「悪魔を殺して平気なの?」「天使と堕天使も殺したい」 作:サイキライカ
そしてすまぬ。
コンパクトに纏めきれず愉悦をお預けにしてしまって本当にすまぬ。
塔城小猫の失踪は、眷属として成長するため離れて修行していると言う形で収められ、そうして竜と悪魔の物語は辻褄を合わせながら進んでいった。
駒王学園の夏休みの際に冥界であったレーティングゲームの会合での『禍の団』の襲撃こそ無かったものの、リアス・グレモリーとソーナ・シトリーの対決は禁手化と更なる力を得た兵藤一誠の本来以上の活躍により、リアスはソーナを降して軍配を掴み勝利を納めた。
夏休みが終わり、『禍の団』と繋がりがあるディオドラ・アスタロトとのレーティングゲームでも、オーディンの不在というアクシデントこそあったが、転生天使となった紫藤イリナやデュリオ・ジェズアルド等の協力者と共にディオドラを討ち、その後現れたシャルバ・ベルゼブブも、覇龍への変異の代償を支払いながら兵藤は討ち取ってみせた。
そうして兵藤は
しかし、
しかしだ。
本来であれば磐石なる壇上は、邪悪に満ちた策謀により既に腐った古木へと差し替えられ、それを知らぬまま
くすくす くすくす くすくす
『葛』と名乗る存在は兵藤の道程を眺めながら厭らしく嗤う。
「あんじょうしてはりますなぁ。
せやけどぉ、大しておもろぉない管巻きぃはもう十分どす。
片目の御老神の件ものうなってしもうたからぁちぃっと酸っぱいかもしれへんけどぉ、仕込みぃも済んでもうたしぃ、そろそろいただきまひょかぁ」
艶やかな金毛の尾を揺らし、『葛』はにちゃりと笑みを歪めた。
「おいでやすぅ
あんさんらにはなぁ、英雄らしゅう聖書はんのぉ
「先生」
「気付いておるよ」
その日、偶然京都を訪れ偶発的に遭遇した『英雄派』の凶行を鏖殺を以て解決した白音と李は、ほぼ同時に異変を察知した。
「どうしたのじゃ?」
母を救った礼をと食い下がっていた九重は二人の変化に首を傾げる。
「異様な『氣』が『表』の方に撒かれたようだ。
放って置けば良からぬ禍となるだろう」
李はそう言うと然し態々関わる謂れも無いと考え、不意に白音に目を向ける。
「如何した白音?」
剣呑な空気を放つ白音に問うと、白音は振り向きもせず言った。
「先生。
どうやら此処が、私の結末の場所みたいです」
ドス黒い陰と清水のように澄んだ陰の『氣』を渦巻かせる白音に、李はそうかと頷く。
「では、儂とはここまでだな」
「お世話になりました」
師の言葉に白音は振り向いて膝を着くと、右手を包む拱手と感謝の言葉を捧げる。
全身で感謝を告げる白音に李は莞爾と笑う。
「お主ほど筋の良い弟子は久方ぶりであった。
次に見えたなら、死力を尽くしどちらかが果てるまで拳を交わそうではないか」
言外に次に会ったら殺すと言う李に白音は是非にと応じる。
「では、お達者で」
「うむ」
そうして白音はその場を去っていった。
「なぁ、仙人殿」
そんなやり取りを見ていた九重は堪らず尋ねる。
「お主ら師弟なのじゃろ?
なのに今のは…」
まるで理解できないと言う九重に李は可可と笑う。
「仙道を修めど、儂の本質は業に魅入られそれを極めんとした修羅よ。
故に、強き者が居れば誰であろうと死合わずにおれんのじゃ」
「それが愛弟子でもなのか?」
手塩に掛けた者さえ殺すのかという問いに応ともと嘯く。
「弟子だからこそ、儂を越えて更なる境地に至るやもしれん。
そう思うとな、疼くのよ」
語るに連れ、李の頬は自然と吊り上がっていく。
「此奴を殺せれば儂は更なる高みに至れるかもしれんと。
そう思えば、是が非にでも殺したくて堪らなくなるのよ」
先程までの好好爺然とした彼と、同一人物とは到底考えられない狂気を纏う李書文。
ごきりと指を鳴らし笑うその顔は正に鬼。
殺戮の喜悦に酔い、生死の狭間にこそ愉悦を感じる悪鬼の貌であった。
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修学旅行で京都を訪れた兵藤は、何事もなく一日目を終え、その夜、アザゼルに連れられ京都入りしていたセラフォルー・レヴァイアタンと再会していた。
「レヴァイアタン様はどうして京都にいらっしゃったんですか?」
「京都の妖怪さん達と協力体制を結びに来ました☆」
そう語るセラフォルー。
「日本の妖怪さん達は皆中々話を聞いてくれなかったんだけど、この地の妖怪さん達を纏めている九尾の御大将から色好い御返事が来たのよ☆」
「京都の隠れ家は妖怪連中の隠れ里の中でも最大規模だ。
ここの協力を得られるなら、他の隠れ里との話し合いも視野に入れられるだろう」
セラフォルーの話にアザゼルが注釈を重ねる。
「へぇ…あれ?」
料理を食べながら話を聞いていた兵藤は、そこである疑問を覚える。
「アザゼル先生。
冥界は日本神話とはどうなってるんですか?」
兵藤のその言葉に、二人は難しい顔をした。
「何もない」
「へ?」
「というより、奴等は徹底的に地上との関わりを避けているんだよ」
テーブルをとんとんと叩きながらアザゼルは言う。
「最後に俺が奴等の姿を見たのは3000年も前だ。
その後も俺達堕天使の侵入を妨げる代わりに奴等の聖剣を移譲されたのも、アララト山で
まるで地上に関心を持たない彼等が分からないとアザゼルは酒を煽る。
「だがそれも過去の話だ。
京都と協力体制を敷ければその内日本神話とも協力体制を結べるだろうな」
そう締め括るとアザゼルはその場の全員にもっと騒ぐよう煽り、京都の夜は更けていくのであった。
因みに作中李書文を殺せる可能性があるのは、原作のクロウ・クル・ワッハ以上からです。
サーゼクス? 普通に返り討ちですがなにか?
次回は決着まで……いけたらいいなぁ