「悪魔を殺して平気なの?」「天使と堕天使も殺したい」 作:サイキライカ
「
龍と悪魔の物語に於いて、デュリオ・ジェズアルドは転生悪魔の技術を模した天使の手により転生天使として変成し、その身に宿す神滅具『煌天雷獄』を禁手化させていた。
しかしこの時間軸においてデュリオは天使へと変成しておらず、神滅具の禁手化に至ってはいなかった。
だが、想いを糧とする神器は聖四文字の調整を経てデュリオの「子共達を千年王国に生き返らせる」という妄執を糧とし、奇しくもそう在るはずだった物語と同じ亜種禁手化へと辿り着いた。
「
禁手によりデュリオの肉体に変化が生じ頭上に天使の輪が生まれ、鎧を通り抜け12枚の黄金の翼が生え伸びた。
ダメージと変成に痛む体を無視し、デュリオは苦痛に膝を着いた白音目掛け増大した力を封入した数多のシャボン玉を瀑布の如く解き放つ。
「くっ!?」
辛うじてシャボン玉に気付いた白音は咄嗟に軽身功を発動し上空へと逃げる。
「逃がすか!!」
すかさず飛ばしたシャボン玉を繰り宙へと逃げた白音を追わせるデュリオ。
辛うじて白音の方が速くシャボン玉に触れてこそいないが、しかしいつまでも逃げ切れるものではない。
「やるしかない…」
ジリ貧になる前に仕留めねばと着地と同時に地面を踏み砕き、自らを砲弾の様にデュリオ目掛け飛び込んだ。
「甘い!!」
迫る白音に避けようとすればさっきの二の舞とデュリオはシャボン玉をばら撒き迎撃を図る。
白音は両腕に『氣』を集中させ限界まで硬身功を高め、両腕を盾に自らシャボン玉の波に突っ込んだ。
「ァァァアアアアア!!」
腕に触れたシャボン玉が弾け炎、凍気、電撃、鎌鼬、汎ゆる自然エネルギーのダメージが白音に牙を剥く。
『氣』の防護を貫き腕が切り裂かれ焼け爛れ凍りつき、あらゆる方向の痛みが同時に白音の神経をぐちゃぐちゃに掻き毟るのを獣の様に吠えて耐える。
そして体感時間で数分、実際には一秒にも満たない時間を掛け白音はシャボン玉の波を突っ切った。
「何だとっ!?」
まさか耐えきられるとは思っておらず、掛け値なしに手加減無しで攻撃を放ったデュリオは驚愕から僅かに硬直してしまう。
そしてその隙を見逃す白音ではない。
「猛虎‥」
盾にした両腕の感覚は最早無い。
これを外せばもう自分に勝機はないと白音は全身全霊を籠め己の最大火力を放つ。
「硬爬山!!」
箭疾歩からの掌打、更に拳打を半歩踏み込む震脚と共に放つ。
放った拳が砕ける音がしたが、しかし脳内麻薬で痛みを描き消した白音は止まらない。
二度続けての打撃に遂に鎧が罅割れ、その身に拳打から繋いだ肘撃がデュリオの胸に突き刺さる。
「ぐぶっ!?」
白音の肘がデュリオの肋を砕き骨が肺を突き破って押し出された空気と共に喀血する。
「これで、倒れろ!!」
血飛沫が舞う中白音は猛虎硬爬山最大の肝、虎爪掌を放つ。
(避けられない!!??)
振り下ろされた掌打に、死神の鎌を幻視するデュリオ。
刹那の時間が引き伸ばされ、ゆっくりと迫る掌。
しかしその掌は
『耐えよデュリオ!!』
白音の背後より飛んできた聖光の刃が白音の背を切り裂き吹き飛ばした。
背中からの衝撃に白音の身体はデュリオへとぶつかり二人は縺れ合いながら吹き飛んだ。
「ゴホッゴホッ!? …す、ストラーダ猊下?」
吹き飛ばされたデュリオの視界の先、手にデュランダルを携えた灰色の甲冑の騎士が立っていた。
『遅くなってスマンな。
無事、とは言えんようだが立てるか?』
デュランダルを左右の空いている方の鞘に収めガチャリと甲冑を鳴らせながら歩み寄るストラーダ。
髑髏を模した兜が一瞬本物の頭のように思えたが、そんな妄想を軽く頭を振って拭い大丈夫ですと答え、立ち上がろうとして痛みから失敗する。
「ぐぅっ!?」
『無理をするでない。
そこの
そうデュリオを通り過ぎ、這って逃げようとしていた白音を踏み付けた。
「がぁっ!?」
『おのれ汚らしい悪魔の分際でよくも神の地を踏んでくれたな!!』
爪先を捻じ込み背中の傷口を更に深く抉るストラーダ。
「ぎぃッ!! あがぁっ!?」
聖光が細胞を焼き白音の意思を無視して悲鳴を上げさせる。
そして今度は鳩尾に爪先を叩き込む。
「げぅっ!!」
『簡単に死ねるとは思うな。
貴様が殺した同胞の数だけ生きたまま四肢を裂いて、内蔵を引きずり出して烏の餌としてやるからな!!』
狂ったように叫びながらストラーダは何度も白音を蹴り飛ばす。
「……」
その余りにも残虐な行いを見せ付けられ、デュリオは慄き本当にそこまでする必要があるのかと疑問を過らせる。
だが、その疑問に答えを得る日は来ない。
「…く、」
と、サンドバッグのように嬲られていた白音が唐突に笑い出した。
『…何を笑っている?』
やり過ぎて狂ったかと訝しむストラーダを、白音は泥と血で汚れた姿で嗤った。
「滑稽、ですね」
『……』
「せいぜい、私を殺し、て、それで、笑っていればいい」
『貴様…』
嗤う白音にぶるぶると拳を震わせるストラーダ。
「お前達の、神様は、必ずあ『黙れ!!』ごぁ!?」
蹴りが白音の身体を鞠のように飛ばす。
『貴様のようなクソの役にも立たない世界のシミが、神の恩赦を理解しない虫ケラ如きが神の徒である私を嗤うか!!』
激昂のまま喚き散らすストラーダ。
ストラーダの感情に釣れる様に地面から犬の特徴を持つ怪物が何匹も現れた。
『お前には烏の餌さえ勿体無い!!
主より与えられし獣のクソになるのが相応しい末路だ!!』
ストラーダの怒号に従い獣達が白音に喰らいついた。
「ァ…!?」
獣の一匹に喉笛を押さえられ悲鳴さえあげられず獣に貪られていく白音を、ストラーダは愉快そうに笑う。
『ふはははははははは!!
見るがいいデュリオよ、これこそが神に逆らう愚か者の末路だ!!』
そう視線をデュリオに向けたストラーダはそこで信じられないものを見た。
上半身を起こしたデュリオの真後ろ、そこにデュリオの頭にポンプアクション式のショットガンを向ける男が立っていた。
『逃げろデュリオ!!』
「え…?」
ストラーダの声に背後を見ようとデュリオは振り向きかけ、
ボッ!!
ショットガンから吐き出された散弾を至近距離で浴び頭を消し飛ばされた。
『デュリオ!!』
頭を失い崩れ落ちるデュリオの身体。
『きぃさぁぁあまぁぁあああああ!!』
怒り狂いデュランダルを抜いて飛び掛かるストラーダに対し、男は安全ピンを抜いたスタングレネードを放る。
放られたスタングレネードは即座に爆ぜ、強烈な閃光と爆音はストラーダの視界を白く染める。
『ぬぉぉおおお!!??』
しかし怒りに燃えるストラーダは止まらない。
視界を奪われたストラーダは即座に聖光を自身を中心に全方位に放ち追撃を防ぐ。
しかし警戒した追撃は来ず、スタングレネードの効果が消えた後にあったのはデュリオの死体だけだった。
『いない…?
っ、まさか!?』
獣に喰われている筈の白音の方を確かめるも、しかしそこにあったのは頭を失い横たわる獣の死体だけだった。
『おのれぇ…』
デュリオを殺しスタングレネードを使ったのも全て目晦まし。
奴の狙いは最初からあの悪魔だったのだ。
怒りの余り目眩を起こすストラーダを尻目にハデスの隠れ兜を被り直した舞沢は瀕死の白音を抱え『方舟』から離れていく。
「ま…さ……ど…」
「喉に穴開けたまんま喋んじゃねえよ」
まともな声を出せない白音をそう制し人払いの結界を張った仮拠点に飛び込む舞沢。
そこには手錠で手足を拘束され口枷を嵌められた匙が転がっていた。
舞沢はハデスの隠れ兜を脱ぎ、白音を乱雑に捨てる。
「むーむー!!」
白音の姿に喚く匙を無視して舞沢は瀕死の白音に言う。
「お前さぁ、あんだけ啖呵切っといて結局これとか何考えてんの?」
呆れたと言いたげな舞沢の態度に匙が更に喚くも無視して言う。
「これに懲りたら二度と馬鹿な真似はすんじゃねえぞ?
分かったか?」
しかし白音はほんの僅かに首を横に振る。
「あのさぁ…」
まだ分からないのかと言いかけ、白音の唇が動いていることに気付き黙る。
【私は、あなたの隣に居たかった。
あなたの全部が欲しかった。
だから、それを邪魔する奴らが憎くて、でも私じゃ勝てないから一人でも道連れにできればそれで良かったんです】
読唇術で読み取った白音の想いに舞沢は眉間に皺を寄せる。
【ありがとうございます。
臆病な私に、あなたのために死んでもいいって思えるぐらい好きにならせてくれて、ありがとうございます】
そう笑い、白音はその体重を21グラム軽くした。
〜〜〜〜
白音が死んだ。
当然だ。
白音の力は精々駆け出しの仙人がいいところ。
聖四文字どころかドラゴンにだって勝てるかどうかって程度の奴が生きのこれる場所じゃねえんだよ。
で、この阿呆は最後になんて言った?
死んでもいいって思えるぐらい好きにならせてくれてありがとう?
馬っ鹿じゃねえの?
「つうか、馬鹿以外の何もんでもねえんだよ」
死んでもいい?
それで本当に死ぬ奴は馬鹿なんだよ。
やった事があるからそう言い切れるんだよ。
「ムガムガ!!??」
「煩え」
後ろの煩いのにその辺の小石を拾って脳天目がけ指弾を撃ち黙らせておく。
トライデントなんていいもん持ってるから白音に使うはずだった対聖符くれて生かしといたが、やっぱり殺しておくか?
…ああ、いや、やっぱり生かしといたが便利だな。
「ハデス様、材料寄越したのはアンタなんだから今回は見逃しといてくれよ?」
そう断って俺は懐から紫色の薬品が入ったハイジェッターを取り出す。
そいつを白音の薄い胸に押し付けトリガーを引いた。
プシュッ!
空気圧で中の薬品が白音の中に注がれる。
材料の関係で2回分しか用意出来なかったが、果たしてどうか…
と、白音のビクンと身体が大きく跳ねた。
そして白音の身体の表面が薄皮のように白い膜に覆われ、間もなく罅割れて剥がれ落ちた。
膜が剥がれ切った白音の身体には、先程までの傷は一切残っていなかった。
「成功したみたいだな」
アスクレピオス直伝の製法はともかく、材料のいくつかが代用品だったから効果に不安があったが、どうやら杞憂だったみたいだな。
そうして脱皮のついでに汚れた服を剥ぎ、傷一つない綺麗な身体になった事を確かめてから予備のマントで白音を包んでおく。
「おい起きろ」
いつまでも寝コケてる転生悪魔の脇腹を軽く蹴飛ばして叩き起こす。
「オゴゴゴ‥」
起きたらなんか妙に痛がりやがる。
リアクションが派手なのは良いがいつまでも蹲ってんじゃねえよ。
「こいつが起きたらさっさとエルサレムから逃げろよ」
「ムガ!?」
それだけ言い残し、トライデントを手に俺は白音の借りを返すついでに聖四文字との決着を着けるため拠点を後にした。
舞沢君の現在装備
右手:トライデント、多節棍、
左手:リボルバー、ショットガン、???
胴体:タクティカルベスト
頭部:ハデスの兜
道具:???、???、???、ハイジェッター(残り一回)
次回はメインウェポン回収