「悪魔を殺して平気なの?」「天使と堕天使も殺したい」 作:サイキライカ
真実や史実と異なるという前提でお願いします。
それと天津神も登場しますが伏して真名はお控えください。
昔話をしてやるよ。
今から三千年ぐらい前のエルサレムの話だ。
当時のエルサレムは多くの神の顔が並んだ、宗教の自由が許された国だった。
それを容認したのがソロモン王だ。
当時はまだ神の擁護も無く人が生きていくには厳しい時代だった。
ソロモン王は聡明にして賢明だった。
信仰を強要しても神と神、なにより人同士で軋轢が生じるだけだと分かっていたソロモン王は民に信仰の自由を与え、代わりに勧誘に制限を設けることで神と人の軋轢を最小限に抑えて見せた。
だからこそ神々はソロモン王を認め、宗教の垣根を越えて協力することさえあった。
だが、そんな理想都市も長くは続かなかった。
当時の聖書勢力は新興の弱小勢力に過ぎず、ソロモン王が信仰しているとはいえ一神教という性質から横への繋がりも薄く、神の中でもその立場はかなり低かった。
それに不満を抱いたのが天使達だ。
天使達は自分の主がその位を高めるにはどうするべきかと考えた。
そして、至ったのだ。
「私達を高めるのではなく、他の神を貶めればいい」
と。
後は転がり落ちるだけだった。
天使達はソロモン王に命じた。
神の代命と嘯き、『他の神を貶めよ』と。
断るならば、信仰の証としてシバの女王を主へと捧げよとさえ言った。
ソロモン王は苦しんだ。
この国を支える数多の神を裏切るか、それとも心から愛した女を失うかの板挟みに曝され、狂う寸前まで追い詰められた。
その果てに……ソロモンは愛を選んだ。
神々を欺き壺へと封印して壺を湖へと捨てた。
この時ソロモン王は考えていた。
封はすぐに解かれるだろう。
それまで天使を抑えていれば被害はやり直せる程度で済むと。
それがどれだけ甘い算段か、いや、天使が主のためならばあらゆる悪逆さえ正しいことだと信じている存在だったと知らなかった事がソロモン王の最大の過ちだった。
ソロモン王が神々を封印した直後、天使は主が生み出したアダムのあばら骨から作ったリリスを使い、封印した神と同じ名を持つ『悪魔』を生み出した。
悪魔はそれぞれ与えられた神の存在を騙り暴れ尽くした。
神殿を破壊し、民を殺し、信仰を奪い尽くした。
封印された神々が解放された時には、かつてのエルサレムはもう何処にも無かった。
信仰を奪われ信徒を殺された神々は迫る消滅の末路を怒り、残る力を振り絞り聖書の神を、仕える天使を、紛い物を、エルサレムを、ソロモン王を呪った。
後は歴史が語る通りだ。
エルサレムは複数の宗教勢力が己の物だと争う地獄となり、信仰を喪った神は消えて同じ名を持つ悪魔だけが残った。
他の呪いはどうなったか?
天使は色欲を知って堕ちるようになり、悪魔は欲望を知って手綱を振り切り更なる暴虐を始め、聖書の神は慈愛と傲慢の境界を喪い傲り昂り、そしてソロモン王は……愛を喪った。
「此れが真実だ」
そう言い終えると白音は悼ましそうに顔を歪めていた。
「どうして、貴方はそれを知っているのですか?」
「なんだ、信じるのか?」
「……そんな辛そうな顔で嘘を言うとは思えません」
「……」
忘れられないってのは、つくづく厄介だな。
「俺は前世を忘れられないんだよ」
「……」
「何度も生まれ変わった。
いいことも悪いことも数えるのが面倒なほどあった。
俺は、それを全部忘れられないんだよ」
「それは……何年もなんですか?」
「最初の記憶はメソポタミアだって言ったら信じるか?」
「信じます」
茶化してみたが、白音は即答しやがった。
厄介な空気になってきたのを察した俺は本題に入ることにした。
「とにかく約束は約束だ。
立川流でもカーマ・スートラでも望むだけ教えてやるよ」
「私が知りたいのは仙術です」
空気を混ぜっ返すため下ネタに走ったのだが、どうやら通じなかったらしく素で返してきやがった。
「へいへい。
んじゃまあ、コースを決めるか」
「コース?」
「ああ。
大まかに三日、一月、百年の三種類だな」
「なんでそんなに極端なんですか」
へぇ、中々キレのある返しをするじゃねえか。
「内容が極端だからな。
それぞれのリスクだが、三日は死ぬ確率が高くて一月は一生ものの怪我をする確率が高くて百年はとにかくめんどくさい。
因みに期限の理由は芽が無けりゃあそれ以上やっても無駄だからだ。
お勧めは一月だな」
「中身をもっと詳しく教えてください」
「ったく、我が儘な」
取り敢えず空気は入れ換えられたか。
「見つけたぞ!!」
改めて説明しようとした矢先にそれを遮る声が割って入った。
聞き覚えのある声に俺は素で驚いた。
「うーちゃん!?」
そちらを見れば子狐を連れた小麦色のワンピースの中学生程の少女がいた。
「おんし、散々妾が喚んでおるのになぜ応えぬのじゃ!?」
「え?」
そううーちゃんが言うも心当たりはない。
「いや、烏は来てねえんだが?」
「携帯のほうじゃ!!」
「え?
あー……」
そう言われて漸く合点が言った。
「悪いうーちゃん。
昨日充電し忘れて家に置きっぱなしにしてたわ」
今日白音は来ないだろうとたかを括ってたからすぐに戻るつもりで置いてきたのだ。
「……まったくお主は妙なところで抜けておるの」
事情を納得してくれたようでうーちゃんは深く溜め息を吐いた。
「詫びにクレープ奢るから許してくれよ。な?」
「チョコとイチゴとパイナップルで許してやろう」
「ありがたやありがたや」
そんなもので許してくれる辺り本当にうーちゃんはお優しいことだ。
タケさんなら大吟醸十本からだからなぁ…
「あの、」
うーちゃんの登場ですっかりおいてけぼりを食らった白音が恐る恐る声を発した。
「もしかして、日本神話の神ですか?」
「そうじゃ!」
俺の態度から察したのだろう確認を取る白音。
俺が説明するより先にうーちゃんがふんすと胸を張る。
「今こそはこのような童の姿じゃが、妾はまごうことなき天津神の一柱じゃ。
故あって真名は未だ明かせぬ故、うーちゃんと呼ぶがよい」
「……あの」
助けを求める視線に俺は色々どうでもよくなり素直に助け船を出してやることにした。
「細かいことは気にせず言われた通りに呼べばいい。
敬意さえしっかり抱いていれば多少崩してもうーちゃんはそう怒る神じゃねえ」
侮れば父親のタケさんが許しちゃおかねえからな。
タケさんは特にうーちゃんを大事に思ってるから、うーちゃん泣かせた日にゃあ嵐で犯人もろとも周辺が更地になるだろうな…。
「分かりましたうーちゃん様」
「様はいらんぞ」
「うーちゃん」
「うむ」
納得したと應揚に頷くうーちゃん。
「で、態々こっちに来るなんて何かあったのか?」
祟神の件で忙しいだろうにと尋ねるとうーちゃんは真剣な目で俺に言った。
「事代主が主宛に神託を下したのじゃ」
「…拝聴します」
どうやら本気で聞かなきゃまずいらしく俺は膝を突いて聞く体勢を取る。
「『藤の花が散る迄に猫魈を仙猫へと育て上げよ。
怠れば汝が悲願叶わぬぞ』とのことじゃ」
「…承知しました」
どうやらまた厄介なことになったな。
期限も殆ど無いのに当ては無し。
相変わらずハードなこって。
「それとお主もじゃ猫よ」
「私もですか?」
「うむ。
『家族の想いを知れ』だそうじゃ」
「……」
その言葉に白音は混ざりすぎて変な顔をしてやがる。
大方、家族関係に思い違いから来る歪みでも抱えてんだろう。
「用も済んだし妾は帰るぞえ」
「クレープはいいのか?」
「主も妾も今は忙しい故、後日改めて馳走になろう」
そう言うとうーちゃんはお供を連れて帰っていった。
残された俺達はどうしたら良いかと考え、取り敢えず目先から考えるために言った。
「白音。
悪いが予定が変わった。
速攻で仕上げるために三日コースを受けてもらうぞ」
「……何をするんですか?」
うーちゃんの話が頭から離れないらしく話し半分になってるが時間がないのはこっちも同じだ。
「sex」
「……え?」
「立川流をベースにまぐわいを通して太極を体感させて経を啓く。
腹上死したくなきゃ死ぬ気で目覚めろ」
逃げようとする白音の経絡に氣を流し込みスタンガンの要領で拘束するとそのまま担ぎ上げる。
「待ってください!!
私その、初めてなんです!?」
「安心しろ。
俺も今回は初めてだが経験自体は豊富だ。
処女でも涅槃に届かせる業はいくらでも知っている」
「そうじゃなくてエッチなのは好きな人とするべきです!?」
「友愛でsexするのはソドムの常識だ」
「それ駄目なやつですよ!?」
「聖書の倫理観ならな」
喚く白音を柳に風と受け流し、俺はそういうのに使えるセーフハウスへと向かう。
そして三日後。
「……責任取ってください。
嫌だと言っても、来世に逃げても必ず捕まえて責任取らせます」
三日三晩ヤり続けて仙道の基礎に到達した白音は色々目覚めた状態で俺にそう言った。
三日コースの内容?
コメント返せないぐらいの要望があったら書くかも。
因みに一月はバトルで覚醒、百年は調息から始めてひたすら太極拳やる予定でした。