「悪魔を殺して平気なの?」「天使と堕天使も殺したい」   作:サイキライカ

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相変わらず捏造満載

そしてキリがいいとおもって切ったら短かった上にエロい部分も後回しに……


たまにはこういうのもあるか。

 『ソレ』に気付いた瞬間、私は信じられないと思いました。

 

「温ぃぞ」

 

 匙先輩の腕をあっさり払い除けた舞沢さんの全身から膨大な氣が溢れ、そして洗練された動きは一切の無駄はなく人の身でありながら転生悪魔の匙先輩を殴り返してしまいました。

 

「大丈夫、匙!?」

「ゴフッ、かはっ!?」

 

 鳩尾を打ち抜かれた匙先輩は上手く呼吸が出来ずに必死に喘いでいます。

 間違いありません。

 あれは『仙術』です。

 匙先輩が氣を流し込まれ経絡が機能不全を起こしているのが証拠です。

 それも姉が暴走したのと違い、完璧に制御されています。

 

「なんて奴だ…」

「やっぱり日本神話なんて信用してはいけなかったのよ!?」

 

 制止を無視して生徒会室を出ていく舞沢さんを周りが非難していますが、私は彼の仙術に惹かれ、気が付けば彼を追っていました。

 

「小猫ちゃん!?」

 

 無我夢中で追い掛け、追い付いたのは校門の前でした。

 

「待ってください!!」

 

 私の声に舞沢さんは嫌そうにしながらも足を止めてくれました。

 

「なんだよ?

 まだやるってか?」

「違います」

「あん?」

 

 必死で走ったせいで激しくなった動悸を抑えようと胸を掴みながら私は心の底からの願いを叫びました。

 

「私に、仙術を教えてください(子種を下さい)!!」

「………はぁ?」

 

 猫魈としての本能が勝手に口を滑らせました。

 しかも下校時刻で沢山生徒が居ます。

 ……明日からどんな顔で登校したらいいでしょうか?

 

 

~~~~

 

 

「一応確認するが、さっきのは間違いでいいんだな?」

「はい。

 あれは間違いですので忘れてください」

 

 学園中に響いたとんでも発言のお陰で小悪魔を連れての近くの公園まで戦略的撤退を余儀なくされた俺はどうしてそうなったのかを問いただし頭を抱えた。

 暫く学園には近付きたくなかったんで休もうとしたんだが、生憎とクライアントは通えの一点張りで取り付く島も無かった。

 マジで今からシトリー鏖殺してズラかっちまおうかな…。

 

「お願いします。

 私に出来ることならなんでもするので仙術を私に教えてください」

 

 そう頭を下げる悪魔。

 

「嫌だね」

「…どうしてもですか?」

 

 上目遣いで保護欲を掻き立てようとしたって無駄だ。

 

「なんで悪魔を強くしてやんなきゃなんねえんだよ?」

「それは、」

「はっきり言うぞ。

 俺は悪魔が嫌いだ。

 序でに言うなら天使も堕天使も神も人間だって大っ嫌いだ」

 

 そう言い切れば小悪魔は悲しそうに俺を見る。

 

「どうしてですか?」

「皆嘘吐きだからだ」

「嘘吐き?」

「……」

 

 なんでこんな話を悪魔に聞かせているのかと話を打ちきることにする。

 

「悪魔に教える義理はねえ」

「……」

 

 そうして沈黙が落ちる。

 重苦しい空気が煩わしいと思いながらも自分から離れるのはなんか嫌だと思い小悪魔が消えるのを黙って待つ。

 

「……」

「……」

「…………」

「…………」

「………………」

「………………」

 

 五分が過ぎ、十分が過ぎ、一時間を越え夕闇が濃くなりだした所でなんで俺はこんなに必死になって我慢比べをしているのか馬鹿らしくなり、そしてとても悪辣な事を考えるようになっていた。

 

「おい悪魔」

「…搭じ……白音です」

 

 なんで言い直したか少し気になったが、どうでもいいと切り捨て俺は悪魔の誘惑を口にする。

 悪魔相手に悪魔の誘惑ってのは洒落が効いているだろう。

 

「さっき言ったな?

 出来ることならなんでもするって」

「はい」

「だったら条件として悪魔の秘密を知ってもらう。

 ただし、それを知ったらお前は冥界には居られない。

 それだけ聖書の悪魔達にとってこの話は劇薬だからだ」

 

 それを聞いたら俺のもってるもんをなんでもくれてやると言った。

 予想通り小悪魔…白音は懐疑と忌避の感情を見せた。

 

「どうして貴方がそんな話を……?」

「そいつも含めて教えてやるよ。

 で、どうする?」

 

 安寧を棄ててはぐれ悪魔になってでも力に手を伸ばすか。

 耳と目を塞ぎ今の安寧に沈むか。

 

「選ぶのはテメエだ。

 好きにしな」

「…………」

 

 そう言うと白音は俯いた。

 そうして再び沈黙が訪れるが、今度はすぐに終わった。

 

「教えてください。

 仙術を、そして貴方の事を」

「いいぜ」

 

 答えを聞き、俺は白音に背を向ける。

 

「始める前に一つ課題を出す。

 そいつの答えを得たら放課後ここに来い」

 

 答えを待たず俺は課題を口にする。

 

「『バアル神』『ソロモンの壺』『悪魔バアル』。

 この三つの真実を見付けてみろ。

 それが出来たら始めてやる」

 

 そう言い残し俺は今夜の悪魔狩りに向かった。

 そうして悪魔狩りに出たわけだが、シトリーは真面目らしく使い魔を大量に配置しはぐれ悪魔を片端から狩っていた。

 

「無茶しないで匙!!」

「あの糞野郎にいいように言われたままでいられねえんだよ!!」

 

 適当に悪魔の気配を探ってブラついていると昼にぶっ飛ばしてやった悪魔がなんか叫んでいた。

 

「力だ!! もっと力を寄越せ『黒い龍脈』!!」

 

 奴の神器らしい蜥蜴に怒鳴ってるが、そんな姿を俺は特に何も感じることもなくその場を後にした。

 

「しっかし、なんなんだろうな?」

 

 白音に欲情しているわけでも微塵もないし、殺せるかと聞かれれば何の感情もなく首をへし折ってやれる自信はある。

 にも関わらず、俺は破滅してでも力を欲するかと問いを投げた。

 まあ、たまに起きる気まぐれなんだろう。

 

「帰るか」

 

 グレモリーの『加工』も終わってねえし仕事がないならそれでいいやと俺は工房に足を向けた。

 

 

~~~~

 

 

 翌日、予想通り俺が白音を手込めにしたロリコン野郎という不愉快三倍増しとなった風評被害でストレスを溜めに溜めながら依頼だからと我慢して迎えた放課後。

 流石に一日で答えは出ないだろうと思いながら時間を潰していると、意外なことに白音は公園に現れた。

 

「答えは出たみたいだな」

 

 その目は忙しなく泳ぎ、周囲を警戒しきった姿を見れば聞くまでもない話だ。

 

「三千年前、イスラエルの王ソロモンは72柱の魔神を従えました」

 

 声を震わせながらすがる目付きで喋り出す白音。

 

「ソロモン王はある日、彼等に真鍮の壺に入るよう命じ、その壺を湖へと捨てました」

 

 語る。

 知ってはならない真実の一片を。

 

「壺に宝が隠されているとイスラエルの民はその壺を引き上げ封を開けてしまい、彼等は自由になり故郷へと引き上げます」

 

 そこまで語った白音に俺は決定的なだめ押しをする。

 

「ソロモンが使役したと言われている魔神の正体は他宗教の神々だ。

 だから彼等の故郷とは、其々が信仰されていた国。

 だけど冥界には同じ名前の悪魔がいる。

 そして奴等は神であったことを知らない。

 此れが意味する答えは?」

 

 恐怖からか顔を真っ青にしながらも、後に下がる道を自分から放棄した白音は悪魔の秘密を口にした。

 

「冥界の悪魔は『聖書の神』によって生み出された紛い物です」

 

 その答えに俺は悪どくなっているだろうと思いながらも笑った。

 

「正解だ」


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