「悪魔を殺して平気なの?」「天使と堕天使も殺したい」 作:サイキライカ
というか、こうじゃなきゃ一誠の強さの秘密が納得出来ない。
そんなサーゼクス虐め
度重なる戦闘の末に力尽きた母グレイフィアを守るため、ミリキャス・グレモリーは初めて『滅びの魔力』を『敵』に向け、そして殺した。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
加減もわからず全力で行使した魔力の負荷に荒い息を吐き、胸を掴んでバクバクと煩く高鳴る心臓に落ち着けと祈る。
先程の妖怪は今までとは毛色が違う気がしたが、しかしそれを確かめる余裕は無かった。
そして、その余裕はこれからも訪れない。
「健気やわぁ。
倒れたおっかはんを幼いながらに必死こいて守ろなんて、うち、そういうん弱いんよ」
ミリキャスをそう評す声にそちらを向くと、そこに居たのは長い黒髪の絶世とも言える美女だった。
「お前も日本神話の手先か!!」
美しいよりも恐ろしいと思わせる美貌にミリキャスは震える身体を圧して再び『滅びの魔力』を使おうとするも、女はいつの間にか背後へと回り込み少年を優しく撫でてやるように手を這わしていた。
「実にええ子や。
あんさんみたいな愛い子は、腹に入れて大事に大事にしてしもうたいわ」
訛りの強い京弁でそう嘯く内に、その身体は徐々に金の毛並みの塊へと変わり、そうしてやがて女の姿は金の身体に白い顔の大きな狐に変化した。
あまりに現実感のない光景に言葉を無くすミリキャスを九つある尻尾の内の一つで捉えたまま優しげな声で嘯いた。
「そのまま大人しゅうしてくんなまし。
そやったら、おっかはんも一緒に命はとりまへんから」
「母様!!」
母という言葉に再起動したミリキャスはグレイフィアも自分と同じく狐の尻尾に囚われているのを見てしまう。
「母様を放せ!!」
気炎を吐き『滅びの魔力』を使おうとするも、狐はあかんでぇと諭すように言う。
「うちの尻尾は敏感やさかいに、そないな危ないもん使われたら、びっくらこいておっかはんの身体をぷちぃと潰してまうかもしれへんで?」
「っ!?」
賢い故にそれが暗に母の命が惜しいなら大人しくしろという脅迫であるとミリキャスは察し背筋を凍らせる。
「あらあら。
そないに怯えんでもあんさんらは大事な人質よって、暴れへんなら腕の一本もなぁんて野蛮な真似はせえへんよ」
証拠とでもいうように尻尾の締め付けは殆どなく、グレイフィアの様子からしても嘘ではないのだろう。
「人質…ですか」
誰のか等と問う必要もない言葉に狐はそうやと答えた。
「正確に言うんなら、人質ゆうのもちょぉっと違うんやけどね」
「……どういうことですか?」
「それは後のお楽しみや」
のらりくらりと嘯く狐にミリキャスは最初からの疑問をぶつけた。
「どうして、戦争なんて始めたんですか?」
ミリキャスには解らない。
だからこそ問いを投げ掛けた。
その問いに対し狐はまるで笑ったように牙を見せる。
「せやねぇ。
うちは兎も角、日本神話はずぅっと悪魔達に怒っとったさかい、間が悪かったというしかありまへんね」
「怒ってた?」
「せやで。
日本神話はああ見えて怠けもんどす。
世界がどうとなっても構わへん。
理を壊さなければそれでええと、なんもせえへんぐらい怠けもんや」
予想だにしない言葉に耳を疑うミリキャスに狐はクスクスと笑いながら嘯く。
「うちなぁ、昔一人の男に惚れてもうて、つい魂を持ってこうとしたんや。
でも、日本神話はなんもせえへんかった。
その男が自分達の直系の末裔やって言うのに、民が本気で怒ってうちを絶対滅ぼしたるぅって仏連中をあちこち引っ張り出してまで息巻いとっても、日本神話はなんもせえへん。
そないな連中が怠けもんや言うたら可笑しいかえ?」
「……いいえ」
「せやろ。
だけど、あんさんらはそないな怠けもんを本気で怒らせてもうた。
そやからこうして根切りが見えるぐらい死んではるんや」
「……」
判ってはいた。
だが、冥界の悪魔が其ほどまでに殺されたことを改めて突き付けられミリキャスは悲しみを叫ぶ。
「どうして、僕達が何をしたと言うんだ!!」
「『悪魔の駒』や」
「え……?」
思いもしなかった言葉にミリキャスは言葉を失う。
「あれがただ悪魔に変えるぅ言うなら、日本神話の神さんもあないにえらく怒りはせえへんかったやろうね」
そう愉快そうに笑うと狐はほないこかと言い、二人を捕らえたまま地を蹴り宙へと舞った。
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戦端が切られてから72時間が過ぎた。
天界陥落までを考えれば恐ろしいほどに粘ったと言えるだろうが、しかし実際はただ虐殺だけで終わらせた天界とは違い、冥界はアグレアスを始め多くの地を都市まで丁寧に破壊しながらの侵攻である。
それを加味すれば、果たしてどちらが時間が掛かったのか……
「見えているな冥界の王」
邪魔な両手足を切り落とされ、死なない程度に滅多切りに切り刻まれ髪を掴まれた状態で眼下の光景を眺めさせられているサーゼクスにそう問う須佐之男。
サーゼクスは答えず両眼から赤い滴を溢し続けている。
「これがお前が選んだ末だ」
お前が今の状況を作り出した原因だと言い切る。
「今現在、冥界の生き残りはあの街でほぼ全てだ。
酷い話だな。
お前が人間を取り込んでまで増やした悪魔がたったの二千まで目減りしたぞ。
状況は絶望的に見えるだろうが、人間が言うには総数が二千を下回らなければ種というのは存続可能だそうだ。
良かったな、今ならまだ挽回できるらしいぞ?
尤も、一万年の寿命がある悪魔にそれが当てはまるかは知らないがな」
特に益があるかも解らないことをつらつらと述べる須佐之男に漸くサーゼクスは口を開いた。
「どうして、私達はただ、未来が欲しかった、だけなのに……」
そんな事を言うサーゼクスに須佐之男は冷淡に告げる。
「ふん。『悪魔ではない』お前らしい願いだ」
そう言った須佐之男にサーゼクスは瞳孔を開く。
「サーゼクス。
お前はな、『癌』そのものなんだよ。
なんの変哲もない細胞が突然変異を起こした
「ち、がう……」
力を振り絞り睨むも微動だにすることなく須佐之男は冷淡に告げる。
「違わない。
何故なら、お前は『悪魔の駒』で以て冥界から悪魔を駆逐しようとしたからだ」
「…………は?」
訳が解らないと言葉を無くすサーゼクスに須佐之男は嘯く。
「あれは生物を『悪魔』に変える物じゃない。
アレは生物を
「そんなわけがあるか!!」
有らん限り喉を震わせサーゼクスが叫ぶ。
「だったら何故私達は負けている!?」
全ての転生悪魔と眷属悪魔が自分に並ぶ超越者であるなら少なくとも今のように追い込まれている筈がないと叫ぶサーゼクスだが、それすら答えの範疇だと須佐之男は言う。
「当然だ。
奴等の超越者としての異能は『死からの蘇生』だったからだ」
「……死からの……蘇生?」
「そうだ。
それもただ一度だけ、死んでから『悪魔の駒』で『超越者』へとなった者のみが発現し、そしてその後はただの悪魔と変わらなくなるあまりに矮小な超越者だからだ」
須佐之男の言葉をあり得ないと否定するサーゼクスに立て続けに問いが放たれる。
「ならば何故『悪魔の駒』が悪魔自身に適用される?」
「違う」
「適用するのは所持者の力量以下と嘯きながら、例外的な『変異の駒』が何故存在する?」
「違う」
「どうして愛すると嘯く女を眷属にした?」
「ち……がう…」
「何よりもだ。
『悪魔の駒』を作ったのは誰だ?」
「…………」
製作者はアジュカ・ベルゼブブ。
即ちサーゼクスと同じ『超越者』。
「奴は自分が悪魔から産まれた別の種だと気付いていた。
だが自然に増えるには悪魔という種は子孫が産まれづらく、野に広がるにはそれこそ万を数えても足りないと理解していた。
だから『悪魔の駒』を生み出した。
お前等『超越者』が、悪魔に代わって地に満ちるために」
否定したい。
だが、幾ら経っても喉は否定の言葉を発してくれない。
それどころか、須佐之男の言葉は自分でも信じられないほどにストンと納まるものだった。
「僕は……悪魔じゃなかったのか……?」
以前父が自分を指して「同じ悪魔とは思えない」と冗談混じりに言ったことがあった。
成る程、父は正しく気付いていたのだ。
サーゼクス・グレモリーは悪魔から産まれた
「そんなことは俺に聞いてどうする」
『超越者』と悪魔がどう違うのかと漏らす言葉をどうでもいいと切り捨て、須佐之男はサーゼクスの顔を眼前に持ち上げる。
「貴様等二人が犯した罪を今此処で裁く」
然して須佐之男は大きな狐に捕まったグレイフィアとミリキャス、そして都市リリスがサーゼクスから同時に見えるようにして宣った。
「選べ。
選ばなかった方を貴様と共に殺し尽くす」
狐さんはみんな大好き邪悪なアへ顔のモデルさんです。
何でいるのか?
殺生石って本当に本体なんですかね?
因みに狐の本性は一途な乙女だけど愉悦部です。
次回はエピローグまで行けるかな?