「悪魔を殺して平気なの?」「天使と堕天使も殺したい」 作:サイキライカ
「あー、くっそつまんねえですよ?」
コカビエルの糞がギリシャの冥界からパチくって来たケルベロスに必死こいて抵抗する悪魔を眺めながら俺は飽き飽きしていた。
「絶対離すんじゃねえぞ『黒い龍脈』!!」
「皆、匙を援護するわよ!」
「防御は私に任せて!!」
神器使いの坊主を中心に確実に仕留めようとしてるみたいだが、堅実すぎて欠伸がでちまう。
それに、
「どうしてなんだ?
僕の復讐が、どうして叶わないんだ……?」
さっきなら復讐だなんだと絡んできてる悪魔は本当に詰まらないですしね。
なんつうか、色んな意味で弱っちい。
頭も意思も目的もなんもかんも弱っちい過ぎて雇用人の爺が統合したエクスカリバーのパチもん適当に振り回してるだけで終わっちまいましたよ。
こういう時こそ女壊すか殺りがいのある相手がいないと、俺っち本気でやる気を無くしちいますぜ。
「憐れだな。
おめおめ生き延びたなら、そのまま踞っておれば生の目もあったろうに」
「バルパー・ガリレイ」
おや?
なんか面白そうな気配がしやすな?
「貴様が…貴様さえいなければ僕たちは…」
「ふん。
もう少し芽が出るかと思ったが…いや、試してみるか」
爺が懐から抜き出した聖剣の適合因子とかいう珠を悪魔に放りやがった。
「貴様と同じ施設に居た実験体から抜き取った聖剣を扱うための因子だ。
既に絞り滓だ。もう役にもたたんからくれてやろう」
いい趣味してるねぇ。
「みんな…」
悪魔が手を伸ばすと珠が光って人の形した人形が出てきやがった。
「皆、そこにいたんだね」
お涙頂戴な展開で悪魔が手を伸ばしたが、人形が遮るように喋った。
『どうして?』
「…え?」
『どうしてふくしゅうなんてかんがえたの?』
くひゃ!?
こいつは中々愉快なことになってきましたね?
『ぼくたちはきみがいきていてくれればそれでよかったのに』
『あくまになってもいきていてくれればよかったのに』
『どうして、ぼくたちをりようしたの?』
「違う!? 僕たちは復讐する権利が!?」
『うそつき』
「え?」
『にくいのはきみだけ』
『ぼくたちをりゆうにふくしゅうしたかっただけ』
『どうして?』
『どうして?』
『どうして?』
「違う、違う違う違う違う違う違う!?」
まあ、そうで御座いましょうね。
そもそも復讐なんてものは、自分の中から沸いてくるもんでごぜいます。
誰かのための復讐だって、そいつを突き詰めて見れば自分に帰結するもんだ。
なのにあの悪魔は酔っていた。
復讐をする自分に酔っぱらって、復讐を捧げる相手がどんな感情を持ってるかなんて考えてもしていなかった。
間違えた復讐は、見ていてそれなりに面白うごぜえます。
『どうして、あいつらみたいにぼくたちをりようしたの?』
「黙れぇぇぇえええええ!!」
悪魔が神器で作った剣で珠を砕きやがった。
「…………あ」
珠を核とした残留思念は消え、悪魔は砕けた珠を呆然と眺めてる。
待て待て。笑うのはもうちょい先だ。
「あ、ああ、アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!??」
悪魔の絶望の叫びに俺の腹筋が限界を迎え腹を抱えて大爆笑しちゃった。
いいでちゅよー。
悪魔の慟哭ほど酒を旨くする肴はそうはねえ。
今夜の神の子の血は実に旨いだろう。
「……あは」
さっきまで泣きわめいていた悪魔が今度は狂ったように笑い出す。
ああ、狂ったようにじゃなくて本当にイカれちゃいましたか。
どう料理してやろうかなと思っていたら、今度は珠を砕いた剣に異変。
砕けた珠を吸収して変化した。
あれは、悪魔の魔力と光力を剣に相乗りさせてんすかね?
「馬鹿な?
禁手化したとて聖と魔の相反する力を一つに纏めただと?
あり得ん……いや、まさか…?」
なあんかぶつぶつ言ってますがねえ?
後ろ、狙ってやすぜ?
案の定爺はコカビエルが投げた槍を喰らってあっさりくたばる。
「才を無駄に回したなバルパー」
んで、コカビエルが得意顔でほざく。
なんでも聖書の神は随分前にくたばってたそうだ。
え? 今更それ?
フリーランスであちこち雇われてたが、それ、何処の神話でも公然の秘密でしたぞ?
ま、ここに居る悪魔達は知らなかったみたいですし、無意味ではなかったみたいですが。
「聖剣聖剣聖剣聖剣聖剣聖剣聖剣ヒヒヒヒヒ!!」
いい感じにぶっ壊れた悪魔が手のヘンテコ剣を滅茶苦茶振り回して来たんで軽く腕を切り落として胸をぶった切ってやったが、禁手化した剣との相性が悪かったらしく一合受けたエクスカリバー(笑)を歯零れさせてくれやがった。
「おっは!? 結構やるじゃん?
ま、死んじゃったけどね」
ピクリとも動かなくなった悪魔から視線を外し、他の悪魔を見ればケルベロスに何体か食い殺されながらもケルベロスの首を二本落としていた。
「ふん、期待はしていなかったがこの程度か……」
落胆してるコカビエルですけどね、ケルベロス一匹でも過剰戦力ってもんですよ?
そういや戦争再開の狼煙にするって言ってた術式どうなってんだ?
「発動まで後十分程だ。
今更怖じ気づいたか?」
「そんなこと、あるかもしれないことも無いこともございませぇん。
で、も、今更ながらこれやったら日本神話まで大乱闘スマッシュ聖書大戦に乱入するんじゃないですかい?」
「ふん。
こんな片隅で媚を売りながらこそこそと生き延びただけの田舎神話が首を突っ込んできて、俺達堕天使をどうにか出来るとでも?
その時はその思い上がりを奴等の命で購わせてやろう」
「さいで」
そもそも眼中に無かったと。
日本神話はギリシャ神話やインド神話さえ直接戦闘になるようなことは絶対に避けてるってぐらいヤバイ陣営なんですけどねぇ?
ま、その自信が何時まで続くか見物だな。
それよかだ。
「しゃあっ!!」
聖剣を手放し勘に任せて匕首を振るう。
振るった匕首は一切の殺気さえ漏らさず突き出された棍を払い、そしてそれが期待通りの相手だったことに俺は上機嫌に笑う。
「おやおやおーやぁ?
愛しのマイライバルたんってば、こんな夜更けにラヴコールしちゃうんでちゅかぁ?」
マジなら吐き気がしそうな冗談を吐いてみれば、アサシンは棍を3節にバラして陰惨に笑う。
「一人でマス掻いてるのに我慢しきれなくてついな。
テメエの尻にぶちこんで、来世までぶっ飛ばしたくてたまんねえんだ。
ちょっと付き合えよ」
「いゃぁん。
もう素敵すぎて俺ちゃんのマイサンフル勃起しちゃったじゃないですか。
これはもうテメエのタマで責任取って貰うしかないですよ?」
「くくっ、お互いに殺り足りねえみたいだし、様子見は無しで決めにいくぜ」
「けきゃ☆
お宅がそんなに積極的だなんて、ミーが女だったら×××ぐしょ濡れにして逆レやってますよ?」
くっそふざけたやり取りの合間にもお互い殺意がぶつかり合って背筋をゾクゾクさせやがる。
もう我慢できず飛び出せば、アサシンも同じらしく即座に獲物が噛み合った。
正直、木場は悪魔になったのは仕方ないけど、復讐の理由に仲間を利用した点だけは認められない。
なので、木場くんには目を覚まして()貰いました。
それに、半死半生だけど禁手化には至れたんだから満足だよね?
次回はいよいよ裁きの時間です。
コカビエルと、自分の