「悪魔を殺して平気なの?」「天使と堕天使も殺したい」   作:サイキライカ

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遅くなった理由?

データ飛んだんです…


我の他に神はなし

 始まりは落雷からであった。

 鼓膜を突き破らんばかりの轟音と共に落雷が発生し、それが収まるとそこには背に大鎌を背負うギリシャ形式の鎧一式で身を固めた長身の壮年が立っていた。

 

『我が名はユーピテル。

 かつてこの地に繁栄したローマ帝国を守護していた神である』

 

 まるで雷音のような重厚な声が周囲に響き渡る。

 

『聖書の神よ。

 汝が所業、最早座して眺めるに能わず。

 我が怒りに応えぬなら、貴様の信徒は一人残らず我が雷霆に焼かれるものと思え!!』

 

 雷光を固めたような長物、『雷霆』を『方舟』へと突き付けそう宣う。

 神というに相応しい重厚な気配を放つユピテルに『方舟』の信者達は恐怖するが、次いで放たれた『声』に恐慌はたちどころに鎮まる。

 

『怯えるな皆の者』

 

 ユピテルの進路を遮るように天から光が差し、白いローブを纏う曹操の身体を宿主として復活した聖書の神がゆっくりと降りてくる。

 

『赤い竜を束ねし者よ。

 貴様に我が信徒を害する資格はない』

 

 その姿に内心で自らの推察が間違っていないようだと細く笑みながら、雷霆を突き付けユピテルは堂々と宣う。

 

『現れたな聖書の神め!!

 今日この日を以て貴様の神話を終わりとしてくれるわ!!』

 

 対し『曹操』は愚かとそれを切り捨てる。

 

『滅ぶは貴様ぞ。

 座しておれば千年王国完成の後に配する新たな『システム』の恩恵に与れたものを』

『戯れ言を!!』

 

 咆哮と共に一蹴し、ユピテルは雷霆を上段から投擲する。

 

『穿て雷霆(ケラウノス)!!』

『させぬ!!』

 

 信仰を失い弱体化したとはいえ、ユピテルの放った雷霆は人間を殺すには十分な威力を秘めている。

 避ければ『方舟』に被害が行くと『曹操』は聖槍から聖なるオーラを発し、それを防護膜として展開することで雷霆を防いでみせた。

 

『おのれ小癪な真似を!』

 

 忌々しそうにそう言いながらも、疲弊した様子を僅かに見せる『曹操』に仕込みの効果への確信を深め、勝機の香りに酔い始めるユピテル。

 膜をそのままに外へと歩みでると『曹操』は嘯いた。

 

『信仰を失い弱体化してなおこれほどの威力か

 だが、恐れるに足りん』

『ほざけ!!

 人の身に因らねば現界すら覚束ぬ残滓風情が!!』

 

 挑発ともとれる台詞にユピテルは激昂のままアマダスの大鎌に持ち変え『曹操』へと斬りかかる。

 

『オオオオオ!!』

 

 全身を駆動させ、まるで芝刈機のように幾度も大鎌を振り回すユピテル。

 対し『曹操』は聖槍の穂先を巧みに翻してそれを捌ききる。

 槍と大鎌。

 どちらも最大に威力を発揮するのは近距離よりの中距離であり、奇しくも互いの剣戟は最適距離を維持したまま完全に噛み合い激しい打ち合いへと発展する。

 十を咬ませ、百を払い、二百を越えて打ち合いは三百に到ろうとした時、ほんの僅かにだが変化が現れ始めた。

 

『むぅ……!?』

 

 掬い上げるように振り上げた斬撃を受け流し、その威力を糧に大きく距離を取る『曹操』。

 そうして着地すると肩で息をし始める姿にユピテルは勝機は目前と哄笑する。

 

『やはりか!!』

 

 大鎌を片手に、空いた手に雷霆を握りユピテルは指摘する。

 

『貴様は黙示録の封印を解くために『神の子』ヨシュアとの概念的な融合を果たしておるな?』

 

 ユピテルを始め、多くの神は望まぬとも聖書を見聞きする機会は少なくなかった。

 そうした中で黙示録の内容についても知り得ていた。

 故にこそ、今回の黙示録の開始には疑問があった。

 黙示録の封印を解くことが叶うのは七つの目の子羊のみ。

 それは暗喩であり、正体は神が認めし『人間』を指している。

 しかし、歴史に於いてそれだけ聖書の神に認められたのはたったの三人だけ。

 

 叡知の指輪を授けられたイスラエルの王『ソロモン』

 エジプトより民を解放し十戒の石板を預けられた『モーセ』 

 そして奇跡を起こす御技を授けられ原罪を背負いローマに処刑された『ヨシュア』

 

 内二名は天に昇ることを拒否し、ヨシュアのみが天へと昇った。

 聖書の神は如何なる理由かまでは知らぬが、死に際しヨシュアの魂を内に取り込んだのだ。

 

『三位一体の解釈とその人間の肉体を持ち貴様は黙示録を開始しようと企んだ!!』

『それは違う』

 

 弾劾するように指摘するユピテルに『曹操』は否と言う。

 

『貴様の言うことは半分は正しい。

 確かに私は天界で眠っていた我が子の御霊を内に宿した。

 だがそれは『黙示録の獣』の封を確実のものとするため。

 黙示録の開始は、私の意思により始まったものではない』

『戯言を!!

 だが、今此所で貴様の魂までも消滅すれば黙示録の封印がこれ以上解かれることはないのは明白!!』

 

 雷霆を一際輝かせユピテルは宣う。

 

『故に全知全能の神として、そして未来永劫続くローマとして告げる。

 此所で果てよ聖書の神よ!!』

 

 放った雷霆から耳を塞いでさえ鼓膜を突き破る轟音が轟き、目を閉じてさえ眼孔を焼く閃光が周囲を焼き払う。

 そうして何もかもが焼き付くされたかに思われたが……

 

『……ありえん』

 

 衣を焼き焦がしながらも、五体一つ欠けることもなく『曹操』は雷霆を受け止めた姿でそこに在った。

 

『馬鹿な!!』

 

 その現実が認められないとユピテルは叫ぶ。

 

『どういう事だ!?

 貴様が『神の子』として在るにも関わらず、何故『(ローマ)』が殺すことが叶わなかった!?』

 

 狂乱するユピテルに対し『曹操』は然りと告げる。

 

『貴様が『人の子の紡いだ歴史』に準えることで私に刃を届かせようとしたことは最初から解っていた。

 確かにそれならば今の私を殺すに足るであっただろう』

 

 擬似的に人類史を再現し、神の子を処刑したローマとして相対することで自らを討ち取ることは出来ると嘯いた『曹操』にユピテルは力の限り吠える。

 

『ならば何故貴様はまだ立っている!!』

 

 理屈が通らないと叫ぶ声に『曹操』はまるで諭すように告げた。

 

『貴様と同じよ。

 この身はすでに一度朽ちた身。

 故に、死より復活した我にはその縛りは通じぬと言うことだ』

 

 そう我が子の弟子達は記したであろうと締め括る『曹操』。

 

『ふざけるな!!』

 

 その言葉にユピテルは激昂の限りを以て叫ぶ。

 

『何が復活しただ?

 あんなもの(・・・・・)、到底復活等と『黙れ』がぁっ!!』

 

 ユピテルの言葉を遮り強烈な聖のオーラを叩き付け黙らせる。

 

『我が子を愚弄する言葉をこれ以上吐かせるものか』

『き、貴様ぁ…』

 

 都合の悪い真実を秘する『曹操』に、ユピテルとしての側面(アバター)を剥がされたゼウスは怒りのままに睨み付ける。

 そうするゼウスに対し『曹操』は聖槍の石突きで大地を打ち告げる。

 

『汝、姦淫するなかれ』

 

 そう告げた直後、突然ゼウスの全身から力が抜け落ち、立つことさえままならなくなって大地に這いつくばる。

 

『な、何が…』

『貴様の罪を告発したのよ』

『罪だと?』

『然り。

 多くの不貞を働き、貞淑なる女達を数多く悲嘆の淵へと突き落とせし汝が罪。

 私はそれを明らかにした』

 

 堂々と告げる『曹操』。

 しかしゼウスはそれを否と叫ぶ。

 

『神の精を受けるは人の誉れ!!

 いずれ英雄となりし血脈を授ける事の何が罪か!?』

 

 自分の行いは何より正しいのだと叫ぶ姿に、『曹操』はいっそ憐れみを籠めてゼウスを見下す。

 

『その考えこそが多くの悲劇を産んだ。

 それさえ考えられぬものに千年王国の大地を見る資格はない』

 

 そう、聖槍をゼウスに突き刺した。

 

『ぐおっ!?』

 

 オリュンポスと同じ硬度を誇るはずの鎧をあっさり貫き通した聖槍に、驚愕と苦痛で呻くゼウスに向けて、『曹操』は告げる。

 

『意思を捨てその権能を我に捧げよ。

 其れが汝の罰である』

 

 そう告げる言葉通り、己の全てが聖槍に吸い込まれていくのを感じゼウスは叫ぶ。

 

『おのれ聖書の神よ!!

 私は決して、決して貴様を許しはしない!!

 何兆の時が過ぎようと必ず現世へと舞い戻り貴様を滅してくれる!!』

 

 一片残らず聖槍へと取り込まれるまで、ゼウスは雷音のような咆哮を上げながら聖書の神を呪い続け、そうしてこの世界から消えた。




ゼウスがやったのは歴史再現による自身への特攻付与

聖書の神がやったのは聖書を基盤とした信仰による性能強化

どっちも人間ありきの手段でありますが真面目にゼウスにも勝ち目はありました。

勝率? 100D三個振って1ゾロ出す確率ぐらいかな?

そして日本神話は信仰から発した化学的強化


…なんかおかしい気がするけど日本だからしょうがないね。

後、今回も裏話ありますがこれからは全部活動報告でやっときます。

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