのであった。
この感じ、おそらく昨日のことを沙綾に相談を受けたのかもしれない。
「てめーが沙綾にやったこと、ぜってー許さねえからな!」
はい、的中。
この有咲と呼ばれる少女の怒りを目の当たりにした俺は、一筋縄に行かないという予感を感じていたのであった。
引き続きよろしくお願いいたします。