「悪魔を殺して平気なの?」「天使と堕天使も殺したい」   作:サイキライカ

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蜘蛛姫様に捧げる人間性狩りで遅くなりました。


相互理解なんざ不可能だよ

 私には理解できない。

 

 私は過去を見通し、世界をあまねく見通し、未来の果ての果てまで見通している。

 故に私は行動した。

 全知全能を以て世界の基盤を刷新し、力なき子羊達の安寧のための器を世界に放出した。

 しかしそれでは足りなかった。

 故に世界を再誕するために、臆病な者、信じない者、忌むべき者、人殺し、姦淫を行う者、呪いをする者、偶像を拝む者、すべて偽りを言う者を焼き払う第二の死の投下をするため再び人の世に降り立った。

 

 だが、私には理解できない。

 

 世界は悲劇で満ちている。

 世界は絶望で満ちている。

 世界は悪夢で満ちている。

 

 私の遺した『神器』と『システム』()を以てしても悲劇は終らない。

 他の神が放棄した責務を代しても絶望は終らない。

 如何に悪しき人を間引こうと悪夢は終らない。

 

 私には理解できない。

 

 何故お前達はそんなにも愚かなのだ?

 何故お前達はそんなにも間違えるのか?

 何故お前達はそんなにも命を軽んじるのだ?

 

 理解できない。理解できない。理解できない。

 多くの神話から叡智をかき集め、並び立つ全知全能たるゼウスの叡智を重ねても理解できない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何故、お前は私と一つになった私の子(ヨシュア)の前に立ち塞がるのだ●●●?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 匙を連れエクソシストの気配の無い場所まで逃げ切った白音は入り口の無い屋上で足を止めると一旦休憩することにした。

 

「取り合えず追っ手は撒けたみたいです」

「……」

 

 三叉の銛に寄り掛かるように蹲る匙を安心させるためそう言うも匙は無言のまま答えない。

 

「あの…」

 

 舌を噛んでいたから喋れないのかと近寄った白音に、直後下から掬い上げるような軌道で匙の拳が振り上げられた。

 

「な……」

 

 反射的に交わした白音が一歩下がると、匙はその目に赫怒を宿した顔を持ち上げ吐き捨てた。

 

「日本神話の手先がなんのつもりだよ?」

 

 その言葉に匙がどうして自分に怒りを向けるのか理解した。

 匙からすれば日本神話は自分達から家族や未来を奪い上げた略奪者であり、自分もその仲間だと見えているのだろう。

 

「あ……」

 

 何を言えばいいのか惑う白音。

 匙は白音を睨み付けていたが、やがてばつが悪くなったのかそっぽ向いて悪いと言った。

 

「塔城が悪い訳じゃねえのは分かってんだ。

 たださ、やっぱり感情が納得しねえんだよ」

 

 そう言い、匙は鬱屈した感情を吐き出す。

 

「俺はただ会長が好きで、家族を守りたくて悪魔に転生したのに、なのに日本神話は冥界を滅ぼしてしかも何も悪いことなんかしてなかった会長まで日本から追い出したんだ。

 それをどうして納得できんだよ?」

 

 そう何度も畜生と漏らす匙。

 日本神話からしてみれば、その考えこそ筋違いなのだと吐き捨てると白音は言いたかったが、しかし納得はされまいと話を変える。

 

「それで、匙先輩はどうしてエルサレムに?」

「あ? ああ。

 俺はポセイドン様に聖書の神を討てと送り出されたんだよ」

 

 その言葉に白音は一瞬呆気に取られた。

 舞沢の言では絶頂期の万分の一以下まで弱体化していたとはいえ、本来の全力ならシヴァとも拮抗し得えるゼウスを降した聖書の神を倒せ?

 一体何をどうしたらそんな誇大妄想に走れるのか困惑する白音に、溜まっていたものを吐き出し少しだけ調子を取り戻した匙は自慢するように銛を示す。

 

「このトライデントの力で悪魔の俺も全力を出すことが出来る。

 それにトライデントにはポセイドン様の権能を一部振るうことが出来るんだ。

 こいつを使えば聖書の神だって倒せる筈なんだ」

「…………」

 

 正直どう言えばいいのか白音は解らなくなった。

 見切り発車で飛び出した自分が言えた義理では無いだろう。

 だが、匙のそれは余りに甘い見通し、否、希望的観測にすらなっていないただの妄言だ。

 実際はトライデントを使いこなせず、エクソシストにいいようにされていた事さえ頭から抜け落ちているようにトライデントの有用性を嘯いている。

 しかしそれを指摘したとて与えられた玩具にはしゃぐ匙には届かないだろう。

 

「なあ塔城。

 お前さ、まだあいつと居るのか?」

「え?」

 

 唐突にそう言われ、首を捻る白音に匙はとんと理解できないと口にする。

 

「あいつはグレモリー先輩を殺したんだろ?

 だったら、」

 

 なんでだと言う言葉を遮り白音は口を開く。

 

「私は卑怯な女なんです」

「え?」

 

 思いがけない言葉に固まる匙に、ではなく己に言い聞かせるよう白音は語る。

 

「私はいつだって自分が一番大事でした。

 部長の眷属になったのも姉様が私を置いていったから。

 魔王の妹の庇護を得れば安全だから。

 だから私は悪魔に転生したんです」

 

 リアス・グレモリーが謳っていた情愛を白音は都合よく利用した。

 それは意識しての事ではなかったが、しかし白音は本能的にリアスの未熟さと甘さを利用して生き延びた。

 

「舞沢さんも最初はそう。

 欲しくもない扱いきれない仙術(背負わされた爆弾)をどうにか出来る人だから、絶対に師事するために手段を選ばず擦り寄っただけでした」

 

 無意識の奥で自分の感情さえ利用する浅ましい子供。

 それこそが白音の本性だった。

 しかし舞沢は最初からそれを見抜いていた。

 

「酷い人ですよ。

 打算も愛も変わらないなんて言っておきながら、それでも私を手元に置いてくれるなんて、それじゃあ私はどうしたらいいんですか」

 

 見捨ててくれれば折れてしまえた。

 嫌ってくれれば諦められた。

 だが、舞沢は望めば望むだけ与えてくれた。

 ただ、一つの想いだけは汲もうとはせずに。

 

「私は舞沢さんを愛してます。

 だけど、あの人にはそれはただの重荷だから、だからあの人が成したいことの為に命を使おうって決めたんです」

「成したいこと?」

 

 匙のオウム返しに白音ははいと頷く。

 

「その為には四騎士を排しなければなりません。

 だから、私は彼等を殺します」

 

 それが無謀であることは承知している。

 だけど、騎士一騎でも道連れにすれば舞沢は楽になる。

 そうでもしなければ、白音は舞沢の隣に居られないとそう思っていた。

 

『随分大口を叩いてくれる』

「「!?」」

 

 在る筈のない第三者の声に咄嗟に構える白音とトライデントを抱く匙。

 そうして声の発生元に目を向けると、そこには光を微かに反射するシャボン玉が浮かんでいた。

 

『見付けたぞ主の御業に逆らう悪魔共。

 同胞の仇も含め、主に代わり裁きを下す』

「逃げて!!」

 

 ただの泡ではないと白音は即座に縁を蹴り飛び出した。

 数秒遅れ匙も飛び出すと直後にさっきまでいた屋上から破裂音が響き聖なるオーラが放射される。

 

「くっ!!」

「ぎゃあああ!!」

 

 氣を纏う白音は呻く程度で済んだが、匙はもろに食らい地面へと落下していく。

 

「匙せ…」

 

 助けようと羽を広げようとした白音はしかし、周囲を先程と同様のシャボン玉数百に囲まれていることに気付き、即座に逃げの一手を打つ。

 

『逃がしはしない。

 来る新世界に君達は不要だ』

 

 抑揚の低いその声と同時にシャボン玉がピラニアを思わせる勢いで白音へと迫った。

 




三行で解る現在のオリンポス

ハーデス➡白音の健気さに身悶え中

ポセイドン➡C●C系(ギリシャ)から鍵系(ローマ)に鞍替えして純愛房になってたけど対●忍(かつてのイメージ)で鬼畜に逆戻り中

その他➡ゼウスによってローマ系の信仰を失いリアルにFXで有り金溶かした顔してる

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