「つっ・・・・」
福田和樹は何かにぶつけた痛みで目を覚ました。
「どこだここ?」
見上げれば見知らぬ天上。ぬぼーとするのもわずか、窓を震わす砲声で覚醒した。
そうだった。ここは自分の隊舎だ。見知らぬ天上も正しくは見慣れぬ天上だ。
朝方、観測所での勤務を終えて目をこすりながら報告書を提出しベッドに潜り込んだのが8時頃。
枕元の時計は午後3時すぎを指している。
そして軽快なリズムでアラームがなった。
どうやら設定時間よりも一足早く起きたようだ。
まだ寝たりないがしかたない、今から師団長直々に命令を聞きに行かなければならないのだ。
新人一年間の訓練のおかげで身支度は早い。
テーブルにあったクラッカーをかじりながら制服に袖を通し、鏡の前で確認してから部屋を出た。
午後4時 師団長執務室
「ふむ。福田和樹三等陸尉、新人成績はトップ。人柄も問題は無しか・・・」
ペラペラと紙をめくりながら目の前に座る人物はつぶやく。
鍛えた体躯もたくましくその肩には光る二つの金星。
森屋建治陸将補。われらが師団長だ。
鋭い眼光に思わず背を伸ばす。
「・・・さすがだな。推薦されるだけはある」
再びにらまれる。蛇に睨まれたカエルの気持ちが分かる。
背筋を汗がつたっていく。
「福田三尉。配属早々悪いが転属だ。君には調査隊の一員になってもらう」
言い終わるやいなや、傍らの副官が書類の束とビニールに包まれた新品のパッチを強引に渡す。
「では行きたまえ」
森屋陸将補は話は終わりだとばかりに書類を置き、新しいファイルを手に取る。
副官にも退室を促されてあわてて敬礼。
「拝命いたします!!」
とだけ告げて暴れる心臓を押さえて早々に退室した。
ドアを閉めると、どこから現れたのか、待っていましたとばかりにそこには長身の男が立っていた。
短く刈り上げた頭に日に焼けた肌。雑誌のタレントのように迷彩服が似合っている。
「福田三尉ですね?ご案内役を仰せつかった新藤二曹と申します」
言葉遣いもだがあまりの美男子に驚きが隠せない。
よく自衛隊にはいったももだ。
「大丈夫ですか?」
はっと我に返りあわてて居住まいを正す。来てからというもの驚いてばかりだ。
二曹ということは部下にあたるのだろう。
「ああ。宜しく頼むよ」
「では、参りましょう」
新藤はすたすたと歩いていき、その後をオロオロついて行った。
向かった先は飛行場のある方向、軽装甲機動車(LAV)に乗せられいくつかの建物を抜け案内されたのは格納庫に併設する建物だった。
玄関には真新しい木札に“新大陸調査隊”と筆で書かれていた。