【完結】偽りの幸せとクズの結末   作:光の甘酒

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辛辣日菜ちゃん通り越して少々キャラ崩壊を起こしているのでご注意ください。
しかしこれも日菜ちゃんというキャラの柔軟性のおかげです。




第9話 あたしの全力(物理)

「陽葵!!」

 

 

あたしは横たわる陽葵に駆け寄る。

 

 

「・・・・」スースー

 

 

よかった・・・寝てるだけだ。

この惨状も、カップめんの容器はちゃんと洗っているようで悪臭があったりとかはない。

 

 

「陽葵。起きてよ」

「んだよ・・・・・」

 

 

うっすらと目を開ける陽葵。

 

 

「日菜か・・・何しに来た」

「別に。ちょっと様子を見に来ただけだよ」

 

 

陽葵の前ではこの口調・態度は崩さない。

あたしは冷酷で、辛辣で、スパルタであり続けなければならない。

この人に甘い顔をみせてはいけない。

 

 

「落ちぶれたね」

「・・・・・ッ!!!!」

 

 

ガタッっと突然立ち上がる陽葵。

 

 

「誰のせいだと思っているッ!!!!!!!」

 

 

全力で怒鳴る陽葵。一瞬たじろくも、すぐに表情を無に変える。

そう、これはあたしのせい。

 

 

「それは自分のせいでしょ?キミが不誠実を働き、収まるところに収まった。ただそれだけ」

「どの口が・・・・いうんだあ!!!」

 

 

刹那、陽葵はあたしに拳を向ける。

その動作を察知したあたしはこれくらいは受けようかな・・・って思ってしまった。

目を瞑り、拳が到達するのを待つ」

 

 

「・・・・!」

 

 

しかし、待てども待てども衝撃はこない。

恐る恐るを目を開けてみると拳を握ったままプルプルと震えだし、膝をつく陽葵の姿があった。

 

 

「お前を殴るなんてできるかよ・・・・・」

 

 

涙をボロボロこぼしながらそうつぶやく陽葵。

そんな姿をみてギュッと抱きしめたくなる衝動に駆られるが、必死にそれを抑え込む。

 

 

「お前の言うとおりだ」

「え?」

 

 

ふと我に返ったのか、陽葵は突然語りだした。

 

 

「お前が言う通りなんだ。俺は、一人では生きていけない。いけないこととわかりつつもたくさんの人にすがってきた。しかも彼女としてではなく、もたれる壁というひどい扱いでな」

 

 

これは・・・・!陽葵が本音で話し始めている。

 

 

「でも変えられない。俺はそういう生き物なんだ。刺されても、見放されても変われない。もうムダなんだよ。諦めてるんだよ。何度繰り返しても同じ。結果は変わらない」

「今までさ。今みたいに誰かに頼ったりしたことあるの?」

「ない。しても無駄無駄。意味なんてない。どうせこれからもそうだし、変えることなんてできないんだよ。もういいだろ!帰れよ!!!!」

 

 

もう世の中なんてどうでもいい。そんな表情で吐き捨てる陽葵をみたあたしは。

ものすっごくイライラして、そしてぐわぁー!って。ある感情が出てきた。

そしてその感情は顕現する。

 

 

「いつまでそうやってウジウジウジウジしている気なんだ弓神陽葵ッ!!!!」

 

 

ドゴッ!!!!

 

 

あたしの全力の拳は。

全力で放った感情は、陽葵の顔面を貫き、吹き飛ばした。

 

 

「ひ、ひな・・・・・」

「何が変われないだ!キミが変わるために何をした!?なにもしてないでしょ!?刺されたときに何を思ったの!?見放されたときに何を思ったの!?」

 

 

あたしは止まらない。腑抜けとなった陽葵をただひたすら本気で。

胸ぐらをつかみ、拳をぶつけ、そして声もぶつける。

 

 

「そうやって仮面被るのも限界なんでしょ?キミの良心が悲鳴を上げてるんでしょ・・・?なんでそれを素直に受け止めないの・・・?それでキミが壊れたら・・・意味ないじゃん!!!」

「そ・・・・・」

 

 

顔を晴らした陽葵は何かを言いかける。

 

 

「そのときは、そのときだ。お前には関係ない」

「まだ・・・・そんなことをいうかああああああああああああああ!!!!」

 

 

ほんとはこんなことしたくないのに。

でもあたしは誓った。彼を変えられるなら鬼にだってクズにだってなるって。

その決意を簡単に揺るがしてはいけない。彼が本気で、自分を変えたいって思えるまでは。

 

一通りやり取りが終わり、二人ともその場にへたり込む。

陽葵は顔を腫らし、痣のできた顔で。

あたしは表面上は何ともないけど。冷静になった今はヒリヒリと痛む拳と心をなでながら、陽葵が口を開くのを待ったのだった。

 




お気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、実は陽葵は表向きの主人公であって真の主人公は日菜という路線だったりします。


しかしお気に入り一桁覚悟で淡々と書いていくつもりでしたが感想もいただけ、お気に入りもじわじわあがりうれしい限りです!

引き続きよろしくお願いいたします。

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