「悪魔を殺して平気なの?」「天使と堕天使も殺したい」   作:サイキライカ

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先ずはメインディッシュの魚料理です。

少しだけコメント返信より投稿を優先したいと思います。


我達は本気であるぞ

「首……ですか?」

 

 余りに血生臭い土産に若干もといかなり引きながら真偽を疑うセラフォルーの言葉に、天照は然様と薄く笑みを映し述べる。

 

「先程主等は我達に不穏の影在りと申したであろう?

 故に我等と奸賊共と縁無き証拠として、なにより日ノ本の国に要らん災禍をもたらそうと企んだ報いを与えるついでに下手人の首を土産としたのよ」

 

 そう麻袋の紐を引いて中の品を明らかにする。

 

「ぐっ!?」

「これは!!」 

 

 晒された首の凄惨さに呻くミカエルとアザゼル。

 

「うぷっ…」

 

 ゼノヴィアが耐えきれずトイレへと駆け込み朱乃とソーナが絶句して場が騒然となる中、ヴァーリはただ無言で見にまわり、下手人と挙げられた首がどちらも知るものであったサーゼクスとセラフォルーは背筋を凍らせながらその名を口にした。

 

「カテレア?」

「ディオドラ…」

 

 かつて『レヴァイアタン』の名を争った旧知の存在との壮絶な再会にセラフォルーは現実を受け入れきれず、サーゼクスもアスタロト家の若き芽の悲惨な末路に言葉を無くす。

 

「それと、これは二人が所持していたテロリストの証左だ」

 

 そう言い須佐之男が黒い蛇のように蠢く何かが入った小瓶を二つテーブルに置く。

 

「そいつは……まさかオーフィスの『蛇』か!!」

 

 『無限』の龍神であり、テロリストの首魁として奉り上げられている存在の末端だと気付いたアザゼルが悲鳴に近い叫びを上げる。

 

「こちらも進呈しましょう。

 喰らって利用するも禍の団の対策に持ち帰るも御随意に」

 

 神にさえ効果を発揮する神器級の品をあっさり譲渡する天照に、アザゼルはこれが逆に罠ではないかとさえ思えてきた。

 

「いいのかよ?

 こいつはお前達にも価値は少なくないはずだ」

「戯け」

 

 アザゼルの問いを須佐之男が吐き捨てる。

 

俺達(八百万)は自然の体現、世界の触覚そのものだ。

 態々理を歪めるものなんか欲しがる訳ねえだろ」

 

 馬鹿にするなと苛つきを見せる須佐之男に天照も同意する。

 

「然り。

 我達は国の行方を見守り、その末路を見届けるが存在()

 人に抗えぬ理不尽故に此度は腰を上げたが、元来我達は動かぬことが何よりの吉報よ」

 

 自らの在り様を口にする天照に、突如朱乃が我慢できないとヒステリックに叫ぶ。

 

「ふざけないで!!

 何が理よ!?

 母を見殺しにしておいて何が国の守護者よ!!」

 

 神道に連なる者であった母を神道が殺したと糾弾する朱乃だが、天照は冷徹に言葉を解す。

 

「当然であろう。

 貴様の母は己の過ちを糺さず野垂れ死んだ愚か者なのだから」

「な……ん……」

 

 あまりに痛烈な言葉に怒りさえ消し飛ぶ朱乃に、天照は慈悲を掛けることなく切り捨てる。

 

「お主の母は自らの立場を弁えておきながら、その死地から遠ざかることもなく身を守る備えもしなかった。

 そのような愚か者に我等は慈悲をくれてやることはない」

 

 赤から白へと顔色を変える朱乃の思い違いを正すつもりはなく、天照はただ事実を語る。

 

「お主がどう思おうと私の意見は変わらぬ。

 堕天使を愛したこともその胎に堕天使の仔を宿したことも私は咎めん。

 が、そうまでしたなら何故日ノ本の国を出て行かなんだ?

 国に仕えるより堕天使を選んだのならば、国を出ねば命が危ういと分かっていた筈。

 野分の海に泳ぎに出るような愚か者に、妾がどうして慈悲を与えねばならない?」

 

 人は弱いからこそ有事に備え、構え、万難を廃してそれで漸く生き物としての起点に並ぶのだ。

 

「多くに備え、それでもどうしようもないなら私も手を差し伸べよう。

 死期の迫る老いた母のために、在りもしない冬の筍を真剣に探す、そんな愚直な愚か者のために筍の一つも生やしてやる程度のもので良いならな」

 

 真剣に生き、理不尽に耐えようという者への細やかな褒美ぐらいは与える慈悲はあると嘯く天照に、朱乃は憎しみを込めて睨む。

 

「私は貴女達を絶対に認めない!!」

「それでよい」

「え……」

「信じるも信じないも自由よ。

 我達は芦原中国を統一してより今日まで、一度として民に信仰を強要はしておらん。

 己の意思で崇め奉るというからこそ、我達は応えるのだから」

 

 なんと言おうと不快一つ買えぬ天照にぎりぎりと歯を軋ませ黙り込む朱乃。

 

「して、黒鳩よ。

 あやつの恨みの根はお主にも咎が有ることは分かっておろうな?」

「……」

「努々忘れるな。

 主が遊び呆けていたからこそ斯様な事が起きるのだから」

 

 黙り込むアザゼルにそう釘を刺すとミカエルに視線を向ける。

 

「大天使ミカエル。

 此度の件、並びにこれ迄の汝等の態度から凡そ協定を遵守する意思は無いと此方は判断した」

「それは、」

 

 この先の発言を予想し制止しようと口を開きかけるミカエルを待たず、天照は日本神話の決定を突き付けた。

 

「よって、我達が協定の証として預けた『天叢雲剣』並びに『天羽々斬』の即時返還を要求する。

 これに応じない場合、天界は日本神話に対して敵対意思を持つものと判断し宣戦布告を申し付ける」

 

 剣を返さぬなら戦争だと言い切る天照に、室内は完全に凍りついた。

 

 




次回はメインディッシュの肉にして、自分がこのアンチを書こうとした理由でもある話です。

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