「悪魔を殺して平気なの?」「天使と堕天使も殺したい」 作:サイキライカ
なお、裏京都に着いて独自解釈満載です。
二人は葛が何を言ったのか理解出来なかった。
「まあ、そういぅ事ですぅでぇ、縁が無ぁったとお引き取りゅう下さいな」
その口許に愉悦を滲ませながらそう嘯く葛に漸く理解が追い付いてきたアザゼルは、その苛立ちを隠すことなく吐き捨てるように言う。
「お前等、『禍の団』を放置する意味が分かって言っているのか?」
正面を切って愚弄されていると受け取り怒るアザゼルをセラフォルーが制する。
「ストップアザゼルちゃん。
気持ちは同じだけど、少しだけ我慢してね☆」
「しかしだな」
いっそ力に訴えてやろうかとさえ考える程に苛立ちを抱えたアザゼルを下がらせ、セラフォルーは改めて葛に向き直る。
「どういう事なのか教えてもらえるわよね☆」
態度を崩さずそう発するセラフォルーに少しだけ体を見せる葛。
「なんやぁ? いきりぃたって乱暴してくるぅ思ったんやけどなぁ?」
「これぐらいで怒ってたら外交なんて務まらないわ☆」
でも、とセラフォルーは続く。
「何にも教えてくれないと、私もちょっっと過激にやっちゃうかもね☆」
内容次第で武力も用いると茶化すセラフォルーに、葛はせやなと応ずる。
「まあ、別立て隠すぅ事でもあらしまへんしぃ、そこまで言ぅならきっちし話したる」
そう言うと葛は指を一つ立てる。
「理由は三ぃつ。
一つぅは、今回の件は全部八坂の独断やっちゅうこと。
そもそもぉ、裏京都に他所様に貸すよぉな剛のもんの人手なんてあらしません。
そないなとこに力だぁなんやとお貸しなんて出来まへんて」
そう語る葛をアザゼルは否定する。
「そんなわけないだろ。
少なくとも裏京都の要の総大将は竜王クラスでも遜色は無い筈だ」
「あんさん阿呆かぁ?
総大将が竜王にぃ引けを取らんやっちゅうたら、他にも当然おるやろぉなぁてそない訳あらへんよ。
それともぉ、堕天使ちゅぅんは他に強ぉもんがいなぃなら、裏京都がどないなぁてもかまいやしぃへんちゅぅて、結界の要の総大将引っ立ててくぅ積もりなん?」
「ぐっ」
「そもそもぉ、裏京都は妖ぃの隠れ里の中では下から数えぇような弱小どす。
戦働きぃ期待すんならぁ、裏京都なぁ目ぇくれてへんで広島の山本はんや四国の犬神はん、それか水戸の土蜘蛛はんや奥州の迷い家の天狗はんたちにあたるほぉがええでぇ?」
「弱小だと?」
竜王クラスの長を抱えておきながらしゃあしゃあと嘯く葛にアザゼルは疑問を発する。
「せや。
よぉ考えて見ぃ?
なぁして国の生き神様がおわすぅ所に、人間喰ぅてまうよぉな輩の棲み家があるん?」
「それは……裏京都が京都の結界の要の一つだからだろうが?」
アザゼルが知識から導き出した答えに葛はちゃうと否定する。
「答ぇは逆や。
折角やからぁ、この裏京都ちゅう場所についてぇ少し話したる」
そう前置き葛は語る。
「この裏京都が出来たんぅは、今から大体千年前や。
そん時、京都にぃは一人の陰陽師がおったんや。
名ぁを晴明ちゅうんやけど、知っとりはりますか?」
その質問にセラフォルーが答える。
「知ってるわよ☆
サーゼクスちゃんが『悪魔の駒』の完成が間に合ってれば安部晴明も眷属に加えたかったって悔しがってたもん☆」
その答えをさよかと流して葛は話に戻る。
「その晴明のおっかはんなぁ、名ぁを『葛の葉』ちゅう妖狐なんよ。
ところであんさん等は坂田金時ちゅうお侍さんは知っとりますよなぁ?
それともぉ、足柄山の金太郎の方が通りが良いでっしゃろか?」
「……まあ、名前ぐらいはな」
「ならええどす。
んでや、こぉの金時もなぁ、おっかはんが山に住む鬼女やったんやけどぉ、そのおっかはんなぁも
鬼やからちゅうて殺されとるんよぉ」
何が愉快なのか葛はクスクスと笑いながら語る。
「んでぇ、焦ったんはぁ晴明や。
例え宮仕えのお侍さんのおっかはんやろぉと、妖怪はぁ生かしてくれへん。
せやぁたらお手前は?
言うまでもなぁ関係あらへんわ。
それどころぉか、狐ちゅうことでぇ執拗に追われるやろぅて頭抱ぇたぐらいやわ」
「狐だから?」
「せや。
なんぼぉか前に『玉藻の前』っちゅう九尾の大狐がぁえらい悪さぁしおったきにぃ、人間が京都一帯の狐皆殺しにしはったんよぉ」
その様を思い出したように更に笑いを深くする葛。
何故それが笑いのツボに入るのか、どうしても理解できなくて引く二人を尻目に葛の話は続く。
「せやから晴明は一計図ったんよ。
この国におわすぅ狐を神仕とするぅ『宇迦之御魂神』のぉ御力を借りてぇ、母親を基点とする『幽世』を京都のど真ん中に作ってもうたんやぁ」
「それが、裏京都の始まりだと?」
ここまで来れば誰でも解る答えにせやでと葛は頷く。
「その後、稀にぃ入り込んでくるぅもんが居着ぅたりして規模がちぃっとずつぅ大きゅうなってたんやけどぉ、明治ぃの焼き畑で表ぇ居ずらぁなったもんが一気にきおってなぁ。
今では御覧の有り様どすぅ」
そう締め括る葛。
これまでの話から二人は裏京都は成り立ちは古くても勢力として見れば烏合の衆だとはっきりと理解は出来た。
「せやから、腕にぃ自信があるいぅもんが全くおらへぇんとは言いませんがぁ、少なぁともお貸しぃするよぉなアテはあらしませんなぁ」
そう言いきる言葉にセラフォルーはニッコリ笑う。
「それなら仕方無いわね☆」
でもと続く。
「私達は別に戦力だけが欲しい訳じゃないの☆
勿論借りれるならそれに越したことは無いけど、どちらかと言うと貴方達には他の勢力とのお話の仲立ちをお願いしたいって思ってたの☆」
「他のぉどすか?」
「そうよ☆
一番は日本神話ね☆
さっき言ってたウカノミタマちゃんとは、今も会ったりするのかな?」
「いんやぁ。
『宇迦之御魂神』はぁ信仰をちいっと利用しはるんを黙認しとるだけやぁ。
あんの神はんは人にぃ甘い御方どすぅんで、自分に害ぃはなく晴明が死後日本神話の使い走りにぃなるぅて約束したから見逃しとるだけやて、裏京都とぉは実際無縁も同じぃや」
「そっかぁ…」
残念という体を大仰に身体で表すセラフォルー。
そんなやり取りに苛立ちを抑えてアザゼルは問う。
「で、二つめってのは?」
「単純にぃ、あんさん等を疑ぉとるからどす」
「あぁ?」
三大勢力が信用できないと言い切る葛に語気を荒くするアザゼル。
「せやかてなぁ、うちらぁも『禍の団』ちゅう連中についてぇはツテを通して色々調べましたんやけどぉ、調べぇば調べぇるほど、あんさん等が疑わしゅう思えますんよ」
「どういうことかな?」
「うちらのぉ調べぇたとこによるとぉ、『禍の団』はぁ主によぉろっぱ、あふりか、アメさんの土地でやらかしとりますよなぁ?」
「……ああ」
肯定しながらアザゼルはそのツテとは何かと頭を巡らせる。
しかし葛の言葉がそれを遮る。
「それっておかしゅうちゃいますか?」
「何がだ?」
「てろりすと云うんは、弱小がぁ強ぉもんにぃちょっかいかけるもんやろぉ?」
「其れの何処がおかしい?」
「だったらなぁして唐や天竺に殆どちょっかいかけてへんのや?」
「それは、」
「それにぃ、被害に遭ってるのは殆どぉがその地ぃの土着の神さんばっかしやぁ。
こんなんはてろりすと言わへんで只の弱いもん苛めや」
そう言い切る葛。
しかし其れにセラフォルーは異を唱える。
「そんなこと無いわよ☆
私達三大勢力だって被害に遭ってるわ☆」
「せやな。
でぇも、それやって地上のあんさん等に直接害の及ばんもんか、あんさん等が『英雄』いうて喧伝しとる赤龍帝の近くばっかやないか」
「それは…」
その言葉にセラフォルーは一瞬二の句を失う。
そこに葛は更に畳み掛ける。
「でぇや、なにより信用でけへんよぉなったんは、黒鳩はん。あんさんや」
「俺が?」
「せや。
あんさん等の中でぇ『禍の団』の尻尾掴みはったんはぁ堕天使やったんやろぉ?」
「……ああ」
今更隠しだてするようなことでもないと肯定するアザゼルに葛は問う。
「ほんでぇ、当然その設立者も掴んではりますよなぁ?」
「…………」
何を言いたいのか察しアザゼルは苦虫を噛み潰してしまう。
「アザゼルちゃん?」
その顔にいぶかしむセラフォルーの前で葛は問う。
「そないなぁお顔で今更知らんっちゅう事はあれへんよなぁ?」
今更隠そうものなら三大勢力の和平にさえ皹が入りかねないとアザゼルは観念して答えを口にする。
「『禍の団』を設立したのは『神の子を見張るもの』を離反したサタナエルという堕天使だ」
書いてて葛の口調がぶれてる気がしてきた……
次回はメインディッシュをお持ちします……が、すみませんが艦これイベント走破を優先させてつかぁさい!!