「悪魔を殺して平気なの?」「天使と堕天使も殺したい」   作:サイキライカ

72 / 79
そろそろ仕上げに入りましょうか。

と言う訳で雑魚戦はカット。


Another IF『英雄派』【で】遊ぼう(7)

 排莢、装填、射撃。

 

「チクショウ! チクショウ!!」

 

 排莢、装填、射撃。

 

「どうして…俺はまだ何も…」

 

 排莢、装填、射撃。

 

「イヤだ、死にたく…」

 

 排莢、装填、射撃。

 

「助け」

 

 排莢、残弾ゼロ。

 

「……一発も避けられねえのか」

 

 最後の一発を撃ちきり、俺はその成果を残念とさえ思った

 戦争嫌いの日本製らしい要求される要件を満たしたそれなりな狙撃銃による、努力で到達出来る程度のそれなりの腕によるスナイピングの結果、用意されたライフル弾は一発も外れることなく『英雄派』の構成員を人間『だったもの』にした。

 

 策を弄した。罠を仕掛けた。優位を与えず一方的に仕留めた。

 

 たったそれだけで『英雄派』は死んだ。

 まるで雑兵のように、主人公に蹴散らされるその他大勢のように、なんの見せ場もドラマも無く、只々死んだ。

 

「………」

 

 そんな奴等に身下す感情さえ割くことなく、最後の仕上げに向かう。

 コツリ、コツリ、と態とブーツの足音を響かせ結界の中心にあたる二条城の門を潜る。

 

「こっちか」

 

 待ち構えるように動かない『氣』を追ってそちらに向かうと、『英雄派』の最後の一握りである曹操、ジャンヌ、ヘラクレス、ジークフリードが待ち構えていた。

 

「多くの同胞がお前一人に倒されたのは想定外だった。

 認めよう。俺たちの完敗だ」

 

 そう言った曹操は、しかし「だがそれもここまでだ」と掌を返す。

 

「同胞を倒すためにお前はどれだけ手札を切った?

 銃の弾薬、爆弾、暗器や罠も殆ど使い果たしたんじゃないのか?」

「…へぇ?」

 

 その問いに俺は思わず感心の声を漏らした。

 確かに手持ちの大半は吐き出しているし、残りも槍も回収できていないから豊和で代用している程度に手札は少ない。

 

「俺の手札を削るために仲間を使い潰したのか?」

「安くない代償だが、それでもお前を殺すためには必要な犠牲だった」

「そうかい」

 

 阿呆が。

 お前達の本当の勝利条件は、俺の情報を抱えた奴が一人でも逃げ延びることだったんだよ。

 そうなれば俺の今までの某が聖書陣営に漏れただろうし、兵藤は俺を絶対に許せない敵と看做してそのまま俺は明確な()()()()()()として、『茶番劇』に排除されていた筈だ。

 そんな唾棄を腹に飲み込み、記憶にある『槍』を肩に掛ける曹操に水を向ける。

 

「で、()()がお前の神器か?」

「ああ。神滅具『黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)』。

 神の子を殺した槍だ」

 

 そう自慢げに嘯く姿に、手に力が入りすぎて担いだ豊和がミシリと悲鳴を上げる。

 

「ところで何だが、最後に聞いていいか?」

「なんだ?」

 

 正面からなら負けはしないとでも思っているのか、悠長な態度を見せる曹操に感情に蓋をして俺は尋ねる。

 

「お前らさ、英雄になるって意気込んでるけど、()()()()()()()()()()()()()()()

「どうするつもりだと?」

「『英雄』になったからって人生がエンディング迎えるわけじゃねえんだし、その後はどう生きるつもりなんだよ?」

 

 赤い帽子の配管工なんかを見れば分かる通り、美女を攫ったゴリラを倒そうが、姫を攫った亀を懲らしめようが、偽物の黄色帽子を返り討ちにしようが、配管工はその後も弟と一緒に配管工を続けている。

 つまりだ、

 

「『英雄』は()()であって()()じゃねえ。

 だからあるんだろ? 『英雄』になった後でどんな仕事をやりたいかって夢が。

 農家だろうとプロレスラーだろうとアイドルだろうと、今回だけは笑わねえでやるよ。

 だから聞かせろよ。

 お前達が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 人の夢を笑えるような御大層な人間じゃないと誰よりも知っているからそう言ったのだが、しかし、帰ってきたのは揃いも揃って痛いところを突かれたと言わんばかりの間抜け面を晒したままの沈黙だった。

 

「……そうかい」

 

 よもやここ迄阿呆だったとはな。

 手間を掛けたんだし一つぐらいは汲んでやるかという気紛れを捨て、完全に興味を無くしたまま豊和を槍に見立て構える。

 

「来いよ。空っぽ共が」

 

 そう煽ると、巨大な影が一歩前に出た。

 

「一人で殺らせろ曹操」

「待てヘラクレス!」

 

 総掛かりでやるべきだと制する曹操を無視し、ヘラクレスがバカ正直に突っ込んできた。

 

「くたばれぇ!!」

 

 怒りの形相で大上段から拳を振り下ろすヘラクレスに、俺は間抜けと思いながらパリィを敢行しようとし、構えた瞬間背筋に冷たいものが走った。

 

(そういえばコイツの『神器』はなんだ?

 頭に血が昇り過ぎて起動していないなんてことは流石にないはず。

 だが見た限り装備型では無い。

 同じく自立型でも無い。

 邪眼に類する身体が変異するタイプでもない。

 ならば可能性は一つ、接触発動型!!)

 

「ちぃっ!!」

 

 体勢を崩さぬよう足首だけで真後ろへと跳んだ直後、ヘラクレスの拳が触れた部分を起点に爆発が生じ粉塵が撒き散らされる。

 

「この爆発…『巨人の悪戯(バリアント・デトネイション)』か?」

 

 だとしたら中々厄介だな。

 一見すれば攻撃型の『神器』だが、物理魔力を問わずにダメージを爆発装甲の要領で防ぐ防御兵器として使えば非常にえげつない活躍を見込める『神器』であり、師団級の兵力さえをも使い手のタフネスが続く限り単騎で押し留めることが出来る可能性を秘めている。

 なにより、戦闘の殆どが肉弾戦か銃火器に依存する俺との相性は最悪に尽きる。

 

「一目で見抜くか…やはりお前は危険だよアサシン」

 

 巻き添えを警戒してからか成り行きを見に回る曹操達に構う暇はなく、連続して繰り出されるヘラクレスの拳に触れまいと本気で回避に走る。

 

「オラオラオラ!!

 さっきまでの威勢はどこに行った!?」

 

 回避に専念する俺に調子に乗ったらしいヘラクレスが嘲りを込めた挑発を飛ばす。

 

「さてな」

 

 両の拳が引いたタイミングを見計らい豊和を廃棄して背中に隠し持ったマカロフを抜いて引き金を連続で絞る。

 パンパンパン!!

 軽い音が連続で響き9ミリパラベラム弾がヘラクレスの胴体に着弾するも、一発目の着弾と同時に爆発が生じ筋肉を破砕する運動エネルギーは纏めて消し飛ばされる。

 

「俺の筋肉は無敵だぁっ!!」

 

 粉塵を引き裂いて殴り掛かるヘラクレスの拳を躱しながら、神器のお陰だろうがと内心呆れつつ残りの連中に視線を向ける。

 曹操とジャンヌはヘラクレスを助ける気はないらしく、コーラとポップコーンが似合いそうな態度で眺めているばかり。

 巻き込まれるのは御免だという意識の現れか、ヘラクレスを信用しているのかのどっちかまでは分からないが舐め腐ってるのは変わらないだろう。

 ジークフリードの方は剣を何時でも振るえる体勢を取っているが、玩具を振り回したい餓鬼みてえな面からしてやはり加勢に出るつもりは無いらしい。

 

「余所見してんじゃねえぞ!!」

 

 幾度かで大体を見切り終え、避けようと思えば他愛もなく避けれる所を紙一重を意識しているのにも気付かないらしいヘラクレスは、無駄に大振りの拳打ばかり繰り返して吠える。

 そんなやり取りが少々飽きてきたから、少しは何か言ってやるか。

 

「脇が甘い。

 それに足腰の使い方もなっちゃいねえ。

 ただ筋力任せに振り回したって大して威力は出ねえぞ」

「っ!? 舐めるなぁ!!」

 

 折角アドバイスしてやったってのに、先程より更に雑に腕を振り回し始めた。

 

「クソッ!!クソッ!!クソッ!!

 テメエなんざ一発当たれば終わりなんだよ!!

 あの犬っコロみてえによ!!」

 

 と、余程気に入らなかったのか、あんまりにも()鹿()()鹿()()()()()口走り始めた。

 なので、少し腹がたった。

 

「お前さぁ、流石にそれはねぇよ」

 

 大きく間合いを離し、俺は肩を竦めながら吐き捨てる。

 

「あぁ?」

「叩きのめした相手を踏みつけながら言うならまだしも、勝てねえ相手に向かってそうほざくなんて、()()()()()()()()()()

 

 そう厭らしい笑みを浮かべると、ヘラクレスはひくひくと鼻を膨らませ怒りを顕にする。

 

「テメ「やってみろよ」あぁっ!?」

 

 構えを解き、ヘラクレスの間合いまで歩く。

 

「言ったことが本当か試してやるから、お前の自慢の筋肉で殴ってみろよ」

 

 ほれ、とちょいちょいと人差し指で招いてやると、一瞬間の抜けた顔を見せてからヘラクレスはブチギレた。

 

「ふっ……、ふざけやがって…………」

 

 全身の筋肉を膨張させるように力を込め、ヘラクレスが拳を振り上げる。

 

「後悔しやがれーーーーっ!!!!」

 

 ゴッ!! と衝撃と同時に硬い物がぶつかる音が脳裏に響き、次いで神器の爆発が襲いかかった。

 

「一発じゃあ終わらせねえ!!

 肉片も残らず叩き潰してやるぁああああっ!!」

 

 餓鬼の癇癪もかくやの勢いでヘラクレスは何度も拳を振るい、その度爆発が生じ周囲を粉塵で包み込む。

 

「チッ、ヘラクレスの奴やり過ぎだ」

「流石にあれでは一溜りもあるまい」

 

 そんな感想が交わされる中、殴り疲れたのか肩で荒い息を吐いていたヘラクレスは、しかし僅かに晴れてきた煙の中の光景に息を呑む。

 

「っ、馬鹿な…」

「ふぅっ!」

 

 呻いたヘラクレスに見せつけるよう、俺は溜めていた息を力強く吐いて煙を吹き払う。

 

「冗談…でしょ?」

 

 外野が信じられないという目をしているがどうでもいい。

 

「あーあ。折角の一張羅が台無しじゃねえか」

 

 小周天だけでは厳しいかと念の為大周天までを用いて溜め込んだ『氣』の全てを用いてチャクラを廻し硬気功を行った結果、多少の擦り傷程度で済んだものの服までは耐えきってはくれず上着やシャツはボロボロになってしまった。

 

「嘘だ…テメエなんかイカサマをしたに決まってる!!」

 

 余程受け入れられなかったのかそんな訳のわからないことを叫びだすヘラクレスに、俺は我慢しきれず笑ってしまう。

 

「イカサマだぁ?

 当然してるに決まってんだろ?」

 

 何を言っているんだお前は?

 

「お前達の『神器』なんつう()()()()を相手にすんだから、こっちだって()()()()の一つや二つ用意して当然だろうが」

「ぐっ、」

 

 あっさり肯定してやると、ヘラクレスは面白いように狼狽えた。

 

「じゃあまあ、今度は俺の番だな」

 

 余った『氣』を循環させ四肢に集中しながら構える。

 

「や、やらせるかぁああっ!!」

 

 感情を撒き散らしながらヘラクレスが腕を振りかぶる。

 そんな野郎をまっすぐ見据え、俺は口を開く。

 

「李氏八極拳奥義『猛虎硬爬山』」

 

 踏み込み、右手を貫く。

 

「ごぁっ!?」

 

 ヘラクレスの自慢の筋肉はそれだけであっさりと打ち抜かれ悶絶するが、その程度で終わらせない。

 貫いた右手をわずかに引き五指を立て虎の爪に見立てた『虎爪掌』を更に一歩踏み込み打ち込む。

 

「ぎぃッ!!??」

 

 『氣』で強化された五指は筋肉を引裂き血を撒き散らすが、俺は更に左手も『虎爪掌』と形作り更に腹を引き裂く。

 

「や、や゛め゛っ゛」

 

 そこからは只管引き裂く。

 ヘラクレスの絶叫をBGMに、両の五指で肉を裂き骨を砕き内蔵を引きずり出す。

 

「が……あ゛ぎ…」

 

 繰り返すこと二十連撃。

 引き裂きに引き裂かれたヘラクレスの胸から腹にかけてがスプーンでくり抜いたようにぽっかりと刳り取られ血と臓物の匂いが周囲に満ちる。

 

「弱すぎだ。

 基礎から鍛え直せ」

 

 もう息はないヘラクレスにそう投げ捨て背を向ける。

 

 そうして解放されたヘラクレスは、ようやく倒れる事ができた。




今更ですが今回舞沢が豊和とマカロフ使っていた理由はマカロフは小さくて隠しやすいからという理由で、豊和は陰陽寮経由で即座に調達出来る砂ライが京都警察署に保管されていた豊和だったからです。


 

最新話の位置について

  • このままアナザールートの後でいい
  • 以前の状態に戻したほうがいい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。