「悪魔を殺して平気なの?」「天使と堕天使も殺したい」   作:サイキライカ

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前回のあとがきで盛大に自爆した……

笑えよ。

自分を安くみてた俺で愉悦に愉悦された俺をさぁ!?()


うぜぇ……もうそれしか言えねえ

 

三日の荒行の後、翌日が日曜だったからついでとばかりに更に基礎の基礎の最低限を叩き込むのに使い、次の週になってから俺は登校した。

 なんでか白音と同伴しながら。

 

「おい、あれ……」

「嘘だろ……?」

「なんで転校生が塔城と一緒に登校してるんだ!?」

 

 予想通り開幕からこれだ。

 

「おい、離れろよ」

「嫌です」

 

 人の腕にべったりくっつく白音にそう言うも匂い付けでもするように腕に擦りつく白音。

 

「あの野郎、小猫ちゃんに羨ましい……」

 

 広域範囲知覚をするでもなく妬みと嫉妬の感情が俺に向けて犇めいている。

 いっそ、爆破テロでも起こして廃校に追い込んで……って訳にもいかねえか。

 

「小猫ちゃんから離れて!!」

 

 ますますやる気を無くしていた所で案の定グレモリーの下僕共が噛みついてきた。

 

「よく見て物を言え。

 こいつが引っ付いて離れねえんだよ」

「よくも小猫ちゃんを拐ってくれたね」

「人の話聞けよ」

 

 視野狭窄通り越して異星人にでも転向したのかって聞きたくなる勢いで木場が殺気混じりに木刀を向ける。

 誘拐云々は否定出来ないがな。

 

「こいつに何をされたのかは聞かないわ。

 だけど日本神話の手先となんか一緒にいても不幸になるだけなのよ!!」

「朱乃先輩……」

 

 見ていて笑えるぐらい必死にそう喚く奇乳悪魔に白音が俯く。

 ……なんなんだろうなこの茶番?

 

「めんどくせえ」

「あっ」

 

 付き合ってられなくなり白音を振りほどくと俺は懐から紅い棒が幾つも繋げられた多節棍を抜く。

 そのままギミックを起動し連結して全長二メートルほどの一本の棍へと姿を変えさせる。

 

「気に入らねえんだろ?

 だったらこいつ(・・・)でケリ付けてやるよ」

 

 腰を落とし相手から半身の体勢でそう嘯いてやる。

 

「驚いたな。

 拳だけだと思ってたよ」

「なんでもやるだけだ。

 俺は、弱っちい人間だからな」

 

 呼吸を一つ。

 丹田を回し氣を集約。

 棍の『本性』は見せずただの棒として偽る。

 空気が張詰め、木場も遊びではないと木刀を構える。

 突如始まった決闘に周囲までもが固唾を飲んでその結末を期待する。

 まあ、流石にこのままとはいかせないよな?

 

「そこまでです!!」

 

 これだけ大事になりゃあ生徒会が動かねえ筈もなく、割って入るシトリーの姿に俺は狙い通りと棍を解体し構えを解く。

 

「一体どういう事ですか?」

「向こうが突っ掛かってきたから対応したまでだ」

「……本当ですか塔城さん?」

 

 周りを見て、現状最も中立であっただろうと当たりを付けたシトリーの問いに白音はまっすぐはいと頷く。

 

「小猫ちゃんどうして……?」

 

 向こうからしたら裏切られた気分なのだろうが俺はどうでもいいと校舎に向かう。

 

「ちゃんと手綱は握っといてくれよ?」

「……」

 

 嫌みったらしくわざとそう言い捨て教室へと向かう。

 今朝の騒ぎが既に伝わっているらしく、絵に描いたような針の筵に逆に愉快とさえ思いながら適当に授業を聞き流していく。

 

「舞沢さん」

 

 昼になってたまには購買にでも顔を出すかと席を立ったところで白音が教室に来た。

 

「お昼を一緒にいいですか?」

 

 ざわりと教室が五月蝿くなるのが煩わしく思い俺は拒否した。

 

「屋上で寝るからパス」

 

 それだけ言うと脇をすり抜け屋上にと見せかけ人気の無い校舎裏に逃げる。

 

「なんでこんなめんどくせえ事しなきゃなんねえんだ?」

 

 上からも言われたし修行だからと丁寧に蕩けさせ過ぎたせいか、白音の奴はべったりくっついてうざったいし、そのせいで悪魔共は更にめんどくせえ事になってやがる。

 もういっそ、白音も含めて殺しちまうか?

 別に白音が件の妖猫とは限らねえんだし、今からでも他の妖猫を探してみるのも手だな。

 

「まあ、それはそれとしてだ。

 覗きは楽しいが覗かれるのは趣味じゃねえんだよ」

 

 軽身功で壁を蹴り高く跳躍。

 同時に多節棍を抜いてチャクラを3つ回し氣の索敵の精度を高める。

 

「そこか!!」

 

 捉えた微かな気配に向けて多節棍を振り抜くが、相手は壁を蹴って棍を回避。

 そして更に何もない空間を足場に三角飛びの要領で死角に入ると鞭のようにしなる、体勢からおそらく蹴りを放つ。

 

「ちいっ!?」

 

 回避は間に合わないと軽身功で軽くなった身体を蹴りに合わせて反らし可能な限り合気でダメージを無くす。

 ミシリッ

 

「ぎっ!?」

 

 糞が!?

 トラックに跳ねられても無傷でやり過ごしてやった技の上から骨まで届くなんてどんな馬鹿ぢか……違う。

 

「太極……いや、白音が言ってた闘気だな?」

 

 妖怪上がりの邪仙でも使わねえような大周天のなりそこない。

 周りから無尽蔵に氣をかき集めて振り回すだけのニトロのような拙い業。

 屋上まで下がりそう考察をすると、仕掛けてきた相手も昇ってきた。

 

「正解にゃん」

 

 聞いていたらしく襲撃者、黒い着物を無駄にエロく着崩した女は両手を猫の手にしてポーズを取る。

 

「いきなりのご挨拶だな?

 何もんだ?」

 

 正直買ってる恨みはダース単位であるので理由が思い当たりすぎる。

 

「つれないにゃあ。

 せっかくこんな美人が可愛くしてるんだから少しは付き合ってにゃ」

 

 キャラ作りうぜぇ。

 が、待てよ?

 よく見りゃ白音にどことなく似てるか?

 それに頭に付いてる猫の耳も修行中()に白音から出たのとそっくりだ。

 だとしたら……ああ、そういう。

 

「はぁ、めんどくせえ」

 

 構えを解いて天を仰ぐ。

 うーちゃん、いや、今回は事代主神か?

 なんか俺、怒らせるようなことしたかよ?

 

「急にどうしたんにゃ?」

「お前、塔城小猫の身内だろ?」

「にゃっ!?」

 

 さっきまでの剣呑さがどこに言ったんだと言いたくなるぐらい露骨に狼狽える猫。

 

「そそそそそそんにゃことにゃいにゃ」

「キャラ作り止めるかせめて日本語で喋れ」

 

 レパートリーならセム語からイス人のまで網羅してるから理解できるならなんでもいいけどよ。

 

「と、とにかく私と白音はにゃんの関係も…」

「なんで塔城小猫の本名知ってんだ?」

「にゃあ!?」

 

 わざと通しの名を口にしたのにあっさりボロを出す女。

 こいつ、本気でテンパると一気にダメになるタイプか?

 いや、あんな状態でもいつでも逃げられるよう身体はなってるから相当修羅場慣れしてんな。

 となると下手に仕掛けるより口で引っ掻けたほうがやり易いな。

 

「で、三日三晩かけてヤり倒した白音の姉ちゃんが何の用だよ?」

「ああ"?」

 

 うわ、一気に沸騰しやがったよ。

 一周回ってなんか面白くなってきたな?

 

「あんだよ?

 別に白音が誰とヤろうが本人の勝手だろ」

「あんた、死にたいみたいね?」

「お前と白音は赤の他人なんだろ?

 だったらますますお門違いだろうが?」

「私はお姉ちゃんとして白音を幸せにする義務があるね!!」

 

 吐いたな?

 

「く、くはははははは、あひゃひゃひゃひゃひゃ!?」

「何が可笑しい!?」

 

 作ってたキャラを投げ捨てて激怒する女に心底くだらねえと馬鹿笑いする。

 

「幸せだって?

 あいつがテメエに捨てられてどんな生活してたか知ってて言ってると思うと可笑しくてしかたねえよ!!」

「ぎぅ…」

 

 思い当たるらしく歯を軋ませて唸る女。

 ああ、こんな馬鹿みてえなすれ違いなんかもう見飽きてんだよ。

 

「なんなら未来を言い当ててやろうか?

 テメエの事だ。

 なんかの機会を見計らって白音にだけ解る印かなんかで誘き出して連れ去る気なんだろ?」

「っ!?」

 

 露骨に目を見張る女にますます笑いが込み上げる。

 

「その後なんかよくある話だ。

 姉の説得虚しく憎悪にたぎった妹は姉を詰り、そんでもって妹のお友達が割り込んで大乱闘。

 最後はみんなくたばってさあおしまいってな」

 

 シェイクスピアでも取り上げねえ在り来たりすぎる三文悲劇。

 ああ、実にくだらねえなぁ。

 

「笑うな!!??」

 

 顔を真っ赤にして女が叫ぶ。

 

「私だって白音を連れていきたかった!?

 だけど悪魔から逃げるためには置いていくしかなかった!!

 二人で生きていたくて、そうするしかなかった私の苦痛を他人のお前が笑うな!!??」

 

 感情が荒れ狂って目尻に涙を浮かべながら叫ぶ。

 叫ぶ女に俺の馬鹿笑いがピタリと止まる。

 

「笑うに決まってんだろ?」

「殺してやる」

 

 殺気立つ女だが、これが笑わずにいられるか。

 

「姉様…」

 

 悲劇が一瞬で喜劇に変わる様を、腹を抱えて笑わねえで何が人生だ。




つまらない悲劇よりくだらない喜劇のほうがまだ見てられる主人公君。

新武器の正体は勿論……

木場と朱乃?

もうすぐワインの肴になるから好きにさせてあげようよ(暗黒微笑)

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