「悪魔を殺して平気なの?」「天使と堕天使も殺したい」   作:サイキライカ

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……ごめんなさい。

これが私の限界です。


彼らの恐ろしさを私達は初めて理解した。

「何者…だ……?」

 

 兜と面で顔を隠した鎧武者の一刀に切り伏せられたコカビエルは、それでもなお立ち上がった。

 

 バシャッ!

 

 その姿を確かめようとしたコカビエルに向けて鎧武者は腰に提げた瓢箪の中身をぶちまける。

 

「酒……だと…?」

 

 顔を濡らし口の中へと入ってきた液体から発する醸されたアルコールの香りにコカビエルは正体を口にした。

 

「玩弄するつもりか?

 それもよかろう。

 奴はそれだけの真似をしでかしたのだからな」

 

 包帯で全身を隠した女神の言葉にコカビエルは激情で身を焼く。

 

「天使共に正面から挑むこともしなかった臆病者風情が!!」

 

 怒りから上空から槍を射掛ける事を拒否し、プライドが吠えるまま光の槍を奮い甲冑武者へと斬り掛かるコカビエル。

 武者は手にした和刀を以てそれをあっさりいなすと、刀を翻し更にコカビエルを斬りつける。

 

「ふざけるな。

 ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな!!」

 

 戦争がしたかった。

 自分達は落ちこぼれではないと証明したかった。

 主の呪縛から解き放たれた真に世にあるべき存在だと証明したかった。

 そのための戦争がしたかった。

 なのに、この様はなんだ?

 包帯まみれの女神に相手にされず、その上鎧武者には切り伏せられ酒を掛けられるという恥辱を浴びせられた。

 一体、どこで間違えたというのだ!?

 幾度も斬られながらコカビエルは怒りのままに槍を鎧武者へと振るう。

 

「……なんだよ、これ?」

 

 異常な光景に匙が痛みを忘れ声を震わせる。

 夏も本格的に近付いているはずなのに学園内は異様に冷え、中心では圧倒的な力をひけらかしていたコカビエルが正体も解らぬ鎧武者にいいように翻弄されている。

 まるで現実感の沸かない光景に誰しもがただ行く末を眺める中、ついにコカビエルが一矢報いた。

 

「ウオオオオオオ!!」

 

 獣のような咆哮を上げ、捨て身で槍を振り抜く。

 避けきれなかった槍の穂先が面を貫き兜を飛ばす。

 

「……なん………だと…………?」

 

 兜の下、面の奥には『何も存在していなかった』。

 

「貴様は一体…」

 

 コカビエルの問いが終わる前に、斬!!と音が響きコカビエルの腕が落ちる。

 

「ぐおぉぉおお!?」

 

 本能的に死を察知し翼を使い上空へと逃げるコカビエル。

 対して鎧武者は落ちた兜を拾いあげ、再び被り面を着け直すと、まるで秘密を知ったことを激怒するように全身から陰の氣で形作られた黒い霧を発する。

 

「小癪な!!」

 

 最早プライドに拘っている場合ではないと翼をも砲門に見立て大量の光力の槍をバケツを引っくり返したような勢いで投射した。

 対し黒い霧を纏う鎧武者から霧が人形に集い、新たに七体の鎧武者を生み出した。

 まるで昼と夜が逆転したような光量が学園内を照らす中、七体の鎧武者は槍、薙刀、長巻、鉞、槌、大刀、刀をそれぞれ構え正面から迎撃する。

 目を眩ませる閃光の中七体の鎧武者はそれぞれの獲物を振るいその全てを打ち払ってしまう。

 

「何なんだ……」

 

 あれだけの光力の槍を以てしても碌な結果すら残せなかったことにコカビエルは自然と後退する。

 

「何なんだ貴様達は!?」

 

 先の砲撃で光力の半分以上を消費したコカビエルは残る力を集約させ、これ迄やったこともないほどに圧縮した光力の剣を生み出した。

 

「俺達堕天使は、何より優れた種族なのだ!!」

 

 翼をはためかせ大気を強く打って鎧武者へと突貫。

 迫るコカビエルに対し鎧武者は他の鎧武者を霧へと戻すと鎧の中へと吸い込み上段に刀を構え迎え撃つ。

 

「貰ったぁぁぁああああ!!」

 

 刀が僅かに揺れた瞬間、更なる加速を掛けコカビエルが砲弾のごとく鎧武者へとその身を擲った。

 しかし、結果はあまりに残酷であった。

 

「……馬鹿な」

 

 我が身を睹したまさに乾坤一擲のその攻撃は、光の剣が鎧を貫くことなく砕け散るという結果のみを残して終わる。

 そして現実を認める暇など与えるかというように鎧武者が刀を振り下ろす。

 ざくりと音が響き、断たれたコカビエルの首がずり落ちてその身が崩れ落ちる。

 終わった。

 誰もがそう思うなか、信じられないことが起きる。

 

「どういうことだ!?」

 

 なんと、首を切られたコカビエルが頭だけの状態で叫びを上げたのだ。

 

「知れたことよ」

 

 自身の身に起きたことが理解できず喚くコカビエルに対し、女神は初めて言葉を向ける。

 

「お主が口にしたのは根の国の酒。

 ヨモツヘグイを為したお主は、黒い鳩から根の国の民と成り果てていたのだ」

「…………」 

 

 女神の言葉に目を見開くコカビエル。

 

「どんな気分じゃ?

 抗う手も足もなく、鞠のように蹴り転がされるしかない我が身の感想は?」

「…あ、ああ……」

 

 俎の上の鯉にも劣る状態へと突き落とされたコカビエルは絶望の呻き声を上げる。

 

「それが、貴様が虐げ続けた命たちの立場ぞ。

 お主は此れから、その首一つだけで根の国が終わるまで過ごしてもらう」

 

 女神のあまりに残酷な宣告にコカビエルは血の涙を流し赦しを乞う。

 

「殺してくれ!!

 頼む、なんでもする!!

 もう二度と日本の神には逆らわない!!

 だからこんな、こんな姿で生かされるのだけは嫌だ!!」

「精々泣き喚くがよい。

 根の国は今の時代にあって少し静かすぎたゆえ、多少の賑やかしの良い音響になろうからな」

「うぉぉぉおおおおぉおおお!!」

 

 目を覆いたくなるような無惨な姿を晒し泣き喚くコカビエルを改めて兜を乗せ直した鎧武者が掴み上げる。

 

「御主も難儀じゃの。

 首を動かせば要が崩れるからと、首無き身体のみで参じなければならぬとは」

 

 女神の言葉に鎧武者は空の兜を横に振って否定する。

 

「ふむ?

 それを飲めば溜飲が下がるならば安いものと?

 …奴の生んだ命らしいのう」

 

 それは呆れなのか関心なのか、当人達はそれで通じたらしく鎧武者の姿はコカビエルの首を持ってゆっくりと薄れ始める。

 

「もう逝くのか。

 満足したら此方に渡してたもうれ」

 

 嫌だ嫌だと泣き叫び、殺してくれと乞い願うコカビエルの首を携え鎧武者は夜の帳が上がり始めた駒王学園から姿を消した。




畏敬を忘れず彼の御方の逸話を参考に自分に出来る限りの限界に挑みましたが……いえ、言い訳は止めましょう。

公を異形としてでなく威霊として書こうとした私の限界が今回の内容です。

期待に僅かでも添えられていたらもう本望です。

お叱りがあれば謹んで伏させて頂きます。
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