「悪魔を殺して平気なの?」「天使と堕天使も殺したい」   作:サイキライカ

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ずっとダークだったから今回は加糖しますた。


やることないって困るよな

 いやぁ、聖書陣営は強敵でしたねー。

 そんな笑える要素が微塵もねえ冗談なんかを頭に過らせつつ引き金を絞る。

 イヤホン越しにもしっかりつんざく破裂音が耳を打ち、手にしたものが玩具じゃないと俺に教える。

 そうして五発を的に叩き込んでからイヤホンを外し、後ろの店員に声を掛けた。

 

「南部式は知ってたが、ニューナンブはこうも勝手が違うもんなんだな」

「お客さん通だねえ」

 

 無精髭の兄ちゃん風な店員は、椅子を逆さにして背に寄り掛かりながら笑う。

 

「しっかしそいつでいいのか?

 リボルバーだったらコルトからマテバまで揃ってるぜ?」

「欲しいのは威力じゃ無いんだよ」

 

 ちなみにここは都心のとある銃模型店の地下の更に地下にある秘密のお部屋。

 日本を裏から支えるまっとうな(・・・・・)組織が管理してる銃のお店である。

 なのでニューナンブも横流し品ではないちゃんとした新品である。

 シリアルコードは存在しないがな。

 

「軽量低反発。それでいて精度もそれなり。

 日本人による日本人のための豆鉄砲。

 サイドアームには十分さ」

 

 使う弾が本命だからぶっちゃけ銃身は趣味でいいんだし。

 

「弾はどうすんの?」

「未使用の空の雷管20個くれ。

 火薬と弾頭はこっちで調整する」

「そういうお客さんばっかりだよね」

 

 最近じゃあ本命の得物のお伴に腰に銃を提げる退魔師なんて割りとよく居るからな。

 エクソシストだと天使の光力を弾頭にした銃を使ってるが、日本だと自分で調整した退魔弾を個人で作るのが主流だ。 

 特に意味を持たない雑談をしつつ、銃は貸し与えられた部屋の一つに郵送するよう手続きを済ませ、俺はカードで支払いを済ませ地上に戻る。

 

「……このまま帰ったらうるせえか」

 

 真っ直ぐ帰ろうかと思い、一応踏み留まる。

 日本神話との傭兵契約切ったはずなのに、なんでか契約が別のものとして続いていたため、致し方なく白音と同棲紛いの生活を続けて数ヵ月が過ぎた。

 今のところ目的もないから構わないんだが、それにしたってなあなあで過ごし過ぎている気がする。

 とは言うものの、三千年分の人生全てを殆ど投資していた聖書陣営絶滅計画はほぼ意味が無くなった訳で、そうなってしまえばやりたいことなんてそもそも無いのだ。

 と言うより、やりたいことの殆どはこれ迄で大体やりきってしまったと言う方が正しいか。

 良いもんも悪いもんも経験したし、女にせがまれて子供をこさえたこともあれば逆に自分が赤ん坊孕んで産んだ記憶だってある。

 詰まるところ、俺には『未知』が無いのだ。

 痛いも気持ちいいも、愛されることも恨まれることも、理不尽を振りかける側も掛けられる側も経験した。

 無いのは精々……グロテスクなアートの素材にされることぐらいか?

 それだって近しい経験はあるんだから想像ぐらいは容易についてしまう。

 そんなことをダラダラ考えていると目的地は目の前だった。

 視界に入るのは個人経営のカフェ。

 その店の中で白音とギャスパー・ヴラディが茶をしばいている。

 と言っても白音の前にあるのはクリームの残滓がベットリついた金魚鉢としか見えない器だったりするが。

 ギャスパーの標準サイズのプリン・ア・ラ・モードと比較すると笑いが出そうになるレベルだ。

 

「ま、しゃあなし」

 

 ここまで来て回れ右をやっても意味はないから、俺はドアを潜って中に入る。

 

「舞沢さん!」

 

 早速俺に気づいた白音が露骨に喜悦を見せて俺を招く。

 

「ブレンドをホットで」

 

 カウンターを通り際に注文をしつつ白音の対面に座る。

 

「買い物は終わったんですか?」

「まあな」

 

 肉体的にはほぼ全快と言えるも、やはり休みっぱなしで体は鈍っていたため、このままフリードと決着を付けるには格闘技一本では厳しいと感じ、手頃な得物を物色に出たのだ。

 で、そういう訳で勉強を休みにすると言ったら白音は目敏くデートしたいと訴えたため、テキストで八割正解したらいいと条件を出したところ、残念なことに白音はボーダーを下回った。

 が、それならと引きこもりのヴラディを外に引っ張り出したいと、半泣きで拒絶するヴラディを無理矢理引きずり出し、勝手についてくるという強硬に出やがった。

 ヴラディは女装趣味はないが女物を着たがる愉快な性癖の持ち主で、その上それが下手な女より似合う残念な美形だ。

 お蔭様で端からは美少女二人を侍らせておきながらないがしろにする屑のような構図が完成し、どうでもいいのに不愉快な気分にさせられた。

 まあ、仕事の一環と思えば気にならなくなる程度だ。

 

「この後はどうするんですか?」

「本屋でも適当に覗いて新しい参考書でも揃えるぐらいだな」

 

 そう言うと白音は頬を膨らませる。

 猫の妖のくせに栗鼠みたいだぞ。

 

「たまには他のこととかしたいです」

「例えば?」

「遊園地でデート」

 

 遊園地ねえ……

 

「じゃあ、三日後に英語のテキストから問題出すからそいつで六割正解したら連れてってやるよ」

「本当ですね?」

「『約束』してやるよ」

 

 まあ、テキストは東大模試を用意するがな。

 

「あの、」

 

 と、珍しい事にヴラディが手を挙げて意見を口にした。

 

「来る途中で可愛い服があったから見に行きたいです」

 

 途中と言えば……

 

「あのゴシック専門のか?」

「はい」

 

 まあ、別にいいんだが。

 

「金は有るんだろうな?」

 

 四桁万円とか言われない限り払えなくもないが、だからと言って払ってやる必要も感じない。

 

「は、はい。

 悪魔の仕事でお金は有りますから……」

 

 言葉尻を弱めつつそう答えたヴラディに俺はあっそと言い来た珈琲を口にする。

 すると、白音が不機嫌そうに漏らした。

 

「……ギャー君には優しいんですね」

 

 優しい……ね。

 

「お前にはベッドで優しくしてんだろ」

 

 そう言うと周りが一斉に吹き出し白音が真っ赤になってテーブルの下に隠れた。

 

「外で言わないで下さいよ……」

 

 泣きそうな声でそう訴えてるが、そんなもん知るか。

 

「言われたくなきゃ一々膨れんな」

 

 にべもなく切り捨てると、白音は紅白揃った御目出度い顔で文句を垂れた。

 

「やっぱり私には意地悪です」

 

 




主人公はきびしさと無関心で出来てるので傍目よりも白音はリードしてます。

でもトップは相変わらずフリードが独走……

白音、頑張れ

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