「悪魔を殺して平気なの?」「天使と堕天使も殺したい」   作:サイキライカ

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とりあえずこんな感じにオチ着いた。


決着付けようか。

「退け、曹操」

 

 ニューナンブの弾を込め直し、構える白音と並んだ所でヘラクレスが四人を庇う位置に立ちそう告げた。

 あのさぁ…

 

「ハイそうですかと見逃してやるわきゃねえだろ?」

 

 切り札の弾こそまだ温存しちゃいるが、通常弾だって既に夢の国の入場料に近いだけ使ってんだぞ。

 その分はきっちりテメエらのタマ(・・)で支払っていけよ。

 

「ヘラクレス!!」

「行け!!」

 

 こちらを釘付けにするために特攻を仕掛ける筋肉達磨。

 愚直な突進に阿呆と詰り再び黙らせるため棍を構える。

 テメエ一人で済ませてやる…

 

「っ、跳べ白音!!」

 

 途端、凄まじい悪寒が走り反射的にそう言いながら距離を取るため軽身功を使い地を蹴る。

 直後、放った拳が地面に当りヘラクレスを中心に爆発が生じた。

 

「神器か!」

 

 おそらく接触を起点とする誘発系と経験から逆算し、近付かないよう白音に促す。

 

「俺の神器『巨人の悪戯』は触れた先より爆発を発する!!

 触れれば最後と思え!!」

「爆発の何処に巨人要素があるんだ!

 つうかジャイアントはギリシャじゃなくて北欧だろうが!!」

 

 どこまで頓珍漢なんだテメエ等!?

 しかし真面目な話、かなり厄介なことになりやがった。

 白音は魔力操作はお粗末で実戦は格闘オンリーだし、俺にしたって中距離以上は切り札を除き今使える手持ちの魔術も鉛弾も火力は補助程度にしかない。

 

「ヘラクレス、済まない!!」

 

 ヘラクレスをあっさり見捨てて曹操共が霧に呑まれて消える。

 

「ちっ!!」

 

 槍か女かどっちかだけでも殺っておきたかったが、こうなりゃこいつだけでも確実に仕留める。

 

「追いますか?」

「次にとっとけ。

 それよか目の前のヘラクレス(こいつ)が先決だ」

 

 完全に冷えた頭でそう指針を定める。

 つうかだ。槍を見たせいとはいえジャネットを騙る女郎に頭を沸騰させるなんて今更過ぎるだろうが。

 これ迄だってジャンヌ・ダルクの生まれ変わりだって自称する輩と会ったことは有るんだし、一々前世の因縁を持ち出してもお互い損するだけだ。

 とはいえだ。

 正直、元トロイア兵としちゃあヘラクレス(アカイア)の血統を仕留めるシチュエーションは悪くない。

 どうせどっちかが死ぬ以下の損な結果はねえんだし、こんな時ぐらいは因縁も上乗せして構わねえだろう。

 

「白音、わかってると思うが次にヘマしたら今度こそ見捨てるからな」

「貴方がそういう人なのはよく知ってます」

 

 飛び道具にするつもりらしいベンチを片手に白音は唇を尖らせ、すぐに戦場に意識を戻す。

 

「相手に触れずに倒しきれる本命はありますか?」

「あるにはあるが、持ってきてるのは二発だけだ」

「解りました。

 援護しますのでお願いします」

 

 そう言うと白音はベンチを片手にヘラクレスに飛びかかる。

 

「はあああ!!」

 

 悪魔の駒により強化された膂力に氣のブーストを加えた投擲に、ベンチが音速を越えてヘラクレスへと飛ぶ。

 しかしベンチはヘラクレスに触れた瞬間爆発が生じ、着弾の衝撃が全て打ち消される。

 

「その程度効かねえぞ!!」

 

 その隙間を縫ってルーンの炎と氷と鉛弾を叩き込むが、氷と鉛弾は爆発で弾かれ炎は軽い火傷を負わせた程度で吹き払われる。

 

「温い温い!!

 さっきまでの勢いはどうした?」

 

 ……調子こきやがってこの野郎。

 捨てるのが勿体無いから確認も兼ねて空にした薬莢を排し、見分けるために紅く塗った切り札の弾丸を籠めてから銃をスイングしてシリンダーを収め弾交換を終える。

 その間にも引き抜いた電灯やら花壇のレンガやらを投げつけ、近付かせまいと牽制を謀る白音へと、ヘラクレスは投擲物を神器で無効化しながら着実に追い詰めようと迫る。

 

「どうした?

 弱腰に物を投げてばかりで臆したか?」

「っ、この!!」

 

 さっきまでと打って変わり攻めあぐねる状況に苛立った白音が、挑発に乗りレンガを手に維持していた距離を詰める。

 ちっ、白音の奴心理戦に弱すぎる。

 下手に力を付けたせいで、元から足りなかった辛抱強さが更に目減りしてやがるのか?

 少しばかり修正させたほうがいいかと余計な思考を挟み、確実に切り札を当てるため俺も距離を詰める。

 

「ふっ!」

 

 距離2メートルの所で顔面へレンガを投げつけ、爆発で視界が遮られた一瞬を縫って縮地を使い背後へと滑り込む。

 

「このタイミングなら…!?」

 

 反発のエネルギーを丸々載せた貼山靠をぶちかます白音だが、馬鹿野郎そいつは悪手だ。

 

「そんな!?」

 

 ドンッと衝撃を発し完璧に決まった貼山靠だが、ヘラクレスの野郎はそれに耐えきりやがった。

 

「効いたが、軽すぎる!!」

 

 巨木に打ち付けたように耐えて見せたヘラクレスが茫然とする白音の首を掴む。

 

「ぎぅっ……」

「先ず一人!!」

 

 悲鳴の出来損ないを漏らす白音の首をへし折らんと力を籠めようとするヘラクレスの肘を狙い、俺は切り札の禁呪弾を撃ち込んだ。

 紅いジャケットを被せた弾丸はヘラクレスの肌に浅く刺さった時点でその本性を露にする。

 弾丸に使ったリアス・グレモリーの骨を媒介に呪が放たれ、骨を中心に『滅びの魔力』がヘラクレスの腕を手首と肩の付け根を残し食い千切る。

 

「ぎゃああああああああ!!」

 

 痛みを感じる暇さえ与えず消し去られた腕に驚き、ヘラクレスは後退りながら漸く襲ってきた痛みに耳障りな絶叫を上げる。

 

「俺の腕が……。

 それは一体!?」

「態々教えてやる理由はねえな」

 

 怒りと痛みと困惑で滅茶苦茶になったヘラクレスの頭に最後の一発を叩き込む。

 

「うおおおお!!

 『巨人の悪戯』!!」

 

 爆発の反作用で無力化を謀るヘラクレスだが、奴の神器と同じく触れた瞬間発動する禁呪弾の特性に追い付くことなく、『滅びの魔力』に頭を消滅させられて死んだ。

 

「終わりだ」

 

 ニューナンブを仕舞い放置していた棍を拾いに向かう。

 

「舞沢さん」

 

 そこに白音の固い声が飛んできた。

 

「今のは、部長の『滅びの魔力』ですよね?」

「ああ」

 

 否定する理由がないから素直に肯定してやった。

 いっそ、このまま縁が終われば楽かと序に全部話してやることにする。

 

「こいつは禁呪弾という、人間が悪魔を殺すために完成させた悪魔を素材に使う弾丸だ」

 

 薬室から空の薬莢を抜いて白音から見えるようにしながら教える。

 

「悪魔を……素材に……」

「ああ。

 昔は鏃に使っていたが、さておき。これには呪術を刻み込んだリアス・グレモリーの骨を使っている。

 序でに言えばこっちの多節棍の芯にも同じ仕込みがしてある」

 

 そう言うと棍の接続を解いて折り畳み懐にしまう。

 見れば白音の顔から血の気が引いていた。

 驚く必要もないぐらい当然の反応だ。

 

「舞沢さんは、悪魔の遺体をそんなふうにしてなんとも思わないんですか?」

「……どうだかな」

 

 最初は漸く一矢報えたと嬉々として解体してやった。

 だけど繰り返すうちにそれも作業としか思わなくなって、今では素材に使った悪魔からどんな効果を発する武器が造れるか期待するぐらいしか思うものは無くなっていたように思う。

 

「正直、許せないと思う気持ちはあります」

「見損なったか?」

「はい」

 

 まあ、当然の感想だな。

 

「だけど、」

「ん?」

「私の中に期待が生まれました」

「……」

 

 何を言ってんだこいつ?

 

「私が死んだら、舞沢さんは私の遺体で武器を造りますか?」

「……多分な」

 

 今となっては悪魔は稀少存在だ。

 転成悪魔は混ざりものが多く素材に使うには不適当が多いが、しかしそれでも武器として加工できない訳じゃない。

 

「じゃあ、約束してください。

 私が先に死んだら私の身体を使って武器を造って、それが壊れるまで大事にしてくれるって」

 

 そう願う白音の目には一辺の後悔も見えない。

 

「自分が何を言ってるか解ってんのか?」

 

 頭がおかしいとしか言えない台詞にそう確かめるも、白音はハイと笑う。

 

「……面倒な約束させるなよ」

「私は面倒な女ですから」

「ちっ、」

 

 嫌味すら笑って受け入れる白音にとうとう白旗が上がる。

 

「解った。

 約束する。

 お前が死んだら死体を武器にして、壊れてなくなるまで使い倒してやるよ」

「ありがとうございます」

 

 本当に嬉しそうに笑うなコラ。

 

「序でに言っとくよ。

 そんなこと言った奴は四千年近い記憶の中でもお前が初めてだ」

 

 その言葉に目を見開く白音を見ることを止め、俺はヘラクレスの遺体を担いで夢の国を白音と共に脱した。




白音ちゃんが個別エンドと死別エンドのフラグ建てました。

白音は嫌悪と羨望で羨望選んじゃったよ……

白音の邪魔だから結局逃がしてあげたけど、曹操達はこのままにしとく理由はないんだよなぁ……

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