軽装甲機動車が完全に止まったところで二人一緒に降りる。
思えば軽装甲機動車に乗るのは初めてだった。
まだ建てられて日が浅いらしくコンクリートの無機質な白さが目立つ。
夕日に照らされオレンジ色に輝いている。
予想外の建物の大きさに見とれている間に、新藤は勝手知ったる様子でドアを開けてさっさと入ってしまう。
続いて入るが、二枚目にある重々しいドアを見て唖然とした。
「なにこれ?」
自然とそんな言葉が漏れたが新藤は気にせず。
「部外者は完全に入れませんから」
と笑顔で懐に手を入れ、小さいカードを取り出してペタリと壁の機械に当てた。
ランプが赤から緑になるのと機械下のふたを開けてテンキーでいくつかの数字を入力する。
すると、軽い電子音と共にドアのロックがはずれて自然とドアが開いた。
新藤はドアノブに手を掛け、閉まらないようにしながら
「荷物に入館パスがあると思うのでそこにかざしてください。パスワードは必要ないですので」
さきほど副司令からわたされた荷物をいったん床におろす。
すると一番上に茶封筒があった。
封を開けて中身を出すと、無地のカードが出てきたのでもう一度荷物を持ち、機械にかざす。
赤ランプが緑になるのを確認してから離して胸ポケットに入れた。
「あ、でもそれ一度きりの使い捨てなので後でシュレッダーかけて捨ててくださいね」
どうやら思っていた以上に重要な施設らしい。
これが転移前なら通信傍受かなんかの施設ではと疑うところだが、あいにく現在はそんな相手もいないのでここまで警戒を厳重にする必要が思い浮かばない。
(もしややばいトコなんじゃあ・・・・)
とたんに不安になってきた。
「さあ、行きましょうか」
新藤の弾んだ声で現実へと引き戻される。
文句のひとつも言えないまま、腕を引っ張られ引き入れられた。
新藤は二歩進むと、回れ右をして綺麗に敬礼をきめた。
「新大陸調査隊第5班へようこそ、新隊長」
「えっ・・・・・・・えええええええええええええ!!!!!!」
そんな。まさか嘘だろ?新隊員1年目のペーペーの自分が隊長?
「いやいやいやいやいや」
盛大に驚いてかぶりを振るが新藤は意にも介さず。
「事実です。ホラ」
決まり顔の笑顔でどこからか取り出した紙をペラリと見せる。
さながら最後通牒のごとく。
そこにはしっかりと自分の名前と命令文が書かれている。
「そんな・・・嘘だ。誰か嘘だと言ってくれぇ」
「いつまで駄々こねてもしょうがないぞ福田よ」
ん?なんか聞いたことのある声だと思い声の主を捜す。
そこには片手をあげて笑う偉丈夫。
新隊員訓練課程での鬼軍曹こと神代1曹がいた。
「げっっっっっ教官!?なぜここに!?」
「久しぶりだというのにずいぶんだな。おまえは人一倍手塩にかけたつもりなのに」
「あっ、いえその、その節はお世話になりました」
ブンと風を切る勢いで90度頭を下げる。
神代1曹は鷹揚にうなずくと
「まあこれからはお前さんの部下だ。そうかたくなるな」
「はっはい」
反射的に背筋を伸ばして返事をしてしまう。
ハハハと笑うと。
「宜しく頼む」
かしこまって敬礼した。
鬼教官がまさか部下とは・・・・・
「ああ・・・・胃に穴が開くかも」
一人でつぶやいた。