「悪魔を殺して平気なの?」「天使と堕天使も殺したい」 作:サイキライカ
あ、今日で艦これ一期が終わりましたね。
二期こそは甲勲章目指そうと思います。
カレー仕込んだ序でにターメリックで色付けしたサフランライス(偽)を炊飯器に入れ、翌朝食い頃になるようタイマーをセットして朝を迎えた訳なんだが……
「おいしい」
見知らぬ巫女服幼女がそれを勝手に食っていた。
……なにもんだこいつ?
寝てる間だって気配感知は切っていなかったから、忍び込んだならその時点で気付いていた。
だが、現実に幼女は気配感知をすり抜けてカレーを貪っている。
その事から下手に手を出せば不味いと判断し、どうするべきかと迷っていたらインターホンの報せが鳴る。
「うーちゃん?」
氣から正体を把握し一旦幼女を放置してドアを開けると、やや焦った様子のうーちゃんが其処に居た。
「どうしたうーちゃん?」
「朝早くすまんの。
実はな、御主に人探しを頼みたいのじゃ」
神様が人探しとなれば、これは相当厄介な案件に違いない。
「とりあえず中に入ってくれ。
詳しいことはそれからだ」
神様と立ち話というのはいつもの話だが、しかし玄関でそれは宜しくはない。
そうやって招いてからリビングに向かいつつ内容を尋ねる。
「人探しっつっても、うーちゃん直々にってことは普通の人間じゃねえんだろ?」
「うむ。
人と言うたが、その正体は龍ぞ」
「龍?」
「主は『無限龍ウロボロスドラゴン』、又は『無限のオーフィス』を知っておるか?」
「まあ、名前ぐらいはな」
しかしなんでまたそんな歩く核弾頭みたいな怪物をうーちゃんが探すんだ?
「あ、うーちゃん様」
と、リビングに着いたらさっきの幼女がうーちゃんに気付いて挨拶した。
さっき見た時より皿の中のカレーの量が増えてるからおかわりしやがったらしい。
「おんしは何をしとるのじゃ!!
オーフィス!!」
その様子に怒りを露にするうーちゃん。
あ、どうりで。
人が間近で山の全容を見渡せないのと同じだ。
オーフィスクラスになれば、その氣がでかすぎて気配感知が通じなくても仕方ないわ。
探す手間が無くなったかと安心するべきか、それとも核弾頭が部屋に居ることに恐怖するべきか迷っていると、うーちゃんがオーフィスを叱り付けた。
「勝手に人の家に入って物を食べてはいかんと教えたじゃろうに!」
「ここ、うーちゃんの神気ある。
うーちゃんの社違う?」
そういうことかい。
つまり、オーフィスはうーちゃんの残した神気からここが社の一つと勘違いして、それで忍び込んだらカレーがあったからつい食べてしまったと。
流石歩く核弾頭。
つうかだ、
「なんでまたうーちゃんがオーフィスの面倒を見てんだ?」
「自業自得じゃ」
溜め息を吐くうーちゃん。
「腹を空かせておったこやつに、その正体を知らぬまま神餞を分けてやってしもうたのよ。
そうしたらこやつ、物を食うのも初めてだったらしくあまりの感激に妾に仕えたいと申してな。
とと様や叔母上でも日ノ本を更地にする覚悟なく追い返すことは叶わぬ相手故、致し方無く望むまま神仕としたのじゃ」
そう語るうーちゃんの背は僅かに煤けているように見えた。
「妾のような一穀物神に斯様な龍の手綱など握れぬというにとと様と来たら……」
「流石にタケさんだって本気でまずいと思ったらどうにかするって」
「それが分かっておるから頭が痛いのじゃ」
実際、見てる限りはタケさんが静観する程度にはオーフィスは問題無さそうに見えるし、本人も望んでそうしている以上うーちゃんの胃は大変そうだが手綱そのものは切れていないのだろう。
と、話を聞いていたのかオーフィスが俺を見る。
「お前、この家の主?」
「一応な」
関わりたくないが、泣きそうなうーちゃんを思えば我慢するしかないか。
「ここ、うーちゃんの社違う?」
「違うぞ。
序でに言うが、お前の食ってる
そう言えばオーフィスは俺と皿のカレーを交互に見遣る。
「これ、お前が作った?」
「そうだぞ」
「……」
「食いさしを返そうとすんなよ?
やっちまったもんはしゃあねえからちゃんとくっちまえ」
その方がぶちまけられて台無しにされるよりはまだマシだからな。
「……ん」
暫し固まった後、オーフィスはスプーンを置くと俺の前に立ち、掌を出した。
「食べ物盗ったお詫び。
それと美味しかったお礼」
そう言うと掌に二匹の細長い蛇のようなものが現れた。
「……これは?」
「我の蛇。
皆欲しがった」
オーフィスの蛇、ねぇ。
物質化した『無限』の欠片なんて代物、確かに欲しがる輩は少なくないだろう。
「一応貰っとくわ」
使い途があるかは兎も角、何らかで必要にはなるだろう。
「ん」
これで解決と思ったのか、オーフィスは再びカレーを食べ始める。
「ほんにすまんのぅ」
「まあいいさ。
カレーはまた仕込めばいいし。
折角だからうーちゃんも食ってけ。
胃が大丈夫ならだが」
「奉納は有り難く頂くぞえ。
天竺料理はそう卓には並ばぬしな」
そう言いながら席に座るうーちゃんにもカレーを用意するために炊飯器を開けるも、多目に四人前は炊いておいたサフランライスは米一粒残さず無くなっていた。
「すまんうーちゃん。
食パンと冷凍のナンから好きに選んでくれ」
数秒後、泣きギレしたうーちゃんの怒号が朝のリビングに木霊した。
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で、結局ナンで朝飯を済ませたうーちゃんは満足したオーフィスを連れて帰り、カレーの香りで空腹を増長させた俺と白音だけが残された。
ヴラディはうーちゃんの怒号に目を回して夢の世界に旅立っている。
「お腹空きました」
「ファミレスのモーニングとコンビニだったらどっちだ?」
「牛丼屋のカレー」
「お前なぁ…」
一番近くで駅前じゃねえか。
いやまあ、この状況でコンビニのカレーは無いのは解るがよ。
「しゃあねえ、さっさと支度し…」
最近出費が激しいなと思いつつ立ち上がろうとした瞬間、ぞわりと悪寒が走り、咄嗟にチャクラを廻して氣の索敵範囲を拡げられるだけ拡げる。
「舞沢さん!?」
悪寒は白音も感じたらしく仙道を発動し辺りを警戒する。
しかしそれに構う暇はない。
そしてその悪寒の原因が何なのか俺は把握しベランダへと飛び出す。
「白音、ヴラディを連れて俺の部屋に隠れろ」
棍を繋げ、腰を沈めながらそう言う。
俺の部屋は封印術式で固めた異界じみた強度の防護で固めてあり、上級神クラスでもなければ絶対に破れはしないシェルターにしてある。
「舞沢さんは?」
不安そうに問う声に俺は短く告げた。
「事態を把握したら戻る。
いいな? 俺が開けるまで絶対にドアを開くなよ」
そう言うと俺は縁に足を掛け、異変の元凶であろううーちゃんの近くに出でた邪気目掛け飛び出した。
次回は決戦前哨戦